自由連合召喚   作:暁司令官

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キリト達がペーネミュンデに潜入していた頃、大西洋上でもまた《仮面》の異名を持つ漢が戦っていた。


若者よ未来を背負え

 

 

連合軍の登場以降、各地で敗戦を繰り返していた統合軍は巻き返しつつあった。

リベリオンでは南から北上して来た米陸軍がパットン中将指揮のもと怒涛の快進撃を見せており、ブリタニアでも本土より独軍を駆逐しつつあった。

しかしどの世界でも人間は追い詰められると粘り強さを見せるものだ。

ロンドンは開放したものの、そこから先が思うように進めず連合軍は難儀していた。

 

物資の消耗も激しく、距離のあるブリタニア本土には連合軍を持ってしても補給は一苦労だった。

 

巻き返したといっても北リベリオン大陸には未だ強力な敵艦隊がノーフォークを拠点に活動をしていた。

連合軍はこの艦隊を撃滅しない事には事態は好転しない、そう誰もが感じていた。

 

そこで連合は輸送を行いつつ、敵艦隊を撃滅する作戦を密かに立案するのだった。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

大西洋上 バミューダ諸島近海

 

 

輸送艦《おおすみ》《くにさき》の他、物資を満載した各国の輸送船は荒波の大西洋上をゆっくりと、しかし確実に進んでいた。

 

宇垣「本艦はともかく、船団はよく粘るな」

 

戦艦大和の艦橋から宇垣は波浪に耐える輸送船団を見て呟いた。

 

森下「貴重な物資を満載しているのですから、そりゃあ粘りますよ」

 

宇垣「うん。粘ると言えば艦長。例の学生艦隊はどうだ?」

 

森下「はッ 目下何の異常も無く我々について来ています。伊達に航海術を習っているだけはあるようです」

 

宇垣「そうか、それは良かった。何せ同じ海といえど全くの別世界だ、迷わずついて来て欲しいものだ」

 

この護衛には組織改革がある程度済んだ横女とブルマー、ホワイトドルフィンも随伴していた。

海上安全整備局は「戦闘参加は無理でも、輸送船団の護衛くらいはできる」と連合首脳部に意見。彼らも「船団護衛くらいなら…」と考えて今回の作戦実行へと移ったのだった。

 

宇垣(もし敵と接触しようものなら我々が真っ先に矢面に立たねば、経験の無い連中が戦って勝てる見込みはない。だが…)

 

彼には一つの不安があった。

艦隊に所属している大和、武蔵、信濃の三隻は退役を間近に控えているとはいえまだその砲戦火力は充分通用しうる。

だが主力は古鷹、加古、青葉、衣笠、夕張と一世代程前の巡洋艦が主であった。空母も雲龍型と翔鶴型、イラストリアス級が合計十数隻と数だけは揃っている。しかし搭載しているのも軽戦闘機が多く、敵の主力機と対等に渡り合えるかは不安があった。

 

宇垣(ともかく事は動き始めている。もう何をどうこう言おうが針は戻らん…)

 

宇垣らが顔を上げた先の海は雲が立ち込め、風が強くなり始めていた。

 

宇垣「……一雨くるか…」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

宇垣ら輸送船団がバミューダ諸島に差し掛かっていた頃、ドイツ海軍北米艦隊は同じくバミューダ諸島に到達していた。

オットー・シュニーヴィント大将麾下の艦隊は事前に輸送船団がバミューダ諸島に差し掛かる事を予想してこの海域まで進出していた。

 

編成は《H級戦艦ロスバッハ》《戦艦フォン・モルトケ》《O級巡洋戦艦バルバロッサ》そして艦隊旗艦《フォン・ヒンデンブルク》

全長350m 排水量:15万t 主砲に53cm砲を八門搭載し速力も32ノット*1とまさに怪物に相応しい戦艦だった。

 

オットー「さて、予想通りならニホン艦隊はこの付近を通過する予想だそうだがどうだ艦長?」

 

レヴィンスキー「はい。観測班より30分後に暴風雨が吹く予報です。距離的にも迂回するには時間が惜しいでしょうから、奴らは暴風雨を突っ切ってくるでしょう」

 

オットー大将はレヴィンスキー艦長の報告を聞き満足げに頷いた。

出港前からこの予報は言われていたが、大将は予報が外れた場合に備えて《航空巡洋艦アトランティカ》を随伴させていたが、予報通りとなった為、予定通り後退させる事にした。

 

オットー「さて、一仕事と行こうか」

 

レヴィンスキー「了解。進路このまま!全速前進!」

 

両者の距離が次第に縮まる。

以前両者ともまだ互いの姿を確認していない、分があるとするならドイツ側。大和型より強力な戦艦を配備した北米艦隊である為、大和と言えど苦戦は免れんだろう。

 

そして午後11時頃、ドイツ側がレーダーで輸送船団を探知。ほぼ同じタイミングで護衛についていた『護衛艦きりさめ』がドイツ艦隊を捕捉、直ちに全艦に通報された。

 

宇垣「やはり居たか、独北米艦隊…!」

 

能村「このシケです。流石に見張りのせいにはできません!合戦用意!」

 

能村の発令に合わせて乗組員らが手際よく配置についていく。

乗組員が最盛期より少なくなったとはいえ、戦闘や航行には殆ど問題なかった。

 

宇垣「敵の詳細は分かるか?」

 

黒島「亡命して来たルプレヒト大将らの証言をアテにするなら、敵には本艦より強力なヒンデンブルク級とやらが居たはずです。果たしてこの大和が何処まで戦えるやら…」

 

参謀:黒島亀人の予想は当たって居た。

大和の主砲は50口径とはいえ46cm砲、火力は向こう側が勝っている。

 

能村「学生らにも協力を仰げばこっちに分があるような気もする。応援を要請するか」

 

宇垣「ならん。あくまでも敵とやり合うのは我々【軍人】の責務だ!若い学生…それも女性を戦わせるなどもってのほかだ!我々だけで相手をする」

 

能村「…ですが我々だけでも限界があります。本部に増援を要請しておきます」

 

せめてもの苦し紛れであった。

果たしてその増援がどれくらいで到着できるかは分からない、だが逃げれば輸送船団が危機に晒され自分らの末路は火を見るより明らかだった。

 

 

 

先手を取ったのはドイツ側だった。

レーダー照準射撃により最初の犠牲者となったのはホワイトドルフィン所属の『あおつき』『たかつき』『ともつき』以下四隻が撃沈。

理由が警告目的での接近というなんとも間抜けな事に宇垣は怒った。

 

宇垣「これだから素人は付けたくなかったんだ‼︎」

 

『黄金仮面』『鉄仮面』の異名を持ち表情を滅多に表に出さない宇垣がこのときばかりははち切れんばかりに顔を真っ赤に染めていた。

だが流石に冷静さを欠く訳にもいかないとすぐに持ち直した。

 

宇垣「戦闘指揮所。ブルマーや横女の連中は後方に退避しておるな?」

 

『はっ。先程までブルマーのてんじん以下が接近して居ましたが、白海豚(ホワイトドルフィン)がやられたのを見て尻尾巻いて退避しました』

 

宇垣「よぉし…各艦に打電。これより砲戦に入る」

 

能村「各砲塔、一番から順次斉射。()ッ!」

 

『大和』から順に一度に三~四発ずつ、合計三四発の砲弾が、数秒以内に列をなして、暴風雨の中を飛んでいった。それとほぼ同時に、こちらの周囲を取り囲むように水柱が上がり、艦が揺れた。

 

宇垣「あちらさんの電探射撃も中々正確じゃないか!電波妨害はどうだ?」

 

能村「流石にあちらも対策を取っているようです。世の中中々上手くいかんもんですな」

 

技術力が上がっている分、知識もそれに比例して増加する。

ヒトラーの入れ知恵が無くともドイツ国防軍上層部はそのくらい分かっている筈だ。

 

「だんちゃーく!夾叉!いや、三…四発命中!」

 

宇垣「四発か…まずまずだな」

 

能村「しかしこの暴風雨です。多少風に流されるのも考慮するともっといける気もします」

 

宇垣「そうだな。砲術長!次からは全弾命中を心掛けろ!次弾斉射!」

 

再び三回の大きな振動が『大和』を震わせた。

今度は命中弾も増えたが、やはり全弾とはいかなかった。

だがお返しとばかりに敵からの砲弾が『大和』を大きく揺さぶった。

 

能村「被害報告!」

 

『左舷両用砲被弾!七番砲塔火薬庫炎上!』

 

『二番誘導弾発射機大破!弾薬庫注水』

 

流石に二、三発で沈む程大和もヤワではなかったが敵旗艦の砲撃を受ける訳にはいかなかった。

 

能村「司令、このまま出し惜しみしていれば誘爆します。対艦誘導弾を使いましょう」

 

宇垣「やむを得ないか…できればギリギリまで使いたくなかったが仕方ない。左舷誘導弾準備でき次第発射‼︎」

 

直様命令を受けたCDCの乗組員らが手順通り機器を操作し、ハープーン合計12発が敵艦隊へと暴風雨の中を突っ切る。

 

ハープーンは先頭のバルバロッサとその後方に居たモルトケに命中、炸裂した。

流石に撃沈は無理だが、戦艦を一時的に無力化するには十分であり被弾したモルトケは被弾のショックで速度が落ちる。

だが酷かったのはバルバロッサの方だった。流石に巡洋戦艦相手であれば十分効力を発揮し、見事にこれを葬った。

 

オットー「負けるな!押せ!数の上では我々の方に分がある!」

 

宇垣「撃ち返せ!なんとしても船団を守り抜くんだ‼︎」

 

砲戦は払暁まで続いた。

その間に宇垣は安全圏にまで離脱するよう直教艦『武蔵』以下横女艦隊と輸送船団に下命。

もえかや明乃は無線で戦列に加わろうとしたが宇垣はそれを許さなかった。

 

宇垣「輸送船団の護衛が我々の任務だという事を忘れたとは言わせんぞ‼︎さっさと行かんか‼︎」

 

そう急かされた学生達は悔しい思いを噛み殺して暴風域より離脱していった。

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

夜が明ける頃には既に天候は回復しており、東から昇る朝日が海面を照らしていた。

 

「前方に離脱した護衛艦隊を確認!」

 

《穂高》の艦橋に立っていた角田覚治は双眼鏡を覗いた。

視界には輸送船団と学生艦隊を前に後方では海自艦隊が満身創痍の敵艦隊と交戦しているのが確認できた。

 

角田「艦長、砲戦用意。後方の英艦隊の空母にも艦載機を発進するよう通達」

 

渋谷「了解しました」

 

艦長:渋谷清見は角田から受けた命令を直ちに全艦隊に発令。

穂高に続いて薩摩、播磨が後を追い始める。

タイミングを見計らって角田は取り舵を命令。独艦隊は海自艦隊とは同航戦を展開しており自らの乗る穂高以下はこの正面から参加、と見せかけてかつて【日本海海戦】で勝利を収めたT字戦法を展開するつもりだった。

 

角田「敵に動きは?」

 

「ありません。学生艦隊に釘付けのようです」

 

角田「頃合いか…斉射開始ッ‼︎撃ッ‼︎」

 

号令と共に穂高の56cm砲が唸りを上げ、遅れて薩摩と播磨が51cm砲を放つ。炸裂した砲弾は満身創痍の敵には十分であり、手負いのロスバッハを沈める事は容易かった。

 

流石に不利と悟った独艦隊は反転して逃走を図ろうとするが、そこへ英空母打撃群と護衛空母群から発進した《軽戦天神》と《スカイホーク》、主力戦闘機《ミラージュ》が殺到。

対空射撃も虚しく対艦ミサイルの餌食となり、殿を努めたヒンデンブルクも逢えなく撃沈した。

 

生き残った《モルトケ》《アトランティカ》以下の残存艦は母港ノーフォークへと帰還した。

 

 

駆けつけたのは角田覚治率いる「第十一戦隊」であった。

《穂高》を旗艦に《薩摩》《播磨》を従え、英海軍所属の原子力空母《キング・アーサー》の他《奥羽》を含む強力な艦隊であった。

 

船団は無事であったが、この戦闘により《大和》《武蔵》《あおつき》以下四隻が撃沈。

《信濃》《むらさめ》《ゆうだち》《きりさめ》が中破、もしくは小破。

 

戦傷者合わせて4,780名

学生艦隊及び輸送船団に死傷者は出なかった。

 

 

そして離脱直前《晴風Ⅱ》が大和より発せられた最後の電文を傍受していた。

 

角田「大和からの電文…?」

 

明乃「はい。一応、角田さんにも見てもらいたくて…」

 

そう言って彼女は通信の内容が記された紙を角田に手渡し、彼は黙ってそれを一読した。

 

角田「これは…宇垣からの最期の願いだ」

 

もえか「願い…ですか……?」

 

角田「おそらくは……若い君達の今後の航海が……血に染まらぬようと願ったのだろう……」

 

角田は無言で電文を握ると静かに大和の沈んだ西の海に向かって敬礼した。

 

ー若キ大和撫子達へ 諸君ラノ航海ガ 純白デ美シキモノニナルコトヲ願フー

【海軍中将宇垣纏】

 

 

*1
ヒトラー由来の後世技術によって強化





キング・アーサー級原子力空母
外観:PANG(航空母艦)

諸元
全長310m
最大幅:80m
満載排水量:75,000t
最大速度:34.7ノット

兵装
ファランクスCIWS×3基
30mm単装機銃×4基

搭載機
E-2D早期警戒管制機
ミラージュ艦上戦闘機
搭載機数80機




ミラージュ艦上戦闘機
外観:ミラージュF1

諸元
史実の機体と大差なし
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