自由連合召喚   作:短号司令官

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驚愕に満ちた接触

 

港湾基地を出発した調査軍は衛星写真と地図を頼りにアルヌスへと進んでいた。

 

途中で会う現地民とのやりとりに四苦八苦しながらも3日後、ついに「帝国」と呼ばれる隣国へと入った。

事前にエルベ藩王国から聞いた話によると「攻め込んだ国・部族と一旦協定を結び、直後に連絡の不備や時間差から起きた偶発的な問題を理由にして反故にする」という騙し打ち的な戦略を持つ国であると注意を受け、調査軍は警戒しながら前進していく。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

アルヌスより60km地点

 

この地点に調査軍は野営地を設け、ある事を協議していた。

 

「さて…ここまで来たはいいが…問題は彼らとどう接触するかです」

 

第1独立装甲連隊を指揮する「前田景侍」一佐はふと疑問を口にした。

 

「やはり、正面に全軍を展開させるので言いと思うが?これだけの数だ。仮に相手が戦闘に踏み切ろうとしてもこの目に見える物量で圧倒できる」

 

アメリカ陸軍の最高指揮官であるオマール・ブラッドレー中将が合衆国らしい意見を出してきた。

 

栗林「中将、相手を刺激するのは危険かと。我々の目的はあくまでも彼らとの接触であって戦闘ではありません」

 

ブラッドレー「それは分かっていますとも。だが他に何か良い方法があると?」

 

彼にそう言われた栗林は第七師団長の大内田陸将にある事を聞いた。

 

栗林「陸将、目標の駐屯地にどのような装備があるか分かりますか?判明している範囲で結構ですので」

 

大内田「確かに確認できる範囲では…74式にF-4…C-1…コブラ…軽装甲機動車……ぐらいでしょうか?それくらいかね、一佐」

 

前田「はい。これらの装備から推測を立てたのですが、彼らの駐屯地内部にあるドーム状の建造物から輸送トラックが入ったり出たりを繰り返しているのが確認できるので、この建造物内部に別の日本と繋がっている《出入り口》のようなものがあるも我々は推測を立てました。よって彼らはこちらの地域で使える装備が退役を検討しているか衛星が無くても使用に支障のないような物しか使えないと考えました」

 

それを聞いた栗林は笑みを浮かべて頷いた。

 

栗林「であれば陸将、彼らがこちらの世界に持ち込んでいない装備で彼らの前に現れるというのはどうでしょう?」

 

それを聞いた将校達は興味深かそうな表情を浮かべて栗林の方に視線を向ける。

 

大内田「つまり……10式や86式で接触してみては……と?」

 

栗林「はい、ですが戦車では少々インパクトが薄くなる可能性もあります。そこで……」

 

一拍の間を置いて栗林はある提案を口にした。

 

栗林「貴官ら自衛隊の"アパッチ"を駐屯地内に侵入させるのです」

 

「「⁉︎」」

 

ブラッドレー「ほほぉ!それでどのように?」

 

それを聞いた大内田と前田は目を見開いて驚くが、ブラッドレー中将は乗り気な様子だった。

彼に聞かれた栗林は具体的な説明を行った。

 

栗林「まず、アパッチを2〜3機をアルヌスに向かわせます。しばらく基地上空を旋回してもらい、うち1機には低空に降下してもらい1〜3分間ほどその場で空中停止を行います。それからは帰還という形で」

 

「なるほど…中々面白そうですな!」

 

英陸軍のモントゴメリーも笑みを浮かべて答えた。

 

前田「確かに案としてはいいですが……危険が大きすぎるのでないでしょうか?……陸将」

 

前田に聞かれた大内田はしばらく腕を組んで唸り声を上げて考えていた。

確かに栗林の案であれば存在しない筈の装備を見て彼らが戸惑いつつも自分らの存在を認知するのは確実だ。

しかし気が動転した相手から対空ミサイルでも撃ち込まれたらそれこそ戦端を開きかねない。

 

「陸将、良かったら我々の機もお出しします」

 

そう言って彼に声をかけたのはハーレイ中将であった。

 

大内田「しかし……!」

 

ハーレイ「リスクは少しでも軽減したほうがいい。我々も同行します」

 

大内田自身彼とは演習で何度も顔を合わせており、互いに気心を知った仲である。

仲間の為とあれば彼は一度決めた事をそう簡単に曲げたりはしない。

 

大内田「……分かりました。栗林閣下の案でいきましょう」

 

こうして接触方法は決定され、実行へと移されるのだった。

 

 

 

 


 

 

 

 

翌朝4時

 

まだ日も出ていない暗がりの中、4機のAH-64が暖機運転に入っていた。

 

ガンナーの「吉村良弥」が機に乗り込もうとした時、突然誰かから呼び止められた。

 

栗林「君、すまんがこれをアルヌスに落としてきてもらえないか?」

 

彼を呼び止めたのは栗林であり、彼の差し出した手には通信筒が握られていた。

 

吉村「通信筒……ですか?」

 

栗林「えぇ、君の機が基地内に降下すると聞いて。彼方の指揮官殿へ届けてくれませんか?我々の事を記した物です」

 

吉村「ッ……!」

 

栗林から通信筒を受け取った吉村は見事な敬礼をし、栗林もそれに対して答礼した。

 

 

間も無く陸自2機、豪陸軍2機のAH-64が徐々に明るくなり始めた空へと舞い上がって行った。

 

ある者は帽子や鉄帽を振って見送り、またある者は期待と不安を持って彼らを見送った。

 

上空に上がってアルヌス方面へと向かう4機のAH-64。

 

そのコックピット内で通信筒を受け取った吉村は緊張していた。

 

「緊張してるか?吉村」

 

彼に声をかけたのは後方で操縦桿を握る「伊東樫郎」が声をかけた。

 

吉村「してないわけないだろ。さっきからバクバクだよ」

 

伊東「俺もだ。ところで栗林閣下から受け取った()()、ちゃんと落とせよ?ハッチを開けすぎると俺らが撃たれる可能性があるからな」

 

吉村「任しとけって」

 

4機のAH-64はそのまま段々と昇る朝日を浴びながら少しずつアルヌスへと接近していった。

 

『目標視認ッ‼︎』

 

同行するもう1機のアパッチからの通信を受けると同時に目標の駐屯地を視認した。

 

吉村「見えた…」

 

伊東「一気に行くぞ…腹括れよッ‼︎」

 

操縦桿を倒してAH-64はやや前傾姿勢をとりつつ前進していく。

 

 

 


 

 

 

瞼を擦りながら兵舎から一人の隊員が現れた。

見た目はどこか頼りなく見える彼の名は『伊丹耀司』

 

生粋のオタクでありながら、レンジャー資格を持っていたり元特戦群だったりする。人は見かけによらない物だ。

 

伊丹「ふぁ〜……あ?」

 

欠伸をしながらふと視線を上げて見ると何かがこちらへと向かって来ているのが見えた。バタバタと音を立てている事からヘリかと思ったが、夜間にここら発進した機はいない。かと言って周辺警戒の為にコブラが出ていたわけでもない。

 

だがそのローター音と影が徐々に近づいてくるのが分かり、目を凝らして見てみた。

 

伊丹「なんだ……?」

 

外観は攻撃ヘリそのものであるが、よく見ると機首がコブラにしては武骨な形状でローターの上にはレーダーが取り付けられていた。

 

伊丹「あれって……⁉︎」

 

そう言ったのと同時にそれは彼の頭上を飛び抜けていき、彼もその正体を理解する。

 

伊丹「AH-64…⁉︎」

 

 

 

上空に飛来した4機は2組に分かれる。

片方が時計周りに、もう片方が半時計周りに駐屯地上空を旋回する。

 

流石にこれほどのローター音が響けば基地中の隊員達が屋外に現れ始め、その光景に目を疑う。

 

 

志乃「ヘリ⁉︎一体誰が…⁉︎」

 

倉田「待ってください…あれって……アパッチ⁉︎」

 

富田「なんでAH-64がこんなところに……⁈ここじゃ使えない筈なのに……」

 

続々と現れる駐屯地の隊員達は飛来したAH-64を見て驚きを隠せないでいた。

 

健軍「一体何処の誰があんなモン持ち込みやがった……⁉︎」

 

第4戦闘団団長の建軍が双眼鏡越しにアパッチを見ながら言う。

 

用賀「ッ‼︎一佐、あれを‼︎」

 

用賀ニ佐に言われて別のアパッチに双眼鏡を向けて健軍は自分の目を疑った。

 

健軍「バ……馬鹿な……オーストラリア陸軍だと……⁉︎」

 

 

 

驚きに包まれた彼らを他所にAH-64は次の行動に出た。

 

伊東「いよいよやるか……吉村ァ‼︎」

 

吉村「はいッ‼︎」

 

伊東は操縦桿を右に倒して駐屯地の中心へと向かった。

そこで彼はホバリングを開始すると同時に徐々に高度を落として言った。

 

伊東「150…140…130…120…110…100……90………80」

 

段々と低くなる高度を聞きながら吉村の緊張は最骨頂に達していた。

だが彼自身は武器システムには手を出さず、栗林中将から託された通信筒を両手で握りしめていた。

 

伊東「50………40……35………25………10mッ‼︎」

 

高度10mでホバリングしていれば相手の顔が見えると言う物で、既にお互い視認距離にいる。

 

吉村は辺りを見回すと陸自隊員や銀色の鎧に身を纏った女性騎士らと目があった。

 

吉村は勇気を振り絞ってハッチを10cm程開けて、受け取った通信筒をポトリと地面に落とした。

 

吉村「落としましたッ‼︎」

 

そのままハッチを閉めて吉村は伊東に大声で報告する。

 

伊東「よしッ‼︎」

 

それを聞いた伊東は操縦桿を上げて再びアパッチを上昇させ、上空で待機していた残りの3機と合流し来た方向へと引き上げて行った。

 

吉村「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

 

気がつけば彼は身体中、汗ビッショリになっていた。

 

吉村(生きた心地がしなかった……)

 

 

 


 

 

 

 

一方、アパッチが退避した後のアルヌス駐屯地は鳩が豆鉄砲を食らったかのように全員が唖然としていた。

 

「アレは一体なんだったのでしょうか、殿下…?」

 

飛び去っていくアパッチを見ながら『ボーゼス・コ・パレスティー』は『ピニャ・コ・ラーダ』に問いかける。

 

ピニャ「分からん。一見するとジエイタイの仲間のように思えたが…ん?」

 

彼女はふと吉村が落とした通信筒に気が付き、それを拾って手に取る。

 

ピニャ「なんだ……これは?」

 

彼女のこの行動が、その後の帝国と伊丹達自衛隊の運命を大きく変えるなどとは彼女自身は思いもしなかった。

 

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