結果は「依頼完了後、可能なら高専入り口へ向かう」が一番多かったので、こちらの選択肢で話を進めます。
次回から星漿体編(主人公ほぼ不参加)になります。
あととうとう戦闘描写をしないといけない回が来てしまう。
この主人公の戦い方地味なんだよな...。
その年の夏は妙に暑かった。
7月に入ってすぐに発生した台風から始まり、その後もいくつもの大型の台風が日本列島に直撃した。
それに伴い、整備されていなかった山の一部が崩れ、地震があったりと災害の多い夏を迎えていた。
元々特級術師だった五条悟は全国を駆け回った。特級呪霊も一体は倒しており、忙しすぎて何も考えず祓ってしまったら、何故か夏油傑にぶちギレられた。
呪霊祓いの頻度が爆増した結果、一年以上は様子を見るはずだったのに特級術師になった夏油傑はより精力的に呪霊を祓った。
家入硝子も
「疲れた……」
『日本は呪霊がウジのように湧きますよね。なんでこれを受け入れてでも天元は全国に結界を張っているんですかね?』
『結界がないとやばい何かがいることはわかってるけど、それが何かはわからないんだよね』
「お疲れ様です。お茶でもいかがですか?」
「ありがとうございます。いただきます」
太郎と雫は現在飛騨高山、岐阜県に来ていた。
ここにある神社の近くで1級相当の呪霊の発生が検知されため、今のところ一番早く動ける二人が祓いに来た。
もう少し時代が進めば、五条悟が術式順転『蒼』で自分の前の空間を引っ張りながらの高速移動が出来るようになるが、今の五条悟はまだできない。
太郎の術式では感度操作するだけなので高速移動が出来ないが、術式サキュバスを持っている雫は話が別だ。
彼女はサキュバスっぽいことは何でも出来る。
このサキュバスっぽい事というのは、日本人が想像している異世界のサキュバスの要素を多く含んでいるため、ある程度の魔法なんかも使えるし、空だって飛べる。
そして何より呪霊はあくまでも呪力に性質を持たせて具現化させた存在である。精神体よりの存在である。
今の太郎を呪力が感知出来る存在が見たら、背中から翼が生えているように見えるだろう。
夢魔としての性質によって、太郎の精神に乗り移り、何割か支配することで太郎の肉体に呪力的な肉体を生やしている。
それがコウモリのような翼であり、この翼を使って高速移動することで悟や傑よりも早く飛び回れている。
「田中様のように呪力を扱えたら私自身でも戦えるのですが……。申し訳ない」
「いえいえ。報告と連絡をして頂けるだけでもありがたいです」
近くの神社の宮司が呪霊の発生をすぐに検知してくれたため、人的被害もない状態で迅速に太郎は現地に赴けた。
また宮司がとても恐縮にしているのは、未だに中学生くらいの年齢の子供に呪霊祓いをしてもらったためだ。
ちなみに件の呪霊は太郎の膨大な呪力と雫の呪力を使い、身体能力を大幅に向上させた状態からの不意打ちの棒による突きの一撃で祓われた。
そう話しながら太郎は手を開いたり閉じたりを繰り返す。
『さっき言っていました、高山付近だと調子がいいというのはまだ続いてるのですか?』
『ああ。今もまだまだ戦えそうだし、すごく調子がいいね』
呪術師は呪力というオカルトな力を使っているため、同じくオカルト扱いされる風水や土地の性質に寄って能力にバフされたりする。
陀艮が海で戦えば領域展開ほどではないがバフも入るし、漏瑚が海で戦えば少しだけデバフが入る。
そんなシステムがある中、太郎は未だかつてないほどの地形によるバフを受けていた。
『もしかしてここやここ一帯で崇められている神様の性質と太郎様の性質が似通ったりしているかもしれませんね』
『なるほど』
信仰もまた風水や土地の性質と同じくらい昔は重視されていた。
ただ今の日本はお正月には神社に初詣に行き、お盆にはお寺で先祖供養をし、クリスマスにはキリスト教の行事として楽しむ。
信仰に唾を吐きかけるようなミーハーっぷりのため、そこまで強い力を受けられないので重視されていない。
「この神社ではどの神様を祭っておられるのですか?」
「……お若いのにそういうことにも興味があるのですね。この神社では阿修羅様を祭っております」
「阿修羅様? あの三面六臂の阿修羅ですか?」
「そうです。ここが神社なのに不思議ですよね。本来阿修羅様は仏教ですので神社ではなくお寺の管轄なのですが、先祖代々この地で信仰されているのですよ」
「なるほど?」
阿修羅がヒンドゥー教から仏教につながるくらいしか太郎は知らないため、とりあえず頷いた。
「この神社の祖先が造った阿修羅像が奥にあるのですが……」
「ちょっと興味があるのですが何かありました?」
「数代前に奥殿にて祀られている阿修羅像の一部が崩れてしまっており、見てもあまり面白いものではない状態なのですが」
「……そうですね。疲れているので、また今後機会があれば見せていただきたいです」
「それまでに修復は難しいかもしれませんが……。即座に来ていただき、誠にありがとうございました」
「はい。総監部には連絡をお願いします」
よほどな崩れ方をしているのか、はたまた何かを隠しているのかは不明だが、深入りするのも面倒なため太郎はすぐに引き、その場を後にすることにした。
♡♡♡♡♡
「チビパイセンの奢りっしょ? 何食べようかなー」
「悟、いつも言っているじゃないか。太郎先輩をもっと敬え」
「ここも禁煙かよ。ハァ……。雫ちゃん飴ちょうだい」
「正論うぜえって呪霊喰らい君」
「正論は正しいから正論なんだよ悟。子供じゃないんだから」
「太るわよ」
「はぁ!? 殺すよ?」
「は?」「は?」「は?」
「うっさい。他の客もいるんだからはしゃぐな」
怒涛の呪霊ラッシュが落ち着いてきたので、やっと東京高専の1年2年組全員が集まれた。
期間限定スイーツを食べたいからとファミレスに集まったのだが悟と傑、硝子と雫がメンチを切っている。
これも
また傑があまりにも呪霊玉を美味しそうに食べる姿を複数人に見られた結果、五条悟は『最強』という呼び名で呼ばれているが、傑は畏怖も込めて『呪霊喰らい』などと呼ばれたりもしている。本人はまんざらでもない。
「てか、傑めっちゃ痩せてない?」
「高校男児がダイエットと……おい夏油、お前まともに飯食ってないだろ。どういうことだ?」
悟は純粋に心配して、硝子は医療に携わる人として本気で心配し始めた。
そんな中まだ肉体を造り出せていない雫は太郎に憑依した状態でスイーツを食べ続けていた。
甘すぎて吐きそうな太郎はコーヒーを飲みながら一度雫を止めてから、夏油の横に立つ。
「待って下さい。太郎先輩。いやいや。悟も硝子も勘違いだって。呪霊祓うのが忙しくてちょっと痩せちゃっただけで」
「嘘をついた瞬間、俺は君に掛けている術式を解きます」
太郎は笑いながら傑の肩に手を置いた。それは今の傑にとって死刑宣告も同義だった。
「申し訳ございませんでした。呪霊玉が美味しすぎて、まともに食事を取っていませんでした」
傑はすぐに頭を机につけながら精いっぱい謝った。
太郎が傑の肩に手を置く前に遮音の結界を張っていなければ、その大きな声の謝罪によって店を出ないといけなくなるところだった。
「あの玉ってそんなにうまいのか」
「いや、元々は吐瀉物を処理した雑巾の味だったが」
「は? そんなもん食ってたのか!?」
悟はグラサンを少しだけずらして、傑に掛けられている術式を読み解いた。
そして理解した。親しい友人面していたのに、そのことに気が付かず、接する時間の少ない太郎は気が付いて解決させたことに。
「強くなるため。一般人を守るためには仕方なかった。しかし今は違う。太郎先輩のおかげで強烈な旨味を感じるようになったからね!」
「その馬鹿に掛かってる術式ってなんなの?」
「特定の味の感じ方を反転させてるっぽいな」
「てことは今この馬鹿に吐瀉物を処理した雑巾を食わせたらクッソ上手く感じるってことか。キメえ」
「なんとでも言えばいいさ」
ハハハと笑う傑の肩を太郎はもう一度強く叩く。
「……ちゃんと食べるのでそれだけは許してください」
「あんまり行儀良くないけど、飯食いながら呪霊玉も食べるとかすれば? まずあの玉は腹が膨れないんだから食べろよ」
「はい! 気を付けます!!」
この後夏油傑は激太りした。
食べ物を口に入れた後に物理的な干渉のない呪霊玉を一緒に食べることで、料理の味と強烈な旨味を同時に感じることができ、傑は任務の度に爆食をした。
そして当然太った。
「真面目馬鹿だった時に比べて良くなったけど、傑なんか馬鹿になってないか?」
「本当は嫌だったが、少しだけ先輩に味覚反転時の感度を下げてもらったよ。これで頭おかしいくらい変なことはしないはずだ」
「マジウケる」
最終的に反転させた味覚の暴力があまりにも強いため、一種の薬物スパイラル状態に陥っていた。なので太郎によって呪霊玉によって感じる旨味を少しだけ下げられた。
それでも美味しいのだが、これ以上変なことをすると太郎に術式を止められるので、傑は本気で体調管理に力を入れ始めた。
♡♡♡♡♡
ここ一年で五条悟も夏油傑も肉体改造に励んだ。
太郎に呪霊玉を食べた時の旨味の感度倍率を下げられたが、それでも等級が上がれば上がるほど旨く、そして強くなれる。
ダイエットをしながら体を鍛え始めた傑を見て、悟も負けじと鍛え始めた結果、二人はより近接戦闘が強くなった。
太郎はまだ実年齢は中学2年生くらいしかなく、身長もまだ伸び続けているため、そこまで過度に体を鍛えられていない。
その結果二人の横に立つと小さくないのに小さく見えてしまう現象が発生していたりもする。未だに悟からの太郎の呼び名はチビ先輩である。
「どうしようか」
先ほど呪術総監部からの急ぎの依頼書が届いた。特級呪霊が発生したため、討伐に行くようにという依頼内容だった。
彼は特級術師ではない。そのため本来なら特級を倒せる階級ではないため、こういう依頼は悟や傑とセットで依頼が来るはずなのだが、依頼書には続けてこう書いてあった。
特級術師の五条悟と夏油傑に対して、数日中に天元様より依頼が来るから出動させられないという文言が添えられてあったのだ。
「私と太郎様で行けば、よほど相性が悪くない限りは倒せますよね?」
「そのよほど相性の悪い漏瑚か花御だったら俺たち死ぬけどね。知らないやつもいるだろうし。それに悟たちに来る任務についてもどうしようかな」
まず間違いなく悟と傑に来る任務は星漿体に関する依頼だろう。
ちょうど今二人が高校二年生の夏なので、原作的にも時期はあっている。
今の二人はまだ反転術式も使えないし、術式反転も使えないはずだが、それでも原作よりも肉体面だけで言えばゴリラ化が進んでいるので強いはずだ。
傑の調伏している呪霊の数も質も旨いからと呪霊を乱獲していたため、確実に強くなっているだろう。
最悪星漿体が死ぬ程度で今回の件は収束するはずだ。今彼が悩んでいるのは助言するかどうか。
「天逆鉾。フィジカルギフテッド。結界に完全なフィジカルギフテッドは検知されないこと。これらを伝えるべきかどうか」
「何か知っているなら伝えるべきじゃないんですか? あの三人を特に可愛がっていますよね」
「可愛がっているからこそ、強くなってもらわないと困るんだよ。両面宿儺と戦うことになるからね」
何故未来のことを知っているかなどを太郎は雫に説明はしていない。
だが、知っていることはもう隠してはいない。
「ここで万が一死んだとしても、結局は強くならないと未来で死ぬなら今を厳しくしちゃってもいいと思います」
「死ぬことはないとは思うんだけど、最悪傑が闇落ちしちゃうんだよね」
「しないでしょ」
「え?」
「ちゃんと夏油傑のメンタルケアをして、知っている未来にならないように太郎様は動いてるんですよね?」
「そうだけど」
「それなら上手くいきますよ。大丈夫です。私が信じている太郎様なら何とかできます」
「そ、そうか?」
「そうです」
未来を変えると太郎は決意して、夏油傑の呪霊玉に関する事柄を改善した。
それでも性格的に呪詛師になる可能性がゼロではないため、地雷になり得る星漿体関係に手を出そうとした。
たとえ未来で二人が弱くなったとしても。
だが、太郎は雫の根拠もくそもないただ彼女の信じる太郎を信じろという言葉によって、二人を信じることにした。
ただの惚れた弱みである。好きな人に全肯定されたため、それを信じることにしただけ。ある意味では思考の放棄ともいう。
好きな人が出来ると何度も言っただけでまるで全能になったかのように感じているが、一瞬の頭の痛みで現実に戻る。
「星漿体関係は二人に任せていくか」
「はい、頑張りましょう!」
そうして総監部からの依頼を受ける旨の連絡をしながら、現場に向かった。
もし総監部の依頼を断っていた場合、雫の自由が一部失われる代わりに星漿体に関する任務に参加もできたが、その選択を太郎は取らなかった。
その選択を知ったある存在は微笑みながら口にした。
「殺す」
もちろん総監部からの依頼の裏には羂索がいます。
多分開示していなかった情報を一つ開示します。
主人公の肉体スペックは普通にゴリラです。まだ成長途中なので体自体は筋肉モリモリではないですが。一応主人公の強さの根拠とかは考えてますので、いつか開示します。