切り捨て末席は死んだふりして国から逃げ出して傭兵になる   作:蓮太郎

13 / 16
第13話 切り捨て末席、王国兵を斬る

「う、うわああああ!」

 

 あまりにも情けない声、しかし怒号によりかき消される悲しき声。

 

 気が引けたものから死んでいく、前線ほどではないにしろ杜撰な王国兵士の戦い方に歴戦の傭兵達は容易く対処していった。

 

「がはっ、はっ、はっ!どうしたぁ!最高の盾がなけりゃへっぴり腰かぁ!?」

 

 傭兵団『ロックダウン』頭領、アンジャイが叫ぶ。

 

「ハハッ、僕の華麗さについていけないよ!」

 

 傭兵団『スターライト』頭領、キラメキが囁く。

 

「どうしたぁ!あたしをそれで止められるとでも思ってたのかねぇ!」

 

 傭兵団『ライトハンド』元頭領、シャーレが薙ぎ払う。

 

 手練れの傭兵ほど帝国兵を抜けてきた王国兵を的確に倒していく。

 

 集団戦ってこんなものだったか、とケイはふらりふらりと人を避けながら考える。

 

 そういえば、自分は常に孤立無援の状態で大群を相手にどうにかして押しとどめる事ばかりしていた。

 

 こんな入り乱れた戦いは久しぶり過ぎて逆に困惑してしまっていた。

 

 王国に居た頃は自分以外の兵士はばったばったと帝国兵や帝国騎士、諸国連合在籍の騎士に蹴散らされていた。そして王国上位騎士が出てきては少し小競り合いしただけで勝手に帰っていき、前線に相手の騎士が残され王国の兵士のみとなる。

 

 相手の強敵を刺激するだけ刺激して勝手に帰るのは常に殺意が湧いた。でも一応は上司ではあるし諸事情で逆らうことができない。

 

 それに加えてケイが頑張って相手の騎士を屠ったところで勝手に帰った上位騎士が、その功績を勘違いした上でかっさらっていくので本当に質が悪かった。

 

 だからなのか、相対した王国兵士が異常に弱く見える。

 

「どうしたどうした!そんな程度で止められるってんなら大間違いだ!」

 

 誰の声かは知らないが、次々に襲い掛かってくる王国兵を斬り倒しながらか彼らは前へ進んでいく。

 

 魔術師は何をしている、いや、いつも特に何の支援もなく戦場から消えていた。

 

「ぞ、増援を要請してくれ!」

 

「伝令はどうなってるんだ!」

 

「お、おしまいだぁ!」

 

「…………こんなにも情けなかったっけ?」

 

 確かにコテンパンに周囲がやられて大惨事にはなっていた。伝令はいつの間にか死んでいるし増援は当然のように来ない。

 

 ここもすぐに落とされるだろう、そう考えていた時だった。

 

「う、うわあああああ!」

 

 破れかぶれになった王国兵が奇跡的に傭兵たちの間をすり抜けてケイの元まで走ってくる。

 

 その両手には剣を高く掲げ、一矢報いようと命を捨ててまで走ってきていたのだ。

 

「邪魔…………あっ」

 

 それを一瞥すらせず一見簡単な動きで剣を振った。

 

 間違いなく適当に見えるのだが、見る者がいれば一瞬かつ局所的に力を込めて確実に斬る。そして殺すといった意思が隠しきれていない。

 

 幸か不幸か、自分が暴れて生き延びることに集中しているためたかが一人消えた程度は気にしない。

 

 それよりも、ケイは自分に驚いていた。

 

「…………お前、簡単に斬れたのか」

 

 一応は元王国騎士、国のために、仲間のために戦い続けてきたはずなのに元同僚、になっていたかもしれない人間を簡単に斬り殺せてしまった。

 

「案外、愛着ってないものだな」

 

 多少の未練は気のせいだったのか。それとも未だに感情だけ追いつておらず心だけは既に割り切っていたのか分からない。

 

 だが、彼の中で決定的な理由だけはある。王国から脱走しようと考えた件が、既に決別を意味していた。

 

「よし、頑張るぞ!」

 

 そして全て吹っ切れた。アッサリ気味ではあるが、もはや王国は自分にとって何でもない。

 

 そこらの雑兵や騎士、上位騎士、王族国王まで全て他人。

 

 大したつながりも無ければ、心無い言葉ばかりかけてくる相手などどうでもいい。

 

「さっさとかかってこい!相手してやる!」

 

 どんどん逃げていく王国兵に対してケイは啖呵を切る。

 

 真の意味で、割と早く彼は借金を返済するまで傭兵となり戦うことを決めた。

 

 だが笑ってはいけない。泣いてもいけない。向かってくる相手を丁寧に叩き斬れ。

 

 手加減なんてしたら今まで屠ってきた兵士たちに、誰かの家族に、仲間に侮辱ことになる。

 

 故に戦う。殺す。生きるために、平等に殺す。

 

 見慣れた鎧の王国兵士だけを斬り倒し、前へ前へと進んでいく。

 

 もう振り切れ、何もない。縛るものは借金くらいなのだから。

 

 そうこうして帝国側が優勢になっている状況に、王国陣営にて後ろで動いていなかった者がいる。

 

「あーあ、やっぱり雑魚じゃん。足止めすらできてない」

 

「そう言うな。我ら騎士と違い魔力を楽に扱えぬ下等な存在なのだ」

 

「よーし、じゃあクライン様に褒めてもらえるよう頑張りますか」

 

 一般の王国兵士とは違い彩色が施された鳥頭の兜と鮮やかな色の鎧を着込んだ二人クライン

 

 そう、等級こそ大した事はなく隊長格でもないが騎士である。

 

 たまたまここの陣地のお守りをしていたのだが敵の急襲があり、王国兵士がどれくらい動けるのかを黙って見ていたがご覧の有り様。

 

 流石にこれ以上の損失は怒られるかもしれないと思い腰を上げて戦地へと出ようとする。

 

「さてさて、僕たちの鮮やかな戦いを見せてあげよう!」

 

「傭兵如きに頼る帝国なんぞ、蹴散らしてやる」

 

 どこまでも傲慢な物言いに、二人の騎士が戦場へと飛び出した。

 

 




感想をいただけると励みになります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。