自由連合召喚   作:短号司令官

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栗林閣下を描いていると渡辺謙さんの演じる栗林閣下が頭をよぎります。
『硫黄島からの手紙』の影響でしょうか……


対面と現状

 

アパッチのアルヌス突入から1日が経過。

調査軍は栗林中将の手紙が相手側の指揮官に届いている事を信じて全部隊を前進させる。

 

大内田「しかし……本当に大丈夫でしょうか?」

 

土埃を上げながら次々と前進していく戦車群を前に大内田は栗林に問いかける。

 

栗林「信じましょう。彼らも日本人です、きっと大丈夫です」

 

そう言って栗林と大内田は軽装甲車に乗り込み、戦車群の後に続いていく。

 

 

 

 


 

 

 

一方のアルヌス駐屯地。

 

執務室で特地方面派遣部隊指揮官の『狭間浩一郎』陸将は鼻腔を摘まみ、頭を悩ませていた。

 

その原因とも言うべきものは昨日のAH-64と同機が落としていった通信筒であった。

 

当初は別の場所に『門』が開いたのかと考えられていた。

 

だが直後にピニャが伊丹を通じて通信筒を渡して来た事で事態は一変。

内容を見た狭間や柳田らは言葉を失った。

 

要約すると「我々はこの世界に転移して来た者です。貴方方とは異なる歴史を歩んだ20世紀の日本帝国、アメリカ、イギリスと21世紀の日本国とオーストラリアです。我々は貴方方がこの世界へと来る以前に国際組織『自由連合』を結成しました。我々自由連合は貴方方との接触を望みます」と言った内容であり、到底理解できるようなものでは無かった。

 

狭間はこれを政府に報告すべきかと悩んでいた。

 

それというのも、現在特地方面派遣部隊は非常に危機的な状況に置かれている。

伊丹二尉とテュカ、レレイ、ロゥリィら3人の行動でこの地で多発している地震の原因が門が開け続けられている事が原因とされ、政府の方針次第では自衛隊が撤退せざるを得なくなる可能性がある。

 

また敵対した『帝国』て皇太子がクーデターを起こし、ピニャとその父皇帝モルトがイタリカで帝国正統府を宣言したばかりなのだ。

 

特地側としては講和反対派との決着をつけたいと思うが、政府としては貴重な自衛隊をこちらに残したくないのだ。

 

そんな中でのこの事態だ。

 

そのせいで狭間は朝から胃と頭が痛かった。

 

狭間「どうしたものやら……」

 

頭を抱えていた狭間のところに突然、幕僚の柳田二尉が慌てた様子でやって来た。

 

柳田「陸将!大変です‼︎」

 

狭間「二尉、すまんが後にしてくれ……」

 

柳田「それどころではありませんッ‼︎ここから5km地点に物凄い数の戦車や装甲車が‼︎」

 

狭間「何ぃッ⁉︎」

 

狭間は直ぐに立ち上がって聞き直した。

 

狭間「数は⁉︎」

 

柳田「確認できる限りでは…戦車だけでも1000輌以上…」

 

狭間「……まさか……」

 

彼はそう言って机の上にある『栗林忠道』の指名が入った手紙を手に取る。

 

柳田「ともかく来てくださいッ‼︎」

 

狭間「分かった……直ぐに行く。守備隊には絶対に発砲するなと伝えろッ‼︎」

 

柳田「既に伝えてあります。しかし、隊員達が野次馬になりつつあります……」

 

 

 

門の外には小銃を持った隊員らが出ていたが、彼らは特地に来て以来最も緊張していた。

彼らの目の前には地平線を覆い尽くしそうな数の戦車、装甲車、輸送車、自走砲が無数に展開している。

 

敵意がないのか砲身は下げたままではあるが、いつになく彼らは緊張していた。

 

健軍「なんて数だ……まるでここを攻め落としにでも来てるみたいだ…」

 

用賀「ここにある74式を全て出しても壊滅は確定ですね……」

 

普段なら強気な二人も目の前に大軍を前に流石にそうはいられなかった。

 

現在隊員らと共にアルヌス防衛が主任務の第5戦闘団も守備に出ていたが、彼らの顔も自信がなさげな様子だった。

 

志乃「凄い数……一体どんだけの戦車がいるの…⁈」

 

富田「……どうやら昨日のAH-64の出所も彼らのところのようですね。見てください」

 

志乃「?」

 

そう言って富田から双眼鏡を受け取ると彼が指差した場所を見る。

 

富田「見えます?」

 

志乃「あれって……10式⁉︎」

 

彼女の視界に入ったのは特地では使えない筈の最新鋭戦車「10式戦車」があった。

 

志乃「何がどうなってるの……?……アイツら自衛隊なの…⁈」

 

倉田「そういうわけじゃなさそうですよ…」

 

横から倉田が口を挟んだ。

 

倉田「10式もそうですけど、90式みたいだけど若干違う戦車もいます。それに……」

 

伊丹「……アメリカ陸軍のM60、イギリス陸軍のセンチュリオン、オーストラリアの国旗が入ったエイブラムス、それに見たこと無い旧軍っぽい戦車もある」

 

倉田「一体どうなってるんでしょう…?」

 

伊丹「さぁな、いくら考えても連中の頭の中が分かるわけじゃないし」

 

 

 

 

一方でアルヌス側と睨めっこをしている連合調査軍は……

 

「連隊長、一体いつまでこのままでいるんですか?」

 

86式の中で聞かれた前田は答える。

 

前田「さぁな…ん?」

 

ふと目を向けると栗林中将、大内田陸将ら各軍の指揮官らが前方に出て拡声器を取り出していた。

 

大内田「よろしいですか…?」

 

指揮官らが無言で頷くのを見て大内田は拡声器のスイッチを押した。

 

大内田『こちらは陸上自衛隊第七師団師団長の大内田和樹です。そちら側の指揮官の方、聞こえているようでしたら応答をお願いします!』

 

ひとしきり呼びかけをして2、3分程待っていると返答が返ってきた。

 

狭間『こちらは陸上自衛隊特地方面部隊指揮官の狭間浩一郎です。大内田師団長、よく聞こえております』

 

返答があった事に安堵した大内田は続けて呼びかけを行う。

 

大内田『我々は貴方方とする戦闘の意思はありません。宜しければ会談を提案したい!』

 

この提案を聞いた派遣群側は動揺した様子だった。

 

柳田「どうしますか…?」

 

狭間「交戦の意思は無いと彼らも言っている。それに彼らが何者かを知る必要が我々にはある」

 

狭間は拡声器を持ち直して大内田らに再び呼びかける。

 

狭間『そちらの提案に賛成します。どうぞいらして下さい!』

 

それを聞いた指揮官らはほっと息を吐いたり、互いに手を取り合って静かに喜んでいた。

 

大内田『ありがとうございます!差し支えなければ、こちらから安全の為一個連隊をお連れします!ご了承ください‼︎』

 

狭間『……分かりました』

 

確認した大内田は拡声器のスイッチを切り、前田の乗る86式の方に駆け寄ってくる。

 

大内田「一佐、すまんが我々を連れて中まで行ってくれるか?」

 

前田「やり取りは聞こえてましたから、直ぐにでも出せます」

 

大内田「ありがとう!」

 

そう言って5人の指揮官らはそれぞれ86式や10式に乗り込んで、大内田は前田の乗る隊長車の86式に乗り込む。

 

前田「いいですか?出します‼︎」

 

大内田「行ってくれ」

 

前田はそう言って深呼吸をして命令を下した。

 

前田「連隊前へ‼︎」

 

掛け声と同時に彼の指揮する第1独立装甲連隊が動き出し、隊長車を先頭に見事な車列を形成した。

 

倉田「ほぁ〜〜…」

 

伊丹「すげぇ……」

 

道を開けた伊丹らは傍から駐屯地内へ次々と入っていく86式を見て感嘆の声を漏らしていた。

 

駐屯地内に入った連隊は演習さながらの手際の良さで車輌を駐車させ、各車輌から大内田らが降りてくる。

 

大内田「改めまして、陸上自衛隊の大内田和樹です」

 

栗林「日本陸軍第3機甲師団長の栗林です」

 

ブラッドレー「合衆国陸軍第2師団指揮官、オマール・ブラッドレーだ」

 

モントゴメリー「英陸軍第2軍団のバーナード・モントゴメリーです。宜しく」

 

ハーレイ「オーストラリア陸軍第1旅団のヘンリー・ハーレイです」

 

一通りの自己紹介を聞いた狭間が今度は自己紹介をする。

 

狭間「陸上自衛隊特地方面部隊指揮官の狭間浩一郎です。ようこそお越しくださいました。早速ですが、ご案内します」

 

狭間の後に続いていく中、大内田は前田を呼び出す。

 

大内田「一佐、何があっても発砲してはならんからな」

 

前田「それが分からない程バカじゃありませんよ。閣下もお気をつけて」

 

大内田「すまんな」

 

そう言って大内田は建物の中へと入って行った。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

応接室に入り、5人と狭間は向き合って会談を行った。

 

まず、大内田が狭間に自分達『自由連合』とは何者か、またそれを結成するに至る経緯やこの異世界にそれぞれの国家の国土が転移し、様々な国家との戦争に巻き込まれてながらも互いに強め合い、脅威を打ち破って来た事。そして衛星でここを見つけてやって来たことを話した。

 

栗林「ご理解いただけましたか…?」

 

狭間「いや……ご理解も何も……信じられません……」

 

大内田「まぁ無理もないでしょう。同じ日本であるのに全く異なる歴史を歩んでいるわけですから」

 

狭間「その点は確かにそうですが、国土が異世界へと飛ばされたという点はまだ納得できます」

 

モントゴメリー「と言われますと?」

 

今度は狭間が彼らに自分達がこの地に居る理由を語った。

突如現れた異世界の軍勢により多くの市民が巻き込まれた「銀座事件」

この世界を「特地」と名づけ、膨大な資源の確保と事件で連れ去られた市民を救助するべく自衛隊が派遣され、様々な問題を解決する内に今度は退避するかもしれない状況下にある事を狭間は話した。

 

ハーレイ「なんと……」

 

ブラッドレー「………」

 

栗林「……事件の被害者の方にお悔やみを申し上げます」

 

狭間「いえ、閣下。頭を上げてください」

 

大内田「なるほど……概ねそちらが置かれている状況は把握しました。申し訳ありません。そのような状況下であるとも知らずに」

 

狭間「いえ、皆様に責任はありません」

 

モントゴメリー「ところでそちらの日本政府にはなんと我々の事を伝えるおつもりで?」

 

狭間「……現状私としては伝えるつもりはありません。仮に伝えたとしても政府もそれどころでは無いので情報が上手く伝わらない可能性もあります。熱りが冷めるのを待って伝えようかと」

 

ブラッドレー「なるほど、確かにその方がいいでしょうな。下手に我々の事を伝えようものなら余計混乱を呼び、そちらの世界で大戦を引き起こしかねませんからな…」

 

ハーレイ「だが貴方方は政府の方針次第では撤退させられるのでは…?」

 

狭間「我々は政府の方針に口出しできるような立場にはありません。ですが撤退命令が出ても従わない隊員が多いかと」

 

大内田「…………」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

6人の将校達が真剣な話をしている中、外で待機を命じられた第1独立装甲連隊は…

 

前田(大丈夫かね……)

 

前田は砲塔に頬杖をついて上の空で青空を眺めていた。

ふと気配を感じて右側に目をやると入る時に見た伊丹らがいた。

 

前田「何か用かい?」

 

伊丹「あぁ…!すいません」

 

前田「いや、いいさ。名前は?」

 

86式から降りながら彼は伊丹達に話しかけた。

 

伊丹「伊丹耀司、階級は二尉です」

 

志乃「栗林志乃です。宜しくお願いします」

 

倉田「倉田武雄です!階級は二等陸曹です」

 

富田「富田章です」

 

前田「俺は前田景侍。階級は一佐、第1独立装甲連隊の指揮官だ」

 

伊丹「こちらこそ」

 

富田「それにしてもでかい戦車ですね。我々の持ってる90式とは少々異なるようですが…」

 

前田「90式?何言ってんだ、こいつは86式だ。ウチには90式なんて戦車はないよ」

 

志乃「え?86式……?」

 

予想外の返答に志乃は思わず声を上げる。

 

倉田「90式は無い……?」

 

富田「確かに言われてみたら、一佐の仰る"第1独立装甲連隊"という部隊も聞いた事がありません」

 

前田「やっぱりなぁ……」

 

そう言いながら前田はヘルメットをとって頭を軽く掻いた。

3人が頭にハテナを浮かべていると、横にいた伊丹が口を開いた。

 

伊丹「あの、もしかして一佐の日本と俺達の日本って歴史が違ったり?」

 

前田「おぉ。中々鋭いじゃないの二尉」

 

彼はヘルメットを被り直しながら彼の方に視線を向ける。

 

前田「その通り、俺達とオタクらの日本は歩んだ歴史が違う」

 

そう言って彼は小一時間程かけて4人と話しながらお互いの日本の違いについて話した。

 

まず四人が驚いたのが太平洋戦争からだ。

彼らの歴史では大敗したレイテ沖海戦を前田らの日本は勝利している点。次にソ連が日本侵攻を行い、その影響で日本が南北に分断された歴史。

 

自衛隊が北海道を舞台にした北海道戦争やベトナム戦争、湾岸戦争といった近代の戦争にも参戦している点。

 

そして限定的ではあったが核戦争となった統一戦争。

四人はそこで米海軍四個航空艦隊が核攻撃で壊滅したという事実に言葉が出なかった。

 

しかし戦後、日本が再び統一され現在に至るというところまでを話した。

 

前田「……とまぁこんな感じかな。感想は?」

 

富田「いや……なんと言えばいいか……」

 

志乃「信じられません」

 

二人の反応を見た前田もそうだろうと静かに頷く。

すると伊丹と倉田から質問を受けた。

 

倉田「すいません、一佐一ついいですか?」

 

前田「なんだ?」

 

伊丹「沖縄特攻が大和じゃなくて武蔵が行ったなら大和はどうなったんですか?」

 

前田「あぁその点言ってなかったな。大和は健在だよ。今も海自で現役のイージス戦艦として活躍してるよ」

 

倉田「イ…イージス戦艦⁉︎」

 

倉田がやや興奮した様子で彼に聞き直した。

 

前田「あぁ。それだけじゃねえ、オタクら世界じゃ建造されなかったであろう、大和を超える戦艦。紀伊と尾張もいるぜ、コイツらは51cm砲を搭載した戦艦だ」

 

富田「ご……51…⁉︎」

 

志乃「そんなに凄いの?」

 

伊丹「凄いも何も…大和の主砲より遥かに強力だ」

 

倉田「まさか…その二隻も……」

 

前田「そのまさか。イージスシステムを載せて現役バリバリさ」

 

「「す…すげぇ〜!」」

 

思わず伊丹と倉田は声を揃えて言った。

志乃はそれを見て若干引いていたが、富田も珍しく興味ありげな表情をしていた。

 

前田(やれやれ…まぁ浪漫が分かる奴ならマシか……)

 

そう思いながら前田は沈みゆく夕日に目を向けていた。

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