レイフォル陥落から数日が経過したグラ・バルカス帝国帝都ラグナ。
ラグナの中央官庁街にあるニブルス城では、レイフォル陥落に関する緊急の臨時国家安全対策会議が開かれていた。
「以上が、レイフォルに関する報告になります」
ジークスは、レイフォルから帰還したランボールから提出されたファンターレからの報告書とランボール本人の報告書を元に作成した最終報告書を読み上げる。最終報告書に記載された内容に、会議室内は重苦しい空気が漂う。
「ヒノマワリに続いてレイフォルまで………」
「新型超重戦車や新鋭艦グレードアトラクターを投入しても勝てなかった……………我々は容易ならざる敵を相手にしているのか」
ここ一年で外征している帝国陸海軍の敗報が続けざまにもたされ、帝国本土とレイフォル間での通商破壊に起因した産業力と経済力の低下、帝国陸海軍の活動力の低下、第2文明圏による一方的な国交断絶、既に帝国上層部に現状を楽観視している者は一人もおらず、ほぼ全ての者が頭を抱えている状況である。
ルークス「今後について皆の意見を聞きたい。意見がある者は余の事に関しては遠慮する事なく申してみよ」
今まで沈黙を守っていたグラ・ルークスの言葉に、会議室に居る全員は何とか意見を出そうとするが、咄嗟には浮かばない。
そんな状況が30分程続き、やがて室内の緊張がピークに達した時、ある人物が意を決して手を挙げる。
ルークス「何か良いアイデアがあるのか?」
「はい」
手を挙げてその場で立ち上がったとある議員は率直な意見を述べた。
「陛下。恐れながら申し上げてますが、これ以上の戦略的行動は無駄だと考えます」
ルークス「……そうか」
議員は話を続ける。
「まず第1に我々は戦力を失い過ぎました。陸軍は凡そ4割以上の戦力をムー大陸だけで失い、海軍に至っては本土防衛艦隊を除く9割以上を喪失。この中には先程言われた通りグレードアトラスター級、そしてグレートギャラクシーも含まれております……」
ルークス「確かに……連合軍に捕虜として捕まっている者を除いても被害の方が大きいな……」
「次にこれは直ぐに影響が出るという訳ではありませんが、資源についてです。現在我々はパガンダやその他占領地、植民地から資源を本土へと運び込んでいますが、先のレイフォルへの資源輸送が自由連合に壊滅的な被害を受けた事を考えますと同じような事をされれば我々になす術はなく、国民や我々は飢えと資源不足で帝国が崩壊させられるでしょう」
議員の言っていた事に対して誰も反論する様子は無かった。
カイザルが生前研究して残した自由連合軍に対する報告書が自室に残されており、それが既にルークスを含むトップの人間達の間には内容も知れ渡っておりまさにその通りだっだからだ。
「つきましては陛下、連合軍との和平を……」
ルークス「……」
「このまま無理押しを続ければいずれ帝国は保ちません陛下ッ‼︎どうか‼︎」
議員はその場で殺されるのを覚悟で意見を言うと同時に土下座をしてまでルークスに懇願した。
ルークス「分かった。其方の熱意は受け取った」
「へ……陛下!」
ルークス「確かに民あっての国家だ。儂はこの世界へとやってきてからそのような事も忘れていた……」
ルークスはそういいながら席を立って窓の外に見える帝都の街並みとそこにいる人々に目を向ける。
ルークス「致し方あるまい。民に武器を持たせて戦わせるようであってはそれはただの暴君だ。諸君、交渉のテーブルに着く時がきたようだ。遂にツケが回ってきたか……」
「「ハッ……‼︎」」
レイフォル奪還を果たした第2文明圏を中心とした国連軍は戦闘終結から一週間後、旧レイフォル総督府庁舎にてグラ・バルカスの代表者との和平協定が結ばれた。
その内容は第2文明圏及びムーへ向けての部分が強かった。
それと言うのも日本、日本帝国、アメリカ、イギリス、オーストラリアの5カ国は軍事的支援を行っただけに過ぎず、自国領への被害というのは皆無であった為、自由連合が何かとやかくグラ・バルカスに要求すると言う事は無かった。
この日、旧レイフォル総督府庁舎では交渉の同意についての最終確認と和平協定にサインを行う最終交渉が行われていた。
「ではこちらの協定文書に双方のサインをお願いいたします」
第2文明圏各国と自由連合各国から派遣されてきた代表と、グラ・バルカス側の代表であるシエリアが互いに作成した休戦協定文書にサインし、互いに交換する。これを以て、グラ・バルカスと第2文明圏、自由連合との間で公式に休戦が交わされたのであった。
交渉締結における内容は以下の通りである。
① グラ・バルカス帝国は保有する陸海軍全部隊をパガンダ島を除くムー大陸と第2文明圏からの完全に撤退させる事。
②今回の戦闘に於ける双方の捕虜の交換は1ヶ月以内に全て完了する事。
③グラ・バルカス帝国と連合軍は今回の戦闘に於ける責任者の追求をしない変わりに、賠償金を支払う事。額については今後第2文明圏と協議にて決定する事。
④今後双方に於いて突発的、計画的軍事的行動が発生または発生する可能性が高い場合は双方にて緊急協議を行い平和的解決に勤める事。
⑤事前の協議なく双方の軍事勢力による軍事行動はこれを禁止する。但し、自然災害時に被った被害の復旧活動に軍事力が必要な場合には事前の協議なしに緊急性が高いと判断されれば、協議の必要ない。
⑥ムー大陸とグラ・バルカス帝国本土間の航路に於ける国連軍の通商破壊作戦はグラ・バルカス帝国陸海軍のパガンダ島を除くムー大陸と第2文明圏撤退を確認した後、直ちに中止するとするが以後はグラ・バルカス帝国も潜水艦や軍艦による第1、第2、第3文明圏各国への通商破壊行動を一切を中止し各国の領海から直ちに撤退する事。
⑦双方とも今後の貿易活動に影響を及ぼす行為を行わないと確約する。しかし、グラ・バルカス帝国又は第1、第2、第3文明圏の何れかの国が事前の協議無しに再び軍事行動に出た場合はこの確約は失効する。
⑧レイフォルの統治については一時的に第2文明圏へ帰与され、以後は独立国として第1文明圏と第3文明圏各国からの3分の2の賛成が得られ、自治権獲得まではムー国が中心に経済・軍事支援を行う。
⑨前項の全ての停戦内容は今後4年毎に双方が協議を行い、内容の緩和と規制強化等の更新を行う事とする。
以上の9つの条項について双方が同意を交わした事で『レイフォル和平協定』と命名され、この条約を結ぶまでの自由連合とグラ・バルカス帝国との戦闘を『第一次異世界大戦』と後の世では呼ばれるようになった。
ともかく、これによりムーと第2文明圏は再び平和を取り戻す事ができた。
それに至るまでの傷跡は酷い物もあるが、それを乗り越えてこそ真の平穏が来ると人々は信じていた。