連合軍による通商破壊作戦が開始されてから3ヵ月が経過した。グラ・バルカス帝国とレイフォル間にある2つの航路は完全に連合軍の独壇場となり、グラ・バルカス帝国の輸送船や貨物船、軍艦はその海域を通り掛かっただけでアメリカ空軍の餌食となり、貴重な物資が漁礁へと変えられていく。
作戦行動に多大な資源や物資を使う軍事面は特に深刻だった。レイフォルに駐留するレイフォル方面軍は空輸によって何とか繋いでいるものの、レイフォルにある滑走路はベガ型双発機や中型輸送機などの運用を前提として整備されているが、空輸では海上輸送に比べて一度に輸送できる物資の量が限られている上に、海上輸送が困難な現状では燃料を確保するのも難しくなっている。
帝都ラグナ
ルークス「何?これ以上輸送ができないだと?」
話を聞いたグラルークスは報告に来た陸軍大臣と海軍大臣に対して顔を顰めて言う。
ルークス「どういう事だ?貴様達は大陸にいる兵士達を見殺しにするというのか⁈」
「い…いえ陛下。決してそのようなつもりはありません」
「我々とて輸送船団を送りたいのは山々です。しかし……」
海軍大臣が言葉を濁そうとするが、陸軍大臣に急かされる形で已む無く言葉を続けた。
「大陸から飛来する連合軍の戦闘機や爆撃機の空襲に遭い、その都度壊滅に陥っているのです……」
「輸送機などを全力投入してどうにか持ち堪えておりますが、それでも一度に輸送できる量はたかが知れており、海上輸送に比べると遥かに効率が悪いのです」
ルークス「うむ……」
ここまで言われてはルークスと言えど反論はできない。
やはり堅牢な海軍戦力の投入が急務であると彼は考えた。
ルークス「海軍大臣、損傷したグレート・アトラスター級の復旧には後どの程度掛かる?」
「はっ。長く見積もってもあと1〜2ヶ月はかかります」
ルークス「何故それ程までに掛かるのだ?修復するだけであれば充分だろう?」
「はい。実は申し遅れましたがグレート・アトラスター及びグレート・ラニアケア両艦には修復と同時に改修を施しております」
ルークス「改装?具体的にはどのようなものなのだ?」
ルークスは少し身を乗り出して大臣の話を聞こうとする。
「はい。以前監査軍が開発に成功した51cm砲を本格的に量産を開始し、両艦への装備を急いでおります」
ルークス「ほぉ……それは素晴らしい!」
「また敵の誘導ロケット弾がどの程度のもののが分かりかねますので、対空火器の強化にも全力を注いでおります」
ルークス「なるほど…それなら納得だ。だがレイフォルへの輸送船団の護衛にはグレート・アトラスター級が必要だ、なんとしても改装を終えるのだ。遅くても1ヶ月半だ」
「ははっ!」
続けて今度は陸軍大臣が話し始める。
「陛下、実は私からも一つご報告が」
ルークス「なんだ陸軍大臣よ。申してみよ」
「はい。実は先日兵装開発局から連絡がありまして、陸上戦艦マキシムの試作に成功したとの報告を受けました」
ルークス「何?あれがか⁉︎」
「はい、実際の写真を送られて来ました。こちらを」
そう言って陸軍大臣はルークスに一枚のモノクロ写真を渡した。
写真には巨大な車体に戦艦の砲塔を載せたような見た目の戦車が写し出されおり、それはまさにかつてドイツ陸軍が計画し幻に終わった「陸上戦艦ラーテ」に酷似していた。
ルークス「おぉ…!遂にか!」
「現状我々としては苦境に立たされているレイフォル方面軍への輸送を計画しております。台数は凡そ3台、既に2台目が完成間近であり、輸送方法に関しては必要な部品を分解して空輸しようと考えております」
ルークス「しかし…輸送機が重さに耐えられるのか?」
「新型の大型輸送機であれば問題ありません。レイフォル方面軍にも滑走路の改装を急がせておりますので問題ありません」
ルークス「うむ…分かった。大臣達よ、今は苦境に立たされているが今は耐えよと全軍に伝えよ。1ヶ月後には敵に一泡吹かせられるともな」
「「ははッ‼︎」」
一方で、先述の通り改装・修復は受けていたグレート・アトラスター級2隻はすっかり綺麗になっており艤装作業に入っていた。
技術者達の間にも気合いが入っているのは当然だ。何せ帝国の威信をかけて建造した戦艦なのだから、復讐心というか根性に近しいものが彼らの中にはあった。
「大分綺麗になったな…」
「はい!半年前とは大違いですね…」
熟練の作業者が新米とグレート・アトラスターを見ながら話していた。
「でも職長。グレート・アトラスターは以前搭載していた46cm砲でも充分強いのに、何故新型の51cm砲をわざわざ…?」
「そりゃ当然だろう!半年前にボコボコにしてくれた敵に一泡吹かせる為に決まってるだろう!」
「でもあんなボロボロになる程強い敵だなんて……想像できません…」
「まぁお前の言いたい気持ちは分かるが、我々第八帝国は無敵だ!どんな世界であろうとな。よしっ!休憩は終わりだ、仕事に戻るぞ」
「はい!」
そんな工廠も含む海軍基地の一角の建物の中に、グレート・アトラスターの艦長であるラクスタルの姿があった。
彼はここのところ自室に引き篭もり、必要な時以外は部屋の外に出ない程に何かをしていた。
それというのも、ムーに潜り込んでいた知り合いのスパイから送られてきた軍用雑誌を読み漁っていたのだ。
それは日本国の書店やコンビニの店頭でも置かれいるような当たり前のものだったが、それをムーにも輸出されており入手したそれを彼はここ数日読んでいたのだ。
ラクスタル「これは………‼︎」
彼が見ていたページには日本における自衛隊の創設に至るまでの歴史が書かれていた。
ラクスタル「日本もかつて世界と戦争をしていたのか……」
次のページを捲ると終戦間際から90年台にかけてページにやってきたが、そのある部分を見て彼は驚いた。
ラクスタル「こっ…これは…グレート・アトラスターそのものではないか⁉︎それにあの巨大戦艦も…‼︎」
彼が目にしたのは終戦直後にアメリカ軍によって空撮や甲板上から撮影された大和と紀伊・尾張の写真があった。
ラクスタル「なるほど……日本ではヤマト、キイ、オワリと呼ばれているのか。ヤマトは我々と同じ46cm砲を……キイとオワリには……やはり51cm砲を……か」
そして北日本の建国とその後の幾多もの紛争や戦争を年表で読み進める内に彼はある事に気がつく。
ラクスタル「いや待てよ……日本帝国も日本と同じ名前のヤマトを持っていた筈だよな…?」
そう言いながら重ねられた軍事雑誌を漁ってその中の一冊を開いた。
ラクスタル「あった…これだ!……ッ⁉︎」
確かにそこには日本と同じ大和が写っていたが、その下の記事に信じられない一文を見つけた。
ラクスタル「
その瞬間彼の頭の中に1本の筋が見えた。
ラクスタル「では日本帝国は我々と同じ技術力を有している、それはアメリカや大英帝国も同じだろう……だが…この文章が正しければ日本国は日本帝国の未来の姿……つまり………」
そうして彼は遂に答えに辿り着くのだった。
ラクスタル「日本は遥か先の未来の技術を有しているというのか……」
それを知った彼は愕然とした。
ラクスタル「日本は今アメリカと大英帝国て日本帝国と同盟関係にある……つまり日本から技術を分け与えられて強化させられているのは当然……終わった……」
しかし今更気づいた所で結果は変わらないと分かっていた。だがこの事実を誰にも伝えない訳にはいかないと気を取りなおす。
ラクスタル「誰なら信じてくれる……?ミレケネス長官……いやあの人は知ったところで数で押し切ればいいとかいう筈だ……」
そうしてしばらく考えた末、カルトアルパスで共に戦ったカイザルに行きつく。
ラクスタル「……カイザル長官しかないな……」
ラクスタルは帽子を被って、数日ぶりに外出しカイザルのいるラグナを目指すのだった。
バルクルス米空軍基地
かつてグラバルカス帝国軍が陣取っていたここは既に連合軍の手が入り、すっかりアメリカ空軍向けの基地に改装されていた。
日本式の管制塔に滑走路や格納庫、建物や施設。
そして対空用には自衛隊ではお払い箱になった35mm2連装高射機関砲 L-90や廃止決定と思いきや20世紀国に輸出されたホークMIM-23、ナイキ・ハーキュリーズが大空に睨みを利かせていた。
「それにしても我々も大分変わりましたな」
「あぁ、ついこの間までターボプロップやら高射砲を持ってたのが嘘みたいだな」
二人の熟練パイロット達が煙草を吸いながら基地を眺めていう。
「さてと…それじゃあ例の新型ってのを見てやろうじゃないか」
「賛成!」
灰皿に煙草を捨てて新型機達が待つ格納庫へと向かうのだった。
「フュ〜」
「ほぉーコイツは中々イカすな」
二人の目の前には迷彩塗装を施されたF/B-105 サンダーチーフMk.Ⅱがズラリと並んでいた。
F/B-105 サンダーチーフMk.Ⅱ
乗員: 1名
全長: 19.63 m
全高: 5.99 m
翼幅: 10.65 m
最高速度: マッハ2.08
武装
固定武装:M61 20mmガトリング砲 × 1 ,(装弾数1028発)
爆弾: 5基のパイロンに14,000 lb (6,700 kg)の通常爆弾を装備可。
ミサイル:
AIM-9 サイドワインダー 空対空ミサイル
AGM-12 ブルパップ 空対地ミサイル
AGM-45 シュライク 対レーダーミサイル
AGM-78 スタンダードARM 対レーダーミサイルなど
概要: 北方在日米空軍基地の倉庫で埃を被っていた機体を日本がレストアすると同時に改良し、20世紀アメリカ合衆国で製造された機体。
日本での改良によって後続距離や機動性等も大幅にパワーアップしてある。
「こいつが待ちに待ったジェットボンバーか…!」
「でも実際は
「だとしても爆撃機に変わりはねぇ‼︎これでグッズの野郎共に地獄を見せてやるぜ‼︎」
意気込みを見せていると甲高い轟音と共に外の滑走路に大型のジェット機が着陸しようとしていた。
「あれは?」
「あぁ、日本帝国が新しく導入した大型爆撃機らしいぜ。何でも偵察も兼ねられるんだとさ」
「fo!やるじゃねえか」
大型戦闘爆撃機 麟鳳
外観:F-111 アードヴァーク
乗員:2名(操縦士1名 爆撃手1名)
全長:22.40 m
全幅
後退角16度:19.20 m
後退角72.5度:9.74 m
全高:5.22 m
最大速度:マッハ3.1
武装
固定武装:必要に応じてM61A1バルカン×1(2,084発)
兵装:11,340 kgまで搭載可能。
・航空爆弾多数(クラスター爆弾、通常爆弾、バンカーバスター等)
・AIM-9 サイドワインダー×4
・ハープーン×4
・ヘルファイヤミサイル×4
日本帝国陸軍が日本との共同で開発した新型爆撃機。
F-111アードヴァークをそのまま再現したが、それは見た目だけの話で中身は大分いじられており、最大速度が原型機よりUPしてるのが特徴的である。
偵察任務もこなせるようにしてあり、既に何度もグラ・バルカスの輸送船団を発見、通報するという役目を果たしている。
「大分日本も頼もしくなってきたな…」
「あぁ。それにしてもグッズの奴らまだ懲りてねぇのか?」
「らしいぜ。輸送船団が頻繁に来すぎて殲滅しきれてねぇみたいだしよ」
「連中正気かよ…?」