中央暦1642年
第1文明圏中央世界において、世界最強との異名を持つ『神聖ミリシアル帝国』その第二の心臓とも称される、港町『カルトアルパス』
中央世界の貿易拠点であり、世界中の商人たちの生の声が聞けるため、様々な情報が飛び交いスパイが集まる町でもある。
最大幅14kmほどの細長い湾の奥にあるこの町は、フィヨルドのような地形をしており、天然の良港であった。
町と言うには些か不釣り合いなこの大都市では、今まさに4年に1回の世界会議『先進11カ国会議』が開かれようとしていた。だが今回は例年と少し違う事がある。
現在、大規模な港湾施設には会議出席国の護衛艦隊が姿を現していた。その様子を港湾管理責任者である、港湾管理局長『ブロンド』は港湾監視塔の上から、自国製の双眼鏡を首に下げながら、入港を指示していた。
港湾施設は、現在第一文明圏エリア・第二文明圏エリア・第三文明圏エリアと区切られており、既に第二文明圏エリアには、『ムー』の機動部隊のラ・カサミ級戦艦率いる戦艦2隻、装甲巡洋艦4隻、巡洋艦8隻、空母2隻の計16隻の艦隊、そして『ニグラート連合』の戦列艦4隻、竜母4隻の計8隻が入港している。
また、第三文明圏エリアには、南方世界を収める大国の『アニュンリール皇国』の戦列艦4隻と『パンドーラ大魔法公国』の魔導船団8隻が入港しており、此処にはいないが、第一文明圏の列強『エモール王国』が世界最強の竜種である風龍22騎を護衛につけて外交団を派遣しており、現在カルトアルパス近郊の神聖ミリシアル帝国海軍航空隊基地に着陸している。
「局長。第一文明圏国の『トルキア王国』及び『アガルタ法国』使節団到着!王国が戦列艦7隻、使節船1隻、計8隻、法国が魔法船団6隻、民間船2隻、此方も計8隻です!」
ブロンド「了解、魔信で誘導せよ。先に到着した方からだ」
「はっ」
ブロンド「…………相変わらず代わり映えしないな。」
ブロンドは仕事柄、各国の軍艦については一通り知識に入っているが、毎年同じような船ばかり来るため、もう飽きがきていた。
ブロンド「自由連合とグラ・バルカス帝国………どんな船で来るんだろうな?」
今回の会議で彼が楽しみにしているのは、今回からパーパルディアとレイフォルに代わって会議に参加する事となった自由連合とグラ・バルカス帝国が使っている軍艦であった。
彼の基には事前に、両国は巨大な戦艦を寄越してくると連絡があったため、船マニアの彼の興奮は最高潮に達していた。
「来ました!グラ・バルカス帝国到着!」
「おぉ………あれは………」
最初に到着したグラ・バルカス帝国は、大型の弩級戦艦2と巡洋艦2、駆逐艦3を引き連れてやって来た。
だが港の規模の関係から、戦艦だけが入港し護衛の艦は湾外で待機する事となった。
「次、自由連合が到着!日本は戦艦3、巡洋艦4、空母1です!アメリカは戦艦3、超大型空母1、駆逐艦4です!大英帝国は戦艦2、空母1、駆逐艦3!最後に大日本帝国は戦艦5、空母4、巡洋艦4、駆逐艦6、以上です!」
報告の順に四カ国が入港してくる。
グラ・バルカス帝国より遅れて入港してきたのは《やまと・きい・おわり》と護衛艦4隻と空母ほうしょう。
アメリカはアイオワ級戦艦アイオワ・ミズーリとモンタナ級戦艦モンタナ、更には在日米軍の原子力空母ジェラルド・R・フォードとアーレイバーグ級が4隻。
イギリス海軍は戦艦アンソン・ハウ、空母イラストリアス、駆逐艦が3隻。
最後に入って来た日本帝国は戦艦大和・武蔵・敷島・播磨、空母白龍・赤龍・青龍・帝竜、巡洋艦4隻と駆逐艦6隻。
ブロンド「どれも凄いな…!だが妙だ、日本帝国は後1隻はどうしたんだ?」
ブロンドが首を捻っていた。だが顔を上げた瞬間、彼は言葉を失った。
自国が保有する第零魔導艦隊のミスリル級や先程の大和やきいはおろか、グレート・アトラスターがまるで赤ん坊に見えるレベルの戦艦が彼の目の前を悠々と通って行った。
ブロンド「な………なん……なんだ……アレは……」
彼は思わず手に持っていた双眼鏡を落としてしまった。
数十分後ー
カルトアルパスの住人や集まっていた各国の注目が集まる一つの戦艦がいた。
グレート・アトラスター?大和?きい?それとも敷島?
否、それらが子供に思える巨体を誇る艦の名は《出雲》
日本帝国海軍が持てる技術の全てを注ぎ込み建造した人類史上最大最悪最強の戦艦がそこに居た。
超々々弩級戦艦 出雲
※外観は『レッドサンブラッククロス 外伝:戦艦ヒンデンブルクの最期』に登場した戦艦播磨。
名称:出雲型戦艦 出雲
全長:380m
全幅:67m
基準排水量:217,000t
最大速力:34.6ノット
主砲:55口径56cm砲三連装4基12門
長10センチ高角砲14基28門
60口径40mm三連装機銃25挺
12cm28連装噴進砲8基
55口径56cm砲を装備したまさしく世界最大にして最強の戦艦。機関はCODLAG方式*1を採用。同型艦の有無については不明。
猪口「でかいな……」
少し離れた場所から猪口・有賀・伊藤の3人の艦長達は自分達の《やまと》や《きい》《おわり》と出雲を比べていた。
有賀「あぁ…全長だけでも380m、アメリカ海軍のジェラルド・R・フォードを軽く凌駕してる」
伊藤「主砲も51cmどころか56cmだってよ、俺のやまとの46cm砲が可愛く思えて来たぜ」
猪口「俺や有賀の《きい》と《おわり》でやっと五分五分くらいかって話だ」
有賀「そういえばよ、アレ見たか?グラ・バルカスの連中の」
伊藤「あぁ見た見た。アレどう見ても大和型のパチモンだろ?」
猪口「二番艦らしきアレには恐らく51cm砲を搭載している。奴さん俺たちの《きい・おわり》に対抗して来たつもりが……」
有賀「その奥にトンデモない化け物が居たなんて予想だにしなかっただろうなぁ……」
そう言って3人は哀れんだ視線をグラ・バルカス帝国海軍に向けた。
大和型に酷似するグレード・アトラスター。レイフォルを1日で下したこの伝説的戦艦の艦橋で、グラ・バルカス帝国海軍東部方面艦隊司令長官であり、先進11カ国会議派遣隊総司令官でもある、カイザル大将は艦長のラクスタルと外交官のシエリアと、出雲を見ながら話をしていた。
シエリア「聞いていない……聞いていないぞ、あんな怪物がいただなんて……⁉︎」
カイザル「恐らくパーパルディア皇国との戦いには参加しておらず、敵の本土で待機…もしくは試験中だったのでしょう……ラクスタル、君はアレをどう見る……?」
ラクスタル「はい、日本国の戦艦が51cmを搭載しているのであれば……アレには恐らく51cm…………あるいはそれ以上のものが搭載されていてもおかしくはありません……」
シエリア「ご…51cm砲以上⁉︎グレート・ラニアケアを上回るだと⁉︎」
カイザル「シエリア殿…我々とて想像したくはありません……」
ラクスタル「しかしアレは事実です」
3人の額には冷や汗が流れていた。
カイザル「ともかく、今は会議に集中すべきです。お見送りしましょう」
シエリア「……そう……そうだな……」
二人が出ていく中、ラクスタルは日本海軍の艦船と護衛艦の艦尾に掲げられた旭日旗に目をやる。
ラクスタル「……必ず、必ずその秘密を暴いて見せるぞ……」
出雲
「それにしても、本艦は大人気のようですな」
艦橋から外で出雲に集まる人集りを見て艦長の有賀幸作は言う。
「しかし、噂は本当のようだな」
それに続いて口を開いたのは栗田健男であった。
栗田「第八帝国とかいう連中のあの戦艦、我々の大和と瓜二つだ」
有賀「そうですね、あの国の存在が露わになった時内通者がいたのではと疑惑が浮上する程ですからね。うん、確かにそっくりです」
栗田「偶然にしては出来すぎているが……なぁに我々には自衛隊やアメリカさん、それにこの出雲もおることだ」
有賀「しかし……本当に連中はやる気なんでしょうか……?」
栗田「私にはなんとも言えんな……ともかく外交団を見送りに行こう」
そう言って栗田と有賀は艦橋を後にした。