自由連合召喚   作:短号司令官

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第10話 ハルナガ京攻略 前編

 

ハルナガ京の東にあるハルダール川東岸に空挺降下、展開していた陸自空挺普通科大隊は、予め用意していた91式戦車橋を使い、対岸へ渡っていた。

 

川幅15メートルあるハルダール川は91式戦車橋にとっては何の支障もなく橋を架けられる長さだったため、スムーズに設置が終わり、その上を車両が次々と渡り対岸へ展開する。

 

「1佐、間も無く全部隊の渡河完了します」

 

「よし。渡河完了と共に東門へ前進するぞ」

 

82式指揮通信車から空挺普通科大隊の指揮をとる『百田雄一』1佐は部隊の渡河を見守りながら指揮を執り続ける。

 

百田『車両前進、前へ!』

 

30分掛けて渡河が終わった普通科大隊は、ハルナガ京東門へ向けて移動を開始した。

彼等の上空を米陸軍のヒューイコブラが大隊に先だって東門に向かっていく。

 

 

 

『ようやく我々にも回ってきたアタッカーヘリだが、連中(自衛隊)みたいに上手く使えるのか?』

 

 

攻撃隊を指揮するアパッチに乗り込むスティーヴは機内通信用無線越しにそう言う。

前席に座っているバーンズは火器管制装置のテストをしながら答える。 

 

バーンズ『確かに訓練と実戦は違うって散々言われてきたからな、新品をいきなり堕とすなんてことするなよ?お前と心中はごめんだぜ』

 

スティーヴ『冗談キツイぜ、バーンズ』

 

装備されている各種センサーは新月の夜でもパイロットに有効な情報を提供し、パイロットのヘルメットに装着されている片眼式の小型ディスプレイIHADSには、機首のセンサーカメラと連動し夜間の視界を写し出す。

緑一色に見える景色の中で地平線の向こうに、一際大きい高く横に長い壁のような物が見えてきた。

 

スティーブ『そろそろだな。全機、攻撃態勢!』

 

スティーヴは無線で全機に攻撃態勢の指示を送る。攻撃隊はその場で停止しホバリングに入った。

攻撃隊の後方に控えていた陸自のOH-1が強行偵察のためホバリングで攻撃待機をしていた攻撃隊を追い越して東門へ向けて突き進む。

 

 

 

 

「前方より敵機接近!」

 

東門にて待機していたシーン部隊は高速で接近してくる2機のOH-1を確認し、軽機関銃と重機関銃、そして25ミリ3連装機関砲を構える。

 

シーン「早いな。奴らの回転翼機は速度と機動力に優れていると聞く。恐らく普通に撃っても当たらんだろう」

 

「ではどう対処しますか?」

 

シーン「普通に撃って当たらんのなら、無理に当てる必要はない。弾幕射撃で開口を作って誘い込め」

 

「了解」

 

シーンは事前に連合軍のヘリコプターに関する情報を得ていたため、普通に撃っても当たらないと思い弾幕射撃で開口を作って、誘い込んだ所を精密射撃で撃破しようと考えている。

 

 

 

シーン「射撃用意ッ‼︎」

 

シーンの合図で部隊の兵士達は機関砲の引き金に指と足を掛ける。

 

「う……」

 

撃て!と言おうとした瞬間、2機のOH-1は突然その場から一気に上昇し、機関砲と機銃の射角外に出た

 

シーン「読んでいたか⁉︎」

 

流石のシーンもOH-1の動きに驚いた。

戦闘機にも引けをとらない上昇力に、事前情報以上の能力を持っていたのかと悟った。

上昇を掛けたOH-1は前傾姿勢の状態で城壁へ接近し、そのまま左右に1機ずつ分かれて、これでもかと見せつけるように独特なローター音を響かせながら機首を前に向けたまま壁に沿って横滑りさせる。

 

シーン「横に飛ぶのか⁈しかも機首を前に向けたままだと⁉︎」

 

ヘリコプターの構造を知らないシーン部隊はOH-1の圧倒的な機動性に驚愕する。日本の優れた航空技術の粋を集めて開発されたOH-1の機動性は通常のヘリコプターとは一線を画している。

 

シーン「撃て!射撃開始!」

 

シーン部隊の兵士達はOH-1に向けて射撃するが、滑らかに、そして素早く飛行するOH-1を捉えられず当たらなかった。

 

「何て動きだ!!横に滑ってやがる!」

 

「クソォォ!当たれぇぇぇぇ!」

 

シーン部隊に所属する兵士は皆、厳しい選抜訓練を合格したエリートな屈強者ばかりが揃えられており、射撃技術も他の陸軍部隊よりも抜きん出ている。しかしそんな彼らを以てしてもOH-1に銃弾を当てるのは非常に困難だった。

 

シーン「えぇい!当たれぇい!」

 

 

シーンも軽機関銃を手にしてOH-1に攻撃を仕掛けるが、彼を以てしても当たる事は無かった。

その直後、城壁に爆音と衝撃波が伝播した。

 

シーン「何だ⁉︎」

 

振り返ると、機関砲陣地が次々と爆発に見舞われ機関砲ごと兵士達が吹き飛ばされていく。

 

 

シーン「あれは⁉︎」 

 

直前まで彼はOH-1に気を取られて気がついてなかったが、城壁の正面から少し離れた位置にOH-1とは別のヘリコプターが空中でホバリングしているのが見えた。

 

 

シーン「謀られた……あの2機は囮か!」

 

OH-1は城壁に対空火器が揃えられている事とその位置を攻撃隊に送り続けており、その情報を元にコブラのTOWミサイルによる精密攻撃が行われていたのであった。

 

『Fire!』

 

機関砲の射程距離外からコブラの左右にあるスタブウィングから有線で繋がれたTOWミサイルがガンナーの誘導により、城壁上に設置されていた対空機関砲陣地を正確に捉え次々と無力化していく。

 

シーン「こちらが不利か…攻撃中止!これより王城と正統府へ向けて後退する!」

 

「了解!各員、後退!」

 

流石に特殊部隊なだけあって、頭の切り替えは早い。シーン部隊は直ぐに射撃を止め足早に城壁から降り、王城と正統府庁舎へ向けて後退を開始した。

 

『敵部隊後退した模様』

 

OH-1からの情報にスティーヴは敵の動きに違和感を感じた。

 

スティーヴ『敵は後退したか。奴さん達、今までの敵とは違って引き際を分かってるな』

 

バーンズ『いや、持久戦に持ち込む気かもしれねぇぞ?』

 

スティーヴ『奴さん達も必死なんだろう。だが此処で後退されたら後々面倒だ。追撃する!』

 

バーンズ『OK!』

 

 

シーン部隊の動きから練度の高い部隊で、地の利がある彼等が優位になってしまうと判断し追撃を指示した。攻撃隊はその場から一気に前進を開始する。

城壁を通過した攻撃隊はそのままハルナガ京へと入り、後退していくシーン部隊の追尾を開始した。

 

『目標発見!』

 

後退するシーン部隊をOH-1が追尾していたため、攻撃機隊は彼らを捕捉する。

 

『射撃開始!』

 

アパッチとコブラから機関砲による攻撃が開始された。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

攻撃隊がハルナガ京に突入した頃、一個大隊が16式機動戦闘車を先頭にして東門を突破しハルナガ京に向けて移動していた。

 

「敵影なし!」 

 

先行しているヘリ部隊からの報告で東門付近に敵の姿は確認されていないので、部隊は上空から援護を受けつつハルナガ京へ突入した。

 

「さて、派手に動くとするか。前進!」

 

大隊は空挺本部中隊の作戦行動援護のため敵の注意を引き付けるべく、ハルナガ京の東エリアを中心に上空を飛行しているヘリ部隊からの誘導を元に、大隊は飛行場と正統府へ向けて移動を開始する。

 

『敵襲!』

 

その直後、周囲の家屋に隠れていたシーン部隊が重機関銃と軽機関銃を撃ち込んできた。

 

『止まるな!進め!』

 

車列は速度を維持しつつ、応戦しながら進み続ける。

16式機動戦闘車は敵が立て籠っている建物に向けて戦車砲で榴弾を撃ち込み、96式装輪装甲車、軽装甲機動車などの武装車両も機銃掃射をしながら敵を排除していく。

進路上にある建物へ対しては上空援護のコブラとアパッチが機銃掃射を行い、脅威を確実に取り除く。

 

 

 

シーン「ぬう……敵の進撃速度が早すぎる」

 

「やはりあの回転翼機が厄介ですね」

 

その様子を見ていたシーンはヘリ部隊を脅威と認識、直ぐに次の手を考え付いた。

 

 

シーン「例の新兵器の用意は?」

 

「何時でも」

 

シーン「よし、信号弾を撃て!」

 

ハルナガ京に信号弾が2発上がった。

それを確認していた、街中のシーン部隊の兵士達は木箱の中から新兵器である新兵器である細長い筒にトリガーとグリップ、前側に四角い盾が取り付けられたパンツァーシュレクに酷似した携帯式対戦車砲の発射機と砲弾を取り出し、後部から砲弾を装填する。 

 

シーン「来たぞ!」

 

丁度、車列の前方の安全確保のために速度を落として地上目標を捜索していた1機のアパッチが彼等の頭上にやって来た。

 

シーン「今だ!撃て!」

 

発射機を携えていた一人の兵士が建物から飛び出すと、真上のアパッチに向かってランチャーを構える。

 

『ジェロニモ6、後方下から狙われてるぞ!』

 

スティーヴのジェロニモ1からの警告を受け、狙われていた陸自のアパッチ『ジェロニモ6』は機体を振って避けようとしたが、一瞬早く発射機から砲弾が放たれ尾部のテイルロータに直撃した。

 

『やられた!』

 

爆発でテイルロータを吹き飛ばされたジェロニモ6はメインローターからのトルクを打ち消す事が出来ず、機体は反時計回りに激しく回転する。

 

 

『ジェロニモ6、被弾した!被弾した!』

 

パイロットは無線でそう叫びながら、墜落時に機体が爆発炎上しないようエンジンを停止させ、燃料タンクとの接続を解除した。

 

『ジェロニモ6墜落する!墜落する!』

 

車列から西へ向けて墜落していくジェロニモ6。

地面が近づいた時、2階建ての住居の屋根に機体底部が接触し屋根の一部分を吹き飛ばす。

  

『衝撃に備え!』

 

機体は地面に滑り込むように激突し、その衝撃で機体は大きくバウンドし土煙をあげながら地面を滑走、目の前に見える大きな屋敷の門扉を回転していたメインローターのブレードが吹き飛ばし、機体は門に突っ込み挟まれ停止した。

 

スティーヴ『アパッチダウン!アパッチダウン!ジェロニモ6墜落!』

 

バーンズ『shit!ふざけやがってッ‼︎』

 

 

ジェロニモ6墜落の報告はリアルタイムでバルクルス基地へともたらされた。

 

「何て事だ……」

 

指揮所内に設置されたモニターに、ハルナガ京上空で旋回待機しているストライクイーグルのセンサーポッドからのカメラ映像が写し出される。映像には西エリアの屋敷の門に突っ込んだ状態のジェロニモ6の姿がある。

 

「直ぐにジェロニモ6の救出部隊を編成!直ぐに敵がやって来るぞ!」

 

「了解!」

 

直ぐにジェロニモ6のパイロット救出のための救出部隊編成が行われる。

不測の事態に備えて、ヘリ部隊には予め数機のヘリと航空自衛隊の航空救難団が待機しており、直ぐに指揮所から命令が伝達される。

 

「皆聞け、陸自のアパッチが1機撃墜された!」

 

「撃墜ッ⁉︎」

 

「マジっすか………」

 

「あぁ。場所は敵地の真っ只中だ。作戦本部からパイロット救出の命令を受けた!直ぐに行くぞ!」

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

航空救難団救難隊は直ちに出動態勢に入り、MV-22Jで編成されたオスプレイ部隊が飛び立つ。

援護のため普通科大隊からも3個分隊がジェロニモ6の墜落地点へと向かう事となった。

 

スティーヴ「スター41、直ちに現場に急行。状況を知らせ」

 

『スター41了解!』

 

墜落現場確認のため百田は指揮下にある1機のコブラを墜落地点に向かわせた。

 

 

 

その頃

 

「いッ……つ…」

 

墜落したジェロニモ6の操縦席に座っていた機長兼操縦士の『国場孝徳』3尉は体に走る激痛から目を覚ました。

 

国場「生きてるのか………」

 

目を開けると直ぐに前席のガンナーに声を掛ける。

 

「早田!聞こえるか?」

 

「えぇ……聞こえますよ。3尉も気がついたみたいですね」 

 

ガンナーの『早田信彦』1等陸曹が答える。  

 

国場「怪我は?」

 

早田「俺は両足が動きません。3尉は?」

 

国場「片足の感覚が無い事以外は何ともない。コイツが頑丈で良かった。だがこの様子じゃどっちも動けねぇな。逃げようにもこの足じゃ歩くどころか機体から降りられん」

 

早田「じゃあ助けが来るのを待ちますか?」

 

国場「そうだな。無線は使えるか?生きてればの話だが…」

 

早田「こちらジェロニモ6、ジェロニモ6、送れ」 

 

ヘッドセットからは雑音しか聞こえてこない。

試しに周波数を変えて試すが、やはり雑音しか聞こえてこない。 

 

国場「どっちもお陀仏か。直ぐにとはいかないかもしれんが、今頃救助部隊編成されてる筈だ。まだ希望はある」

 

早田「じゃあ救助部隊が来るまではこのままですか?」

 

国場「そうだな。だが此処は民間人の敷地内だ……しかもヒノマワリの人間が味方とは限らん。もしかしたら敵に通報してるかもな」

 

早田「もし敵に見つかったらどうなると思います?」

 

国場「これだけやらかしたんだ、見当がつかんな」

 

そんな会話をしていると、屋敷の方向から複数の人影がやって来るのが見えた。

 

 

国場「あぁ……早田、9mmを使えるようにしとけ」

 

早田「了解」

 

早田は護身用の9ミリ機関拳銃を取り出し、国場は座席後部に隠してあった64式カービンを取り出して弾倉を確認し装填する。 

 

国場「民間人か?」

 

近づいてきた人影は軍服を着ておらず、銃や刀剣ような武器は持っていなかったため、大村はこの屋敷の住人と認識した。

キャノピー越しに見えた住人達は国場と早田の2人を困惑そうな表情で見ている。

 

早田「どうします?」

  

敵意は無いように見えるが、念のため片手に拳銃を握った状態で彼等に視線を合わせ、もう片方の手で手を軽く振った。

すると、彼等の中から1人だけ身分が高そうな服を着こなした日本人と同じ黒髪黒目の若い女性が出てくると、片手でキャノピーを優しく叩いた。

 

『御貴殿方は日本国の方でしょうか?』

 

女性はそう呼び掛けてきた。

その問いに対して国場は首を一回縦に振って答える。

 

『ご安心ください。私たちは御貴殿方に危害を加える気はございません。私たちは貴国の味方です』

 

その言葉に2人は敵意は無いと判断したが、一応警戒しつつもアパッチのキャノピーを開けた。

 

「お怪我をなさっていますね。直ぐに此処から」

 

すると、彼女の使用人らしき女性達が2人をコックピットから引き出そうとする。

  

早田「痛っ!」

 

「も、申し訳ございません!」 

 

使用人達は早田を慌てて座席に戻す。

 

国場「すいません。彼は両足が折れてるので動けないのです」

 

「そうでしたか。申し訳ございません、直ぐに医者をお呼びしますので」

 

女性は使用人に医者を呼びに行かせる。

国場は使用人達を従える彼女が何者かが気になり、失礼を承知に質問をする。

 

国場「あの…少しお聞きしてもよろしいですか?」

 

「はい?」

 

国場「失礼かもしれませんが、貴女はどちら様でしょうか?」

 

「大変失礼致しました」

 

すると彼女はスカートの両端を指で摘まんで、少し広げると、優雅なお辞儀をしながら自分の素性を名乗る。

 

「私はヒノマワリ王国第3王女、フレイアと申します」

 

優雅なお辞儀でそう名乗った彼女、ヒノマワリ王国の王族でも高い位に立つフレイア。

目の前の女性がまさかのヒノマワリ王国の王族であり、しかも一介の自衛官である自分達の目の前に居る事に国場と早田は驚きを隠せなかった。

 

 

早田「まさか…………」

 

国場「王族………」

 

2人は慌ててフレイアに自衛隊式の敬礼をして返した。

 

フレイア「畏まらなくても大丈夫ですよ。王女と言っても今はその権利はありませんから」

 

早田「どう言う事でしょうか?差し障りが無ければで構わないのですがお教え願いないでしょうか?」

 

フレイア「はい。お二人もご存じの通り、この国はグラ・バルカス帝国の支配によって国王陛下と殿下、そして私を含めた王族は彼等の傀儡となってしまいました。私達は民を守るために彼等から課される不条理な条件を呑まざる得なかったのです。しかし彼等はその国力と圧倒的な武力を盾に我々ヒノマワリ王国は自由を奪われ、抑圧に苦しみました」

 

彼女は涙を浮かべながら一呼吸置いて話を続ける。

 

フレイア「ですが昨年、グラ・バルカス帝国の前線基地として我が国の領内に建設されたバルクルス基地が陥落したとの話がもたらされました。それに関して私たち王族は持てる情報網を動員し、ムー国をはじめとした第2文明圏各国と日本国が大きく関わっている事と同時にグラ・バルカスの支配下に置かれていた第2文明圏各国が彼等からの支配から離れているとも知りました」

 

彼女の話は全て的を得ており、帝国の目を盗んでそこまでの情報を得られるヒノマワリの情報網の深さに2人は感嘆する。

 

 

フレイア「私たち王族の誰かをヒノマワリからムーに亡命させる計画を帝国に知られないように密かに立てました。そして無事に国王陛下と殿下をムーに脱出させる事に成功したのです」

 

彼女の話を聞き早田がある事を思い出した。

 

早田「そう言えばこの作戦にヒノマワリ王国から脱出してきた重要人物の救出って話がありましたけど……」

 

国場と早田は作戦前のブリーフィングで上層部からそう言う話を聞かされて、ヒノマワリから脱出してきた重要人物の正体がこの国の国王だった事を知った。

そして同時に、この作戦でヒノマワリ王国解放と同時に実行される予定であった国内に取り残されている王族の救出作戦で救出目標だったのが彼女だった事も知った。

 

国場「あれ?確か事前の情報では王族は王城に居るって…」

 

フレイア「それは昨日までの情報です。私を含めた姉妹と使用人達は彼等の指示によって昨日、全ての権限を剥奪された上で私の私邸であるこの屋敷に監視付きで事実上の幽閉状態にあったのです」

 

すると、奥からタイミング良く2人の女性が前に出てきた。

 

現れたのはフレイアと背丈も見た目も同じなヒノマワリ王国第2王女である『ソーラ』と、フレイアとソーラの一番上の姉でありヒノマワリ第1王女の『フローミネンス』だった。

 

国場「………まてよ!グラ・バルカスによる監視付きで幽閉されていたなら……」

 

フレイア「ご安心ください。私達を監視していた帝国兵は2名のみで、何れも大村様と清水様が乗っています空飛ぶ乗り物が正門に激突した時に崩れてきた門の瓦礫に……」

 

フレイアが指差した方向を見ると、墜落した時にアパッチのローターブレードで吹き飛ばされた正門屋根の瓦礫の隙間から2本の腕が見えた。

 

早田「心配は無いみたいっすね」 

 

取りあえずは、直ぐに敵に知られる事は無いと安堵する。

 

国場「でもそう喜んではいられませんよ。奴等が俺らを撃墜したのを知ってる筈ですし、監視兵からの報告が無いと知れば」

 

早田「だが救出部隊が近くに来ている気配が無い。助けを呼ぶにも無線が使えない。唯一あるとしたら信号拳銃が1丁と信号弾が2~3発だけだ」

 

清水は機体が墜落した時に味方に墜落地点を知らせるために用意されていた53式信号拳銃と信号弾3発を取り出す。

しかし、信号弾を打ち上げるには味方が近づいてきたタイミングで打ち上げるしか無い。

 

国場「ん?」

 

ふと何処からか聞き覚えのある音が聞こえてきた。風を切るような断続的な音に大村の表情が変わった。

 

フレイア「この音は?」

 

早田「心配ありません。あれは味方が近づいて来ている音です」

 

早田が不安そうにしているフレイア達に心配しないように呼び掛ける。

段々と近づいてくるその音に国場は53式に夜間用の信号弾を装填する。

 

国場「頼む!気付いてくれ!」

 

銃口を空に向けて引き金を引くと、信号弾が打ち上げられ、月夜の空に酸化マグネシウムが放つ強力な光が灯された。

 

早田「どうだ⁈」

 

6秒間発光し続けた光は徐々に小さくなっていき、2人は味方が気付いてくれるように祈った。

 

『bingo!墜落地点を確認した!』

 

 

信号弾光はハルナガ京の西エリアを捜索をしていた1機のコブラが捉えた。

 

『こちらスター41、これより墜落現場に急行する!』

  

墜落地点を確認したコブラは速度を上げ、信号弾が上がった地点に全速力で向かい、フレイアの屋敷の目の前に墜落しているジェロニモ6を確認した。

 

『こちらスター41!ジェロニモ6を確認!』

 

屋敷の前でホバリングするコブラに国場らの表情は一気に明るくなる。コブラが屋敷の真上に到達すると自分達は無事であると示すため手を大きく振った。

 

『パイロット2名の生存確認!民間人数名も確認した!敵意は無い模様!』

 

その報告にバルクルス基地の指揮所内に安堵の空気が漂う。

 

大内田「了解。スター41、現場に着陸しパイロットの現状を確認せよ」

 

『スター41了解』

 

指揮所から命令を受けたコブラはフレイア達の目の前でダウンウォッシュによる強烈な風圧を撒きながらゆっくりと着陸した。

 

 

フレイアの屋敷の庭にエンジンとローターを回転させたまま着陸したコブラからスター41の機長が降りると、拳銃片手にジェロニモ6に駆け寄ってきた。

 

「Hey、無事か⁉︎」

 

早田「あぁ……両足以外は何とも無いさ」

 

「そうか。で、こちらのレディは?」

 

国場「あぁ……ヒノマワリ王国の第1から第3までの王女殿下達だ。今回の作戦で救出予定だった方達だ」

 

国場からその話を聞かされたスター41の機長は驚いた。

 

「What The Fuck⁉︎ 確か王城に居る筈じゃ……」

 

早田「昨日、グラ・バルカスの連中にこの屋敷に幽閉されてたらしいんだ。上はまだこの事を知らない筈だ。直ぐに本部に連絡してくれ」

 

「オーケー、待ってろ」

 

スター41機長は急いでコブラの無線を使い、バルクルス基地へと事の次第を報告した。

 

大内田「何という事だ……」

 

報告を受けた大内田達は予想外の出来事に驚きを隠せないでいた。

 

パットン「だがこれで王族救出の手間が減らす事が出来た。救出部隊はいつ頃現場に到着できる?」

 

「えぇと………現場は城から直線で3キロの地点、救出部隊の現在位置は現場から5キロ地点です」

 

ハーレイ「現場に敵は移動してるか?」

 

「はい。1個小隊50名程が現場の北側から向かってきています」

 

山下「位置は?」

 

「現場から北へ4キロの地点です。徒歩で移動している様なので、現場への到達予想時間は30分と予想されます」

 

モントゴメリー「タスクフォースと団本部第3小隊が現場へ走らせれば何分で到着できる?」

 

「30分程で可能です。航空救難団とほぼ同時に到着できるかと」

 

大内田「分かった。彼等を現任務から解き、直ぐに現場に向かうように指示を出せ!敵が現場にたどり着けばジェロニモ6の乗員と王女達が危険に晒される事になる」

 

「了解!直ちに指示を出します!」

 

団本部第3小隊は待機していた王城近くの広場で本部からの指示を受けた。

 

「了解。全員聞け、本部から作戦変更指示が来た!救出目標は墜落したジェロニモ6の墜落地点近くへ移動していた。これより現場へ急行する!」

 

タスクフォースと団本部第3小隊は広場から離れ、墜落地点へと走り出した。

全員、普段から厳しい訓練を受けているため3キロ程度の距離なら走っても問題はなく、皆汗ひとつかかずダッシュで現場に直行する。

 

その情報はバルクルス基地からスティーヴ経由で墜落地点のスター41へともたらされた。

 

「本部から指示が来た!今、王城近くに展開していたタスクフォースと団本部第3小隊が向かってきているとの事だ」

 

早田「そうか。で、俺達は何をしろと?」

 

「上空からこの屋敷周辺の偵察と救出部隊の誘導しろとの命令が来た。後30分でヘリと増援が到着する。救出部隊が到着後にお前ら2人と王女殿下を回収して離脱する!」

 

国場「分かった!俺から王女殿下に話しておくから、そっちは任務に戻ってくれ」

 

「分かった!また基地で会おうぜ!」

 

そう言い残しスター41の機長は自らの機体へ戻ると、屋敷から飛び立ち周辺の警戒任務に入った。

大村は心配そうな表情を浮かべるフレイア達に件の事を説明する。

 

国場「殿下、味方の救出部隊が向かってきています。到着後、直ぐに此処を脱出します」

 

フレイア「分かりました」

 

「では脱出の準備を始めてください」

 

フレイア「承知しました」

 

そう言うとフレイアは使用人達に脱出準備をさせるように命令し、使用人達は大急ぎで屋敷へと戻っていった。

 

国場「間に合ってくれよ………」

 

思わず64式カービンを握る手に力が籠る。

 

 

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