グレード・アトラスター 艦橋
このグラ・バルカス帝国の技術の粋を集めて作られた、グレード・アトラスターの全体を指揮する、艦長の『ラクスタル』は、第1打撃群からの報告に思考を巡らせていた。
ラクスタル「第1次攻撃隊は壊滅に近い被害を受けて撤退……それも敵戦闘機による物ではなく、追尾式のロケット弾による物とはな…」
「追尾式のロケット弾………敵は我々の知らない兵器を持っているようです。ですが敵艦の数を考えると、追尾式ロケットを誘導できる数はそんなに多くはありません。この部隊には、このグレード・アトラスターとグレートラニアケア、オリオン級、最新式のスコルピウス級駆逐艦とエクレウス級があります。」
副長の言葉にラクスタルは後ろを振り向く。
グレード・アトラスターと二番艦ラニアケアの後方からは、オリオン級戦艦1、駆逐艦12隻、軽巡洋艦と重巡洋艦6隻の1個艦隊が続く。
ラクスタル(本国艦隊所属、第53地方隊………通称:イシュタム。あのサディスト共が援軍とはな…)
彼が言うイシュタムとは、グラ・バルカス帝国本国艦隊に所属する、占領地の治安維持を専門とする地方隊とは名ばかりの一個艦隊である。
彼らの名を国内や海軍内で知らぬものはおらず、司令官の『メイナード』と、彼を含めた幹部や末端の将兵に至るまで、ほぼ全員が何かしらの問題を抱えており、その目に余る程の残虐性から、通称『死神イシュタム』と呼ばれており、メイナード本人も死人のような青白い肌をしているためその名前の由来に拍車を掛けている。
本国艦隊所属の彼らが何故、監察軍所属のグレード・アトラスターと共に居るのか?
ラクス(あのメイナードがタダで動く筈はない………やはり過激派の連中の陰謀か?)
彼の考え通り、イシュタムの任務は表向きにはグレード・アトラスターの護衛ではあるが、彼らに与えられている本来の目的は単独で敵艦隊を殲滅し、その成果をプロパガンダで利用し、過激派議員達へ自分達の実力をアピールする事によって自らの昇進と軍部への発言権を獲得するのが狙いである。
イシュタム艦隊 旗艦『メイサ』
「やっと我々の出番だな。」
「ククク…………胸が高鳴りますねぇ。」
オリオン級戦艦メイサの第1艦橋で、メイナードはそう呟き、艦長のオスニエルは狂気とも言える笑顔で興奮するカのように笑っていた。
オスニエル「司令殿、上からは敵艦の捕虜がいたら捕らえろと言っていましたが、本国へ連れ帰るまでは我々の自由にしても構わないでしょうか?」
メイナード「あぁ…もしかしたら有益な情報が得られるかもしれん。そうすれば我々の存在をもっとアピールできるぞ。」
オスニエル「では方法は私に任せてもらっても宜しいでしょうか?嬲るなり、色々方法はありますが……さて…?」
メイナード「任せる。好きにしろ。」
オスニエル「了解!」
オスニエルは生き生きとした表情で、そう答える。
メイナード「では、監察軍の連中に先を越される前に急ぎましょう!」
黒い欲望を携えたイシュタムは、速力を上げて、グレード・アトラスターの前に出ると、どんどん速力を上げていく。
グレード・アトラスター 第1艦橋
「イシュタム艦隊が速力を上げて、我々の前に出ます!」
ラクスタル「メイナードめ‼︎先走りおって!」
「艦長!彼らを後ろに下げますか?」
ラクスタル「無理だ…彼らは本国艦隊所属で、我々は監察軍だ。彼らを止める権限はない」
獲物を求めて先走ろうとするイシュタムを目にして、ラクスタルは怒りの表情で彼らを睨み付ける。
だがある意味、ラクスタル達は幸運だった。
イシュタム艦隊の接近は既に、ほうしょうから飛び立ったE2Cホークアイからの情報により、既に連合艦隊に察知されていた。
きい CIC
有賀「向かってくるのは、金剛擬きの戦艦が1隻と駆逐艦12隻、巡洋艦6隻か………数が多いな。流石にこの数を出雲と我々で砲撃戦で相手にするのは面倒だ。敵の戦艦を除いて、護衛の艦はミサイルで排除する!」
「了解!」
有賀の指示で、やまと・きい・おわりからハープーンミサイルによる一斉攻撃が開始され、18発のハープーンは低空飛行のままイシュタムへ向けて飛行を開始する。
「ECM開始!」
イシュタム艦隊 『メイサ』
「ん?」
メイサのレーダー士官が見ていたレーダースクリーンが突然、砂嵐に包まれ何も見えなくなってしまった。
「艦長、レーダーが突然機能不全を起こしました!」
オスニエル「何?」
オスニエルもレーダースクリーンを覗き込んでみるが、報告通り砂嵐で何も写っていない。
オスニエル「レーダー不調でしょう。直ぐに調べなさい」
「了解!」
レーダー士官は様子を見に艦橋から出ていく。
メイナード「どうしたんだ?」
オスニエル「いえ、ちょっとしたトラブルです。直ぐに解決するでしょう」
この時彼らは気がついて居なかった。既に、そこまで脅威が迫っている事を……
『艦橋!前方より、多数の飛翔物体接近!!』
メイナード「何ですって⁉︎対空戦闘用意!」
『対空戦闘用意!』
直ぐ様、イシュタムは対空戦闘用意が始まるが、迫ってくる飛翔物体は彼らの常識では考えられない速度で迫ってくる。
準備を終えた艦から射撃が開始されるが、海面スレスレでの低空飛行のため対空砲の死角であり、中々命中しない。
そして最初の一発が、駆逐艦に命中した。
オスニエル「なっ⁉︎」
そして1発…また1発と吸い込まれるように味方の駆逐艦・巡洋艦が瞬く間に壊滅した。
メイナード「まさか、敵は既に我々を捉えているというのか……⁉︎だとしたら本艦も狙われるぞ‼︎」
『艦橋!前方より敵艦影視認‼︎』
オスニエル「本当かっ‼︎」
ふと前方を見ると、水平線上から無数の敵艦の艦影が見えた。
メイナード「あれは…グレード・アトラスター⁉︎それも何隻も…⁈」
オスニエル「馬鹿な!何故ヤツらがあの艦をっ!見張り、敵艦との距離は⁈」
『敵艦、距離20マイル!!』
メイナード「20マイル!?………見間違いではないのですか?!」
『あ、もう一度確かめます!…………確認しました!敵艦との距離は間違いなく20マイル!!』
オスニエル「馬鹿な!そんなに遠い筈は……まさか!敵艦はグレード・アトラスターよりも大きいと言うのですか!!」
オスニエルが唸り声を上げたその相手こそ、日本海軍最強の切り札『出雲』であった。
驚愕するオスニエルの横で、メイナードはある事に気がつく。
メイナード「まて、敵艦がグレード・アトラスターより大きいなら、より大きな砲を積んでいる筈だ。46㎝砲の射程距離が42㎞だから………いかん!既に我々は敵艦の射程距離に入ってるぞ!オスニエル艦長、反転180°、全速回避だ‼︎」
オスニエル「りょ了解‼︎反転180°、急速離脱!!」
メイサは慌ててその場から離脱しようと反転するが、それ程甘くはなかった。
出雲 艦橋
『敵金剛擬き、反転を試みる模様』
有賀「この出雲に恐れを成したか……だがもう遅い」
栗田「有賀君、敵が金剛型そのものだとして……果たして相手になるかな?」
有賀「さぁー……ならんでしょうな」
有賀の答えを書いた栗田は目の前で逃走しようとするイシュタムに目を向ける。
栗田「結構、しかし奴らは軍人なのにも関わらず敵前逃亡を図るとは……艦長、沈めてやれ」
有賀「了解、主砲発射よぉーい‼︎」
「取り舵一杯‼︎主砲発射用意!」
有賀の指示で、艦が左に向き、主砲塔が射撃指揮所の測距儀の回転と連動し右へ旋回を始める。
『主砲射撃用意よし!』
有賀「先ずは偏差射撃だ!撃てぇい!」
『撃ち方始めっ‼︎』
衝撃と共に12門の56cm砲から巨弾が放たれる。
数秒後、メイサの回りに巨大な水柱が上がり、メイサの細長い船体が大きく揺さぶられる。
「「うわぁ‼︎」」
オスニエル「これは……被害を報告しなさい!!」
『衝撃により左舷に亀裂発生!亀裂から浸水‼︎修復不能ッ‼︎』
『左舷スクリューシャフト1番、湾曲!速力低下!』
『機関室火災発生!さらに浸水‼︎』
オスニエル「す…直ぐにダメコンに取り掛かりなさい!機関出力は最大を保ちなさい!」
オスニエルは被害報告をしてきた部署に指示をだし、内線電話を切る。
メイナード「老朽艦のこのメイサには、衝撃だけでも危うい…何とか敵の射程距離外に抜けなければッ……‼︎」
メイサは速度は落ちたが、未だに速度は25ノット以上を保っている。
『敵艦、速力低下!』
猪口「しぶといな」
伊藤「砲術長、今度は我々もいくぞッ!」
『了解!』
出雲の第一斉射撃砲が終わり、今度はやまと・きい・おわりから46cm51cm砲がそれぞれ放たれ、メイサを取り囲むかのように水柱が上がる。
『砲弾夾叉しました!次は当てれます‼︎』
有賀「データを出雲にも送れ、次で沈めるぞ」
きいからの修正データを受けた出雲は仰角・方位を整える。
そして、装填完了のランプが光り砲術長は間髪入れず艦橋へ報告する。
「各砲装填完了!発射用意完了‼︎」
栗田「撃てぇい‼︎」
「「発射ぁぁ‼︎」」
トリガーが引かれ、9門の46cm砲、18門の51cm砲、そして12門の56cm砲が放たれメイサへと降り注ぐ。
メイサ 艦橋
メイナード「早く…早く敵艦から離れなければ………」
『敵艦発砲‼︎』
オスニエル「回避‼︎面舵いっぱ………」
オスニエルが命令を発するより着弾が早く、メイサの乗組員達はそこで意識が途絶えた。
次の瞬間、爆発と共に天高く爆炎が立ち昇り辺りにメイサだった鉄屑をぶち撒ける。
また残った艦首部分か落下し、巨大な水飛沫と水柱を上げ大波を起こす。
出雲 艦橋
『敵艦、完全に
有賀「ご苦労、やはり所詮は金剛型だったという訳ですな」
栗田「うむ、あまり気持ちのいい物でもなかったがな……」
栗田の言葉に有賀も無言で頷く。
有賀「ですが、次に来るのは恐らく大和擬き…今のようにはいかんでしょう」
栗田「そうだな、それも2隻いるのだ。しかし………」
そう言いながら栗田は立ち上がって周囲を航行する味方の戦艦群を見ながら言う。
栗田「この数を相手しようとは……敵は本当に正気なのか?」
有賀「はっきりと申し上げて、狂っている……いや馬鹿げているとしか言いようがありません……」