伊丹「えっと……陸将、今なんと……?」
日本からの提案を受け入れて一月後のアルヌス。
伊丹は狭間から直々に呼び出され、ある事を伝えられていた。
狭間「だからな、二尉。君を含む自衛官複数名と君が連れてる例の3人、そしてピニャ殿下と帝国からの特使らと共にあちらの日本に行って欲しい……そう言ったんだ」
伊丹「………嘘でしょ…」
こうして伊丹耀司は連合日本へと行く事が決まった。
1週間後、準備を済ませた一同の迎えに来たのは1機オスプレイであった。
富田「V-22オスプレイ。我々の世界じゃあ使われてない装備ですか…」
倉田「あっちの日本ってどんだけすげぇんだよ」
テュカ「わぁ…これもヒコウキ?」
伊丹「うーん…違うと言えば違うし、なんて言えばいいんだ?」
レレイ「天馬の一種?」
栗林「あぁそう!そんな感じ」
特地側も自衛隊側も初めて目にする機体に興味深々の様子な一方。
ピニャ「…もう一つの日本……」
ピニャは正直まだ理解が追いついていなかった。
伊丹や自衛隊からこの世界にも別の日本が転移してきていたと聞いた時は正直言って信じられなかった。
だがレレイやロゥリィが転移に関する知識があり、自身もお伽話程度には信じていた事、それに同じ自衛隊でありながら伊丹達とはまるで違う戦い方や武器の数々に目を丸くさせてばかりだった。
興味というかそれに近しいものと国交の締結という目的を持って行くのだ。
キャビンに乗るとローターが周り機体が浮かび上がる。
倉田「おぉ…」
ボーゼス「う…浮いた…⁈」
伊丹達は経験した事のある浮遊感であったが、ピニャ達にとっては初めての感覚に戸惑っている様子だった。
アルヌスを出たのが昼過ぎだった為、港湾基地に到着した頃のは夕方であり一同はそこで一晩を過ごした。
翌朝
「おはようございます。昨晩はよく眠れましたか?」
担当官が朝一とは思えない爽やかな笑顔で問いかけてくるのを見て内心驚きつつも彼らは答えた。
伊丹「えぇお陰様で」
ボーゼス「また今日も空から行くのですか?」
「いえ、今日から数日間は船旅になります。陸自の方はともかく、皆さんは船酔いというのは…」
担当官がロゥリィやピニャ達に聞くも彼女達は頭にハテナを浮かべている様子だった。
ピニャ「フナヨイ…?」
伊丹「あぁ…えっとだな」
長年内陸で過ごしてきた5人への説明をした伊丹。
内容は理解してくれたが、不安があるとしてレレイの魔法で三半規管を強化した上で埠頭へと向かった。
ピニャ(異なる歴史を歩んだとはいえ、彼らの日本もイタミ殿達並のものを…)
そう思いながら、角を曲がった先で特地の人間達は息を呑んだ。
富田「おぉ……!」
志乃「ほぇ〜……」
倉田「すっ……げぇ……‼︎」
伊丹「これが」
彼らにはある意味見慣れたものであったが、ピニャ達特地の人間達は言葉を失っていた。あのロゥリィでさえも驚愕の表情を浮かべていた。
ボーゼス「で……殿下……」
ピニャ「こっ……これは……」
目の前に浮かぶそれを果たして
彼らの常識で行けば、船というのは木製で帆を張ってある。
流石に日本である為そんなものではないだろうとは思っていたが、目の前のそれは常軌を逸していた。
一言で言えばそれはまさに海に浮かぶ城塞。
圧倒的な巨艦、塔のように聳える艦橋、そして目に見えるあちこちに砲塔があるが最も目を引いたのは甲板上にある最も巨大な砲塔だ。
ピニャ「まるで……城塞ではないか……これは一体……⁉︎」
驚く彼女達の横から突然声が聞こえてきた。
「1941年。今から訳80年前に生を受け、半世紀以上に渡り我が国を守り続けてきた日本の守護神、その一人です」
視線を向けると白を基調とする海自の制服に身を包んだ一人の佐官がいた。
ピニャ「ニホンの…守護神…?」
「その名は"大和"。日の本の名を持って生まれ、日の本の為に戦う船です」
倉田「えっと…どちら様ですか?」
「申し遅れました。私は日本国、海上自衛隊護衛艦やまとの艦長を務める伊藤誠二郎です」
海軍式の敬礼をする伊藤に伊丹達は陸軍式の敬礼で応えた。
富田「まさか艦長さんが自らお出ましとは…」
伊藤「いえいえ、余り人を待たせるのは私の主義に反するのでね。それにせっかくの乗客だ。顔を覚えておきたくてね」
笑みを浮かべて話す伊藤にテュカが話しかけてきた。
テュカ「私達、コレに乗るの?」
やまとを指さして言う彼女。
伊藤「えぇ、その通りです。本当ならさらに巨大な"きい"に乗ってもらいたかったのですが、生憎先にハワイに帰投してしまったので。それでも皆さんにとってはインパクトは充分でしょう」
ボーゼス「イトウ殿、先程貴方はこの船が80年前に生まれたと言ったが……」
伊藤「事実です。ただ最初からこのような姿だったわけではありませんがね。さ、間も無く出港です。詳しくは艦内で」
タラップを登って甲板上に上がるとより細部まで見る事ができた。
倉田「確かに艦橋は大和の面影を残してるみたいですね……やっぱりイージス艦なんですよね?」
伊藤「よくご存知で、ん?」
ふと目を向けるとロゥリィ達が主砲塔に群がっているのが見えた。
伊藤「やはり、気になりますか?」
レレイ「イタリカでセンシャを見たけど、これも同じ?」
伊藤「構造は凡そは同じです。ですが破壊力は戦車の比ではありません」
ピニャ「アレ以上に強力だと……」
驚愕しつつも一同は艦内へと入っていった。
艦内は流石軍艦というだけあって狭く、ロゥリィのハルバートを通すのにも一苦労した。
部屋に荷物を置いて整理をしていた頃、やまとは出港した。
やまと以下第一任務機動群と他の艦隊は沖合にて合流、対潜対空警戒を厳としながら、悠々と碧海を南下していった。
伊丹「……」
部屋で伊丹はこれから行く日本についての資料に目を通していた。
最初は並行世界という事で若干心を躍らせながら年表と詳細を見ていたが、それは段々と打ち消されていった。
最初こそレイテ沖海戦の差異や沖縄沖で大和ではなく武蔵が沈んだ点など興味深く読んでいたが、その後のソ連による北海道上陸やそれによる南北日本の分断と北海道戦争の辺りでやや曇り始めていた。
伊丹「中々シビアだな……」
その後の憲法の違いにより、自衛隊がより行動を起こしやすくなっている事やベトナム戦争への参戦。
湾岸戦争への参加、そして限定的とはいえ核戦争になった統一戦争とその後の南北日本の統一。
これだけの歴史を歩んでいれば必然的に彼らが強くなっているのも納得できた。
伊丹「なるほどね……」
いつしか彼の心には同情心があった。
しかし事態は数日後に起きた。
ほうしょうから上がっていたE3Bの報告によると、帝国の植民地のある方向から多数の帆船の艦隊がこちらに向かっているのと報告を受けた。
伊藤はピニャ達の話とそれらを照らし合わせ、植民地に居た抗戦派の連中が決起したものだろうと判断、応戦を決意。
「宜しいのですか?」
伊藤「何がだ?」
副長の問いかけに伊藤が言う。
「彼らを載せたままで。流石に負ける事はありえないとは思います。しかし…」
伊藤「まぁいいじゃないか。あちらの陸自さんはともかく、特地の人間達に我々の戦いを見せられる願ってもないチャンスだ。利用させてもらおう」
そう言うと伊藤は帽子を被り直して笑みを浮かべた。
やまとはきりしま、おおなみ、まきなみ、あさひを引き連れて当該海域へと進出。自慢の60口径46cm砲の射程内に敵を捕捉した。
ピニャ「いくらこの船が大きくても……イトウ殿、勝てるのですか?」
薄暗いCICで状況を不安視していたピニャは伊藤に投げかける。
伊藤「確かに、戦いは数で決まると言います。しかし…」
伊藤はそう言いながらディスプレイに映し出された敵艦隊に視線を向ける。
伊藤「それは技術力が同等であった場合の話。副長」
「はい」
伊藤「奴らに教えてやれ。何を敵に回し、何と戦おうとしていたかという事を」
「分かりました。砲戦用意ッ!」
「了解、砲戦よぉーい」
副長の命令が発せられたのと時を同じくして、この恐るべき艦は瞬時に脅威度を搭載したコンピュータ・システムによって判定、自動的に目標を過剰なまでに搭載した主砲に副砲、近接防御火器へと割り振っていく。
「主砲各砲塔、全火器、射撃準備完了」
「射撃開始。繰り返す、射撃開始」
無数の号令がCIC内を飛び交う中、ピニャ達はある一点のモニターに映し出されたそれを眺めていた。
それは前甲板全体が映るように装着された定点カメラからの映像であり、被弾時の損傷具合を確認するのが目的のその映像には、甲板にて目撃したあの極大な主砲塔が2基、背負い込み式で設置されているのが旋回している様子が映し出された。
放物線を描くように投弾する必要すら無いと言わんばかりに砲身の水平を保ったまま旋回し終えたとき、伊藤は力強く言い放った。
伊藤「撃ち方、始めぇ!」
それと同時に、前甲板で発生する巨大な火炎と轟音、そして黒煙が、映し出される映像と振動、そして防音されても尚聴こえる砲声によってCDC内の人間にも衝撃を伝えた。
それは伊丹達が、ピニャ達特地の人間達が自衛隊の兵器を目の当たりにした時以上の衝撃と轟音が彼らに伝わった。
テュカ「ヒッ‼︎」
余りの砲声にテュカは耳を塞いでその場にしゃがみ込んでしまった。
ピニャ「こっ……これは⁉︎」
ロゥリィ「あぁ……はぁぁぁあ」
余りの衝撃波にピニャは狼狽し、ロゥリィは何処か興奮した様子だった。
一斉射で放たれた9発もの砲弾は敵に対して過剰なまでの破壊力を叩きつけ、純粋な運動エネルギーと1トン近い炸薬の炸裂による衝撃で至近弾のみですら転覆、航行不能となる船を無数に出してしまう結果となった。
ピニャはその中で自船の至近距離へと着弾した船が衝撃によって引き起こされた波で転覆する姿、その近くで砲弾片を喰らって船体が真っ二つに裂けた船、そして直撃によって存在が消滅した船を目撃し、驚嘆した。無慈悲で、何よりも暴力的で、それでいて何故か美しくも感じていた。
倉田「す……すげぇ……!」
志乃「あ…圧倒的……」
富田「これが世界最大の主砲…」
伊丹「46cm砲の……艦砲射撃……!」
伊丹は鼓膜と脳裏に焼き付いたエネルギーに男としての何かを感じ、それを口に出した。
それを聞いたCICの人々が彼らに笑みを向ける。オリエンタル・スマイルではない。大切な玩具を友達に見せびらかした時の様な顔だ。
伊藤は少し独特な声で言った。
伊藤「我らがクラブへようこそ。伊丹二等陸尉」