室長ドンキの人格ストーリーのその後を妄想してみた

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ここでは自由となった血鬼達の終わりが語られる

「…あとどれ程の血が残っている?」

 

「前回の襲撃の時は義体の者が多かったので…全員が渇きを満たすのは難しいでしょう、第二眷属様」

 

「そうか…近々もう一度狩りを行う。余裕のある者には準備をするように伝えておいてくれ、武器は私が作ろう」

 

「はっ!」

 

ラ・マンチャランドの物に比べてひどく不格好な赤黒いテントから家族が出ていく。

あと1時間もすれば晩餐が始まるだろう。前回の戦闘によって欠けた家族の槍を血で修復する。

 

3年、父上様を殺しラ・マンチャランドが崩れてから3年が経った。今までの中で最も長く感じた3年だった。

 

ラ・マンチャランドが崩れてからまず一番最初に行ったことは拠点を探すことだった。

極度の飢えで動けなかった者、終わりのない地獄に気が狂ってしまった者、罪悪感に押し潰され無気力になった者、その者達も含めて数百人の家族達が安全に暮らせる場所を早急に探す必要があったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「邪魔だっ!」

 

血の槍を振るい、目ざとくラ・マンチャランドの異変を察知して集まった狩人達を殺す。

吹き出た血を吸収して硬め、地面から飛び出させる。

 

「ドンキホーテ流硬血2式、杭。貫け」

 

狩人達の体内を数十もの血の杭が貫き、死体の山と血の池が出来上がる。

 

「ああ…ああ! あのままだと地面に染みてしまう! まだ足りないんだ…もっと飲ませてくれ…!」

 

「放っておけ、すぐに全員が満たせるほどの血を飲める! まずはここを通り抜けろ!」

 

理髪師が刃が巨大化した裁縫鋏を振るいながら今にも血を啜ろうとした家族にそう叫んだ。

幸いここにいる人間は全員脆く弱い。第6、7眷属でも一人相手なら確実に勝てるだろう。私やロージャが少し力を入れれば10秒もかからずに終わる戦闘ですらないものだ。

だがここで殺しすぎてしまえば人間は、別の地区の長老は確実に私達を殺しに来るだろう。

それだけはあってはならない。家族が今までの渇きを満たせずに死ぬことは、父上様の子供を守れずに終わることは…絶対に。

だから…

 

「目の前から消えろ」

 

槍を振り下ろし、道を塞いでいるフィクサー達のみを薙ぎ払う。

父上様を唆し、悪夢を作り出した忌々しい騎士の姿を重ねながら。

 

 

 

その後私達は裏路地の一部を拠点にし、自分たちがここにいると狩人に分からせるために血の城を作り上げた。

裏路地の出来事はよっぽどのことがない限り巣の人間たちは見向きもしない。ここでようやく私達は血鬼の本能を隠さずに生きていける場所を作ることができた。

場所を取り返そうと、私達を狩らんと向かってきたフィクサーを罪悪感すら上回る本能のままに殺し尽くした。

その戦いを繰り返していく内に攻めてくるフィクサーの実力も数も上がっていったが血を飲み、飢えを癒した私達の相手ではなかった。

 

 

「ふざけるなっこいつ等都市疾病で収まるような奴らじゃっ」

 

神父の振るった鞭が男の頭を粉砕した。

 

「糞がっあれっぽっち金の為に化け物を相手にしにきたわけじゃ…ガッ!?」

 

理髪師の裁縫鋏が鉄の箱のような義体をした者の胴体を切断した。

 

「ま…待って…欲しいものは全部渡すから…血が欲しいなら…お願ッ」

 

唯一の姉妹が命乞いをする女を血で切り裂いた。

 

城の至る所で断末魔が聞こえ、あれ程にまで渇望していた血が床を濡らす。

騎士や父上様が言っていた正義のフィクサーとは程遠い者達を嘲謔と怒り、そして僅かな失望と共に見下ろす。

 

「…父上様、これがあなたの憧れていた存在なのですか? あの苦しみを生み出してまで求める価値があったのですか? …返事など来るはずもないか」

 

無意味な独り言を止めて残りの人間を処理しに向かう。この一週間で攻めてきたフィクサーは総勢で50はいた、全員の飢えを満たすには少し足りないが私が飲む量を減らせば済む話だろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

「都市の星だと…本当か?」

「うん…そうみたい、人間が言ってたって子供達が。私達が都市の星になったとしてどういうことになるのかは全然知らないけど。 あんたは分かる?」

「都市の星、都市の星か」

 

騎士が父上様に話していたことの一つ、都市疾病や都市悪夢と同じ都市の組織や現象に対するランク付け、それも一番上のものだったはずだ。

つまりこれまで以上に力を持った人間が攻めてくるということだ、ともすれば父上様に匹敵するほどの…

 

「ッ!」

 

もしあの力が私に…家族に振るわれれば勝てるだろうか、立ち向かえるだろうか。

その想定とともに湧き出た不安と恐怖を薄っぺらい虚勢で隠し血を十分に飲み以前より強くなったという安易な考えで胸の奥に閉じ込める。

 

「今よりも一層激しい戦いになる、力を蓄えておくよう言ってくれ」

「わかったわ。まぁ私とあんたがいれば問題はないと思うけどね。」

「そうだな」

 

姉妹はそう言い部屋を出ていった。そうだ、今までも大して苦戦することなく死亡者を出さずにここまで来た。だから大丈夫だ、そんな考えがどれ程甘く、都合の良いものだったか理解する日がきたのはそう遠くはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

都市の星となってから数ヶ月、ここでの生活はあまり変わることもなく順調に進んだ。むしろ取れる血の量、質共に良くなり家族全員の腹を満たせなかった日のほうが少なくなった。

 

「傷を負ったものは?」

「誰もいません第二眷属様」

「そうか、では血を集めて保管しろ。武器が欠けたものは後でこい」

 

いつものように指示を出し周りの血を集める。

 

「…ドンキホーテ様、一人近づいて来ます」

 

血の処理と城の修理も終わり、部屋へ戻ろうとしたその時神父がそう言った。その場にいた全員が窓を覗く。

青いコートを纏い、腰に二本の剣を、背中に箱のような物体を装備した人間。その姿を見た瞬間に無意識に槍を握っている手に力が入る。

 

見間違うはずがない、忘れるはずがない。あれは…あの人間は…!

 

ーー直後、発生した青白い光が窓を覆い、血の壁を粉砕する。

 

破壊という言葉そのものが血の壁を、ホールを飲み込み塵も残さずに消し飛ばす。

 

ホールにいた家族達が咄嗟に血の盾を出すが、まるでそれを嘲笑うかの如くあっさりと貫き命を奪った。

 

「ッッ!?  グッ全員下がれ! 誰でもいい、奥にいる者達に危険を知らせろ!」

 

崩壊する血の城、家族達がその力の全てを煙の中に放つ。

それの攻撃を見ることもせずその女は剣の一振りで無効化した。

 

「バリ…ッ」

「久しぶりだねサンチョ…ドンキホーテはいるかな」

 

白い月の騎士バリ

蓄えた力も何度も作り直した作戦も、それら全てを理不尽な力で台無しにする全ての悪夢の始まりが姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「父上様は妄想の果てで落馬した、貴様のデタラメな話に騙されてな」

 

「……」

 

騎士は何も言わず、父上様と話していたときとは似ても似つかない暗い目でこちらを見つめる。

私を含めこの城の中で上位の力を持つものを集めて数分…それだけ足止めできれば奇跡だろう。先程の一撃で理解した、目を背け続けていたことを認める。

ここにいる全員が集まってもあの騎士を殺すことは出来ない。

 

「…私が初めたことだから、私が終わらせる、そのために来たんだ」

「今さら遅いのよ」

「止めろロージャ!」

 

制止も間に合わず私以外の全員が憎悪と共に騎士に攻撃を仕掛けた。

 

「…ごめんね」

 

咄嗟に振るった槍は虚しく空を切った。

高速で血の斬撃をくぐり抜け凄まじい剣撃が家族達へと叩きつけられる。

その剣の前には第二眷属も第三眷属も大して差などなかった。

 

「あぁ…俺にふさわしい…罰だ…」

 

神父がそう言い終わると同時、体中に青い軌跡が走り血煙となる。

神父が殺されたのを皮切りに他の者も一斉に殺されていった。

 

止まらない当たらない効かない届かない。抵抗すら許さず動く前に命が散らされる。

 

「ドンキホーテっ、逃げ」

 

血の日傘で攻撃を何とか耐えていたロージャも遂には矢で心臓と頭を貫かれた。

血でドレスを濡らし私の前に倒れる。

 

数十秒、たった数十秒で戦闘に参加していた私以外のすべての家族が死んだ。

 

「お前が…お前があの日来なければ父上様は…私達はッ!」

「…私もそう思っているよ、サンチョ」

「私の名前を軽々しく呼ぶなァッ!」

 

床に落ちた血を、子供たちの神父の理髪師の姉妹の…夢を終わらせたあの日から保管し続けていた父上様の血を、槍に吸収させた。槍が赤黒い光を放ち、歪んだ形に変化する。

この槍で荒唐無稽で幼稚な…下らない夢のその全てを終わらせるのだ。

 

「忌まわしい口上も名乗りも必要ない」

 

全てをぶつけてやる。

 

「ドンキホーテ亜流サンチョ2式-ラ・サングレ」

 

「堕ちた夢を終わらせよう」

 

バリが弓を引き絞り、後頭に藍色の光輪が現れる。

水色のエネルギーが発生し矢に集まっていく。

 

 

動いたのはほぼ同時だった。

 

バリが弓を放つ。その衝撃で大気が震え血の壁がひび割れた。

体を滑るように加速させただ矢のみを狙う。

赤黒い光と水色の光が混ざり合い空間を覆う。

 

槍の先端と矢がぶつかり、光が弾け、そして

そして…

 

血が弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしてこんなことに…ガッ…」

 

騎士は城から逃げ出していた最後の血鬼にとどめを刺した。

その姿には傷どころか服に血痕の一つすらない。

 

その騎士の手の中で、血の結晶が溶けて血液に戻った。

血鬼達の力が完全に失われたのだ。

 

「ドンキホーテ…サンチョ…」

 

騎士はかつての友と友の子の名前を呟く。

 

「私も夢から覚めるよ、最初からできないことだったんだ…」

 

そう言い残して赤い雨の中騎士は裏路地から去っていった。

 

数日もすれば血は完全に処理されて跡形も無くなるだろう。

そうして血鬼達は人々から忘れられるのだろう、それが都市の日常だから。

 


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