海戦を終え、きい以下の連合艦隊によるグレードアトラスターの武装解除と捕虜の集計・治療等の各作業が慎重に進められていく。
第1艦隊は司令官のカイザル中将以下、ラクスタル艦長を含めグレードアトラスターの艦橋要員全員戦死、4000人近い艦隊将兵が死傷という壊滅的被害を負い、グレードアトラスターは大破、ラスアルゲティは撃沈、駆逐艦42隻と重巡軽巡全てを失い大敗を喫した。
対して連合艦隊は、きい、出雲、ジョージワシントンの乗員にそれぞれ100名近い死傷者を出し、出雲も右舷の対空砲の8割が使用不能となるなど中破したが戦闘と航行に支障はなく、砲撃を受けた護衛艦おわりも乗員に負傷者が十数人発生したがこちらは損傷はほぼ無しであった。
投降したグレードアトラスターの乗員達は臨検により、グレードアトラスターの甲板に集められた後、艦隊の後方に待機していたムー海軍の輸送船と病院船に引き渡された。
有賀「さて、ここからが正念場だな」
戦闘が一段落した有賀はマイカル港の方に視線を向ける。
有賀「頼むぞ進藤、マイカル港の運命はお前にかかってる……」
時を同じくしてマイカル港への進撃を進めていたミレケネス中将以下第2艦隊に第1艦隊壊滅の報告が入っていた。
ミレケネス「そうか……ラクスタル達は…」
報告を受けたミレケネスはどこか哀愁漂う声でそう言った。
「敵のロケット兵器による攻撃を受けグレードアトラスターは戦闘不能に、また他の艦艇も大破又は轟沈との事です」
「司令…」
グレートギャラクシーの艦橋で報告を聞いたミレケネスは顔を上げて眼前に広がる海原とその遥か彼方にあるであろうマイカル港に視線を向ける。
ミレケネス「……今ここで作戦を放棄してレイフォルに戻ることは不可能ではない。だがそれではカイザルやラクスタル達が作ってくれたこの時間を、彼らの努力に泥を塗ることになる。例えどのような障害があったとしても、我々は任務を遂行する!航空隊を発艦させろ‼︎目標はマイカルだ‼︎」
彼女の命令により随伴していた空母ガリレオよりリゲル型雷撃機、シリウス型爆撃機が爆装して発進。
道中はアンタレス改の護衛を受けながらマイカル港を目指す。
しかしその様子を一部始終見ていた艦が第2艦隊前方700浬にいた。
「敵艦載機を確認、数57」
進藤「やっぱり狙いはマイカルか……」
捉えていたのは進藤浩二一佐の乗るあきづき型打撃護衛艦の『あきづき』であった。
当初の予定であれば有賀のいる第一任務機動群に同行する筈であったが、敵が艦隊を二分させ南下を図る様子と作戦目標がレイフォル制圧が目的とこの二つの理由、特に前者が何をしでかすか分からない為安全を考慮してあきづきにはマイカル港周辺で警戒に当たるよう司令部からお達しが出ていた。
進藤「その予想がまさにドンピシャってか……」
進藤はディスプレイに映し出された敵艦載機群を見ながら呟く。
進藤「奴らの目的がマイカルなら近づける訳にはいかん、迎撃する。SAM発射用意!」
直様あきづき甲板上に設置されたMk.42VLS128セルのハッチが開きスタンダードSR-3が絶え間なく撃ち出されていく。
「栄光のグラバルガス帝国海軍航空隊が、今やこれっぽっちとはな……」
マイカル攻撃隊の護衛を務める『ハーレンス・ビー』大尉は周辺を飛ぶ見味方の数の少なさを見て嘆く。
この世界に来る前の『ユグド』と呼ばれる世界から数々の戦闘に参加してきた彼にとっては途轍もなく見窄らしかった。
いつもならこの倍、いや3、4倍の数は居たであろう攻撃隊も今や50機程度にまで減っていた。
ハーレンス「第1艦隊は壊滅…だが今さらここで降りる訳にはいかん」
彼はそう言って気を引き締めるように操縦桿を握り締めた。
しかし次の瞬間、彼のその心意気を嘲笑うかのように突然並走していた僚機が爆発した。
ハーレンス「⁉︎」
爆発は連鎖するようにリゲル、シリウスそして味方のアンタレス改にも襲い掛かり、いつしか味方は隊列を無視して各自で回避行動をとっていた。
ハーレンス「クソッ‼︎一体何がどうなってんだ⁉︎」
ハーレンスも回避行動を取ろうと操縦桿を右に倒したその瞬間、目の前に白い矢のようなものが見えたかと思うと目の前が眩しい光に包まれ彼はそこで意識を閉ざした。
「インターセプト5秒前!………スタンバイ、マークインターセプト!」
最後の敵機の撃破を確認したCICには安堵感が漂っていた。
しかし進藤は違った。
進藤「敵艦隊はどうだ……?」
「……進路変わらず、こちらに向かってきています」
報告を受けた進藤はある決断を下す。
進藤「……敵旗艦に通信をかけろ。内容は藤堂総理にも聞こえるように」
「ッ……了解…」
彼のその一言が何を意味するか、乗組員らは瞬時に察し準備に取り掛かった。
ミレケネス「敵艦からの通信?」
つい先程攻撃隊壊滅の報を受けたかと思えば今度は敵からの通信と、ミレケネスは訝しんでいた。
「敵は1隻です。司令との交信を求めております」
「一旦何が目的なんだ…?」
参謀達も口々に疑問を言う中、ミレケネスは決断した。
ミレケネス「良かろう。交信に出よう」
ミレケネスは艦橋にある隊内電話の受話器を取った。
ミレケネス「グラバルガス帝国海軍レイフォル方面艦隊第2艦隊司令のミレケネスだ」
進藤『こちらは海上自衛隊あきづき艦長の進藤一佐です。ミレケネス司令にお願いがあります』
ミレケネス「…聞こう」
進藤『今すぐに本海域より離脱をするか、投降をするかどちらかをお願いしたい』
「⁉︎」
「投降だと⁈」
進藤からの提案に幕僚達は思わず声を上げる。
進藤『既に貴方方もご存知の通り、味方である第1艦隊は壊滅。上空直掩を含む航空隊を失った貴方方が本艦に戦いを挑むのは明らかに不利』
ミレケネス「確かにそうだ。しかしいくら技術力が優れているとはいえそちらは一隻しかいない。何故それ程の自信があるのだ?」
進藤『それは……』
一瞬進藤は言葉に詰まるが一呼吸おいて話を続けた。
進藤「こちらには貴方方第2艦隊を丸ごと消し飛ばせる戦略兵器を有するからです」
ミレケネス『……何を言うかと思えば、そのような虚仮威しに我々が屈すると思うな!それに我々にも譲れないものがある。例え我々が全滅しようと虚仮威ししかできない
そう啖呵を切ってミレケネスは通信を切った。
ミレケネス「我々はこのままマイカルへと向かう…いいな?」
「はッ‼︎」
交信を聞いていた乗組員らの士気は高まっていたが、数分後それすらをも意味をなさない事態が起こることを彼らは知らなかった。
日本国 首都:東京都
首相官邸
通信の全てを聞いていた藤堂は顔を上げる。
東郷「投降を呼びかける旨は伝えたようですが、敵に交戦の意思は固く。あまつさえ我々を軽蔑するような発言すらをも……」
藤堂「ムーへの謝罪文が必要になるな……幕僚長、あきづきに
東郷「承知しました」
数分後、東郷幕僚長と藤堂総理大臣の名で18式の使用許可の電文がムーにある司令部を通じてあきづきに送られた。
受け取った電文を見て進藤は全て悟ったような表情でいた。
「ついにこの命令が……」
「艦長……」
進藤「まさか…俺が艦長をやってる間に使用許可が降りるとはな……《第五福龍丸》のような悲劇を起こさない為にも、周辺に航行している船舶があれば最大速力で海域より離れるよう達してくれ」
「了解」
進藤はポケットの中に入れていた発射解除キーを取り出すとパネルにある鍵穴に差し込む。
進藤「現時刻を持って、18式発射安全装置を解除する!」
キー回すと赤に点灯していた18式の表示灯が緑に切り替わる。
進藤「発射弾数1、スイッチは……俺がやる…罪を被るのは俺だけでいい」
スイッチの前に立ち安全カバーを開くと進藤はトグルスイッチに親指をかける。
進藤(この1発で……敵は……第2艦隊は……亡き者となる……)
このスイッチを押せば一瞬にして何千人と言う数の将兵の命を奪う事になると考えるとどうしても踏みとどまってしまう。
しかしだからと言って撃たなければマイカル港に敵の侵入を許す事になる。
覚悟を決めた進藤は目を開ける。
進藤「……神よ……どうか我ら日本人を許したまえ……」
その瞬間、統一戦争後初めて…日本人の手によって…核兵器が使用されるのだった。
ハープーンと同型のランチャーから発射された18式対艦反応誘導弾の1発が第2艦隊へ向けて飛翔していった。
「反応弾、発射を確認」
進藤「急速転舵‼︎本海域より全速で離脱するッ‼︎」
発射を確認したあきづきはマイカル方面に艦首を向けると38ノットという快速で離脱を開始した。
『敵艦、逃走する模様!』
ミレケネス「逃走だと?」
『待ってください!直前にロケット兵器と思われるものを発射!1発がこちらに向かって飛んできます‼︎』
「1発だけだと?」
「馬鹿め、我々を沈めるならもっと数を頼むのだな!」
核兵器という概念すら持たない彼らは大した危機感も抱かずにいたが、ミレケネスは先程の交信で聞いた『戦略兵器』というのが引っかかってしょうがなかった。
ミレケネス「ともかく敵は撃ってきた訳だ。対空戦闘用意!」
「対空戦闘用意‼︎」
命令を飛ばされ、各部にある高角砲・機銃群が報告にあった方向に砲身を向ける。
「前方から白い槍のようなものが飛んできますッ‼︎」
見張り員の報告を受けた艦橋要員らは双眼鏡を覗いてそれを確認すると、確かに飛翔物体が1発海面スレスレをこちらに向かってきていた。
ミレケネス「アレはおそらく直前で急上昇して逆落としに来るはずだ。仰角を上げて対応できるようにしろ!」
命令を受けて各砲座は仰角を上げて予想されるエリアに砲身を向けて待機する。
そして案の定ソレは艦隊の鼻の先で突然上昇し、マストより高い高度から急降下で迫ってくる。
「射撃用意ッ‼︎」
ミレケネス(所詮は虚仮威しか…)
急降下してくる飛翔体を見ながらミレケネスはそう思った。
ミレケネス「撃t」
「撃て」と言おうとしたその瞬間だった。至近距離で懐中電灯を照らされたかと思うほどの眩い閃光が辺りを包むと同時に強烈な放射線を含む熱波が彼らを襲った。
爆発で艦上構造物を薙ぎ払い、人を焼き焦がし全てを亡き者にする光がミレケネス達第2艦隊へと降り注いだ。
無論当人らは最初の閃光と熱波を一瞬受けた時点で何が起こったのか……いや、自分達が死んだという事を把握しないままあの世へと送られたのだ。
進藤「神よ……」
巨大なキノコ雲が上がるのを現場海域から離れたあきづきのCICから見ていた進藤らあきづきの乗組員らは苦い物を感じていた。
進藤(いくら敵が引かなかったからとはいえ……やはり気持ちのいいものではないな……)
帽子を被り直して再びモニターに目を向ける。
進藤(これがゲームの中とかだったらお遊び気分で済んだだろうな……)