アフリカ大陸 ジブチ自由軍基地
第三帝国がこの世界に転移してからまだ一年程度しか経っていなかった事もあり、その魔の手は西アジア方面にまで及んではいなかった。
だがアフリカ北方はエルヴィン・ロンメル麾下のアフリカ軍団が一帯を蹂躙。統合軍はなすすべも無く敗北を重ねていた。
それを見かねた自由軍がまだギリギリ敵の手に堕ちていなかったジブチに陸軍の前線基地を、ソコトラ島に戦略空軍基地を建設し反抗に移ろうとしていた。
マッカーサー「敵の指揮官はあのロンメルですか…」
司令室で作戦の打ち合わせをする中、マッカーサーが呟いたのを一同は聞き逃さなかった。
山下「砂漠の狐……彼らも異なる歴史を歩んでいるなら、経験値は我々と同等か上と見るべきなのか…」
大内田「敵の武器に関しても未知数な点が多い。StG44をほぼ全ての兵士が装備している点を見ると、純粋な戦闘力は我々と互角です」
部屋が重苦しい空気に包まれる中、総指揮官のアイゼンハワーが立ち上がった。
アイゼンハワー「確かに敵の戦力に不安はある。だからと言って本作戦を中止する訳にはいかん。この一戦が今後の戦局を大きく左右すると言っても過言ではない!諸君らの活躍に期待する」
アイゼンハワーが敬礼するとそれに倣ってマッカーサーらも応礼した。
3日後の2月7日
エジプト・カイロ解放作戦『アイアン・ストーム』が発令された。
作戦の第一段階としてエジプト一帯の制空権を確保すべく、ソコトラ島から発進した戦略爆撃隊とジブチとマッサワに展開していた空自と各空軍が発進し、空爆とその護衛に向かった。
アメリカ空軍よりB-47及びB-72が、日本空軍より富嶽、空自からF-3。
護衛にはF-15CJ改、F-5、F-15、ライトニング、海燕といった名だたる戦闘機達が護衛についていた。
E-737
爆撃隊の後方から空域全体を監視していた豪空軍のE-767が異常を探知したのは、第一目標のアシュート基地付近に到達した時だった。
『レーダーに敵影を探知。数70、さらに上空警戒に当たっていたと思われる敵機が多数接近』
『護衛機は直ちに迎撃せよ』
通信を受けた戦闘機隊はパイロンのドロップタンクを切り離し、直ちに戦闘に入る。
先頭にいたカナダ空軍のF-5がミサイルの射程内に敵を捕捉した。
レーダーディスプレイには目標を示す白点が無数に映っていた。
『Fire』
翼下のパイロンに付けられたAIM-120 アラームを発射した。
それに続いて周辺の味方も次々と発射した。
ディスプレイに再び目をやると前衛と思われる敵機が幾つか消えていくのが見えた。
「これなら空自やアメリカの出番はないかもな…」
『間も無く視認距離に到達』
前方に目を向けてパイロット達は驚いた。
敵は報告にあったシードラッヘンかメッサーだと思っていたところ、目の前に現れたのはフォッケウルフであった。
『嘘だろ…あんなので俺たちと戦うつもりかよ…』
『可哀想だが、連中には地獄を見てもらおうか』
パイロット達は口々に言うがこれには訳があった。
これまで独軍が相手してきたのは統合軍のレシプロ機やウィッチが大半であり、最新型で無くともフォッケウルフであれば十分に圧倒できた。
その影響もあってか、新型機の納入は急がれず前線部隊の一部では未だにウルフの部隊が主力であった。
『ウィスキー1
差は歴然だった。
幾ら加速性能が自軍機と比べて良かろうが、それをも上回る機体が出てきては話が別だ。
あらゆる性能で上位に立つF-5は不用意に格闘戦に持ち込もうとはせず、AIM-9の発射タイミングを的確に見極め各個に敵を撃破していた。
ミサイルが無くなろうと機首の20mm機関砲がある、一撃離脱を心得た彼らは一機一機確実に堕としていく。
一方で、爆撃隊は二手に分かれていた。
B-72とF-3はアシュートを無視してさらに北上、富嶽とB-47はそのままアシュート上空へと飛来した。
アシュート基地では独軍兵士らが蜂の巣を突かれたような様相でいた。
サイレンが鳴り響く中、対空戦車が滑走路付近に展開し、8.8cm高射砲が仰角を上げて空を睨む。
「な……なんて高度だ…」
双眼鏡を除いた一人の兵士が言葉を失った。
目標の爆撃隊は敵の対空砲火を予測し、高度1万からの空爆に変更。
また後世日本での帝都空襲の一件を踏まえて、爆撃隊上空にF-15が展開し上空からの敵に備える。
「爆撃コース良し、各機爆弾倉開け」
富嶽に搭載されたコンピュータのお陰でコースは自動修正される為、後は搭乗員が投下スイッチを押すだけである。
「全機、爆撃開始!」
B-47、富嶽から投下された爆弾の総重量は1200tにも及びアシュート基地はものの数分で壊滅した。
またカイロ基地に向かったB-72も爆撃を敢行していた。
「それにしてもイギリスはまたcrazyな物を作ったな…」
「全くですよ、何せ母体があのグランドスラムだそうですぜ?」
B-72の爆弾倉には2発の新型空対地ミサイルが搭載されていた。
その名も『AGM-90 スーパーマーベリック』
その母体にはイギリスが開発し、一定の成果を収めた『グランドスラム』が使われており、破壊力をそのままにロケットモーターを搭載した一種の巡航ミサイルであった。
仕組みはAGM-86と似ているが破壊力は断然こっちの方が上である。
「さぁてナチ共、これでも喰らってねんねしな‼︎」
AGM-90の発射に連動するようにF-3もAGM-65を発射した。
ミサイルはレーダーにこそ捉えられたが、迎撃機が上がるよりも先にレーダーサイトをAGM-65が破壊。
次いでAGM-90が慣性航法装置と地形参照航法装置を頼りに滑走路に次々と着弾。
修復不能と言わしめるレベルのクレーターを作りだし、カイロ一帯の制空権を奪取するのに成功した。
「閣下、大西司令より入電。敵航空戦力の無効化を確認。貴官らの活躍に期待する"以上」
アシュート基地周辺まで進軍していた自由軍陸上部隊は戦車や装甲車、歩兵らを乗せた兵員輸送車、その上空にはUH-60、CH-47等の汎用輸送ヘリとAH-88、AH-64といった攻撃ヘリで固められており『総力戦』に相応しい物量だった。
栗林「では少将。参りますか」
パットン「えぇ砂漠の狐に我々の実力をいやと言うほど味合わせて上げましょう」
前田「全軍、前進開始ッ‼︎」
前田の合図と共に陸自、帝国陸軍、米陸軍を主体にした戦車軍団が前進を開始。
「いよいよか…」
ハンヴィーの運転席からDCU迷彩戦闘服を着用したマット・エバーンズ軍曹が呟いた。
マット「皆、準備はいいか?」
彼はそう言って後部座席に座る『船坂弘』と『フォレスト・ヴァーノン・クレンショー』、銃座に立つ『リチャード・ライデン』に声を掛けた。
船坂「やる気、気合い共に十分さ」
フォレスト「やれと言われた以上、やるしか」
ライデン「何弱気な事言ってんだよ伍長。そんなの当たり前だ!俺達は軍人だからな」
各々話す様子を見て安堵するのを見たマットは助手席に座る巫女姿の女性に話しかけた。
マット「君はどうだい?少佐」
彼が話しかけたのは加東圭子少佐。扶桑皇国陸軍所属のウィッチだが、今の彼女は従軍記者であった。
圭子「少佐じゃなくていいですよ軍曹。今の私は従軍記者ですから」
フォレスト「それにしても、なんでこの戦いに同行しようなんて?記者としてならともかく他に何か?」
彼の疑問に圭子は少し考えて答えた。
圭子「…なんて言うか…怖い物見たさって言うんでしょうか?私みたいなこの世界の人って人間同士での戦争を経験した事が無かったでしょう?だから異世界で人間同士の戦争を経験した自由軍の姿を見てみたいって……」
船坂「なるほど…だったら君は地獄を見ることになるかもな」
圭子「へ?」
船坂の言う意味が分からず彼女は思わず声を出した。
船坂「前線に出るというその精神は見事。なら最後までそのカメラと一緒に見届けてもらおうか」
ライデン「…見せてやるよ。本当の戦争ってやつを」
砂埃を上げながら、自由軍機甲部隊はカイロ市街地へと進軍していくのだった。