自由連合召喚   作:短号司令官

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第4話 空洞山脈の戦い

 

ボーグ「クソォォ‼︎」

 

 

アルーを占領した第4機甲師団の本部が置かれた市庁舎会議室で、ボーグの怒鳴り声が響き渡る。

それもその筈で、当初の目標であるアルー占領は成し遂げたものの、部隊は少なくない損害を負い、敵を取り逃がした挙げ句、果てにはアルー内に敵に関する情報や手掛かりは何も無し。

 

ボーグ「戦車隊は4割の数の戦車を損失、敵に損害を与えられなかったどころか、全て取り逃がし、おまけにアルーは蛻の殻……………今まで我々がこんな屈辱を受けた事があるか⁉︎」

 

彼の怒り様に、参謀や他の幹部達は何も答えられない。

 

「閣下、少し落ち着きましょう。今後の士気にも大きく関わるかと…」

 

見かねた参謀長がボーグを何とか宥める。

ボーグも彼の言葉に、少し冷静さを取り戻し、椅子に腰掛ける。

 

ボーグ「そうだな……君の言う通りだ。すまん…」

 

「いえ…………閣下、当初の予定通りにキールセキへ向かいますか?」

 

ボーグ「そうしたいんだが、第1次攻撃隊は全機消息不明………部隊の損害の事もある。電離層による障害が何時まで続くか分からん以上は、迂闊に攻勢には出れん。1日はここで止まろう」

 

「分かりました。野営と言う形でよろしいですね?」

 

ボーグ「あぁ」

 

ボーグは慎重な男である。

予想を越える反撃と敵の実力を目の当たりにした以上は、いたずらに軍を動かせない事は理解しているため、アルーに止まる判断を出す。

 

「副官、至急基地へ伝令を出してくれ。ガオグゲル閣下に援軍要請だ」

 

「了解。第11偵察団から1個分隊を出します」

 

ここへ来てボーグはバルクルス基地に居るガオグゲルに援軍要請を出すため、急遽、第11偵察団の偵察隊員4人を伝令兵に任命し、バルクルス基地へと向かわせた。

 

 

 

しかしそれを見越して待ち伏せていた『特戦群』により伝令兵は一人残らず始末され、ボーグの援軍要請はバルクルス基地に届く事は無かった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

翌日

 

第4機甲師団がアルーを占領してから1日が経過した。

 

ボーグ「伝令兵はまだ戻って来ないのか?」

 

「はい。予定ではそろそろ戻ってきても可笑しくはないのですが………」

 

ボーグは、バルクルス基地に向かわせた伝令兵が未だに戻って来ない事を若干の苛立ちを覚えていた。

 

「もしや、敵の残存兵に襲われたのでは……」

 

ボーグ「残存兵………そう言えば、越境した時も敵の姿は無かったな。有り得ない話ではない………」

 

「捜索隊を編成して、周辺に展開させますか?」

 

ボーグ「いや、ここは敵の領域内だ。地の利では向こう側が有利なこの状況下では、却って危険だ。早急な援軍が望めない以上は、我々だけで何とかやるしかない」

 

「しかし制空権は未だに敵の手中です。制空権を確保しない事にはどうにもなりません」

 

ボーグ「なら……敵機が飛べない夜間に進撃しよう。夜戦ならこちらが有利だ。今日の夜に動くぞ!」

 

「了解!」 

 

ボーグは航空機が飛べない夜間に、キールセキへ進撃する事を決め、第4機甲師団は夜戦に備えて休息に入った。

 

 

 

 

同時刻、キールセキ連合軍司令部 

  

「陸将、敵は夜に動くようです」

 

大内田「分かった。やはり盗聴器を残して正解だったな」

  

キールセキに設置された司令部で大内田達はその報告を受けとる。

大内田達がボーグの決断を知り得たのは、先日アルーを撤退する際に、敵が司令部として使用するであろう市庁舎や、講堂、学校施設などに盗聴器や隠しカメラを設置しており、それらを市ヶ谷駐屯地から出向してきた自衛隊指揮通信システム隊の盗聴係が24時間態勢で盗聴していたからである。 

 

今村「しかし驚きましたな……まさか撤退したアルーに盗聴器や隠しカメラを仕掛けていたとは」

 

大内田「敵を欺くにはまず味方から…という訳です。黙っていて申し訳ありません」

 

大内田は今村に詫びの言葉を掛けるも今村は満足そうな顔をしていた。

 

今村「いえ、気にはしませんとも。ともかくこれで敵は我々の術中に収まった訳です。じっくりと相手して差し上げましょう」

 

大内田「はい、では夜戦に備えましょう」

 

大内田の命令により、空洞山脈付近で待機している第7師団の各部隊は夜戦に備えて、準備を整える。

 

 

 

  

そしてその日の深夜0時00分

  

アルーに待機していた第4機甲師団は、味方の上空援護の無い状態でキールセキ方面へと続く空洞山脈へ向けて進撃を開始した。

 

 

「陸将、敵機甲師団が動き出しました」

 

大内田「来たか!空洞山脈に待機中の各部隊に戦闘準備を下命!」

 

大内田らは空洞山脈付近と山脈内に待機している各部隊に戦闘態勢を下命した。

 

その頃、自分達の行動が筒抜けであるとも知らない第4機甲師団は……

  

ボーグ「今日は月が出てない……夜襲にはピッタリだな」

 

「全くです」 

 

戦闘指揮車内から空を視ていたボーグの言葉に参謀長も同意する。地球のように、この世界にも新月と同じ現象が起き、夜が真っ暗な日がある。今回は偶然にもその日に当たってしまったが、ボーグ達にとっては好都合である。

 

「閣下、間も無く空洞山脈に到達します」

 

ボーグ「よし。前衛の偵察隊には周辺の偵察を徹底するよう伝えろ」

 

「了解」

 

師団の前衛を勤める偵察部隊は、本隊に先行して空洞山脈内に突入する。

 

「スゲェ」

 

「幻想的だな」

 

山脈内はまるで白い軽石を拡大したかのように柱が蜘蛛の巣状に張り巡らされ、自然が生み出す神秘すら感じられる。偵察隊はその内部構造に魅了されながらも、自身の仕事を忘れる事なく、周辺の偵察に入る。

  

「しかしこりゃ、大部隊の移動には難儀するな。殆ど網の目状じゃないか!」

 

「道も広い所と狭い所が極端だ。天井が低い場所もある。真っ直ぐ通り抜けるのは難しいな。下手に動いたら崩れるかもしれん」

 

偵察隊は何とか戦車が通れそうな道を見つけ、マッピングを行うが、外の光が届かないのと、辺りが広すぎるせいか、ライトの光では辺りを見回す事が出来ず難儀しつつも、師団本隊を山脈内へと無事に誘導し、本隊の山脈内の移動を支援する。

 

 

一方。彼等から1キロ離れた場所に、石柱を陰に緑と茶色の2色迷彩塗装が施された米陸軍第65戦車連隊第4中隊所属のM60パットン戦車が、息を殺すように潜んでいた。

 

『ターゲット確認』

 

中隊を指揮する中隊長が乗り込むM60の砲塔上面にある、熱線映像装置が第4機甲師団の戦車と装甲車が放つ熱源を捉え、その映像を中隊全車にリアルタイムで送信する。 

 

「本当に日本軍の戦車にソックリだな。中戦車の方は97式、軽戦車の方は95式か」

 

「もしオリジナル(日本軍)通りの性能しかないなら、ライフルの弾を防ぐ程度の装甲しか無いはずです。徹甲弾じゃ命中箇所の反対側も貫通してしまいますから、榴弾でも叩き込みますか?」

 

「OKそれで行こう……全車、これより『ジッパー作戦』を始めるぞ」

 

今回の任務で第4中隊は、空洞山脈内に侵入した第4機甲師団の退路を断つための袋とじ係を勤める事となっている。

中隊長の指示で、息を潜めていた第4中隊のM60パットン14両はエンジンを始動させ、第4機甲師団の退路を断つように展開し、背後から目標を捉える。 

 

「中隊各車、目標敵戦車ならびに装甲車!対榴、Fire!」

 

「Fire‼︎」

 

「F○ck you‼︎」

 

中隊長の合図と共に14両のM60から同時に、対戦車榴弾が放たれ、山脈内に砲撃音が響き渡った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

空洞山脈内を移動する第4機甲師団の最後尾を走行する、第4戦車隊の2号戦車ハウンドⅡの車長は、車内に居る部下と話をしていた。

 

「見通しが悪いな……ライトだけだと視界が悪い」

 

ハッチから身を乗り出していた車長は戦車に装備されているライトや他の車両のライトの僅かな光を頼りに周囲を警戒する。

 

「これじゃ何処から撃たれるか分からんぞ……」

 

彼は、アルー侵攻で友軍の戦車が40両近く撃破されているのを知っているためか、何時も以上に警戒する。

 

「ん?」

 

ふと、自車のエンジン音に混ざって『バン!』と言う音が聞こえた。

その直後、前方の先頭車両と後ろに居た殿役の車両が同時に爆発、炎上した。

 

「攻撃⁉︎」

 

 

彼は直感で、攻撃を受けたと判断し、部隊間交信用無線の回線を開いた。

 

「こちら第4戦車隊3号車!後方と左右から敵襲を受けた!指揮官車と殿車が撃破された!」

 

『何!?本当か!』

 

「間違いありません!指示願います!」

 

『よし!全車、戦闘用意!敵は後方と側面から仕掛けてきている!全車、最大速力で敵を振り切れ!』

 

戦闘指揮車からの指示で第4機甲師団は鞭を打たれたかのように、移動速度を早め、一刻も早く空洞山脈を抜けようと出口方向へと向かった。

 

 

「こちら中隊車、グッズ*1の野郎共は増速して出口へ向かったぜ!」

 

中隊長は、本部へ報告を入れる。

 

『了解。貴隊はそのまま、敵を出口に誘導せよ』

 

「イエッサー!全車、奴らののケツを蹴っ飛ばし続けろ!」

 

「FohFoh!」

 

「やってやろうじゃねぇか、さぁ逃げろ逃げろ‼︎」

 

第4中隊は、尻を叩くように第4機甲師団の後方から距離を保ちながら攻撃を続行させる。

 

「敵機甲師団、間も無く空洞山脈を出ます」

 

今村「よし!出待ち部隊に攻撃態勢を取るよう下命!」

 

山脈出口に待機していた帝国陸軍第7連隊の七式、対戦車歩兵部隊が待ち構える。

 

 

一方で、第4機甲師団は……

 

 

ボーグ「おい!早く空洞山脈を抜けられないのか⁉︎」

 

「後5分で出口に到達します!」

 

ボーグ達、第4機甲師団の幹部達は、後方と側面からの攻撃を前に、戦車・歩兵部隊に甚大な被害を出しながら、全速力で空洞山脈出口へ向けて進んでいた。

 

『こちら第2旅団!被害甚大、団は壊め……ガガ!』

 

『こちらは第3旅団!隊の8割がやられた!』

 

前線指揮車内の無線機に各部隊からの被害報告が矢継ぎ早に飛び込み、ボーグ達は最早対応に手一杯な状態だった。

 

ボーグ「被弾した車両は放棄!無事な兵は他の車両に乗り込め!指揮官戦死の隊は周辺の隊の指揮下に入るか、指揮を執れ!何としてもキールセキに行くぞ!」

 

 

その中でもボーグは平静を保ちつつ、指示を下す。 

 

「閣下、出口を視認!」

 

ボーグ「よし!敵の懐に入ったぞ!戦車隊を前衛に突撃!」

 

第4機甲師団は戦車隊を先頭にして、後方から歩兵を乗せた車両部隊が続く。

 

ボーグ「よし、出たぞ!全車、キールセキに向けて行くぞ!」

 

先に洞窟を出た戦車隊は隊列を組み直し、横列体型でキールセキに向けて動き出した。

 

 

「来ましたッ!敵戦車多数確認!」

 

「各員対戦車噴進弾・対戦車噴進弾発射用意ッ‼︎」

 

陸自の迷彩服1型に酷似した戦闘服を着た陸軍兵らが日本からもたらされた79式対舟艇対戦車誘導弾をもとに開発した八式対戦車噴進弾と七式の後部に搭載された七式有線式対戦車誘導弾の照準を敵に合わせる。

 

「照準良しッ‼︎」

 

「撃てッ‼︎」

 

掛け声と同時に、辺り一帯に猛烈な爆発と閃光が発生した。

戦車と装甲車は、多数の爆発に飲み込まれていく。

 

「誘導弾・噴進弾全弾命中!」

 

「第二射!各車対榴!撃てッ‼︎」

 

続けて七式の105mm砲から榴弾が次々と浴びせられ、戦車と装甲車はたやすく吹き飛ばされていく。

 

ボーグ「うぅ……」

  

運良く、攻撃範囲ギリギリ外側の山脈出口内側に居た前線指揮車に居たボーグは延々と続く砲撃に、耳を塞ぎ、蹲っていた。

 

「止まった……のか…?」

 

やがて爆音が鳴り止んだ。

ボーグは耳を塞いでいた両手を離し、被害確認のため前線指揮車から降り、出口から外へ出た。

  

ボーグ「凄い土煙だ」

 

爆発により舞い上がった土が辺りを霧のように覆っている。風が吹いているため、直ぐに土煙は晴れた。

 

ボーグ「こ……これは⁉︎」

 

彼の目の前の草原には、砲撃によって破壊、又は炎上する友軍の戦車と装甲車、トラックがあった。

 

ボーグ「誰か……誰か生存者は居ないのか!誰か!」

 

ボーグは腹の底から大声を出し、生存者が居ないか呼び掛けてみる。だがそれに答える声は無かった。

 

「閣下!被害報告纏まりました!」

 

ボーグ「読む必要はない………我が師団は7割の戦力を失ってしまったな」

  

今までの損害報告と目の前の現状を照らし合わせて自軍の戦力の7割が失われたのは明白だった。

 

ボーグ「参謀長、残存戦力は?」

 

「シェイファーとハウンドⅡが合計45両、装甲兵員車30両、装輪装甲車10両、戦闘可能な兵員は1500名のみです」

 

ボーグ「だいぶやられたな………相手がムーとはいえ、この戦力でキールセキを攻め落とすのは無理だな……」

 

「では、閣下……」

 

ボーグ「あぁ。撤退しよう」

 

ボーグはアルーまで撤退する決断を下した。命令を聞いた残存部隊は我先にと入り口へ戻ろうとする。

 

ボーグ「ん?」

 

その時、進行方向から聞き覚えのある音が聞こえてきた。

 

ボーグ「あれは!」

 

現れたのは、掃討任務を受けた第1対戦車ヘリコプター隊のコブラだった。

 

ボーグ「対空戦闘!」

 

後退中だった隊は急いで砲や機関銃を上に向けるが、その前にコブラからハイドラ70ロケットが放たれ、車両は次々と撃破されていく。

 

ボーグ「クソ!これでは戻る事も出来ん!」

 

淡々と破壊されていく自軍の戦力にボーグは最早どうしようもないと悟り、重大な決断を下した。

 

ボーグ「降伏だ」

 

「え……降伏でありますか?」

 

ボーグ「そうだ。もうこれ以上、意味の無い戦いをするのは命を無駄にする事に等しい」 

 

ボーグの重苦しい言葉に皆、従うしかなかった。

事前に日本の情報を握っていたボーグは、車内にあった白いシーツを広げ、それを予備アンテナの棒に括りつけて、相手に見えるように大きく振りかざす。

 

その直後、コブラは攻撃を中止した。

 

第4機甲師団の生存者達は皆、手にしていた武器を一ヶ所に集め、整列すると、両手を上げ降伏の意思を示す。

その後、駆けつけた普通科連隊によりボーグ達は捕虜となり、第4機甲師団は壊滅した。

 

 

 

 

 

 

*1
アメリカ側のグラ・バルカスの蔑称

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