戦闘が終結し、基地機能をほぼ失ったバルクルス基地。
夜が明ける頃には第7師団が突入、その日のうちにバルクルス基地は占領された。
「陸将、捕虜の移送終わりました」
爆撃で破壊された基地の滑走路の一角に設けられた指揮所で大内田は戦後処理に追われていた。
大内田「ご苦労。それと、ムーの基地占領維持部隊の方は?」
「今、到着しました」
ふと何処からかディーゼルエンジンの音が聞こえてきた。後片付けをしていた隊員は、基地の正門から入ってきたムー陸軍の姿に釘付けとなっていた。
「スゲェ……動いてる所、初めて見たぞ」
「またエラい骨董品だな」
お椀をひっくり返したしたような形状の砲塔から延びるT字型のマズルブレーキを装着した90㎜口径の砲身に、2メートルを越える全高を持つ、陸上自衛隊の初代主力戦車を勤めた『61式戦車』が黒煙を上げながら基地へと入っていく。
「あんなのまだ残ってたんだな」
「スクラップ置き場にあった奴をレストアしたんだとさ。ムーをグラ・バルカスに対する防波堤にするためとはいえ、思いきったもんだ」
20代や30代の比較的若い隊員達がそんな指摘をする61式戦車の砲塔側面と操縦席がある車体前面にはムー軍の所属を示す国章が大きく描かれている。
「おい、見ろよ。次の骨董品のお出ましだ」
61式戦車に続き、2門の105㎜無反動砲をのせた『60式自走無反動砲』、装甲兵員輸送車の『60式装甲車』、更には『L90高射機関砲』までやって来る。何れも陸上自衛隊で使用され退役して久しいものばかりであり、先の61式と同様にムーの国章が描かれてる。
これらは全て、日本のグラ・バルカスへ対する戦略の一環としてムーに対しての近代兵器研究と言う形で貸与された物ばかりである。
これらの装備は退役から10年以上が経過している装備のみと言う条件で選出された物であり、万が一にグラ・バルカスに鹵獲され解析された場合でも大して脅威にならないという配慮でもある。
また遅れてイギリス陸軍の『センチュリオン Mk.3-13』やアメリカ陸軍の『 M60パットン』、日本陸軍の『七式戦車』も遅れて入ってくる。
「親父世代の自衛隊見てるみたいだな」
「うちの師団長がまだ子供だった頃の光景だぜ」
「まるで動く戦場博物館だなこりゃあ…」
第7師団に所属している若い隊員達は資料や古い映画でしか見た事のない旧式装備が目の前で実働している光景に、ちょっとした興奮を覚えている。
「おっ?どうやらあちらさんも来たみたいだな」
甲高いエンジン音と共に滑走路にアメリカ空軍のマークをつけた戦闘機が着陸していった。
しかしそれらは三沢や岩国のF-22やF/A-18ではなく、F-5EタイガーシャークⅡ、それも単発F404ターボファンエンジンを搭載したタイプだった。
「あれじゃあほぼF-20じゃねぇの?」
「そりゃあエンジンの話だ。アビオニクス当たりは大元のF-5やF-4に近いらしいぜ、まぁそれでも大分いじくり回されてほぼ別物らしいけどな」
F-5E/G タイガーシャークⅡ
所属:アメリカ空軍(新設)
乗員: 1名
全長: 14.17 m
全高: 4.22 m
翼幅: 8.13 m
翼面積: 18.6 ㎡
空虚重量: 5,090 kg
運用時重量: 6,830 kg
最大離陸重量: 11,920 kg (27,500 lb)
動力: F404-GE-100 ターボファンエンジン、76 kN (17,000 lbf) × 1
性能
最大速度: マッハ2以上
戦闘行動半径: 556 km (300 nmi)(Hi-Lo-Hi; 330gal燃料タンク×2基搭載)
フェリー飛行時航続距離: 2,759 km (1,490 nmi)
実用上昇限度: 16,800 m (55,000 ft)
上昇率: 255 m/s (52,800 ft/min)
翼面荷重: 395 kg/m2 (81.0 lb/ft2)
推力重量比: 1.1
アビオニクス: JAN/APQ-159 火器管制レーダー
固定武装: M39A2 20mm リヴォルヴァーカノン×2門 (弾薬 各280発)
ミサイル
空対空ミサイル
AIM-7 スパロー
AIM-9 サイドワインダー
空対地ミサイル
AGM-65 マーベリック
AGM-114 ヘルファイア (対艦用としても使用可能)
空対艦ミサイル
ハープーン
爆弾
無誘導爆弾
Mk.81 250lb爆弾
Mk.82 500lb爆弾
Mk 83 1000lb爆弾
Mk 84 2000lb爆弾
レーザー誘導爆弾
ペイブウェイ
ガンポッド
GPU-5/A - GAU-8の派生型GAU-13/Aを搭載。
何故この機体が開発されるに至ったかはアメリカ空軍創設にまで遡る。
異世界転移後、そして過去のアメリカとの交流を行う中で過去のアメリカ軍は自分達の時代には存在しない「空軍」に目をつけた。
この時代ではまだそういった概念は存在せず、それぞれ陸軍と海軍は基地航空隊を保有していた。
だがそれぞれにあった機体の整備やその為の部品や整備士と何が何やらで混乱する要素ばかりだったのだ。
だがいずれにしろ航空戦力は必要である。
そう考えていた矢先に現れたのが「在日アメリカ空軍」である。
「同じアメリカ軍のなら何か得られるものがある」と考えたアーネスト・キング作戦本部長は同じ陸軍のジョージ・マーシャルと共に各在日米空軍基地を視察すると共にスティーブン空軍中将とも会談を行った。
またスティーブン中将も1940年代のアメリカに空軍の創設には興味を示しており、会談を行った翌年にはホワイトハウスにまで足を運んでルーズベルト大統領に空軍創設のメリットと重要性を熱く語った。
ルーズベルト大統領も以前から話を聞いていた為真摯に受け止め、アメリカ空軍の創設を決意した。
閣議でも満場一致で空軍創設が賛成され、遂に「新たなアメリカ空軍」が産声を上げた。
創設するにあたって、陸軍基地航空隊と海軍基地航空隊を統合しカール・スパーツが初代空軍参謀総長に任命された。
機体は嘉手納航空宇宙博物館に展示されてあったF-20が選抜された。
理由としてはF-4は空自から退役したとはいえ、殆どが海軍艦載航空隊に回された為機体が殆ど無かったのだ。
そこで嘉手納に展示されてあったF-20が選ばれた訳だ。
この機体は『エリア88 連載20周年記念』の一貫で作中でアメリカから3機の内の1機を奇跡的に購入し、主人公が使用した仕様に塗装され嘉手納で1999年から現在に至るまで展示されてあった。
定期的にデモンストレーションで飛行させていた事もあって機体状態もアビオニクスも殆ど問題無く稼働するとあってすんなり決定した。
火器管制システムも日本が帝米英向けに少々グレートダウンした物を制作、ただ兵装に関しては互換性を持たせる為そのまましておくはずだったが対地兵装が少ない事に懸念を示した空軍向けにヘルファイアミサイルが装備できるようにもした。
エンジンに関してはそのままだが、アビオニクスはF-5に近い為F-5E/GタイガーシャークⅡの名が与えられた。
原型機同様に「低コストで優れた性能を発揮する世界最高級の戦闘機」と評される程だった。
「アメリカ空軍まで来たって事は……」
「あぁ…今後はここが我々の拠点になるって訳だな」
次々と着陸していくF-5を見ながら陸自隊員達は口々に言う。
それもそのはずだ。グラ・バルカス帝国の牙は既にこのムー大陸に食い込んでいる。
その牙から兵力という名の毒が徐々に流し込まれている訳だが、そうはさせまいと日本、日本帝国、アメリカ、イギリスが立ち上がりここに集結しつつあるのだ。
「さて…忙しくなるな!」