第1話 ムーへ
カルトアルパス戦から半年が経ち、各国が対グラ・バルカス戦に向けての準備を進めている。それは自由連合も同じであった。
日本では、今後予測されるグラ・バルカスとの衝突に備え、国土防衛策として、陸・海・空自衛隊の戦力拡充を目的とした武器弾薬の追加生産と備蓄、3カ国へのさらなる技術供与、海上自衛隊に於ける周辺海域の対潜哨戒任務の重視、民間船の往来制限等を進めていき、またグラ・バルカス本土と近い位置にある同盟国ムーを侵攻阻止線とするため、技術流出防止法の大幅緩和と海上自衛隊と陸上自衛隊の派遣を決定した。
日本帝国でも同盟国ムーへ向けて上記に似た目的で帝国陸海軍を派遣。
アメリカ・イギリスでも同様の動きが見られた。
そんな中、日本帝国とアメリカ海軍の艦隊には新鋭空母が合計四隻含まれていた。
美濃型航空母艦
基準排水量59,650~60,000トン
満載排水量76,000トン
全長316.7 m
最大幅76.8 m
水線幅38.5 m
外観:フォレスタル級に信濃の艦上構造物を載せたような見た目
兵装54口径127mm単装速射砲×4基、連装誘導弾発射機*1×4基
搭載機
???
???
同型艦
一番艦:美濃(現連合艦隊旗艦)
二番艦:甲斐
キティホーク級航空母艦
基準排水量60,100トン
満載排水量75,200トン
全長323.9 m
最大幅76.0 m
水線幅38.5 m
外観史実のキティホークそのまま
兵装RIM-2 テリア×4機
搭載機
F-86D
F-4ファントムⅡ
同型艦
キティホーク
コンステレーション
グラ・バルカス帝国の帝都ラグナにある帝城では、グラ・ルークス以下、帝国陸軍・海軍大臣と高官、各省庁のトップが集い、ある軍事作戦についての説明が行われていた。
「それでは此度の作戦概要の説明に入ります」
海軍大臣が、会議場に設けられた巨大な地図を広げ説明に入る。
「此度の作戦に於ける目的は、昨日確認されたムーの首都マイカルの港に停泊している自由艦隊殲滅と同時にオタハイト、工業都市マイカルに壊滅的打撃を与えるのが目的であり、今後のムー大陸制圧と第一文明圏への侵攻の障害を排除するのが目的であります。レイフォリア湾では既に第44任務部隊が待機しております。」
海軍大臣からの説明にグラ・ルークスが疑問を投げ掛ける。
ルークス「オタハイトへの攻撃はどうするのだ?」
「ご説明を行う前に、皇帝陛下にご許可を頂きたい事案がありますので、この場で申し上げても宜しいでしょうか?」
海軍大臣はグラ・ルークスにそう許しを乞う。
ルークス「申してみよ」
「はい。"グティ・マウン"の使用許可をお許し頂きたいと」
その瞬間、議場が喧騒に包まれた。
「グティ・マウンは我が国の最高機密の塊だぞ⁈たかが蛮族相手にそんな物を使う必要が何処にある⁉︎」
「蛮族とは言え、アレの存在を奴等に感づかれるのは、我が国にとっては不利なのでは?」
陸軍大臣と財務大臣の意見に海軍大臣は凛とした表情で反論する。
「確かに……相手がムー人や第二文明圏の蛮族相手ならグティ・マウンは必要ありません。しかしそれを使わざる得ない相手が居るのです」
そう言って陸軍大臣は、横の席に座っていた情報局長官に目配せする。立ち上がった情報局長官は一枚の拡大写真を広げる。それを見た瞬間に、皆顔を蒼くした。
「これはオタハイト港を撮影した写真です。」
「これは……カルトアルパスでグレード・アトラスターを大破させたという巨大戦艦か!」
写真には、オタハイト港の沖合いに停泊している出雲が写っていた。
「情報によるとこの戦艦は『イズモ』と言う名前で、姉妹艦の存在は不明と言う事です。イズモは二日前にマイカルに入港した後、オタハイトに移動した様です」
そこへ再び陸軍大臣が話し始める。
「今回確認された自由艦隊はカルトアルパス戦時とほぼ同じ編成であり、任務部隊の戦力では明らかに戦力不足と言う事で、オタハイトの自由艦隊への攻撃はグティ・マウンによる高高度精密爆撃を行いたいと考えております」
「高高度精密爆撃は分かるが、的が小さい艦船に向けて精密爆撃で当てられるのか?」
「それにつきましては陸軍大臣より」
海軍大臣に変わって陸軍大臣が説明を始める。
「高高度からの精密爆撃については、新開発の爆撃照準レーダーによる精密爆撃が可能となっており、実際のテストでは、その命中率は80%以上と言う結果が出ています。残りの20%は使用する爆弾の破壊力でも充分補えるので、許容範囲内に収められるでしょう」
ルークス「成る程……ではグティ・マウンの使用を許可する。必ず成功させるのだ」
「はっ!」
グラ・ルークスの認可を得た今作戦は直ちに第44任務部隊と陸軍特別爆撃機連隊に通達された。
特別爆撃連隊が置かれた秘密基地では、格納庫内に厳重態勢で格納されていた6発の大型エンジンを装備した、帝国が誇る戦略爆撃機『グティ・マウン』への爆弾搭載作業が開始されていた。
「いよいよユグド以来の実戦ですな大佐」
「あぁ…俺達が狙うのはムーの首都オタハイトだが、今回の作戦での我々の真の目標は、今何かと噂になってる例の巨大戦艦だ。上は精密爆撃で沈めろとさ」
今回の作戦で爆撃隊を指揮する大佐は葉巻を咥えながら、出雲を写した写真を部下に見せる。
「成る程、オタハイトへの攻撃はついでと言う事ですな。しかし巨大戦艦とはいえ精密爆撃で当たりますかな?」
「奴はデカイ分、動きが鈍い筈だ。狭い湾内なら早々身動きは取れんし、我々にとっては格好の標的だ」
「成る程。なら今回の任務は簡単ですな」
「あぁ……作戦終えて帰れば俺達は英雄になれる。今以上の生活も期待できそうだ」
目の前のグティ・マウンを見ながら自信に溢れた表情で、写真を握り潰す。
小沢「緊急連絡?」
ムー国首都オタハイトの港に停泊している美濃の艦内で、小沢*2は緊急報告を受けていた。
「敵本土より正体不明の超大型機の編隊と小規模ながら艦隊がムー大陸方向へ向けて進出してきているのが確認されました」
小沢「敵の規模は?」
「はッ、長門擬きが1、翔鶴擬き1を中心とした空母機動部隊。帝国本土から飛び立った飛行編隊は超大型機と護衛と思われる戦闘機が合計100機程です」
小沢「大型機は爆撃機だな。恐らくムー本土に対する戦略爆撃を目論んでいるのだろうが……敵艦隊が気になるな。向こうの位置は?」
「艦隊の方は北回りでマイカル方面へ、爆撃機は帝国本土からムー大陸北側より一直線で向かってきます。予測では艦隊の方が先にマイカルに到達する様です」
それを聞いた小沢は考える。
小沢「先に敵艦隊がマイカルに到達する………敵の狙いは工業都市マイカルの壊滅が目的だろうが、彼等にとったら首都のオタハイトへの攻撃が心理的にも戦略的にも大きい筈だ……敵艦隊の戦力なら艦隊を2分したとしてもオタハイトとマイカルは同時に叩けるのに何故オタハイト攻撃を爆撃機のみでやるんだ?」
「………………もしかしたら爆撃機の狙いは我々ではないのでしょうか?敵は高高度爆撃で本艦を含めた当艦隊を沈めるために?」
小沢「爆撃機で対艦攻撃………誘導弾を使うならいざ知らず、無誘導爆弾で行けるのか…?いや、待てよ艦船に比べて航空機は大型と言えど足は早い………あり得なくはないな……」
危機感を覚えた小沢は直ちに、全軍に敵襲の連絡を入れ、艦隊全艦と陸自と空自の部隊にも戦闘態勢に入るよう通達を行った。
小沢「
そう言いながら小沢は甲板上に待機しているある機体に目をやる。
「司令、ムーの試作機が敵機25機を撃墜したとの連絡が入りました」
試作機ことムーへ渡った震電とマスタングによる戦果報告は直ぐに統括軍経由で小沢のもとにも入った。
小沢「敵爆撃隊の現在位置と数は?」
「ムーと空自の警戒機からの情報によると、数は75機、北西より高高度を上げ、ここオタハイトに向けて接近中です」
小沢「よし………艦載機発進だ。このオタハイトに近づけんということを教えてやれ……!」
「了解‼︎」
小沢が日米の空母間に伝わり直ちにニミッツ提督座乗のキティホークよりF-4ファントムⅡ、F-86Dが発艦する。
一方で美濃や甲斐の甲板上には橘花とは違った機体が発進態勢に入っていた。
それはグラ・バルカス帝国の戦力を考慮して、日本国が3カ国に対して技術規制の緩和の影響で生み出された結果の機体であった。
一方は三菱 F-1にカナード翼を付けた見た目をした艦上支援戦闘機 剣
もう一つはF-86DとF-4ファントムⅡをキメラ合体させたような見た目の艦上戦闘機 月光であった。
『発進ッ‼︎』
カタパルトから射出された帝米艦載機群は護衛艦しょうかくから上がったホークアイとF-14sJと合流し敵爆撃機隊のいる方へと向かう。
『各機、高度を16000にまで上昇。敵爆撃機隊上方より奇襲をかける』
ホークアイの誘導で戦闘機隊は高度を上げる。
「ん?……居た!目標発見‼︎」
下を見ると厚い雲の切れ目からグティ・マウンの巨大な影が見えた。彼らに与えられていた事前の情報では敵爆撃機隊には護衛の戦闘機隊が居たが、航続距離の問題により既に本土へ引き返しており、グティ・マウンは丸裸の状態で飛行している。
『敵機確認っ!見えるか?』
『all right‼︎しかし何て大きさだ……まるで俺達はニシンじゃねぇか…』
『何情け無い事言ってるんですか?機体性能じゃ自分らの方に分がありまくりなんですよ!それじゃあお先に失礼ッ‼︎』
海自パイロットは操縦桿を下に倒し、敵爆撃隊の直上から一気に急降下を仕掛けた。
『目標ロック‼︎Fox-2‼︎』
操縦桿のスイッチを押し、機体下部より99式空対空誘導弾が発射され敵爆撃機の翼をもぎ取り爆発させる。
『いよっしゃあ‼︎』
『やるな……我々も負けてられん‼︎全機かかれ‼︎』
『Tallyho‼︎partyの始まりだぜぇ‼︎』
F-14に続いてF-4、F-86D、剣、月光が猛禽のごとく爆撃隊に襲い掛かる。
『こちら25番機、敵の攻撃、攻撃を受けた!エンジン出力低下っ!』
『こちら28番機、操縦不能っ!操縦不能っ!脱出する!』
『高度低下っ!落ちる!落ちる!』
『エンジン、出力維持出来ないっ!』
『こちら7番機、機体炎上っ!火災止まらないっ!』
次々と無線で入る味方の無惨な状況に隊長は悔しさを滲ませていた。
「我々は無敵の筈……何故だ……何故こんな事に……」
「正面より敵機ッ‼︎」
「ッ⁉︎」
次の瞬間、隊長機は剣から発射された空対空ミサイルを正面からの直撃を受け爆散する。
そして統率の乱れた爆撃機隊は戦闘機隊にとっては格好の的でしか無く、それから5分程して爆撃機隊は壊滅。
帝米側に大量のエースを産む結果に終わった。