自由連合召喚   作:短号司令官

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第9話 オペレーション:オリンピック

 

中央歴1643年9月27日

 

日本国首都:東京都

 

藤堂「……これは本当なんだな。東郷幕僚長」

 

藤堂は現統合幕僚長を務める東郷*1から報告を受けていた。

 

東郷「はい。公安調査情報庁(トウキョウ・フーチ)からの情報によりますと直近1ヶ月から2ヶ月の間に敵は何かしら大きな動きを見せると」

 

藤堂「……」

 

机に頬杖をついて考えた後、藤堂は口を開いた。

 

藤堂「この事は近衛首相やルーズベルト氏、チャーチル氏は?」

 

東郷「既に御三方には連合軍情報部から連絡が回ってる筈です。オーストラリア政府も既に」

 

藤堂「なら話は早い。在ムー連合軍に作戦立案を」

 

東郷「了解」

 

 

 

 


 

 

 

 

 

同年10月1日

 

 

ムー国首都オタハイトの中央官庁街内にある、国防省庁舎の地下1階には大規模な軍事作戦で統括軍全体を指揮する、統合作戦司令室がある。

司令室には幹部が作戦指揮で使用する円形の巨大テーブルがあり各部署への直通電話が数十台が設置され、日本から導入したサーバーに直結したパソコンが並べられ、更には日本の自衛隊とリンクした戦術通信ネットワークシステムが整備された事により帝米英は近代戦にも対応できるようになっている。

現在はグラ・バルカス帝国への大反抗作戦に参加する第2文明圏各国から派遣された各国の軍の指揮官が詰めており、この日は反抗作戦に向けての最終会議が行われていた。

 

 

「…………以上をもちまして我が軍の現状について報告とさせて頂きます」

 

 

 

グラ・バルカス帝国の第2文明圏からの完全排除を目的とした大反抗作戦に向けて結成された『自由連合軍』に参加しているオーストラリア陸軍司令官からの報告が終わる。

既に国連軍は作戦に向けての準備をほぼ完了しており、後は作戦開始日であるXデーを決め、それに合わせて当初の作戦通りに軍を展開させるだけである。

 

「それでは作戦開始日について資料を配布します」

 

各軍司令官に作戦資料が入ったA4サイズの封筒が配られる。封筒には国連軍のマークである『UNF』の文字が印刷されている。

それを受け取った各軍司令官達は封を切り、中に入っていた資料に目を通す。

 

「作戦開始日は…………11月1日か」

 

資料には作戦開始日が11月1日午前0時0分であると記されていた。

 

「了解した。では我々はこの作戦指示書通りに動きましょう」

 

「我々も了解した」

 

「我が軍も命を賭して尽くしましょう!」

 

作戦開始日が決定され、既にムー入りを果たしていた各国の軍は作戦開始日に向けての準備に入った。

第1装甲独立連隊、帝国陸軍、アメリカ陸軍、英陸軍、豪陸軍は本格的に行動を開始。

航空戦力の中核である航空自衛隊、新アメリカ空軍、イギリス空軍、陸海軍航空隊もオタハイトとマイカルの空港に設置された臨時基地から最前線基地となるエヌビア基地へ向けて飛び立っていく。

 

海上戦力は海上自衛隊から二個任務機動群、帝国海軍第一・第二機動艦隊、米二個機動艦隊、英機動艦隊、豪第一艦隊が参戦する。

 

流石にこれ程の軍事力の動きを当然グラ・バルカスも察知しており、第2文明圏による反抗作戦が近いと知った帝国は直ぐに対策を考え、持てる戦力のその全てを投入せんとしていた。

連日のように大量の輸送船団が送られ、米空軍が喰い止めようとするも半分は到着を許す程に輸送量も増えていた。

 

戦力はまさに五分五分であった。

 

 

 

 

 

 

そして運命の反抗作戦開始日の前日、中央歴1643年10月31日。

 

 

 

国連軍地上部隊の主力が置かれたバルクルス基地から、日本陸軍、陸上自衛隊、合衆国陸軍、英陸軍、豪陸軍が作戦第1段階であるヒノマワリ王国の首都奪還作戦『オリンピック作戦』の実行に向け、ヒノマワリ王国首都ハルナガ京へ向けて出撃していく。

 

 

「間も無く作戦開始時刻です」

 

基地内に設置された前線指揮所に詰めていた大内田、パットン、山下、モントゴメリー、ハーレイらは腕時計で時間を確認する。

 

 

大内田「今頃我々の精鋭とそちらの空軍が到達している頃ですね」

 

パットン「えぇ。きっと彼等ならやってくれますよ」

 

山下「成果を期待しましょう」

  

大内田とパットン、山下は腕時計で時間を確認する。

 

その頃、グラ・バルカスの事実上の実効支配を受けているヒノマワリ王国首都ハルナガ京の南方上空を、暗闇に紛れて多数の精密誘導爆弾を備えた3機の麟鳳、10機のF/B-105サンダーチーフMk.Ⅱがの飛行編隊が飛行していた。

先行しているF/B-105にはこの世界では初となる敵防空網制圧(SEAD)任務が与えられており、その主翼下にはAGM-45 シュライク対レーダーミサイルが装備されている。

このミサイルは敵のレーダーが放つ捜索・追跡用電波を発射母機が受信し、その電波情報をミサイルへとインプットさせてから発射すれば後はミサイルが電波の発信源に向けて飛んで行くという仕組みである。

 

 

本来なら電子戦機による電波妨害などの支援下で攻撃を行うのだが、既にハルナガ京に設置されているグラ・バルカスのレーダーサイトやレーダー・通信状況に関する情報は事前にE5Bによる情報収集活動で敵レーダーの探知範囲は狭く、ミサイルによるアウトレンジ攻撃のみでも目標達成可能と判断されたため、電波妨害などの支援は行われていない。

 

『マスター1、Fox-1 Fire!』

 

目標がシュライクの射程距離内に入ると10機のF/B-105からAGM45が放たれた。

ロケットが作動したミサイル本体は、ハルナガ京がある方向へ向けて飛び去っていく。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

ヒノマワリ王国首都ハルナガ京

 

 

地理的にレイフォルに隣接するこの国は早くからグラ・バルカスによる支配を受けており、ハルナガ京には帝国の正統府が置かれており、陸軍1個大隊が駐留している。

 

以前までは輸送船団が米空軍の餌食になっていたが、最近では数に物を言わせて輸送した甲斐もあり物資も大分改善されるようになっていた。

 

「おぉ…久しぶりのご馳走だ…!」

 

正統府の最高責任者である外務省の『オール・ブーツ』は、目を輝かせて言う。

以前なら食料事情が逼迫しているせいで貧相になり固いパンが1個と野菜が少々しかなく飲み物も水のみという有り様だったが、ここ数日は徐々に改善されるようにもなり目の前にはステーキセットがワインとパンと共に並べられていた。

 

ブーツ「うん……美味い…!」

 

久しぶりのご馳走に舌鼓も打ちつつ、外の景色に目をやる。

この間まで燃料不足でレーダーサイト以外は灯りも灯らない真っ暗闇だったが、今では街にも灯りが灯り久しぶりに活気が戻っている。

 

静かで空気が澄んでいる以外に何もないハルナガ京に、何処からか音が聞こえてくる。

 

ブーツ「雷か?」

 

不思議思った彼は席を立って窓の方に近寄ってみる。ゴォォと言う音は段々近付いてきており、南から聞こえてくるのが分かる。

 

ブーツ「何だ?」

 

その直後、ハルナガ京に爆音が響き渡った。

 

ブーツ「うぉっ!何が起きたんだ……⁉︎」

 

「主任!」

 

驚く彼の元へ陸軍の連絡兵が慌てた様子でやって来た。

 

「敵の来襲です!」

 

ブーツ「来襲だと⁉︎本当か?」

 

「はい!レーダーと通信塔が破壊されました!至急地下室へ避難を!」

 

ブーツ「分かった…直ぐに全部隊に正統府を守るように指示を出せ!」

 

「はっ!」

 

連絡兵に促されオール・ブーツは正統府庁舎の地下に作られた地下道を通って、飛行場近くにある地下司令室へと避難した。

 

 

 

ハルナガ京に設置されていたレーダーサイトと通信塔を破壊したAGM-45は一瞬で駐留しているグラ・バルカス帝国軍部隊の目と耳を奪った。

混乱に陥る陸軍部隊は次なる敵襲に備えて部隊配備を急ぐ。

 

そんな彼らに構う事なく、次なる一手が加えられようとしていた。

 

『全機、爆撃用意……投下っ‼︎』

 

対レーダーミサイルを撃ち終えたサンダーチーフに変わり、爆装した3機の麟鳳からレーザー誘導爆弾が投下される。

胴体底部に新しく設置されたセンサーポッドから放たれるレーザー光線により対空陣地に向けて誘導されていく誘導爆弾は、正確に地上目標へと降り注ぐ。

 

 

「第1から第20までの対空砲は全て沈黙!」

 

「兵舎横の弾薬庫と車両格納庫も破壊されました!」

 

 

次々と破壊されていく対空砲陣地、弾薬庫に兵舎、ハルナガ京に爆発による閃光が煌めいて衝撃波が伝播する中、地下司令室に籠っているオール・ブーツは恐怖に震えていた。

 

 

ブーツ「どうする?逃げるか…………でもどうやって…」

 

 

彼は最早、此処から逃げる方法しか考えていなかった。

 

ブーツ「そうだ!飛行場にまだ輸送機があった筈だ!」

 

彼は思い出した。

ハルナガ京に作られた飛行場には昨日到着したばかりの輸送機が残されているのを思い出した。

 

ブーツ「直ぐに輸送機の準備を……」

 

その時、地下司令室に途轍もない衝撃が走る。

 

「あぁっ!格納庫と滑走路がやられました!」

 

地上監視用の潜望鏡を覗いていた帝国兵が叫ぶ。

 

ブーツ「何だと⁉︎輸送機は……⁈」

 

「恐らく………破壊されました」

 

唯一の脱出手段を絶たれた彼は床に膝から崩れ落ちた。

 

麟鳳による空爆は続き、飛行場と弾薬庫、兵舎を無力化した3機は搭載していた全ての爆弾を使い果たし身軽になると、高度を下げて戦果確認を行う。

 

『こちら空爆隊、準備は終わった、何時でも上がってきてくれ』

 

爆撃を終えたアタック隊は無線で作戦開始を意味する内容文を発信した。

 

『了解。これよりそちらへパーティーに行く』

 

オリンピック作戦の本番となる次の一手が打たれようとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

*1
統一戦争時のやまと艦長

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