ファルマート大陸での戦端が終わり、無事に勝利を収めた自衛隊と新政府、そして自由連合軍。
少なからぬ被害は出たが大勝を収めはしたが、自衛隊側の被った被害も無視できるような物では無かった。
日本国
首相官邸
官邸の執務室で一通りの報告を見ていた藤堂は笑みを浮かべて幕僚長の方に視線を向けた。
藤堂「無事に終わったようだな」
東郷「はい。我々連合も途中参加とはいえ、終結に一役買えて良かったです」
藤堂「だが、主な講和相手であるあちらの日本とは連絡不能。おまけに派遣された自衛官らが取り残される……」
東郷「致し方ありません……」
藤堂「………」
すると藤堂は無言で引き出しから一枚の紙を取り出し、それを東郷に手渡す。
東郷「これは…?」
藤堂「何も言わずに一度それを読んでくれ、幕僚長」
そう言われた東郷は内容を目で追って読み進めていく。
読み進める内、東郷は目を大きく見開き藤堂に顔を向ける。
東郷「総理……まさか、こうなる事を予想して…⁉︎」
藤堂「まさか、私は予知能力者なんかでは無いよ。ともかくその内容を派遣軍司令の狭間陸将に伝えてくれ」
東郷「分かりました。直ちに…!」
足早に部屋を出ていく幕僚長を見ながら藤堂は何処か笑みを浮かべていた。
その表情はまるで幼子が友達と遊ぶ事を楽しみにしているような表情だった。
ファルマート大陸
アルヌス駐屯地
無事に抗戦派との戦いを終えた自衛隊。
現在は駐屯地や各地の地震からの被害の復興に明け暮れていた。
ただ派遣群以外にも、調査軍が各地の調査や復興にも手伝ってくれているお陰で派遣群自体の負担はかなり少なかった。
駐屯地の壁は今後同じような事態を引き起こさないよう一度全て取り壊す事になり、門があった場所は空爆によりクレーターまみれになったものの修復により更地に戻っている。
駐屯地の南側にあったアルヌス協同生活組合によって作られた商業街も一時は蟲獣の影響で被害を受けたが、現在は概ね復興しつつあった。
狭間「良かった。これで彼らもまた元の生活に戻れるな…」
双眼鏡で商業街の様子を見ていた狭間は安堵の息を漏らした。
ただ反対に彼の心は不安があった。
政府からの命令変更により、希望者のみが特地に残る筈がそれ以外の人員も残りおまけに日本との連絡や行き来、補給すらできない状況に陥った。
いつまたあちらと繋がるのかも分からないままここで過ごす事を考えると不安が立ち込めていた。
大内田「浮かない顔をされてますな、狭間さん」
狭間「あぁ大内田さん」
彼に声をかけたのは調査軍の大内田であった。
狭間「いや、彼らの街が復興してるのは良いことなんです。しかし…我々は厳しい状況下に置かれました」
大内田「……本国との連絡、往来の不可についてですな…」
狭間「はい、帰還者らが置いて行った武装や燃料。備蓄してある食料にも限りがあります。次いつあちらと繋がるのか分からない現状、我々は今後苦労するでしょう…」
大内田「………」
狭間「隊員達も、今は大丈夫でも日本に帰れない不安等で精神的にも…」
大内田「……狭間さん、それについて実は朗報が…」
狭間「朗報?」
そう言うと大内田は懐から封書を取り出して狭間に渡した。
大内田「我が日本国首相藤堂優作総理から、貴方方特地派遣隊に宛てた物です」
そう言われながら狭間は大内田から受け取った封書を開けて中身を読み始めた。
狭間「……なっ……!大内田さん…これは…‼︎」
大内田「それが総理の判断です。例え生まれた世界が異なろうと、我々は自衛隊であると同時に日本人です。助けない訳がありません」
狭間「大内田さん…!」
狭間は大内田の差し出した手をがっしりと握りしめて涙を流していた。
その晩
富田「周辺地域の被害や復興も予定より早く進んでいるようです。やはり自由連合の連中が居てくれたお陰ですね」
伊丹「だな。まさかアンナ連中がこの世界に先にいたなんて、今見てもまだ信じられない部分があるよ」
食堂で話していた伊丹達はそう言いながら視線を連合軍の米兵や自衛隊員らの方に向けた。
倉田「それにしても俺たちどうなるんすかね?」
志乃「そこはレレイ次第でしょ。まだ門について詳しく調べる必要があるんだし」
伊丹「そこなんだよなぁ……一応あっちにも
ただあまり時間をかけられないのが事実だ。
燃料や食料はどうにかなるが、弾薬については限りがある為あまり悠長にしてられないのが事実だ。
そこへ放送が入り、狭間陸将の声が聞こえてきた。
狭間『諸君、1日ご苦労だった。疲れを癒やしている最中だが君たちに重大な報告がある』
重大な報告と聞いて隊員達は一旦手を止めて耳を傾ける。
狭間『我々は現在、特地に取り残されており再開通の目処は立っていない。次いつあちらと繋がるかも分からないままここで過ごす事を考えると我々はどうしても不足する物が多く出てくる。燃料や食料、弾薬が特にそうだ。だが先刻、連合軍の大内田陸将を通じてこちらの日本国首相である藤堂総理から我々に対して以下の提案をされた』
そう言って狭間は大内田から受け取った手紙を取り出し、読み始めた。
狭間『"拝啓、狭間陸将以下特地派遣部隊の皆様。私は日本国首相の藤堂優作であります。この度の貴官らの活躍は嬉しく思う反面、その代償として貴方方の置かれた立場を非常に憂いに思います。門の閉鎖、そして再開通までの目処が立たない中で様々な面で苦境に立たされる事を危惧し、以下の提案を提示させていただく。内容は再開通までの間、貴官ら派遣部隊を我が国の自衛隊とし、管轄下に置く事』
「「⁉︎」」
まさかの提案に派遣部隊の隊員達は驚きを隠せない一方で、調査軍の隊員らは当然のような反応で放送を聞く。
狭間『またそれに際して基地への燃料、弾薬、食糧等の補給を行うと同時に、隊員らの給与の支払いや休暇の取得。希望する者の我が日本への渡来を許可する事を提案したい"…との親書を受け取った。私はこの藤堂総理からの提案を受け入れようと思う』
「「うぉぉぉぉ‼︎」」
それを聞いた隊員らは歓声を上げて喜んだり、唖然としていた。
志乃「え…えっとつまりどういう事……?」
訳が分からず困惑する志乃に富田が説明する。
富田「つまり、この世界にいる日本が我々に対して補給や給与の支払いをし、日本本土に来ても良いって言ってるんです」
志乃「マジ⁉︎」
倉田「やったっすよ隊長‼︎これで俺達助かりましたよ‼︎」
伊丹「あぁ……それだけじゃねぇぞ、倉田」
倉田「へ?」
何かを忘れているような事を言われて倉田は一瞬伊丹の方を見ると、彼は両膝をついて手を組んで言った。
伊丹「コミケにも行けるぞ……」
倉田「ッ‼︎」
それを聞いてハッとしたような表情を見せた富田。
倉田「隊長ぉぉぉ‼︎」
伊丹「やったぞぉぉぉぉぉお‼︎」
ここに来て以来初めて大喜びする二人を見て志乃はやや引いていた。
志乃「やっぱりおかしい……このオタクな隊長が特戦群で空挺出身なんて……」
富田「それがリアルってものですよ……」
その晩、アルヌス駐屯地には歓声が響きわたるのだった。