フォーク海峡から急いでその場を離れようとするグレート・アトラスターとラニアケア。
ラクスタル「通信室、無線はまだ通じないのか?」
『はい!未だにレーダーと無線は不調のままです。』
カイザル「不味いぞ……第1打撃群では攻撃隊発艦準備が整いつつある筈だ。敵艦隊の戦意が失せていない状態なら、第1打撃群が危険だ!」
彼らの予想は直後に当たる事になる。
カルトアルパス港沖 帝国海軍空母『白龍』
小沢「長かった……ようやく
感嘆の思いで小沢は甲板上を眺めていた。
「一番機発進急げッ‼︎」
「対艦と対空装備両方だ!なんてったって今度の相手は空母だ!」
甲板上には日本国との技術交流が開始されて以降、帝国海軍が待ち望んだジェット戦闘機が今飛び立とうとしていた。
機体の名は橘花、史実で海軍が開発した機体の名前だがその見た目は航空自衛隊が2006年まで運用していたT-1中等練習機だった。
そうこの橘花は日本がT-1輸出したものだったのだ。
空対空装備の機にはAIM-9サイドワインダーを翼下に左右それぞれ2発ずつの合計4発装備。
対艦装備には対艦ミサイル:ペンギンを2発装備。
また参加はしていないが、米海軍でも日本からの技術交流を果てF-86Dセイバーを艦載機として運用し、英海軍でもT-33シューティングスターを艦載機運用しようと訓練している。
カタパルトに固定された機は次々と白龍・赤龍・帝龍・昇龍から飛び立っていく。甲板乗員らは歓声を送ったり帽子を振って見送る中、小沢も敬礼して見送った。
既にこの攻撃に先駆けて、ジェラルド・R・フォードから飛び立ったEA-18Gグラウラーが先行し、敵艦隊が居る近くの海域で電波妨害を行っている。
この時点で敵艦隊は目と耳を潰されている状態なので、現状では、攻撃隊は上空で待機しているホークアイの誘導で敵艦隊に悟られる事なく近づく事が可能である。
『八咫烏から野武士へ、前方に見える山を越えた後に低空飛行で目標へと接近せよ。』
『了解!』
ホークアイの誘導で攻撃隊は低空飛行に入る。
前に見えるミリシアルのカルトアルパス港北西にある半島を通過し、指示通り低空飛行へと移った。
『各機、レーダー照射開始!』
指揮官機からの指示で、全機がレーダー*1を始動させ目標を補足する。
『野武士から八咫烏へ、目標を捕捉した!』
『了解した。攻撃隊は直ちに攻撃に移れ』
『ヨーソロ!各機、攻撃位置に付け!』
火器官制レーダーのスイッチが入れられ、レーダー波が第1打撃群の艦船を完全に補足し、ホークアイからのデータリンク情報を基に戦艦を除く敵艦船へと目標の割振りが素早く行われ、ロックオンが掛けられる。
『安全装置解除!野武士隊、
各機から撃ち出された大量のペンギンミサイルは、一瞬で視界から消えて彼方へと飛び去っていく。
『全機反転!攻撃隊は離脱せよ!』
攻撃隊は任務を終えて、その場から全速力で離脱するが空対空装備の部隊はそのまま戦果確認も兼ねて敵艦隊の方へとさらに進んでいく。
カルトアルパス沖北西
グラ・バルカス帝国海軍 第1打撃群旗艦 ヘルクレス級戦艦『ラス・アルゲティ』
「まだ回復しないのか?」
「はっ。今点検を行っていますが、原因特定には時間が掛かります。」
第1打撃群司令官『カオニア』は、自分が乗り込む戦艦ラス・アルゲティを含め、艦隊規模で突然起こったレーダーや無線機の不調に頭を悩ませていた。
カオニア「これでは直掩機からの報告は期待できそうにはないな。」
空母を中心とした航空機動艦隊としての役割を持つ第1打撃群にとって、無線機は戦いを有利に進めるために必要不可欠な大事な物である。
その通信機の不調が全艦同時に発生し、目と耳を奪われた状態では第1打撃群は、身動きが取れない。
カオニア「今まで戦ってきた中で、こんな事は初めてだ…」
「司令、カルトアルパスへの攻撃隊出撃は延期しますか?」
カオニア「いや、当初の予定通り作戦は続行する。各艦は周囲の警戒を厳重にしつつ、作戦を続行せよ。」
だが、この時彼の脳裏に言葉に出来ないくらいの不安が過る。だが作戦は続行すると決めた以上は、指揮を採らなければならないため、何とか不安を打ち消すため、目を閉じて瞑想に入る。
数分の瞑想の後に、不安を何とか打ち消した彼のもとに報告が入る。
「司令!間もなく攻撃隊の発艦準備が整います。」
カオニア「うむ」
第1打撃群の各空母の甲板では、爆装した航空隊がプロペラを回しながら発艦準備を整えていく。
「司令‼︎本艦前方に低空を飛行する多数の飛翔物体を視認!!」
カオニア「何っ!?」
「とんでもない速度です。既に距離は10マイルを切っています!」
カオニア「いかん‼︎対空戦闘、攻撃始め!」
カオニアは前方に視線を向けると、こちらに向けて真っ直ぐに直進してくる高速飛翔物体を確認する。
それは航空機では決して出せないような、とんでもないスピードで迫ってくる。
カオニア「上がった⁉︎」
海面飛行していた飛翔物体は、艦隊の鼻の先で突然上昇し、マストより高い高度から急降下で迫ってくる。
「敵機直上‼︎急降下っ‼︎」
近距離用の無線機を通じて聞こえてきた、空母からの無線通信が艦橋内へと響き渡る。
その直後、飛翔物体は空母に直撃し派手な爆発が上がった。
「ペガスス被弾!!」
「マルカブ被弾!!」
「エニフも被弾しました!」
突然、3隻の正規空母が被弾した。
3艦からは、甲板に待機していた攻撃隊の燃料満載し大型爆弾を装備していた航空機に引火したのか、甲板上は大火災が発生していた。
「アルドラ、ウェズン、エルナト被弾!爆沈!」
「アルギエバも被弾!デネボラ、レグルスも大破、航行不能!!」
「ゴメイサ、キタルファ、グラフィアス、シャウラ爆沈!」
空母に続き、駆逐艦や巡洋艦も次々とやられていき、もはやカオニアには何が起きたのか分からなかった。
そして5分もしないうちに、第1打撃群はラス・アルゲティとオリオン級戦艦、ベテルギウス、ベラトリックス、3隻の戦艦のみとなり、事実上壊滅してしまった。
『嘘だろ……』
上空直掩にあたっていたアンタレス達は信じられない様子で海上で燃える味方を見るしかできなかった。
『味方が……俺達の母艦が……』
『何が……何が起きたんだ⁉︎』
ただ見ている事しか出来ない彼らの元にさらなる悲劇が降り注ぐ。
突然味方のアンタレスの一機が爆散したかと思えば正面から無数の矢のような飛行物体が煙を吹きながらこちらに向かってきていた。
『なんだよ⁉︎ちくしょお‼︎』
パイロット達は悔しながらも回避運動を取るがそれを嘲笑うかのように矢は後をついてきて一機また一機と味方を堕としていく。
『くっそぉぉぉぉぉ‼︎』
そして最後の一機もサイドワインダーの命中で爆散、運良く脱出できたのは全体の3分の1程度だった。
『こちら空戦隊、敵直掩機は全て撃破!我が方の圧勝です‼︎』
『よっしゃ!』
『グラ・バルカスさんよ、これで何を敵に回したか分かったか?あばよ!』
そう言い残して攻撃隊は全機引き上げて行った。
カオニア「我々は生き残ったのか……?」
「分かりません……」
カオニア「……敵の第二波が来るやもしれん……ここは撤退するぞ」
「……はい」
生き残った自分達だけでも本国は帰投しようと準備を始めたその時だった。
「司令!アレを‼︎」
カオニア「ん?あ…アレは…‼︎」
カオニアらの目に写ったのはズタボロにされたグレート・アトラスターとその二番艦グレート・ラニアケアであった。
「む……酷い……」
カオニア「よくぞここまで……曳航の準備をしろ‼︎急いで本海域より離脱する‼︎」
こうして『フォーク海峡迎撃戦』と呼ばれる一連の戦いは幕を閉じるのだった。