「イシュタムとの通信途絶!応答なし!」
カイザル「そうか…」
通信士官からの報告に、カイザルは一言そう応える。
ラクスタル「司令、イシュタムは……」
カイザル「あぁ…間違いなく全滅だろう。相手があの巨大戦艦群だからな……」
カイザル自身も最初にカルトアルパスに入港した時に、出雲やきい、モンタナをこの目で目の当たりにしており、グレード・アトラスターとはまた別の偉容さに、劣等感を感じていた。
ラクスタル「司令、本艦はこのまま海峡に突入を?」
カイザル「あぁ。イシュタムが壊滅し、護衛の艦も全て失った以上は撤退すべきだが、皇帝陛下から与えられた任務を完遂するまでは引く事はできん。ならば、我々は与えられた任務を遂行するまでだ。航海長、針路そのままで機関最大戦速!」
ラクスタル「了解。機関最大戦速ぉく!」
『機関最大戦速っ!』
グレード・アトラスターとグレート・ラニアケアのエンジンの出力が徐々に上がっていき、速度を上げてフォーク海峡に突入する。
『艦長!レーダーと無線が不調を起こしました!通信と目標捜索不能!』
突然発生した電子機器の不調にラクスタルは、嫌な予感を感じる。
ラクスタル(訳もなく起きた電子機器の不調……これは恐らく機器の故障ではない。もしかしたら連合軍の仕業か?だとしたら本艦は既に敵の索敵圏内に入っている事になる。)
ラクスタルはその場で、指示を下す。
ラクスタル「対水上戦闘用意!取り舵一杯、主砲砲撃戦用意!」
「艦長!敵はまだ目視距離内には居ませんが……」
ラクスタル「おそらくこの電子機器の不調は連合軍による電波妨害だ。だとしたら、我々は既に敵艦の探知範囲内にいる事になる。」
「成る程……了解しました!砲術長、主砲砲撃戦用意。」
「了解!射撃指揮所、測距開始せよ!」
『了解!測距開始します!』
第1艦橋の上に装備されている測距儀が回転し、射撃員が測距儀による目視により、前方を中心に目標の捜索を開始する。普段ならレーダーによる統制射撃を行うのだが、生憎レーダーが使用不能なので、光学照準による目視射撃を行うしかない。
『!敵艦を視認!本艦前方12時方向!』
カイザル「来たか!」
ラクスタルは双眼鏡で水平線を見る。
水平線一帯には、自衛隊・日本海軍・アメリカ海軍・イギリス海軍の戦艦群がズラリと並びこちらに向かっていた
ラクスタル「間違いない、ヤツらだ!主砲砲撃戦用意!取りかじ一杯!」
砲撃に合わせて、2隻の船体が左へと回り、主砲と副砲が回転し、迫ってくる連合艦隊に向けられる。
ラクスタル「ここは先制攻撃で先に仕掛ける!主砲砲撃始め!」
「了解!…各砲砲撃始めっ!!」
グレード・アトラスター、グレート・ラニアケアの主砲が放たれた。
出雲の56cm砲には劣るが、発射時の爆音と衝撃波は凄まじく、艦周辺の海面が揺れる。
先手を打たれた連合艦隊。しかしやまと・きい・おわりのCICに居る各員は変わらず冷静に対処を探る。
おわり CIC
「敵艦、主砲斉射。全弾遠弾……いえ、近弾3の可能性有り」
猪口「近弾?1射目、それも全門斉射だぞ。間違い無いのか?」
「現在再確認中です……………間違いありません、遠弾12、近弾3です」
猪口「目視照準とはいえやるな。誰に当たる?」
「現在解析中……出ました。"出雲"です」
猪口「それは不味いぞ……本艦で叩き落とす!対空戦闘用意ッ‼︎」
猪口の命令で、前部甲板に設置されたMK.41 VLSのハッチが開き爆炎が上がるのと同時にESSMが3発が発射される。
飛翔した3発のESSMは見事に出雲の目の前で51cm砲弾2発、46cm砲弾1発を破壊する。
そして一拍置いて、艦隊の後方にて無数の水柱が起こる。
栗田「危なかった……」
有賀「はい…おわりからの報告を聞いた時は生きた心地がしませんでしたが……やはりすごいですな…」
だが驚いていたのは日本海軍だけでは無かった。
カイザル「見たか…艦長」
ラクスタル「はい…敵は我が方の砲弾を空中で破壊しました……」
まさかのあり得ない事態に艦橋にいた乗組員らは皆言葉を失っていたが、ラクスタルは直ぐに持ち直す。
ラクスタル「だが今の照準は
『了解ッ‼︎』
しかし、そう上手くはいかないのが現実という物である。
実は海域上空にはE-2が既に到着し、自衛隊を含む帝米英の艦隊と既に情報共有を始めており必要な測距を済ませ各艦に伝達してある。
モンタナ 艦橋
「sir 主砲発射態勢が整いました!いずれの諸元もあのヤマト擬きに命中させられます!」
キンメル「ご苦労キャプテン、しかし上手くいくのだろうか?」
キンメルは報告を受けるも心配だった。
主砲の照準というのは最初からは当たらない物だ、しかしMSDFは新たな試みとして上空からレーダーによる測距と計算でどの仰角で命中させられるのかという方法を編み出したのだ。
彼らもやったことのない前代未聞の試みのためキンメルも不安視していた。
「しかし物は試しです。やれるだけやってみましょう!」
キンメル「………そうだな」
出雲 艦橋
『全艦、E-2とのデータリンク完了!主砲発射用意よしッ‼︎』
栗田「初撃は彼方さんに貰われたが、今度はこちらの番だ。たっぷりとお返しさせてもらうぞ‼︎」
有賀「全艦ッ‼︎撃ち方始めぇぇぇぇぇ‼︎」
有賀の号令と同時に総数13隻の戦艦から無数の主砲弾が放たれ、グレート・アトラスター、グレート・ラニアケアに飛翔していく。
「敵艦発砲!!」
ラクスタル「衝撃に備えっ!」
こちらも同じように全員が耐ショック態勢を取る。その直後、グレード・アトラスター周辺に着弾し、46㎝砲弾の爆発とは比べ物にならない程巨大な無数の水柱が揚がり、とてつもない衝撃波が襲い掛かる。
カイザル「くぅ………凄い衝撃波だ。46㎝砲どころじゃないな。被害報告ッ……‼︎」
『後部艦載機格納庫、衝撃により被害甚大!搭載機全損!火災発生のため、消火作業中‼︎艦載機用カタパルト並びに回収用クレーンも破損!使用不能!』
『こちら烹炊所!各備品類並びに調理器具破損‼︎』
『前部兵員室火災発生‼︎消火不能ッ‼︎』
『こちら医務室‼︎先程の衝撃で各部署から負傷者続出!』
『右舷デッキ火災発生‼︎対空砲・対空機銃全損‼︎』
『艦内に亀裂が発生して各所に浸水中!』
『こちら機関室、火災発生‼︎最大出力による航行は不能ですッ‼︎』
ラクスタル「なっ………」
たった一撃でこの被害。
もしこれが前級のヘラクレス級やオリオン級なら、これ以上の被害が出ていた筈である。
最強の戦艦として帝国の科学力の粋を集めて作られたこのグレード・アトラスターだからこそ、この程度の被害で済んだのである。
カイザル「艦長……どうやらそれだけではないようだ。見ろ……」
彼にに言われて艦橋の外に目を向けるが、そこには信じられない光景が広がっていた。
まず前部甲板には巨大な大穴が開き、敵に向けていた主砲塔のうち一番砲塔の真ん中が綺麗に抉り取られていた。
二番砲塔に目をやれば3本中2本が真っ二つに折れ、残る1本も砲身があらぬ方向に向いていた。
「艦長ッ‼︎後部艦橋からの報告です‼︎」
そこへ後部艦橋で指揮をしていた指揮官が入ってくる。
「後部艦橋は通信ケーブルが全損、また第三砲塔は先程の衝撃で楊弾装置が故障、応戦できません……!」
ラクスタル「ッ‼︎」
カイザル「……これで本艦の戦闘能力は失われたな……」
確かにグレート・アトラスターは頑丈だ。その証拠に今も尚航行しているが、その速力は15ノット前後にまで叩き落とされていた。
またグレート・ラニアケアも同じような被害を被り、二番砲塔を56cm砲弾が直撃した衝撃が強くそのまま海に砲塔が投げ出されたというのだ。
余りにも情け無い有様だった。
かつてのユグドと呼ばれた前世界でその猛威を奮った帝国が……その威信をかけて建造したグレート・アトラスター級二隻が、1時間と待たずに一瞬にして戦闘不能に陥れてられたのだ。
カイザル「……艦長、ここが引き際やもしれんぞ」
ラクスタル「司令……」
「引き上げるのですか⁉︎」
そう声を荒げたのはいつのまにか艦橋へと上がっていたシエリアであった。
カイザル「シエリア殿、この状態ではやむを得ません。今のこのグレート・アトラスターの状態では敵と戦うのは自殺行為……誰も生きては帰れない……グレート・ラニアケアも然り……」
シエリア「しかし……」
カイザル「気持ちは分かります。ですが、敵の情報を一つでも多く持ち帰る事もまた我々の役目……」
シエリア「……」
ラクスタル「……全艦回頭180度……撤退する」
グレート・アトラスターとその姉妹艦ラニアケアは傷ついた体を引き摺るように回頭し、連合艦隊に背を向けて去っていく。
出雲
「敵艦二隻、撤退していきます」
有賀「分かった……しかし司令、宜しかったのですか?態々敵を逃して?」
有賀の問いに答えるように栗田は口を開く。
栗田「これでいいんだ。ここで撃沈しては敵の上層部に与える影響は少なかろう。だがズタボロにされた
有賀「小沢長官の発案にしては中々鋭いですが……」
栗田「そうしょげるな艦長、今頃小沢長官達も大暴れしてる筈だ」
そう言って栗田はグレート・アトラスターが去っていく先の海域に目を向ける。