切り捨て末席は死んだふりして国から逃げ出して傭兵になる   作:蓮太郎

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第6話 切り捨て末席、狩人を辞めさせられる

 

「ケイさん、言いたいことは分かりますか?」

 

「…………ハイ」

 

「山賊退治してくれるのは、百歩譲ってありがたいとは思います。皆の共通の敵みたいなものですから」

 

「…………ハイ」

 

「53、この数字が何か分かりますか?」

 

「…………ハイ」

 

「あなたが殺した山賊の数です!」

 

 バン、と強く受付のカウンターが叩かれる。

 

 そこには受付にて嬢から説教を受けるケイの姿があった。

 

 事の発端はケイが生首を持って帰ってきたことから始まる。

 

 事件かと即座に事情聴取を受けたところ、山に大量の山賊がいたため全員切ったと言ったのだ。

 

 真偽を確かめるためベテランの狩人達が山へ行くと、死体が粗雑に、大量に転がっているではないか。

 

 1人2人程度ならまだ分かる範囲ではある、それがここでの常識である。

 

 快楽殺人の線は消えたのはいいが、やはりやりすぎではないかという疑問も尤もである。

 

 もちろん二桁の殺戮はいくら何でもやりすぎであった。

 

「流石にあれほどの死体を、その、山賊の親玉の首だけを持って帰って他を放置するのはどうなんですか?どうなると思ってるんですか?」

 

「…………ハイ」

 

「ハイじゃありません。疫病の元になるんです。分かってませんよね?」

 

「…………イイエ」

 

「(あいつ、引っ掛からなかったな)」

 

「(適当に返事してるわけじゃないらしいな)」

 

「(だけどよ、流石に殺った数がなぁ)」

 

 後ろで話をこっそり聞いている先輩の狩人達も何とも言えない顔をしていた。

 

 山に行ってから戻ってきていない仲間が居ることには居る。だが、まさか狩のための山籠りでなく山賊に殺されて二度と戻ってこないなどと思っていなかったのだ。

 

 それを完全に退治したケイには感謝はあるが、それと同時に人殺しに慣れている恐怖が混ざっていた。

 

 友を殺した山賊を殺して仇を討ってくれた、と聞こえはいいが殺人者は殺人者。

 

 故に誰も口を挟まないでいたのだ。

 

「上の方々もてんやわんやで他の方々に狩りの依頼すら回せていない状況です」

 

「…………ハイ」

 

「ある意味、早めに発覚したのは良しと言いますが…………言わなければいけないことがあります」

 

 何で私が、と嬢がとボヤきながら改めてケイを見つめる。

 

 ただならぬ雰囲気を再び感じたケイも、伏せていた顔をゆっくりと上げて嬢と目を合わせた。

 

「ケイさん。私が代行としてですが、狩人協会からのお達しを今伝えます」

 

「…………ハイ」

 

「1日限りでしたが事が事のため追放処分となります。今後、貴方から他人を介して依頼はできても貴方自身は狩人協会の敷居を跨がせることはできないとのことです」

 

「…………ハイ」

 

「罰則金は今回発生しません。むしろ山賊討伐の報奨金だけは出させていただくという事でまとまった金額だけお渡しします」

 

「…………ハイ」

 

「それでは、早急に出て行ってください」

 

 その言葉を聞いたケイは嬢から差し出された金銭の入った袋だけ掴んでがっくしと肩を落として去っていく。

 

 その姿はクビを宣告されて明日の希望を失ったようで若干の憐れみを誘うような背中を見せつつ狩人協会から出て行った。

 

「…………まあ、やりすぎにはこしたことはないってか」

 

「しかしなぁ、まさか山賊が居座ってたなんて誰か気づいていたか?」

 

「いや、だから…………あいつが帰ってこなかったわけだ」

 

「獣狩りの山が、気づけば人狩りの山になったわけだ」

 

「上手い事言ったつもりになってんじゃねえよ。しばらくあの山に入れないし、しばらく素寒貧だぞ」

 

「どっちを擁護すりゃいいんだ…………」

 

 野次馬となっていた先輩、いや、元先輩の狩人がコソコソと話し合っていたが結論は出ない。

 

 ただし、彼らが言えることは二つ。

 

 厄介ごとが一つ起きてすぐに消えた。そして有望そうな新人が実はヤバい奴だった。

 

 一部の喪失と引き換えに彼らは再び平穏を取り戻した。

 

「……………………就活どうしよう」

 

 一方そのころ、ケイは道をとぼとぼ歩いていた。

 

 まさか初日で失職するとは思わなかった。それに周囲の情報を未だに収集しきっていないためどこが人手不足かも知らない。

 

 よって、飛び入りで働かせてくださいと言っても弾かれる可能性がものすごーく高いのだ。

 

 幸いなことに報奨金だけは貰えたので少しの間は働かずとも食つなぐことは出来るが、流石に不安定な生活だけはしたくない。

 

 毎日何らかの収入を得る手段を作っておかねばいつかくいっぱぐれることになる。

 

「とりあえず、今日は気晴らしに街をまわってみるか。食べ歩いて、どっかの店に見習いでも入ればヨシ。がんばるぞー!」

 

 こうして一人、半分やけになって真っ当とやや言い難い就職活動を開始することにした。

 

 ただし、この就職活動には一つ大きな問題がある。

 

 今回の山賊全滅に伴い注意喚起が街中で行われた。既に誰が山賊退治をしたのかと疑問を持った者が簡易に調べつくしてケイがやったことを突き止めたのだ。

 

 そうなると後は広まるだけ。山賊53人殺しをした人間を雇いたいという一般飲食店がどれほどいるのだろうか?

 

 あくどい所なら採用はあるかもしれないが、流石にナチュラルに虐殺を行った相手を懐に仕舞えるほど街に潜む闇は深くなかった。

 

 よって、この数日のケイは全て空振りの行動をしてしまうこととなる。

 

「なるほどねぇ、あの男が。へっ、丁度いい人材が欲しかったんだよね」

 

 ある組織を除いては。

 




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