晴れた日はウィッチと共に
日本国
宮崎県 日向灘沖
新田原基地所属第305飛行隊所属のF-15CJ改*12機と第202飛行隊のF-35B2機が飛行任務についていた。
『いい天気だな…』
地元宮崎出身の今田慶次一等空尉:コールサイン『クーガー1』は雲一つない晴天を見渡しながらぼやいた。
今田『原田、そういえばこんな話を知ってるか?』
不意にウィングの『クーガー2』原田紀夫二等空尉に問いかけた。
今田『丁度30年前くらいにな、同じ新田原所属の当時のパイロット達の話でな。そのときもこんな風に天気が良かったらしいんだ』
原田『ほぉそれで?』
今田『太平洋上の訓練空域から戻る途中によ、一瞬だが異世界に行ったみたいな話があるんだよ』
原田『あぁ噂程度には。あれって本当なんですか?』
彼は今田に問いかけた。
今田『さぁな。俺も爺さんや基地司令から聞いたぐらいでな。司令が当時ここでパイロットしてたらしいんだ。まぁ当事者から聞いただけらしいんだが』
新田原基地にはこのような逸話(?)が有り、現在でも全国の空自オタク達の間では語り草になっている。
機体が燃料切れにより海没したが、フライトレコーダーは回収された。
その内容についても現在に至るまで開示されていない。
原田『真相は闇の中ってわけですか…』
原田がぼやいているが、新田原所属の若手達の間ではある程度知られている。そのまま飛行していると宮崎市上空が見えてきた。
大きく湾曲した大淀川を跨いで市が存在しており、地方都市に比べたら小さな田舎街といった所だ。
『こちらウィザード03。前方に磁場反応を検知』
今田『何ぃ……?』
F-35からの通信を受けて前方に目をやると灰色の雲が見えてきた。
雨雲にしては色は暗く、規模も小さかった。そして何より赤い稲妻が所々迸っていた。
原田『な……なんだ…』
今田『各機、距離を取って…『なんだ⁉︎』⁉︎』
F-35からの通信を聞いた今田。
雲の方に目を向けると突然中から二つの影が現れて彼らの間を通過していった。
今田『な…なんけぇ今のは…⁉︎』
今田は思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。それも無理もない。なぜならそこには足に機械をつけ、耳と尻尾を生やしたセーラー服の少女が通過していった。
原田『今田さん‼︎前‼︎』
今田『⁉︎』
次に彼らが目にしたのは『Me 262 シュヴァルベ』であった。
『ブレイクッ‼︎』
誰かが本能的に叫んだのを聞き、今田も操縦桿を倒して散開した。
6〜7機いたシュヴァルべの内、6機が今田達に襲い掛かり残る一機は先程の少女を追いかけていった。
今田『ッ‼︎クソッ‼︎』
対応が遅れたが為に彼の乗るF-15は背後を取られた。
咄嗟に彼は基地に無線を入れた。
今田『こちらクーガー1!所属不明の敵機の襲撃を受けている‼︎交戦許可を‼︎』
『落ち着け、クーガー1。状況を報告しろ』
今田『ありのままを話す。敵は旧ドイツ軍のMe-262 シュヴァルべです‼︎』
『ドイツ軍の…?』
今田『冗談じゃないんだ‼︎許可を…』
彼がそう言いかけた時だった。機体の計器から被レーダーロックを警告するアラームがコックピット内に鳴り響く。
今田『は……?』
シュヴァルべは翼下からミサイルを発射してきた。
彼は咄嗟にフレアを放出してミサイルを交わした。
今田『司令ッ‼︎』
『交戦を許可する!』
それを聞いた彼は待ってましたと言わんばかりに機体速度を上げて素早く旋回し、シュヴァルべの背後に回り込むとレーダーロックをかけた。
今田『クーガー1 Fox-2‼︎』
機体の半没式弾倉から99式空対空誘導弾を一発を発射。
これを見たシュヴァルべのパイロットはすぐにフレアを放出し難を逃れたが、そこへすかさず二発目を発射。
今度は正面からの飛来だった為回避する間も無く日向灘の空に爆散した。
今田『こちらクーガー1。原田無事か?』
原田『こちらクーガー2。無事です。ウィザード02、03も無事みたいです』
今田『分かった。俺は最初に見たお嬢ちゃんの方に行く。ここは任せた』
原田『了』
機体を反転させた今田機は直ぐに太平洋方面へと飛んでいった。
先程の少女こと宮藤芳佳は、左腕から出血しており袖を真っ赤に染めており傷口を抑えながら飛行していた。
(治癒魔法が……使えたら……)
普段であればこれくらいの傷は『治癒魔法』で直ぐに直すのだが、敵に追われている現状ではそれはできない。
銃撃を受けそうになるがこれを回避した。
だがその動きはやっとといった様子で、回避しただけで息が上がっていた。
宮藤「ハァ……ハァ……」
振り返ると戦闘機のパイロットがこちらに狙いを定めいた。もう避けられる程の体力は無かった。
宮藤(リーネちゃん……みんな……ッ‼︎)
咄嗟に腕で目の前を覆い死を覚悟した次の瞬間だった。
突然爆発音と僅かな熱波が飛来するだけで痛みも何もこなかった。彼女は恐る恐る腕を退けると戦闘機は木っ端微塵に吹き飛んでおり、それがいた場所には黒煙だけが漂っておりそこから別の戦闘機が現れた。
宮藤「あの戦闘機が……助けてくれた……?」
今田『間に合った……!』
彼の乗るF-15はすんでのところでシュヴァルべを吹き飛ばし、芳佳を守る事ができた。
今田『お嬢ちゃん。聞こえるかい?』
宮藤「は、はい!」
今田『無事か……って聞いても無事じゃあなさそうだな……』
今田の視界には彼女の真っ赤に染まって袖が入っており、何を意味しているのか瞬時に察した。
今田『俺は敵じゃない。自己紹介は後にして、一旦俺について来てくれ。手当を』
宮藤「いえ……自分で……ハァ……ハァ……」
今田『その様子じゃあ何処かに降りて治療を受けた方がいい、それも早急に』
彼はそのまま芳佳の飛ぶ速度に合わせて飛行して新田原基地へと誘導した。
新田原基地
基地ではある程度の事情を聞いた衛生兵や作業員らがスタンバイしており、地元の消防署から急遽借りてきた救助マットを配置していた。
「見えました‼︎」
待機していた隊員の声を聞いて源田裕次郎司令は双眼鏡を覗き込む。
そこにはF-15に遅れて本当にケモ耳と尻尾が生え、脚に変な機械をつけた芳佳がふらつきながら降りて来ていた。
源田「本当だったのか……」
今田『あそこの黄色マットみたいなのが見えるな?君の着陸に必要なものが無いからあれで受け止める。あそこに飛び込むんだ‼︎』
宮藤「は……はい」
出血多量に長時間の回避を含む飛行によって彼女の意識は既に朦朧としていた。だがちゃんと何処に降りれば良いか今田が指示したお陰でちゃんと救助マットのある予備滑走路の方へと向かっていた。
そして意識が途切れる直前、やっとの思いでマットに不時着することに成功したのだった。
今田『よかった……』
無事マットに降りたのを見届けた今田も着陸するのだった。
衛生兵によって運び込まれた芳佳は直ぐに基地内で治療を受けるのだった。