自由連合召喚   作:短号司令官

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Wake up

 

キミト島沖で『雁淵孝美』と合流する事に成功した護衛艦おわり以下であったがその代償は少なくなかった。

 

負傷した彼女はすぐに猪口の手で医務室へと運び込まれた。

幸いにも治療の準備を衛生科が整えていた最中もあり、彼女は一命を取り留めた。

 

猪口「…で彼女の容体は?」

 

医務室で軍医と話をしていた猪口は孝美の容体について聞いていた。

 

「一言で言えば"奇跡"です」

 

猪口「"奇跡"…?」

 

「はい。艦長もご存知の通り、彼女は左側頭部に負傷しています」

 

軍医は一枚のレントゲン写真を照らしながら猪口に説明を始めた。

 

「付近に配備されている敵の戦闘機の情報と照らし合わせると交戦したのは恐らくTa152。傷の度合いから見て恐らく30mmを受けたと思われます」

 

猪口「さ…30mm…⁉︎」

 

「普通なら頭が吹き飛びます。ですが彼女はそれを"ウィッチ"という点を活かしたのか避けて掠り傷に抑えています、もう2〜3mm深ければ脳死状態でしたよ」

 

猪口「まさに奇跡だな……」

 

丁度そのとき、病床からの連絡が軍医にかかってきた。

 

「……おぉ……そうか、すぐ艦長とそっちに向かう」

 

猪口「何か?」

 

「彼女が目を覚ましたようです。意識もはっきりしていて意思疎通も可能だそうです」

 

猪口「そうか……!」

 

傷ついた彼女の姿を直に見た猪口としてはこれ以上に安堵させられたのは始めてだった。

 

因みに『きい』『やまと』にも言える事だが、『おわり』は海自の中でも屈指の病床数を持ち有事の際には病院船としても機能する。

大学付属病院並みに設備も充実ており大規模な手術も可能とされている他、MRI装置も完備されている。

 

部屋に入ると半身を起こした孝美から衛生員が話を聞いたりして、意思疎通に問題が無いか確かめていた。

 

「問題ありません。障害や脳に異常も外観上はありません」

 

「ご苦労。艦長、MRI装置の準備をするのでしばらくお願いしても宜しいでしょうか?」

 

猪口「構わないよ。寧ろ俺も彼女から話を聞きたいと思ってた所だ」

 

軍医らが部屋を後にしたのを見て猪口は彼女の方に向き直った。

 

孝美「この艦の艦長さんですね?」

 

猪口「えぇ。俺は猪口俊介、本艦おわりの艦長だ。雁淵孝美大尉で間違いないね」

 

孝美「はい。私がそうです、この度はご迷惑を」

 

猪口「君が謝る必要はない。俺は自衛官としてやるべき事……当然の事をしたまでさ。ところで気分はどうだい?」

 

孝美「はい。少し傷口が痛みますけど、それ以外は大丈夫です」

 

頭に巻かれた包帯を触りながら話す彼女を見て猪口は静かに頷いた。

 

孝美「あの……つかぬことを聞きますけど…」

 

猪口「ん?」

 

孝美「私がここに来たとき、医務室に運んだのって……」

 

猪口「あぁ俺だが?」

 

何気なく猪口は答えたがそれを聞いた孝美は何故か頬を赤くして彼から目線を晒した。その行動の意味はそのときの猪口には分からなかった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

サンクト・ペテルブルク

 

「なんとか買えたね」

 

「これで今晩のおかずは大丈夫だね、定ちゃん」

 

『下原定子』と『ジョーゼット・ルマール』の2人はペテルブルクの街中を買い物袋片手に歩いていた。

 

北欧での戦局悪化は物資にも現れており、各地の部隊は物資不足に悩まされていた。

502も例外ではなく、備蓄があるとはいえ調味料や調理器具といったものまでは厳しくこうして街に買い出しに行く事も珍しくはなかった。

 

定子「それにしても大分人が減っちゃったね…」

 

ジョゼ「仕方ないよ。敵が近づいてきてて逃げる事しかできないんだし……」

 

定子「私達がもっとしっかりできたらな……」

 

ナチスの北欧侵攻、占領による地元民らは安全地帯への避難は当然だった。幾度か502もペテルブルクからの避難船団を護衛したりする任務も担当した事があるが、ストライカーの航続距離には限界がある為護衛できる距離には限りがあり、離れた後に船団が雷撃や空襲で沈められると言う話は聞かないではない。

 

ジョゼ「ねぇ定ちゃん。あの人扶桑の人じゃない?」

 

定子「え?」

 

ジョゼの指さす方を見ると鮮魚店の店先でしゃがんで何かをしている男性がいるのが見えた。オレンジ色の上着で結構周囲から浮いて見えた

 

定子「本当だ」

 

ジョゼ「珍しいね。海軍の人じゃないみたいだけど」

 

興味本意で近づいてみるが、彼の行動に2人は言葉を失った。

それは彼が魚の口に自分の小指を突っ込んで「これじゃないなぁ……」とか呟いていた。

 

ジョゼ「定ちゃん……アレなに……?」

 

定子「し……知らない…」

 

しばらくすると彼は何匹かニシンを手に取って店長に声をかけた。

 

「兄ちゃん目がいいね。このニシン今朝入ったばっかりのなんだよ」

 

「ありがとうございます!」

 

紙袋に包んだニシンを受け取り代金を払って店を出た所で2人と彼は目があった。

 

「あ……」

 

ジョゼ「あはは…」

 

定子「こんにちは……」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやーそれにしてもよかった。雁淵と連絡取れてよ。な、ひかり」

 

「はい…お姉ちゃんが無事でよがったです……」

 

「泣きすぎだ、ひかり」

 

場所は変わって502基地。

先程『おわり』から突然連絡を受け、孝美の生存を知った一同。

特に妹のひかりは心配で堪らなかったのか無線機の向こう側から姉の声を聞くなり大号泣していた。

ラルが猪口らと軽い打合せをして交信を終え、彼女らは安心感に包まれていた。

 

直枝「にしても隊長、本当にここを離れるのか…?」

 

ラル「仕方あるまい…上からの命令である以上。それに人命最優先とも言われているしな」

 

ひかり「でも……ここを離れたら502も解散するんですか?」

 

不安そうなひかりに対してラルは優しい笑みを浮かべて答える。

 

ラル「大丈夫だ。そう簡単に502は無くならん」

 

食事にしようと食堂のドアを開けると突然サーシャとニパが駆け寄って来た。

 

サーシャ「隊長!大変です!」

 

ラル「どうしたんだ?」

 

ニパ「ジョゼ達が男の人連れてきて一緒に料理を…」

 

「「はぁ?」」

 

ひかり「男の…人ですか?」

 

定子「あ!ラル隊長」

 

ラルを見つけた定子とジョゼが一同の元へ駆け寄って来た。

 

ラル「下原、ジョゼ。男を連れ込んだと聞いたが?」

 

ジョゼ「あぁ誤解しないでください!これには訳が…」

 

直枝「訳ねぇ…どういう訳だ?下原」

 

直枝が指をパキパキ鳴らしながら不敵な笑みを浮かべて問いかけていた。

 

定子「えぇ…っと。私とジョゼで買い物に行った帰りに会った人なんですけど、全然怪しい人とかじゃなくて!私や菅野さんみたいに扶桑の人なんです!」

 

ラル「ほぉ?」

 

ジョゼ「話を聞いてみたら、人を探してて。でも泊まる場所が無かったので泊めてもらえませんか…?」

 

話を聞く限りだと害はなさそうだが、ラルは少し考える。

 

ラル「いいだろう」

 

定子「あ…ありがとうございます!」

 

ジョゼ「やったね、定ちゃん!」

 

サーシャ「隊長!いいんですか⁉︎軍属でない民間人を基地内に泊めるなんて…」

 

直枝「ウチは宿じゃないんだぜ?」

 

ラル「1人くらい問題ないだろう。それでその彼は?」

 

定子「今連れて来ます、ちょっと待っててください」

 

厨房の奥に行った定子はその人物を連れて戻って来た。

 

定子「えーっと紹介します。この人が話にあった…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「津上翔一です。しばらくの間よろしくお願いします」

 

 

 

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