自由連合召喚   作:短号司令官

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第13話 彼方なる決戦 前編

 

レイフォルより出撃してきた水上特別攻撃隊と上空援護の航空機群への迎撃のため、ムー大陸南方沖に展開していた連合艦隊は北上を開始し、迎撃態勢に入った。

 

海上自衛隊第一任務機動群所属の空母ほうしょう、ひしょうからはFV-2ヴァルキリーを絶え間なく発進させていた。

先発した彼らの目的は上空直衛機と大陸から飛来する護衛戦闘機群の殲滅が主とされている。

 

遅れて日本海軍の白龍、赤龍、昇龍、天龍、甲斐から剣。

 

アメリカ海軍のキティホーク、コンステレーション、ミッドウェイ、コーラル・シーよりA4D/A-4スカイホークが発艦。

 

 

連合艦隊の作戦は航空隊による敵航空戦力の殲滅。空爆による敵艦隊の中小艦艇を排除した後に、きいとその他の主力戦艦群で敵グレードアトラスターを攻撃するという3段構えの作戦である。

 

 

今回初めて実行させるこの戦術は、シミュレーションでは高い確率で成功させる事が可能であるが、実戦となると何が起こるか分からないため、艦隊全体に緊張が走っていた。

 

「いよいよですな」

 

有賀「あぁ…今回の戦闘が今後の優劣を左右する。必ず成功させなければ」

 

きいのCICにあるメインモニターから、各空母より飛び立っていく飛行隊を見つめながら、有賀は作戦が上手く行く事を願いながら、敵戦艦との戦闘に備えて心を落ち着かせる。

 

 

 

「日が暮れたか」

 

グラ・バルカス帝国レイフォル方面軍第9航空団所属の『リースク・トラウト』中尉は愛機のアンタレスの操縦席から西の空に沈んでいく夕日を見ながらそう呟く。

水上特別攻撃隊への戦闘哨戒任務のため艦隊から先行し、数機のアンタレスを率いて周辺の海域を飛行していた。

 

リースク「これじゃ何も見えないな」

 

日が暮れた後の夜間飛行はパイロットには非常にプレッシャーになる。

月明かりや星明かりがあればまだ楽ではあるが、昼間程視界が効かないため敵や味方を視認し辛い。

 

リースク「ん?」

 

ふと前方から光のような点が見えた。

 

リースク「何だ?」

 

光点は徐々に近づいてきており、リースクは本能的にそれを交わそうと操縦桿を左に動かそうした瞬間、目の前から強烈な光と衝撃が走り、次の瞬間には熱と炎が体を包み込んで、彼はこの世から影も形も残さず一瞬で消えてしまった。

 

 

『こちらウィザード03、敵哨戒機を排除』

 

『了解』

 

ほうしょうから飛び立ったヴァルキリーは04式によるロングレンジ攻撃でリースク達を葬った。

彼らはデータリンクでメインディスプレイに投影されるレーダー情報や高度な電子機器のアシストにより夜間でも昼間と変わらない戦闘を繰り広げ、本命である敵航空部隊がE3Bのレーダーに映るのを待つ。

 

『目標捕捉』

 

E3Bのレーダーが敵航空部隊を捕捉しデータリンクでヴァルキリー隊に対して攻撃する目標の分配と攻撃指示が飛ぶ。

 

『ターゲットレーダーインサイト、Fox-1、fire!』

 

 

15機のヴァルキリーから放たれた多数のAIM-120アムラームは闇夜の中を設定された高度をマッハ4の超音速で飛行しており、ヴァルキリーとE3Bのレーダーによる中間誘導によりミサイルは敵が居る方向へ真っ直ぐ飛び続ける。

04式は撃ちっぱなし能力を持つ中距離ミサイルのため、ミサイルを発射した中間まではヴァルキリーがレーダーで誘導し、ミサイルに内蔵されているレーダーが目標を捉えれば後はミサイルが自動で目標に飛んでいくため発射母機はその場から離脱できるのである。

 

 

そんな代物が向かって来ているとは知る由もない水上特別攻撃隊の上空直掩機隊76機は、先行していた哨戒機からの報告が途絶えた事に慌てていた。

 

「哨戒1番機応答せよ!応答せよ!」

 

直掩機隊指揮官の『ウィルキィ・マーズ』中佐は無線機を使って必死に呼び掛けていたが、反応は全く無かった。

 

ウィルキィ「クソ!やっぱりやられたか?」

 

彼は長年の勘から哨戒機が敵の攻撃を受けたのでは無いかと感じた。

 

ウィルキィ「だが敵とは距離がかなり離れてる筈だ………敵はいったいどうやって⁉︎」

 

彼は片手に持っている周辺海域の海図から敵と自軍との距離をある程度は予想できているものの、やはり距離は百キロ以上は離れており、ウィルキィは敵がどうやって哨戒機のパイロットが無線を使う暇も与えず仕留めたのかを考えた。

しかし、ミサイルの存在はおろか概念すら殆ど知られていないグラ・バルカス帝国軍の、しかも一部隊の指揮官が知り得る筈もなかった。

 

ウィルキィ「どんな手を使ったか分からんが、一先ず警戒だけはしておくか」

 

彼は無線で部下達に警戒するよう呼び掛ける。

 

ウィルキィ「指揮官機より全機へ、直ちに警戒態勢をとれ。少しでも異変があれば報告するように」

 

それだけを指示すると、直掩機隊は直下の海上を航行している艦隊を守るように大きく広がって展開する。

 

 

ウィルキィ「さて、敵はどうやってこの包囲網を破るか?」

 

自軍のパイロットの技量の高さと戦術の優秀さに自信を持っているウィルキィは、敵がどうやって挑んでくるか考える。

 

その直後……… 

 

突然、暗闇の空に炎と爆音が響く。

 

次々と爆発していくアンタレスにウィルキィは一瞬だけ動揺する。

 

ウィルキィ「何が起きてる!?」

 

戸惑いつつも取り敢えず操縦桿を激しく操作し機体を大きく動かす。

 

ウィルキィ「状況報告!」

 

『分かりません!味方が次々………ガッ!』

 

『18番機がやられた!』

 

『6番機が落ちた!何が起きて………ガッ!』

 

『こちら7番機被弾した!誰か助けてくれぇぇぇ!!』

 

無線機からは混乱するパイロット達の怒号と悲鳴が聞こえてくるが、状況的に敵の攻撃を受けている事は理解できた。

 

『うわっ!何か槍みたいなのがっ!』

 

無線のスピーカーから聞こえてきた部下の声に、ウィルキィは暗闇の中を敵が紛れ込んできているのかと見回す。

 

ウィルキィ「何だ?」

 

一瞬だけ、凄く小さくではあるが多数の光点のような物が前方に見えた。彼は前方から敵が向かってきていると思い、スロットルレバーに備えられている機関砲の引き金を握り混み、機関砲を発射する。

無論これは当てるつもりで撃ってるのではなく、味方に前方から敵が向かってきていると教えるためである。

 

ウィルキィ「なっ…………」

 

しかしその直後、彼の乗り込むアンタレスに1本の04式が直撃し、機体は彼の体とともに一瞬でバラバラとなった。

 

 

「何が起きている!?」

 

直下の水上特別攻撃隊の艦艇からも上空で次々と爆発が起きているのが確認されており、グレードアトラスターではレーダー員が艦橋に報告を入れていた。

 

『上空の直掩機隊の反応が次々と消失しています!』

 

ラクスタル「敵機か⁉︎」

 

『ディスプレイ上には友軍機以外に高速の飛翔物体が映っています。航空機の速度とは思えません』

 

ラクスタル「あの時と似ている……」

 

ラクスタルは一年程前のカルトアルパスでの戦いでの様子が頭に浮かんだ。しかしだからと言って何かができるわけでもない。

 

カイザル「艦長、取り敢えず対空・対潜警戒を厳に。艦隊戦闘配置」

 

ラクスタル「了解!」

 

カイザルは取り敢えず定石通り、艦隊に戦闘配置を命令し、グレードアトラスター以下の艦艇は空と海中からの攻撃に備えて陣形を変更する。

 

『艦橋、たった今、上空直掩機隊の反応が全て消失しました』

 

ラクスタル「全滅と言う事か?」

 

『恐らくは………』

 

僅かに十数分のうちに空母所属を含む全ての上空直掩機を失った水上特別攻撃隊。空の守りを完全に失った艦隊に衝撃が走る。

 

 

 

 

『敵機殲滅を確認、作戦は第二段階へ移行』

 

E3Bからの通信を聞いた帝米の航空機隊は速度を上げて敵艦隊へとさらに接近していく。目標は空母を含む護衛艦、戦艦は艦隊に華を持たせる為に取っておくのだ。

 

 

 

ラクスタル「司令、我々はこれから」

 

カイザル「……………此処で任務を放棄しては帰れん。戦わずして失われた航空部隊の兵士達の犠牲は無駄にはしない。我々はこのまま目的地に向かう」

 

ラクスタル「…………司令」

 

カイザルの決意は固かった。それと同時に彼は失われた犠牲を無駄にしてまで与えられた任務を放棄するような軍人ではない事は誰もが知っている。

しかも今回の任務は敵の帝国本土侵攻を止めるまでは行かなくても足止めさえ出来れば準備をするための時間が出来、1人でも多くの臣民や皇帝の命が助かる可能性が生まれる事にも繋がる。

それを一番理解しているカイザルの心情を汲んだ艦隊参謀達とその場にいたグレードアトラスター乗員らはそれ以上、彼に異を唱える事はしなかった。

 

ラクスタル「分かりました。我々も男です!司令の後を着いていきます」

 

カイザル「すまん…………諸君」

 

暗闇の中、灯火管制で海上を突き進む水上特別攻撃隊に、次なる試練が待ち受けていた。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

敵水上特別攻撃隊の航空部隊を葬ったヴァルキリーに変わり、対艦装備を満載した帝米航空隊は、次なる攻撃態勢に入る。

 

『standby、ready……fire!』

 

『発射ッ‼︎』

 

飛行隊は主翼下に搭載されていたAGM-65Fマーベリック対艦ミサイルを発射した。放たれたAGM-65Fは赤外線誘導により水上特別攻撃隊へ向かっていく。

 

その頃、戦闘態勢を維持した状態で航行するグレードアトラスターと主力戦艦空母は、重巡軽巡駆逐艦に守られる形で航行している。

  

カイザル「静かだな」

 

先程の上空直掩機隊全滅以降、何も起きず静かな時間が過ぎていく事に誰もが違和感と不安を感じていた。

 

ラクスタル「全くです…………ですが妙な違和感を感じますが」

 

カイザル「私もだ……敵は我々を捉えている筈だが、何故攻撃してこない?」

 

カイザルは80機もの航空機を全滅させる戦力を持ち、既に自分達を捉えている筈の敵が何もしてこないという事に不安を感じると同時に、異様な程の胸騒ぎに見舞われている。

 

カイザル(分からん………敵の意図が分からん……)

 

静かな海上を航行している攻撃隊。

月明かりもなき新月の夜の中、何処からともなく轟音のような音が聞こえてくる、

 

ラクスタル「何だ?この音は」

 

「分かりません………警戒員、状況報告!」

 

「右前方異常な…………ん?」

 

その時、右前方を見張っていた見張り員が海面スレスレを白い炎のような物が高速で飛翔し、こちらへ向かってやって来ているのを発見したも

 

「右前方水面、高速飛翔物体接近!」

 

「左前方水面にも高速飛翔物体接近!」

 

ラクスタル「対空戦闘!」

 

ラクスタルが咄嗟にそう指示するが、その直後、グレードアトラスターの右舷を航行していた駆逐艦から爆発が起きた。

 

「グラフィアス被弾炎上!」

 

「空母タイタン大破炎上中!」

 

護衛の駆逐艦グラフィアスと空母タイタンが突如として爆発炎上し、注意がそちらに向けられる。しかしその直後、グレードアトラスターの左舷と前方を航行していた重巡洋艦エルナトと駆逐艦3隻が立て続けに爆発炎上を起こした。

 

カイザル「何が起きている⁉︎」

 

「先程の高速飛翔物体が友軍艦艇に次々と直撃しています!」

 

ラクスタル「対空戦闘配置は⁉︎」

 

「既に用意完了しています!」

 

ラクスタル「ならば撃て!」

 

攻撃隊は対空戦闘を開始するが、新月のまっ暗闇の中では、AGM-65Fを捉えるのは至難の業であり、たとえターボジェットエンジンから放たれる噴射炎が目視で見えたとして其処に対空砲を撃ち込んだとしても、超音速で飛翔する物体を捕捉するのは不可能であり、しかも対空砲の死角である水面ギリギリを飛行しているため、終末誘導に使われている内蔵のレーダーに捕まった艦艇に成す術は無い。

 

重巡洋艦なら当たり所では一撃で大破させる程の破壊力を持つAGM-65Fが撃ち込まれた駆逐艦は文字通り木っ端微塵に吹き飛ばされ、重巡洋艦のエルナトも駆逐艦のように木っ端微塵に吹き飛びはしなかったが、命中した箇所からの浸水と大火災により戦闘・航行不能となり、退艦命令が下された。

残る護衛の艦艇も次々と大破、又は轟沈へと追い込まれ生き残ったのは駆逐艦ばかりで数える程度にしかいなかった。

生き残った艦は速やかに生存者の救助を開始する。

ラス・アルゲティは見たところ小破で被害を食い止めている。

ベテルギウスは中破かそれ以上の状態で航行しているのがやっとといった状態だった。

 

グレードアトラスターにも数発が直撃したが、大和型と同等の防御力を誇るグレードアトラスターには掠り傷にしかならず、戦闘と航行には支障は無かった

 

ラクスタル「被害報告!」

 

「敵飛翔物体、右舷と左舷舷側に命中するも被害無し!」

 

カイザル「流石はグレードアトラスターだ……びくともしないな」

 

帝国の最新技術を誇るグレードアトラスター級の装甲は通常の戦艦の比ではない。この世界では紀伊型を除けば最高クラスの防御力と攻撃力を誇るグレードアトラスター級は正に超弩級戦艦を名乗るのに相応しい能力を持っている。

 

だが、それを分かっているカイザルの表情は暗かった。

 

カイザル「直掩機隊に続いて主力艦までもが……」

 

グレードアトラスターの護衛の任を担っていた主力艦が10分もしないうちに駆逐艦数隻と戦艦1隻を除いて全滅したのである。

カイザルは2度目の悪夢に対して、顔には出さなかったが内心は言い知れない恐怖感に支配されつつあった。

 

「司令、アルニヤトから発光信号!」

 

カイザル「内容は!」

 

「『本艦は救助のため留まる。貴艦は任務を遂行されたし』です」

 

カイザル「……………………了解と伝えろ」

 

「はい」

 

ラクスタル「本艦はこのまま作戦を続行する!機関最大戦速!」

 

グレードアトラスターは駆逐艦数隻に後を任せ、ラス・アルゲティと共に目的地であるレイフォル南方沖の砲撃地点へと目指す。

 

 

 

「艦長、敵艦隊はグレードアトラスター型とヘラクレス級、駆逐艦数隻を残し全滅しました」

 

きいのCICでほうしょうと早期警戒機からの報告を受ける有賀。その表情には余裕があった。

 

有賀「此処までは作戦通りだ。敵残存艦の動きは?」

 

「駆逐艦1を残し、敵戦艦2隻は増速。レイフォル南方沖海域を目指しています」

 

有賀「やはり敵の目的は海上から地上部隊への艦砲射撃か……あの辺りからなら大和型と長門型の主砲でも内陸の地上部隊へも届くからな」

 

有賀は敵が一心不乱に南下している事から、彼らの目的が海上より連合軍地上部隊への艦砲射撃をしようとしていると推測していた。現に残ったグレードアトラスターとラス・アルゲティは針路を変える事なく、真っ直ぐに南下を続けている。

 

有賀「向こうが南方海域に到着するのは何時になる?」

 

「明朝かと」

 

有賀「我々が向こうと接触できるのは?」

 

「敵艦が南方海域に到達するのとほぼ同時ですね」

 

有賀「なら、我々は敵が南方海域に入るのを何としても阻止しなければならん。本艦は護衛艦2隻と共にこのまま全速力で目標に向かう!奴に先を越されたらアウトだ!」

 

きいは護衛艦しらぬい、まやの2隻を伴い他の艦を現状に留まらせてから最大戦速で目的地へと急いだ。

それに続くように戦艦出雲、そしてプレジデント級戦艦一番艦ジョージ・ワシントンも艦隊を離れていく。

 

 

プレジデント級戦艦

 

諸元

全長350m

基準排水量152,000t

最大速力34.6ノット

 

兵装

主砲:60口径22インチ砲3連装3基9門

高角砲: Mk.33 3インチ砲

トマホーク(ボックスランチャータイプ)×4

ハープーン4連装発射機×4

シースパローMk28 8連装発射機×2

 

同型艦

一番艦:ジョージ・ワシントン

二番艦:エイブラハム・リンカーン

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

夜が明けて、ムー大陸周辺に太陽の光が降り注ぐ中、きい以下5隻とグレードアトラスター及びラス・アルゲティは、レイフォル沖南方海域付近へと到達していた。

 

有賀「何とか間に合ったな」

 

全速航行により有賀達はグレードアトラスター側より一足先に同海域に到達しており、此処で敵を待ち構える態勢をとっている。

しらぬい、まやは3隻の後方に位置しており、敵潜水艦や敵航空機の出現等に警戒しながら付かず離れずの距離を保つ。

 

『対水上レーダー探知、本艦90度方向、25マイル!速度27ノット、数2。目標、大型艦級と思われます!』

 

朝日に照らされた紀伊の艦橋に報告が入った。

きいに装備されているOPS-28D対水上レーダーが北の方角から接近してくる大型の反応を捉えた。

見張り員が双眼鏡で前方90度方向を見据えると、水平線上に黒く、大きな影を視認した。

 

『目標視認!』

 

有賀「艦級は分かるか?」

 

『目標は大和型、長門型に酷似!敵グレードアトラスター級、ヘルクレス級と思われます!』

 

有賀「役者は揃ったか。対水上戦闘、合戦用意!」

 

3隻は直ぐ様、戦闘態勢に入った。

各部署の乗員達は何時もの如く、駆け足で部署への配置に就き、戦闘による防水と火災、負傷者の発生に備えて応急員と医療班も待機する。

 

「各部配置完了!」

 

有賀「配置完了まで1分か。流石だ」

 

「此処に来てから訓練をしっかりやりましたし、2度目の戦艦同士との戦闘もあって皆張り切ってますよ」

 

有賀「あまり張り切り過ぎないように程々にな。対水上戦闘、主砲左砲戦用意!」

 

『対水上戦闘、主砲左砲戦用意。観測機発艦!』

 

きいを先頭に3隻はその場で面舵を取り、艦首を右に向けて左舷側をグレードアトラスターに向ける。

後部飛行甲板からは主砲の着弾観測用の無人機が飛び立つ。

 

「観測機、目標上空に到達!」

 

有賀「砲雷長、主砲射撃用意!交互撃ち方!砲撃諸元は無人機のデーターを使用!出雲及びジョージワシントンにも伝達!」

 

無人機から送られてくるデータをCICに居る砲雷科の隊員が射撃指揮装置を使い敵との距離を計算しながら砲撃諸元を各砲塔へ送り、それに従って主砲と副砲が旋回、砲口をグレードアトラスターに向ける。

最初は交互撃ち方による修正しながらの射撃のため、3本の砲身のうち外側左右の砲身が仰角をとる。

 

「射撃用意よし!」

 

有賀「撃ち方はじめ!」

 

その合図と同時にきい、出雲、ジョージ・ワシントンの主砲が射撃を開始した。

合計10基の主砲塔から30発の砲弾が撃ち出され、グレードアトラスター、ラス・アルゲティに向けて超音速で飛翔する。

 

 

「敵艦発砲!」

 

 

3隻が発砲したと同時にグレードアトラスター、ラスアルゲティも砲撃を仕掛けてきたが、この距離なら先ず当たらないため回避はせず速度と針路は現状を維持させる。

  

「弾着、今っ!」

 

最初の砲撃から30秒後、3隻の砲弾がグレードアトラスターの鼻先に着弾し6本、ラス・アルゲティに9本の水柱が上がった。

 

「全砲、命中弾なし!」

 

「諸元修正!上げ角5」

 

直ぐ様、射撃諸元の修正が行われ旋回角と仰角が変更される。

 

「敵弾到達!」

 

その間にグレードアトラスターの砲弾が出雲の左側より遥か手前に着弾した。

 

志摩「敵さんも良い腕をしてるな」

 

「えぇ。ですが敵が針路と速度を一切変えないのが気になりますが」

 

出雲に乗る志摩清英中将は疑問を口にする。

この時点で敵艦2隻は艦首を3隻に向けたまま速度と針路を一切変えておらず、先程の射撃も艦首の2基の砲塔による水平射撃によるものだった。

 

志摩「回避しようとする素振りは見せないか………何を考えてるんだ?」

 

「次弾装填完了!」

 

「撃て!」

 

2回目の射撃が開始された。

続けて放たれた3発の砲弾は先程よりも着弾位置が2隻に近づいている。諸元修正が効いている証拠だった

 

3隻はグレードアトラスターへの砲撃を続行する。

第3射目に入ろうとしたその時、それまで矢のように真っ直ぐに向かってきていたグレートアトラスターに突如として動きが見られた。

 

『敵艦主砲、旋回しています!』

  

見張り員がグレードアトラスターの主砲塔が旋回しているのを確認した。この時、敵はようやく本腰を入れて来たのかと思ったが、2隻の船体は未だに紀伊に向けられたままであるという奇妙な光景に有賀は言い知れぬ不安感に襲われた。

 

有賀「敵艦の主砲はどっちに向いている!」

 

『敵艦の主砲塔は………全てムー大陸方向に向いています!』

  

この報告に有賀はグレードアトラスターの意図を察した。

 

有賀「やはり敵の目的は海上から地上部隊への砲撃か!?」

 

有賀はグレードアトラスターの狙いが、海上から連合軍地上部隊へ対する艦砲射撃である事を確信した。

 

しかし此処で疑問が湧き出る。

通常なら戦艦が地上へ向けての艦砲射撃をする場合、観測用に水上機かそれが可能な艦艇を展開させ着弾観測を行うのが定石である。そうしなければ敵に対して有効な攻撃は出来ないのである。

だがグレードアトラスターは水上機を1機も飛び立たせず、着弾観測機無しで対地攻撃を実行しようとしているのである。

 

 

『司令!』

 

「どうした?」

 

『ムー大陸方向に見える山の頂上に発光信号のようなものが!』

 

「何っ!?」

 

見張り員からの叫びに、ウィリス・A・リーは双眼鏡で大陸方向に目を向ける。確かに、大陸方向に見える山地の中にある山の頂上から光が点滅しているように見えた。

 

リー「shit!どうりで観測機を飛ばさなかった筈だ!山頂の敵部隊が着弾観測して、それをもとに砲撃するつもりだ!」

 

「司令!」

 

リー「分かってる!目標変更、あの山に向けてトマホークを叩き込んでやれ!」

 

 

 

 

グレードアトラスターの主砲が向けられているムー大陸方向に見える海岸線から少し奥には北から東へ一直線に山脈がある。

その山脈はレイフォルとヒノマワリ王国を跨ぐようにあり、その中に海を見渡せる程の高さを持つ標高数百メートル規模の山々が連なる場所がある。その中でも特に奧の方にある山頂からムー大陸内陸部と南方海域の双方を見渡せる山がある。

 

「隊長!グレードアトラスター、視認しました!」

 

「よし、発光信号にて砲撃諸元を送れ」

 

「了解!」

 

その山の山頂に、グラ・バルカス帝国陸軍砲兵部隊が展開しており、そこからは国連軍のムー陸軍部隊によって占領されたレイフォリア南方にあるデスデモーナ基地が見える。観測員達はグレードアトラスターに向けて発光信号を使い、デスデモーナ基地の位置や距離などの砲撃諸元を送った。

 

「信号送りました!」

 

「よし!待避だ!」

 

観測員達はその場から斜面を駆け降り、山頂から少し下がった位置にある鍾乳洞へと待避した。

 

「司令、砲撃諸元来ました!」

 

観測部隊からの砲撃諸元を受け取ったグレードアトラスターは、その情報を頼りに砲撃準備を進める。

 

「敵艦から発砲炎!」

 

カイザル「気付いたか…だがもう遅い」

 

ジョージワシントンがトマホーク攻撃を行うのが見えたが、それはグレードアトラスターに向けられたものではなかった。ジョージワシントンは観測部隊が居る山へ向けてトマホークを発射したのだが、既に観測部隊は待避しているため意味はなかった。 

 

「艦長、砲撃用意よし!」

  

砲撃準備が完了し、ラクスタルは息を大きく吸い込む。

  

ラクスタル「死んでいった友軍兵士達のために一矢報いるぞ……主砲、撃てぇぇぇぇぇい!!!!」

 

ラクスタルの合図でグレードアトラスターの51cm砲6門が斉射で砲撃を開始し、艦周辺の海上に走った衝撃波が、海面に波紋を作り、それが一気に広がっていく。

 

 

轟音と共にグレードアトラスターから放たれた6発の51cm砲弾はムー大陸方向に向けて飛び去っていく。

 

リー「shit!」

 

志摩「いかんッ…!」

 

有賀「しまった……!」

 

後手に回り連合軍の誰もが絶望し、帝国軍がやったと思ったその瞬間だった。

突然空中に6つの爆発が起き、一拍をおいて爆発音が辺りに響いた。

 

「⁉︎」

 

有賀「なんだ⁈」

 

その様子はグレードアトラスターからも見えていた。

 

 

『主砲全弾、目標遥か手前の上空にて爆発!敵戦艦が放った噴進弾は山頂に直撃!』

 

「馬鹿な………」

 

 

艦橋に居た参謀達は味方観測部隊が居た山の遥か手前で主砲弾が爆発した光景に言葉が出なかった。カイザルですらその光景を信じられないと言う言葉で見ている。

 

ラクスタル「どうなっている?まさか、また敵がロケットで破壊したのか⁉︎」

 

「6発ともか?馬鹿な!有り得んぞ!」

 

参謀達は偶然であろうとする意見を口にするがその答えは直ぐに現れた。

 

 

『good morning everyone.朝っぱらから本艦の新兵装テストに付き合ってくれてありがとう』

 

有賀「この声は…!」

 

有賀にとっては聞き慣れた声が突然オープン回線で聞こえてきた。

 

有賀「猪口!お前か‼︎」

 

猪口『御名答。護衛艦おわりと猪口俊介只今参上』

 

「新たな敵艦出現‼︎」

 

ラクスタル「なんだと……」

 

視線の先には朝日を背に受けながら護衛艦おわりが悠々とこちらに向かって航行しているのが見えた。

 

 

「間に合ってよかったですね」

 

猪口「あぁ、意外とどうにかなるもんなんだな」

 

CIC内のディスプレイに映し出された外の光景をみながら猪口は言う。

 

猪口「それにしても砲雷長、さっきの速射見事だった。おかげで6発全弾命中だ」

 

「自分の腕だけではありませんよ、アレの威力もあってです」

 

猪口「確かになぁ…しかしこうも早く電磁加速砲を使う事になるとはな…」

 

 

レールガン(電磁加速砲)、正式名称は《25式203mm電磁加速砲》

創作世界では最強格の武器の代名詞として挙げられるが、研究がされていないわけではない。

2015年から防衛省は本格的な研究を始めて以降数々の問題に直面する。

諸問題を解決しつつ、途中アメリカが開発計画から降り日本が異世界に転移してからも研究が続けられていたが、つい先日おわりにも試験的にだが配備がされたのだ。

前部にある230mm単装砲を取り外し、代わりにこの203mm電磁加速砲を装備。

速射も可能とされており、猪口は今回の出撃で実用テストもしてみようと判断。

 

きいのいる海域へと急行し、先述の事態に遭遇し使用を決断。

その圧倒的な初速でグレードアトラスターの51cm砲弾6発全てを破壊したのだ。

 

 

「敵さんは何が起こったのかまだ理解しきれていないみたいですね」

 

副長がディスプレイに映し出されたグレードアトラスター、ラス・アルゲティを見ながら言う。

 

猪口「そうだな。少々申し訳ないが、長門擬きにはご退場願おうか。砲雷長」

 

「はい」

 

猪口の命令を受けた砲雷長はコントロールスティックで25式を操作しラスアルゲティの艦橋に照準を合わせる。

 

猪口「撃て」

 

単調な一言と共に砲雷長がトリガーを引くと電磁力で射出された203mm徹甲弾が一瞬にしてラスアルゲティの艦橋を吹き飛ばした。

 

カイザル「⁉︎」

 

ラクスタル「ラス・アルゲティが……‼︎」

 

艦橋に直撃を受けた事で操作を失ったラスアルゲティは段々と隊列から離れて行く。

そして再びおわりより電磁加速砲が発射され、今度は的確に一、二番砲塔を狙撃し弾薬庫に引火させ大爆発を起こさせラス・アルゲティは艦首から沈み始めた。

 

一部始終をグレードアトラスター見ていたから見ていたラクスタル達は状況を飲み込めないでいたが、カイザルはただ一人おわりを睨みつけていた。

 

カイザル「あの戦艦だ」

 

ラクスタル「はい?」

 

カイザル「あの二番艦がどうやってラスアルゲティを沈めたかは分からんが、今はあの二番艦が我々にとっての最大の脅威だ」

 

ラクスタル「まさか……奴らはロケット兵器とはまた違った、我々の理解の追いつかない兵器を持っていると⁉︎」

 

カイザル「そうでなければなんというんだ?艦長、目標をあの二番艦に変更だ」

 

ラクスタル「…了解、確かにヤツがいる以上は対地砲撃を妨害される可能性もありますからな。射撃指揮所、射撃目標変更!」

 

グレードアトラスターは目標を3隻とデスデモーナ基地から、おわりに変更し諸元を合わせると直ぐ様砲撃を仕掛ける。

 

「敵艦発砲!」

 

猪口「どこに落ちる!?」

 

「これは……本艦艦首90度、距離200に落ちます」

 

猪口「こっちを脅威とみなしたか。回避航行!」

 

「了解!」

 

おわりはその場で回避に入る。着弾位置は分かっているため大きく避ける必要は無いのだが、砲弾が海面に着水した時に起こる爆発による衝撃波を少しでも避けるための行動である。

 

着水した砲弾は予想通り、おわりの前方に着水し、爆発で発生した衝撃波が船体に直撃、船体が揺さぶられる。

 

猪口「やるじゃあないの。だがこちらとて51cm砲を持ってるんだ」

 

「艦長、砲撃準備完了。いつでも」

 

猪口「痛いのをぶっ食らわせてやれ。撃ち方始め!」

 

おわりの前部60口径51cm砲6門が一斉に火を吹く。

流石に初弾から命中とはいかなかったが、付近に6本の水柱を上げて見せた

 

 

志摩「成程、敵さんはおわりを脅威とみなしたか」

 

「司令、我々は?」

 

志摩「言わずもがなわかっているだろう。砲撃再開!」

 

沈黙していた3隻の中から最初に砲撃を再開したのは出雲であった。

先程までの諸元を元に再び砲戦を開始、その比類なき威力を誇る56cm砲をグレードアトラスターへと浴びせる。

 

「敵艦砲撃を再開‼︎」

 

ラクスタル「クソッ‼︎あの化け物か!総員衝撃に備え‼︎」

 

出雲から放たれる砲弾は最初の砲撃よりも精度が上がってきており、着弾位置がグレードアトラスターへと近付いている。56cm砲弾の爆発で起きた衝撃波はグレードアトラスターの船体を揺さぶり、巻き上げられた海水が降り注ぐ。

 

カイザル「ぐぅっ!」

 

グレードアトラスターの艦橋にも衝撃が伝わり、カイザル達は衝撃から身を守る。

 

ラクスタル「敵の砲撃が正確になってきたな………やむを得ない!目標を敵戦艦に戻す!」

 

ラクスタルは目標を3隻に戻し、再びきいとの砲撃戦を開始する。

双方の砲弾が南方海域を飛び交い、衝撃と爆音が響き渡る。

 

ラクスタル「うぉっ!」

 

お互いの距離が縮まり砲撃精度が上がり、遂にグレードアトラスターにきいから放たれた砲弾が直撃した。

 

「右舷直撃弾!」

 

「被害報告!」

 

「右舷7番から12番広角砲、機銃群被弾!火災発生!」

 

3発の51センチ砲弾がきいに向けていた右舷の対空砲群に直撃し、高角砲と機銃が吹き飛ばされた。

砲弾の直撃により大火災が発生し、多数の死傷者が発生したため直ちにダメージコントロールに入る。

 

カイザル「3発でこれだけの被害か………流石はグレードアトラスター以上か」

 

カイザルはカルトアルパス戦での事を思い出しながらその性能に感嘆する。

 

ラクスタル「だがこっちとてだてに帝国最強を名乗ってはいない!」

 

グレードアトラスターはお返しと言わんばかりに撃ち返し、出雲に直撃弾をお見舞いした。

しかし、放たれた砲弾は大和型を上回る出雲の前には擦り傷にすらならなかった。

 

「51cm砲が通用しないだと⁉︎」 

 

砲術長『メイル』は自慢の51cm砲を跳ね返した出雲の防御力に驚きの声をあげる。

 

ラクスタル「諦めるな!戦闘続行!」 

 

グレードアトラスターは諦めず4隻に向けてに向けて砲撃を仕掛ける。

 

 

 

猪口「しぶといねぇ…」

 

一方で、猪口はグレードアトラスターからとてつもない戦意を感じ取っていた。

 

「相手側からすればリベンジマッチみたいなもんですから、敵艦を仕留めるのは中々難しいですね」

 

猪口「だな。相手は大和型とほぼ同等の戦艦だからな。簡単にはいかないさ」

 

きいは大和型を上回る性能を発揮し、グレードアトラスターと対等に戦闘を繰り広げていた。

砲撃精度はグレードアトラスターがおわりに攻撃を集中している隙を突いていたため、きい、出雲、ジョージワシントンが若干ではあるが上回っている。既にきいはグレードアトラスターに3発の直撃弾を浴びせており、火災が起きているのが肉眼でも確認できる。

 

有賀「このまま押し込むぞ!」

 

きいはイケイケと言わんばかりにグレードアトラスターに攻撃を集中させ、徹甲弾と榴弾を浴びせ続ける。

降り注ぐ砲弾はグレードアトラスターの船体にダメージを蓄積させていき、甲板や艦内にダメージが着実に増えていく。

特に徹甲弾は水中弾効果により魚雷のようにグレードアトラスター右舷の喫水線下に直撃、穴を穿つとそこから大量の海水が入り込んでいく。

 

『右舷第3と第4区画に浸水発生!』

 

『居住区画火災発生!消火作業中!』

 

ラクスタル「傾斜復元!左舷第5と第1区画に3000トン注水!」

 

浸水により艦の速度が低下し、右へ向けて船体が傾斜するが注排水装置による注水作業で傾斜は直ぐに元へ戻った。

 

リー「やっぱり注排水装置がネックか……これじゃあ何時決着がつくか分からんな」

 

リーは直撃弾を与えてもダメージコントロールで直ぐに態勢を建て直してくるグレードアトラスターに、状況的に戦いが膠着状態になってしまう事を予想する。

 

そもそもきいを含めた連合艦隊の目的はレイフォル港の制圧が主任務であるため、弾薬と燃料はそれに合わせて調整して搭載しているため、このままグレードアトラスターに付き合っていては砲弾と燃料に余裕がなくなってしまう。

 

有賀「何とかして状況を動かせれば良いんだが……」

 

膠着状態の戦闘を進展させる切っ掛けをどうにかして作る必要がある。松田は何か良い案が無いか考える。

 

有賀「やむを得ない!少し早いが航空支援を要請!」

 

「了解!」 

 

有賀は連合航空部隊による航空支援要請を出した。

 

きいからの要請を受けた連合軍司令部はバルクルス基地に駐留している航空自衛隊小松基地から派遣されたF-3に命令を出す。

10機のF-3は暖気運転で滑走路で待機しており、主翼下にはASM-1C空対艦ミサイル*1をが搭載されている。

 

元々この部隊はレイフォル港制圧を担当する連合艦隊の支援を担当しているため、要請があればこのように何時でも出撃できるよう即応態勢で待機していたのである。

 

『ODIN1、take off!』

 

命令から僅か数分でASM-1C携えた10機のF-3が次々とバルクルス基地から飛び立っていく。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「撃て!」

 

 

海戦は双方とも距離を保ちながら、互いに砲撃の応酬が繰り広げられていた。

砲撃音と衝撃が辺りに伝播し、時間が経つにつれて双方とも被害が広がっていく。

 

「右舷CIWS1番、3番大破、機能停止!」

 

「3番、5番速射砲大破!」

 

「左舷シースパローランチャー、破壊されました!」

 

 

グレードアトラスターに向けているきい、出雲、ジョージワシントン3隻の右舷側に被害が集中しており、51cm砲弾の直撃を受けた速射砲とCIWS、シースパローの発射機が次々と破壊、火災も起きておりスプリンクラーによる全力消火が行われる。

 

志摩「攻撃の手を緩めるな!押し負けるぞ!」

 

3隻はバルクルス基地からF-3部隊が到着するまでの20分間を耐えるため、グレードアトラスターからの攻撃を正面から受け続け、その分を返すように反撃を仕掛ける。

 

『左舷直撃弾あり!』

 

『第7区画より浸水発生!』

 

『左舷各対空砲、応答無し!』

 

『カタパルト大破!』

 

『左舷1番、2番スクリュー破損!速力低下!』

 

ラクスタル「ダメージコントロール急げ!」

 

グレードアトラスターも多数の至近弾と直撃弾を受けダメージが拡大していき、速力も20ノット以下に落ちてきている。艦内でも浸水と火災に対して乗員達がダメージコントロールに走り回る、被弾と水圧によって立て続けに起こる損害と死傷者多発により全てには手が回らず被害が津波のように広がっていく。

 

「この区画は危険だ!閉鎖する!」

 

「待避!待避!待避!」

 

既に浸水で艦内の一部区画は完全に水没してしまっており、完全水没の恐れがある区画は放棄され順次閉鎖されていく。

 

 

「うわぁぁぁ………痛ぇょ!」

 

「辛抱しろ!直ぐに診てやる!」

 

「そっちの奴は後回しだ!軽傷者を優先せよ!」

 

「こっちに止血剤と包帯を回せ!」

 

 

医務室でも軍医と衛生兵達が次々と運び込まれてくる負傷者の手当てに当たっており、医務室の床は負傷者の傷口から流れ出た血で真っ赤に染まっており、室内も医薬品と血の匂い、硝煙の匂いが混ざった異臭に包まれ、マスクをしていても匂いが鼻につく。

 

艦内はもはや地獄と化していた。しかしそれを余所に、グレードアトラスターは3隻との砲撃戦を続け、9門の51センチ砲の砲身は連続した砲撃により高熱となっており、砲撃により巻き上げられた海水が雨のように降り掛かると、水蒸気となり白い湯気を沸き立たせる。

 

ラクスタル「傾斜復元急げ!」

 

ラクスタルは必死に各所に指示を飛ばしながら戦闘指揮を続け、他の艦橋要員達も各々が受け持つ部署への指示に専念している。

 

カイザル「このまま押し切るぞ!何としても敵艦に一矢報いるんだ!」

 

カイザルは本来の目的である連合艦隊への艦砲射撃とグレードアトラスターを座礁させる作戦を諦め、四隻に出来るだけ損傷を与え味方へ与える被害を少しでも減らすべく、部下達を鼓舞する。

  

 

一方その頃、バルクルス基地から飛び立ったF-3部隊は進路を南方海域に向けて編隊を組んで飛行していた。

 

『スカイアイよりODINへ、間も無く射程距離に入る。攻撃を開始せよ』

 

『ODIN1より各機へ、攻撃態勢!』

 

F-3隊はE3Bからの指示に従い、ASM-1Cの発射態勢に入る。

 

『各機、発射用意よし』

 

『攻撃開始!』

 

10機のF-3から1機当たり4発のASM-1Cが次々と放たれる。

主翼から切り離されたASM-1Cは投下後にターボジェットエンジンを始動させ、低空飛行モードで南方海域へ向かって飛翔していく。

 

ミサイル攻撃の報はデータリンクにより紀伊に直ちにもたらされる。

 

「司令、F-3によるミサイル攻撃が始まりました!」

 

志摩「よし!待避する!全艦退避!」

 

4隻はミサイル攻撃の巻き添えにならないように後退を開始した。

 

「敵艦後退!」

 

カイザル「怯んだのか⁈なぜ今さら⁈」

 

敵が後退したのをいぶかしく思いながらも、カイザルは追撃を指示する。

後退する四隻を追撃を開始しようと艦首を出雲に向けたグレードアトラスターのレーダーが新たな反応を捉えた。

 

『こちらレーダー室!9時方向、ムー大陸の方向より多数の高速飛翔物体を探知!』

 

ラクスタル「何だと⁉︎数は!」

 

『10…20……30……40っ!目標数は40です!』

 

アケイルはムー大陸方向に双眼鏡を向けると、多数のASM-1Cが姿を表した所を見た。

 

ラクスタル「対空戦闘!」

 

直ぐに対空戦闘を指示するが、マッハ0.9で飛翔するASM-1Cは海へ出ると一気に高度を下げ海面スレスレの超低空飛行を開始、対空砲の死角に入った。

 

ラクスタル「駄目だ……早すぎる!」 

 

40発のASM-1Cが迫る光景にラクスタルが絶望したかのような声をあげる。

対空戦闘を行おうにも四隻との戦闘で左舷側の対空砲は殆ど壊滅しており、右舷側の対空砲を使うには艦を回頭させる必要があるため、どちらにしろグレードアトラスターにASM-1Cの飽和攻撃を止める手だては無い。

 

カイザル「総員衝撃に備え!」

 

カイザルはそう叫び、その場に伏せる。

 

その十数秒後、40発のASM-1は海面から一気に上昇し、ポップアップモードでグレードアトラスターの真上から降り注いだ。

 

 

 


 

 

 

降り注いだ40発のASM-1Cは、寸分の狂いもなく次々と命中していく。

破壊力こそ戦艦の艦砲程では無いものの、真上からの攻撃は殆ど想定されていないグレードアトラスター。その防御力の低い上部構造物を破壊するには、ASM-1Cは充分な威力を持つ。

 

「スゲェ……対艦ミサイルの飽和攻撃なんて見れないと思ってたぜ」

 

きいの艦橋からもグレードアトラスターに次々と命中していくASM-1Cの飽和攻撃の光景が見えている。

飽和攻撃に晒されるグレードアトラスターからは爆炎が次々と上がり、あっという間に甲板上は黒煙に包まれていく。

 

「全ミサイル、命中確認!」

 

全てのASM-1Cが命中し、飽和攻撃が終了すると、各艦の乗員達の間に緊張が走る。

 

リー「どうだ?」

 

黒煙に包まれたグレードアトラスターは何も動きを見せなかった。万が一に備えて、四隻の全主砲はグレードアトラスターに向けられたまま、警戒態勢を維持する。

 

やがて黒煙が少なくなり、グレードアトラスターの様子がハッキリしてきた。

 

猪口「おぉ……ヒデェ」

 

志摩「なんと……酷い…」

 

有賀「見る影も形もないとはこう言う事を言うのか……」

 

リー「さっきまでの威容が嘘のようだ……」

 

黒煙の向こうから見えてきたのは、上部構造物を無惨にも破壊され尽くしたグレードアトラスターだった。

主砲塔は砲身を紀伊に向けたまま動かず、副砲塔は真上から圧を掛けられたかのように押し潰され、煙突は真ん中から上が吹き飛び、マストはその上にのしかかる様に倒壊している。

更に後部艦橋は射撃指揮所と測距儀がまるごと無くなっており、艦橋は第2艦橋から上の正面部分が大きな爪に引っ掛かれたように抉られ前方に傾き、いつ倒壊してもおかしくない状態だった。

 

リー「あれでは、艦の幹部クラスの人間は誰も生きてないな…………」

 

「艦橋部があの状態ですからね………どうします?」

 

リー「返答があるとは思えんが、降伏を呼び掛けてみてくれ」

 

ジョージワシントンはその場でグレードアトラスターに向けグラ・バルカス語で発光信号を送った。

 

 

 

そして、発光信号を受けたグレードアトラスターでは………

 

「…うぅ………何が起きたんだ」

  

甲板から2層下にある区画で、上甲板へ続く直通の階段下で気を失っていた一人の水兵が頭を押さえながら起き上がる。

 

「そうか……耐衝撃姿勢の命令が………上はどうなってるんだ!」

 

彼は階段を掛け登り、上の区画へ入るための隔壁を開ける。

 

「うわっ!」

 

開けた瞬間、大量の黒煙が入り込み、慌てて隔壁を閉じた。

 

「おい!そこの水兵!」

 

丁度そこへ、階級が上の数人の水兵達がやって来た。

 

「上はどうなってる⁈」

 

「分かりません。隔壁を開けると黒煙が酷く、確認出来ませんでした」

 

「分かった。直ぐにガスマスクを装着しろ!改めて確認に向かう!」

 

「はっ!」

 

そう指示され彼等は身に付けていたガスマスクを装着し、再び隔壁を開けて黒煙と熱波が立ち込める中、上甲板へ続く階段を駆け上がり、甲板へ出る最後の隔壁を開けた。

 

「こ……これは⁉︎」

 

外に出てみると、彼等の目には無惨に破壊された上部構造物が映る。

 

「嘘だろ………」

 

「先任!艦橋が」

 

誰がそう叫び、真上を見上げると、大きく損壊した艦橋が目に入った。

 

「か……艦長………カイザル長官………」

 

「なんて事だ…………」

 

誰の目からもカイザルをはじめとした艦長や艦の幹部達はもう生きてはいないと分かり、絶望する水兵達。

 

「どうする?これから………」

 

「どうするって………艦長も長官も航海長も砲術長も副長も居ないんだ。誰か先任士官を探すしか」

 

「機関長なら生きてるはずです!機関長を呼んできます!」

 

今の所、生きている幹部士官は管内で機関の制御を指揮していた機関長しか居ない。何人かが機関長を呼び寄せるため艦内へ入っていく。

  

「おい!見ろ!」

 

「どうした?」

 

「敵艦から発光信号だ!」

 

薄くなっている黒煙越しにジョージ・ワシントンから発光信号が送られてくる。

 

「何て言ってるんだ……?」

 

「帝国語だ………『降伏せよ。本艦は貴艦の救援の用意あり』って言ってる」

 

「降伏だって⁉︎冗談じゃねえ!誰が降伏なんてするもんかよ!」

 

若手の水兵がそう叫ぶ。

 

「だとしても、もうこの艦に戦闘能力なんて残ってない。どうやって戦うんだよ⁉︎」

 

「それは…………」

 

主砲はまだ撃てるかもしれないが、レーダーや測距儀をやられては命中など望めない。何とか損傷を免れた対空機関砲が数丁残っているが、戦艦相手には意味が無いのは明白である。

  

「おい!状況報告せよ!」

 

そこへベテラン機関長がやって来た。水兵達は彼に状況を報告した。

 

「そうか………この様じゃ、戦うのはもう無理だな。これ以上犠牲を出すのも意味はない」

 

「それでは……」

 

「あぁ………降伏だ。他の乗員達にも伝えてくれ」 

 

グレードアトラスターは大破、戦闘不能により降伏した。大勢の犠牲を出しつつも沈没は免れ、乗員達は全て連合軍の捕虜となり、レイフォル沖南方沖海戦は終結したが………

 

 

*1
本世界線ではF-3にも搭載可能

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