ダイダル平野の基地より難民保護を兼ねた敵部隊の偵察のため各偵察隊は基地より続々と出発していく。
「良い空気だ」
自衛隊・帝国陸軍双方の偵察隊から編成された第1偵察小隊40名は、草原をギム方向に向けて移動していた。
隊を指揮する『林亮介』1等陸尉は、指揮車である82式指揮通信車の車内から工業排煙に汚染されていない空気を吸い込む。
林「いかがですか、竹一少佐」
林は隣に座る帝国陸軍将校『西竹一』少佐に話しかける。
西「えぇ確かに上手い空気です。もしウラヌスを連れて来れたなら、目一杯走らせてやれそうです」
西はかつてロサンゼルスオリンピック(1930)で日本史上初の馬術大障害飛越競技にて金メダリストとなった腕前の持ち主である。
そんな彼は現在は編成された連合偵察隊の陸軍側の指揮官として共に乗車している。
西「ところで林一尉、現在位置は?」
偵察隊はその場で停止し、現在位置の確認を行う。
林「現在位置は…………ダイダル基地からギムの町へ続く街道の中間地点ですね」
西「もう既に敵の勢力圏の間近に居ると言う事か………避難民との接触前に敵と接触したら不味いな。ここから10キロ進んで何も無かったら引き上げるとしよう」
「「了解」」
それから30分後、目的の10キロ地点に到着した。
「隊長、目的の10キロ地点です」
林「周囲を警戒」
隊員達は車両の上から辺りを見回す。周囲には草原しか見えず、特にこれといった形跡も見当たらない。
「周囲、何もありません」
西「そうみたいだ。じゃあ引き揚げ…」
「隊長!」
その時、レーダー車の乗員から無線連絡が入った。
林「どうした!」
『西の方角より多数の高速移動物体を探知!』
西「数は?」
『低速の移動物体が300、高速移動物体が100程です』
地上レーダー装置が複数の人影を捉えた。上がってきた報告から西は300程の移動物体は避難民で、追い掛けてくる100の物体は敵部隊であると直感した。
林「少佐」
西「間違いない、避難民だ。総員戦闘用意‼︎一尉、基地に連絡を取って攻撃ヘリを寄越すよう言ってくれ」
林「任せてください」
直ちに無線でダイダル基地へ報告と航空支援要請が行われる。
偵察隊は戦闘態勢に入り、避難民達が向かってくる方向へ車両を走らせる。82式に変わって、火力と防御力がある87式とホハ、89式が前に出た。
89式に乗り移った西は砲塔から上半身を出して双眼鏡を覗く。
西「目標捕捉!」
彼が睨んだ通り追手から逃げている様子の避難民とそれらを追い回すロウリアの騎兵集団だった。明らかに避難民が危機に晒されていると判断した。
西「砲手、目標は前方の敵騎兵だ。撃ち方用意‼︎」
「ですが⁉︎」
西「責任なら私に押し付けてくれて構わん‼︎撃てぇ‼︎」
困惑しながらも陸自隊員は西の言葉に従ってトリガーを引く。
避難民と騎兵集団の間に割り込むようにして入った89式は35mm機関砲を、87式が25mm機関砲を撃ち、最後にホハが九二式重機関銃を撃ちまくる。
先頭に居た数名が一瞬で肉片にされたのを見て敵も一瞬足を止める。
「なっ なんだテメェら⁉︎」
西は89式から降りるのと同時にホハからも陸軍兵が降りて彼の横に並んで三八式を構える。
西「我々は日本帝国陸軍及び陸上自衛隊である!ロウリア王国騎馬隊に警告する。我々の前から立ち去らない場合、貴様らをここで射殺する‼︎」
西はありったけの大声で敵集団に警告を発する。
「帝国陸軍だぁ⁉︎どこのどいつか知らねぇが、邪魔するならテメェらも八つ裂きにしてやるぜ!」
「構わねぇ!アイツらもまとめて潰せ!」
敵集団は警告に耳を貸す事はなく突っ込んできた。
西「射撃用意!」
「射撃用意‼︎」
ボルトハンドルを回して弾薬を装填して狙いを定める。
西「まだまだ……よぉい……撃てッ‼︎」
西の号令と同時に一斉引き金を引いて三八式実包が撃ち出されて敵を次々に倒す。
ある者は九九式軽機関銃の連射で敵を薙ぎ払い、またある者は八九式重擲弾筒で4〜5人を纏めて吹き飛ばしていく。
林「間に合った‼︎各員、下車戦闘‼︎」
林達も戦闘に加わり64式小銃・ミニミ軽機関銃を取り出して応戦する。
「よしッ‼︎当たれぇ‼︎」
ある陸軍兵はどうやって持ち込んだか知らないが九七式自動砲という当時の対戦車ライフルを取り出してはそれを撃ち込んで上半身を2、3人分吹き飛ばしたり、馬の頭を木っ端微塵にして見せた。
西「撃ち続けろ!」
林「味方が来るまで難民達を守るんだ!」
林も82式からM2重機関銃を撃ち、西も三八式を借りて撃ちながら指示を飛ばす。
「な、何なんだ………」
「彼等は一体………」
偵察隊の戦闘の様子を見ていた避難民達は突然現れた彼等に驚きを隠せないでいる様子だった。
ギムの町から命からがら逃げ出した彼等は、数日掛けて首都へ移動しようとしていた所をロウリア軍の東部諸侯団から先発した威力偵察部隊のホーク騎士団に発見され追い回されていた。
荒くれ者の集まりで、尚且つ強いと評判の当部隊の事を知っていた避難民達は命を掛けて必死に走り続けたが、徐々に距離を詰められ、逃げられない、殺されると思い覚悟しようとした瞬間に、偵察隊の登場によって一命を取り留め、力が抜けて動けなくなっていた。
「見てみろ……彼等の右腕を」
誰かがそう言って、陸自隊員達が着ている迷彩服の右腕に縫い付けられた日本の国旗が印刷されたワッペンを見た。
「あれは……太陽だ!太陽のシンボルが書いてあるぞ!」
「本当だ!太陽のシンボルだ!」
「伝説の太陽神の使い達が来てくれたんだ!」
「神様に感謝だ!神様は我々を見捨ててはいなかった!太陽神の使い達が助けてくれたんだ!」
難民達は銃声や爆発音に負けないような大声で、偵察隊に向けて喜びの声と感謝の声をあげる。
そんな中後方から爆音が聞こえ振り返ってみる。
林「あれは……」
援護のヘリが来たかと思ったがそれは違った。
大型の双発機に機首には4本の銃身が飛び出て、窪みの中から一本の砲身が突き出ていた。
西「B-25…アメリカ陸軍か……」
林「だが爆撃機では…」
彼がそう言った瞬間、B-25の機首から突き出た砲身が光ったのと同時に爆音が響く。
すると敵集団が爆発と同時に一瞬にしてバラバラになった。
「ただの爆撃機かと思ったか⁉︎Nothing‼︎コイツは襲撃機だぜ‼︎」
アメリカ人パイロットがそう言ったのは理由がある。
林が爆撃機と勘違いしたそれはB-25Hと呼ばれ、機首に75mm砲一門に12.7mm機関銃を4丁装備した低空襲撃機だったのだ。
75mm砲を撃つと次に12.7mm機銃が一斉に火を吹いて敵集団を挽肉にしていく。
「HAHAHA‼︎イヤッフゥゥゥ‼︎」
他にも防護用として機体各所に取り付けた機関銃で地表に向けて歓喜の雄叫びと共に機銃掃射をしかけて次々に倒していく。
林「スゲェ……」
西「流石はアメリカさんだ、やる事が派手だな」
75mm砲弾・12.7mm弾によって粉々に吹き飛ばはれるホーク騎士団。彼等は自分達の身に何が起きたのかも正確に把握しないうちに、機銃掃射の前にして一人も残さず全滅した。
その後B-25Hは上空を二、三回旋回した後、偵察隊に手を振られながらダイタル基地の方へと帰還していった。
「少佐、ダイタル基地からです。先程の機は周辺を飛行して居た者のようです。救援要請を偶々聞いて我々の元に駆けつけてくれたそうです」
西「そうか、それはありがたい。だが君達のヘリコプター隊の仕事を取ってしまったような気もするが…」
林「細かい事はいいんですよ。あの人達が無事なら誰が仕事しても変わりませんよ」
偵察隊はダイダル基地へ彼等を移送する輸送ヘリが到着するまで、保護した難民の救護に入る。
西「我々は日本陸軍の者です。あなた方はギムの町の方でしょうか?」
西はそう問い掛け、避難民のトップらしきエルフの男性が答えた。
「はい。我々はギムの町から逃げてきました」
林「そうでしたか。ではこれよりあなた方を保護するため我が基地へおいで頂きます。怪我をしている方はいらっしゃいますか?」
名乗り出る者は居なかった。避難民達の何人かは移動中に転んだり具合が悪くなっている者が居るが、ホーク騎士団を殲滅した偵察隊をまだ警戒している様子だった。
「あの………」
そこへ、一人のエルフの子供が進み出た。
西「なんだい?」
「おじさん達は、太陽の人ですか?」
「「太陽の人…………?」」
突然の質問に二人が顔を見合わせて首を傾げていると、西の副官が耳打ちをした。
「少佐殿もしかしたら、陛下のことを指しておられるのでは?」
西「そうか……」
太陽の人=天皇陛下だと推測した西は、自分達はその従者という事にしようと考えた。西は林の方を見る、林はそれを察してその子供に向けてしゃがみ、視線を合わせて笑顔で答える。
林「そうだよ。俺達は君の言う太陽の人の従者だよ」
そう答えた途端、避難民達がどよめいた。
林「あれ?……何か変な事言いました?」
西「いや、大丈夫だと思うが……」
すると突然、避難民達が織田達の前にひれ伏した。
林「え?ちょっと……?」
「やはり貴方達は太陽神の使いの方達だったのですね!まさか生きていてそのお姿を見れようとは」
「これは神様による思し召しじゃ!神様は我々弱き者の味方じゃ!」
難民達は口々に偵察隊を神のように称えたりする。
林「少佐…どうしますか。これ?」
西「どうすると言われてもな……」
村人達を見て若干顔を引き攣らせながら、西は考える。
西「仕方ない……話を合わせる他ない」
林「ですよね…」
その後、ダイダル基地から飛んできたCH-47JAチヌーク6機が到着したがその際村人達は『神様の船に乗るなどバチが当たる』と言って中々乗ってくれず林達は頭を抱えるのだった。