細かいサッカー(他のも)の設定や規則、ルールは目をつぶってもらえると助かります。
ガラガラとキャリーケースを引きながら暗い夜道を歩いている。最寄り駅から久し振りの家路を一人トボトボと。
少しするとあまりと云うか、全く懐かしさを感じない家に到着した。まあ懐かしさを感じないのは当然で、この家に10回位しか帰ったことないのだから当然か。
「ただいま〜。」
そう言いながら玄関の扉を開き、靴を脱いでいるとリビングと繋がった扉が開き、母さんがやってきた。もう1時間もすれば日付が変わるのに起きて待っていてくれた事に感謝しかない。
「お帰りなさい。疲れたでしょう?晩御飯とお風呂はどうする?」
「晩御飯はチームメイトと空港のうどん屋で軽く済ませてきた。お風呂もいいや、とにかく疲れたから寝たい。」
「洗濯物は洗濯機に入れておいたら明日洗うわ。シャワーで済ますなら2階のシャワー室を使いなさい。」
「分かった、ありがとう。」
そう言いながら玄関にキャリーケースを置いておき、リビングにリュックを下ろした。リュックのチャックを開け、中身を取り出した。
「これお土産。スペインのお酒の当てになりそうな缶詰とフランスのお菓子。父さんと母さんで食べて。」
中からゴソゴソと取り出して購入してきたお土産をざっと説明する。
「遠征はどうだった?スペインとフランス、楽しかった?」
「ん?ああ、まあ、前のチームの仲間と会えたし、代表の仲間とも久し振りに会えたから良かったよ。まあ、試合には負けたから消化不良気味だけどね……」
俺の感想に母さんは嬉しそうに笑っている。
「さ、疲れたでしょう?荷物の片付けをして早く寝なさい。それと明日の朝9時に下に降りてきて。話があるの。」
「?ああ、分かった。朝9時だね。アラーム掛けとく。」
そう言って、直ぐにポケットのスマホでアラームをセットする。
海外の時刻設定を日本のに変えてセットする。
それにしても話?なんだろう?そう思いながら玄関に置いてきたキャリーケースの元に向かい、開けて洗濯物を洗濯機に放り込んでいく。半月近い遠征だったからそこそこの大荷物だ。
それが終わると一階のウォークインクローゼットにキャリーケースを置いて、片付けを終える。
2階の自分の部屋に入ると出掛ける前の状態の部屋がだった。多分掃除を母さんがしてくれていたのだろう。ありがたいことだ。着替えのスウェットと下着を取り出して、2階のシャワー室と洗面台が一緒になった部屋に入って裸になる。自分の身体をチェックするように上から下まで見ると所々、鬱血した部分や赤く腫れてる所、傷が見える。激しい接触があったのがよく分かるな。
確認を終えて、シャワーを浴びていると強いシャワーの圧力につい笑みが溢れる。スペインとフランスも日本に比べるとシャワーの圧力が弱く感じる。長く居たイングランドもシャワーが弱かった。
日本は水の国だとしみじみ感じる。あまりの気持ち良さに永遠に浴びていたい気持ちと家に帰ってきたという安堵感から来る睡魔が鎬合っている。全身を洗い、十分に温まると身体の水滴をバスタオルで拭き上げ、足のケアの為のクリームを塗る。そしてスウェットに着替え、自分の部屋のベッドに横になる。
ああ、枕のフィット感、マットレスの全身を包む抱擁感、掛け布団の重さが眠りへと誘う。それに抗うことが出来ず、早々に意識を手放した。
階段を降りているとタシタシと足音が鳴る。まだ時差ボケと完全に取れてない疲れで全身が若干だるい。それを感じながら、一階に降り、リビングの扉を開ける。約束の9時の10分前にだ。文句はないだろう。
「おはよ〜、約束の時間だろ〜、話って何〜?」
頭を掻きながら、リビングに入ると席に座った母さんと2人の女性がいた。一人は俺と同い年位で、一人はその子の母親というのが分かった。2人はよく似ている。
「あんたね〜。上、裸よ。さっさと着なさい!お客さんがいるんだから。」
自分の身体を見ると起きてシャワーを浴び、下は履いたが上は裸だった。
「キャッ!」
そう言って自分の上半身を手で覆った。当然隠しきれてないが………
「キャッじゃね〜わ、全く。早く手に持ったシャツ着なさい。このスカタン。」
とんだ醜態を晒した息子に追い討ちをかける母、流石だ。
手に持っていたシャツを急いで着て、テーブルの方に向かおうとしたら、母から更に言葉が飛んできた。
「少し話があるから飲み物持ってきなさい。あんた、どうせ何時もの水でしょ。」
そう言われたので、冷蔵庫からペットボトルの水を一本取り出し、テーブルに再度向かった。4人がけのテーブルの空いている母親の隣に腰掛けた。
「さっきは大変失礼しました。」
とりあえずさっきの醜態を謝罪するとちーママと呼ばれた多分母親がクスクス笑いながら気にしてない旨を伝えてくれた。
「気にしてないわ。智が私達が来るのを伝えてなかったのも悪いしね。それにしてもキャッって女の子みたいな反応するなんて面白いのね、優くんって。」
「そちらの………」
「ああ、この子は私の子供で千夏、鹿野千夏よ。年は優くんの一つ上で学年も上になるの。仲良くしてあげてね。」
名前が分からず困っていた俺にちーママが助け舟を出してくれた。
「あ、はい。千夏先輩ですね。俺は如月優です。初めまして、よろしくお願いします。」
そう自己紹介をして、軽く会釈をする。
「えっ!あ、うん。これからよろしくお願いします。鹿野千夏です。」
互いの自己紹介が終わると、母さんがパンッと手を叩いて驚愕の内容を伝え始めた。
「でね千夏ちゃん、春からこの家に住むことになったの。」
「はぁ〜〜〜〜〜〜!?」
母さんが何を言っているのか全く分からなかった。何言ってんだうちの母親は。
「理解力の低い息子ね〜。春から千夏ちゃんがこの家に居候するの。理解出来た?」
「えっ?いや、まぁ、その、はい。千夏先輩がこの家に居候するってことですね?はい、理解できました。」
「ちょっと智、優くん混乱してるわよ。」
俺の状況を察したのだろう、ちーママが助け舟を出してくれた。
「優くん、詳しく話すからよく聞いてね。実はお父さんが仕事で海外転勤が決まってね。最初は家族全員で行く予定だったんだけど、智に伝えたら両親と千夏がオーケーならウチで預かるって言ってくれたのよ。青春真っ只中で中高と一緒の仲間と取り組んできたバスケを続けさせてあげるのも親の務めだって言ってくれてね。」
腕を組んでウンウンと頷く隣の母さんが癪に触るな。良いこと言ったみたいだけど、何か腹立つわ〜。
「あの、年頃の男子がいるんですが?」
つい自分の事はどうお考えですか?と尋ねてみる。
「智が基本的に家にいるから大丈夫だし、そこら辺の倫理観は法律的にも厳しいイングランドに居たから問題ないって言ってくれたから。」
「あ、そうですか………」
ほのぼのとそんな事を言うちーママに呆気にとられてしまう。まあ、互いの両親で話がついてるなら覆す事もできないし、仕方ないと割り切ろう。
「なら改めて、如月優です。よろしくお願いします、鹿野千夏先輩。」
そう言って右手を差し出す。その手をジーーーっと見てから握り返してきた。
「これからお世話になります、鹿野千夏です。よろしく優くん。」
満面の笑みで挨拶をしてきた千夏先輩に一瞬目を奪われた。
「引っ越しの荷物とかは?」
春から住むと言うことは荷物はどうなるのか御三方に尋ねた。
「これから来るわよ。優、あんた手伝ってあげなさい。」
「へ〜〜〜い。」
「あ、分かっていると思うけど、段ボールの開封はしないように。」
「へ〜〜〜い、了解で〜〜す。そういえば、千夏先輩のお母さんと母さんはどういう関係なの?」
パッと思い付いた疑問を尋ねてみた。
「ああ、智とは栄明の同級生でね。智がキャプテンだったのよ。で、丁度智がイギリスから日本に帰ってくるって話を聞いてて、今度はウチが海外転勤になるって話をしたら、こっちが問題ないなら千夏を預かるわよって言ってくれてね。ホントにありがとう。」
「いいのよ、私が助ける事が出来るなら何でもするわ。同級生でチームメイトで親友じゃない!」
朗らかに言う千夏先輩のお母さんと力強く逞しげに言う母さんに、確かな絆が感じられた。羨ましい事だ、高校を卒業して二十年近く経っているのにそんなに仲がいいなんて。
「あんたはさっさと朝ごはん食べなさい。千夏ちゃんの引っ越し手伝ってもらうんだから。」
千夏先輩のお母さんと千夏先輩が遠慮しようとしているも母さんの勢いに負けてしまったようで俺の手伝いが決定した。
キッチンに向かい、冷蔵庫を開け、シリアルとヨーグルト、果物を取り出す。隣の食器棚からお盆と皿を取り、ザッと盛り付けてテーブルに戻る。
「そういえば2人とも朝ご飯は?食べてないなら用意するわよ?」
母さんが2人にそう尋ねると2人は父親が仕事だから3人で食べてきたと伝えてきた。
シリアルとヨーグルトと果物を食べ始めた。すると直ぐに何か視線を感じた。スッと目線を上げると千夏先輩がジーーーっと俺が食べている果物を見つめていた。その姿につい微笑ましく可愛らしく思い、小さく笑ってしまった。
イチゴとパイナップル、バナナ、桃、リンゴの果物の皿を見詰める千夏先輩の視線を辿るとイチゴを凝視しているようだ。
フォークを手に持ち、イチゴを刺して千夏先輩の口に向かって笑いながら差し出した。
「どうぞ、千夏先輩。はい、あ〜〜〜ん。」
びっくりした顔をして此方を見てきた後に、恥ずかしそうにあ〜んと俺が差し出したイチゴに齧り付いた。
隣で俺達の様子を見ている二人の大人は微笑ましそうに此方を見ている。そんな表情で見るの止めて、俺も恥ずかしくなるから。
「他に何か食べたいものはありますか?」
そうストレートに尋ねると千夏先輩は恥ずかしそうに答えてくれた。
「えっと、その桃が気になってます。」
その様子につい笑いが抑えられなくなって軽く笑ってしまった。
「ごめんなさい、先輩が可愛らしくてつい。はい、どうぞ。」
笑ったことを謝罪し、フォークで桃を刺して口元に差し出す。
「あ〜〜〜ん。ん〜〜美味し〜。」
桃の甘さに頬を緩ませる千夏先輩を温かく見てしまう。
「ごめんなさいね、優くん。折角の朝ご飯を」
千夏先輩のお母さんが謝ってきたが、俺は全然気にしていないんだけどな。
「いえ、何か千夏先輩とは仲良くなれそうです。」
「そう?なら良いのだけど。」
たまに千夏先輩に果物で餌付けしながら朝食を終えた。
食器をキッチンに持っていき、食洗機に突っ込んで洗い物を終えたら暇になったので、鹿野親子、母さんに許可をもらい隣の部屋でDVDを観ることにした。業者が来たら呼んでくれと言ってその場を後にした。
「千夏ちゃんは、優と仲良くやれそう?」
「はい。最初は思ったより大きくて驚きましたけど優しいので。」
千夏ちゃんの感想を聞いて安心すると同時に可愛い千夏ちゃんをからかってあげようと悪戯心に火がついた。
「なら良かったわ。優、思ったより良い身体してるでしょう?大胸筋も腹筋もイイ感じに鍛えられてて。」
そう言うと優の身体を思い出したのか顔を真っ赤にしていた。その様子につい笑いが堪えきれず漏れた。
「智、からかいすぎないでよ?千夏、意外とうぶなんだから。」
「ごめんごめん。千夏ちゃんが可愛いからつい。いや〜男もいいけどやっぱり女の子が可愛くていいわ〜。もう1人頑張ろうかしら。」
「その冗談か本気か分からないの変わってないわね。」
ちーママが呆れた口調で言ってきた。
「千夏ちゃんは私の事は知ってる?」
私の突然の質問に困惑しながら答えてくれた。
「えっ?はい、お母さんと栄明で同級生だったのと昔女子はプロリーグがなかったので社会人リーグで活躍されて、日本代表のキャプテンを長く務められ、オリンピックで銅メダルを取られたと云うのは知っています。女子バスケ界では伝説のキャプテンでレジェンドです。」
「あら、詳しい。世代じゃないから知らないと思ってた。嬉しいわ〜。」
千夏ちゃんの褒める説明に年甲斐もなく嬉しくなった。
「代表と選手を引退して、お父さんの仕事でイングランドに行くことになってね。あの子がまだ小学生入る頃に。向こうで人気のスポーツっていえばサッカーであの子はそれはもう熱中していったわ。イングランドトップのチームの下部組織に入って同じ年頃の子達と切磋琢磨していった。あの子は頭が良かったのかドンドン成長して上手くなっていったわ。欧州一を決めるジュニアユース、ユースの大会でも活躍してね、MVPも取った。親として誇らしいと思う一方で増長したりして嫌な人間になるんじゃないか心配だったのよ。」
一旦話を区切り、一口冷めてしまったコーヒーを口にした。
「でもあの子はジュニアとユースが終わったから次は上のオリンピック世代だと上の世代に挑みだしたの。ぶっちゃけあの子、変態よ、変態。練習はガンガンやるし食事も1日に必要な栄養素を計算して食べるようにしてるの。中学上がったころかな〜、久し振りに日本に帰ってきて実家で夕飯に天ぷらを揚げたのよ。そしたらあいつ衣外し始めてさ、つい叩いちゃったし、流石にあの時は呆れたわよ。私も努力に関してはやったつもりだったけど、あの子には参るわ。」
あの子のとんでもエピソードに二人は呆気にとられて、そして直ぐに天ぷらのくだりが面白かったのか笑い出した。さすがは親子、笑いのツボが瓜二つね。
「あの子は向上心の塊で努力をすることに関しては千夏ちゃんにいい影響を与えれると思うわ。二人で切磋琢磨することを期待しているから頑張って。そのための協力は惜しまないから。」
「ありがとうございます。頑張ります。」
千夏ちゃんの目に火が付いたのが分かった。この年代の子は何かに影響されて伸びることが間々ある。二人が互いにいい影響を受けて、互いの目標を達成出来るように私は出来る限りの手助けをする。それが親であり大人である私の役割だ。
お昼は四人で引っ越し蕎麦を食べて、午後も千夏ちゃんの部屋の片付けを行う。といっても、机とかミニテーブル、本棚何かの大物は午前で終わったから優は下にいさせて、午後はちーママと千夏ちゃん、私の3人で私物の片付けに勤しんだ。
お昼ご飯は、優が作ってくれて二人とも驚いていた。意外と家庭的で掃除、洗濯、料理と何でもする自慢の息子なのよね。
たまに変なこだわりを見せる時があって、それは鬱陶しいけど。
千夏ちゃんの部屋だけだからあっという間に終わり、3時前には下でお茶をゆっくりと飲めた。
優は相変わらず試合の映像を見ながらノートにメモっている。イメージを脳内にインプットする為に、一度アウトプットすると云うがマメな男だこと。
ちーママと二人で千夏ちゃんに中高の思い出話をしてあげた。昔の部活の面白話やキツかった話を面白可笑しく話すと千夏ちゃんは声を上げながら笑ってくれた。
元々夜ご飯は、鹿野家と一緒に食べようと話していたのでお父さんとちーパパが帰ってきてから千夏ちゃんの引っ越し祝いにお寿司と焼肉の豪勢な晩御飯になった。男女で分かれて食事になった。
お父さんはお酒の相手がいてくれて嬉しそうにちーパパに注ぎながら自分も飲んでいる。
優が焼肉奉行になりながら、自分もしっかりと食べている。男3人でどんな話をするのやら。
父さんがいつもよりハイペースかつ多量に飲んでいる。最初にビール、焼肉に合うワインがあると赤ワインを一本空け、焼酎、日本酒に切り替えて飲んでいる。
今は千夏先輩のお父さんに父さんが作った白菜と大根、蕪の漬物をあてに飲んでいる。付き合わされる千夏先輩のお父さんには同情する。
もういい加減お開きにしようとテーブルの上の片付けられるものをキッチンの流し台に運び終わり、冷蔵庫から冷たい水とグラスを持ってきて水を入れたグラスを渡すと一息でグラスを空けて父さんが話し始めた。
「正直、千夏ちゃんを預かりたいって妻から話を聞かされた時は戸惑いというか、困惑がありました。うちには年頃の男子が1人いる。そこに他所様の大切な年頃の女子を預かる。不安から内心は嫌でした。」
変な話を始めたので飲み過ぎで酔っていると父さんを注意しようとしたら手を此方に向け、分かっていると伝えてきた。
「当然の反応だと思います。」
千夏先輩のお父さんの答えに一つ頷く。
「でも妻が学生でいられる時間はとても短く貴重だと言うんです。その時を守る事を考えてあげるべきだと。私は人生の半分を終えて、振り返ると中高の6年間に勝る時間はないと。同級生やチームメイトと切れない絆で繋がった友になった眩しい時間だったって。こうして千夏ちゃんの為に預かってあげようって言える仲だって。千夏ちゃんが今の友達と一緒にいたい。バスケをしたいというなら出来ることはしてあげるのが大人の務めだって言われてな。それでああ、やっぱり俺の嫁さんいいな〜って改めて思ったよ。」
何故か最後に惚気に行った父にガクッとなった。
「冗談だよ。妻の言葉に心揺さぶられてな、決心がついたんだ。そうだな、分かった、俺も出来ることは何でもするって。」
鼻を掻きながら、照れ臭そうにしながらも真剣に言う父の姿に少し感動を覚えた。
「将史さん、千夏をよろしくお願いします。」
千夏先輩のお父さんが深く頭を下げて、お願いしてきた。顔を上げて父親同士見つめ合うと父さんが深くゆっくりと頷いて一言。
「はい、任されました。」
そう力強く請け負った。
「しかし千夏を預かっていただくのにお金を受けとって頂けないのは………生活費なども要らないというのは。」
「そうなんですか?いや〜そこら辺は妻がやっているので。ん〜〜〜そうですな〜、でしたら千夏ちゃんのお小遣いに毎月一万円でどうです?」
父さんが頭を掻きながら答える。
「いや、それは………それに小遣いに一万円は多いのでは?」
「そうなんですか?うちは優に与えていますよ。今はジュース一本百円の時代じゃない。二百円に近い時代です。1日一本買えばそれだけで五千円をこえます。友達と食事や買い物をする金額を入れればそれほどおかしい額ではないかと。」
父さんの説明に千夏先輩のお父さんが悩まれている。
「確かにそうですね。ではそうしますか。」
互いの父親が納得して話が纏まったようだ。
「ということだ、智。後は母親同士でよろしく頼む。」
父さんがそう言って母さんに全任せする。何時もの流れだ。
「はいよ。」
母さんの了解とそろそろお開きにしようとの声で千夏先輩の両親が帰る準備を始めた。
「良かったわね、千夏ちゃん。お小遣いアップよ。」
「ありがとうございます。」
準備している裏で母さんと千夏先輩が後ろでコソコソと楽しそうにお小遣いの件を話している。
両親が帰る準備をしているのに帰る準備をしない千夏先輩を不審な目で見ていると千夏先輩は慣れるという意味でちょくちょく此方にも泊まるようだ。とりあえず今日から2日泊まる予定らしい。
玄関でご両親が帰られるのを見送り、リビングに戻るとさっさと片付けて寝よっかと母さんが仕切ったので頷き、母さんはキッチンで洗い物、父さんは風呂の準備を始め、俺と先輩はテーブルの片付けをする。
「そういえば千夏ちゃんの明日の予定は?」
洗い物をしながら母さんはリビングのテーブルを拭いている先輩に予定を尋ねた。
「土、日と栄明は受験で登校出来ないんです。なので何処かで練習しようかなって考えてます。」
「あらそう?なら明日は暇なのね?優、あんた明日は彼処に運動しに行くんでしょ?千夏ちゃん、連れてってあげたら?」
此方に話を振ってきたので、残っていた洗い物をキッチンに持っていきながら返事をする。
「俺はいいけど、千夏先輩は?」
「私は運動出来るならありがたいかな。」
「なら決定で。優、忘れず連絡しなさいよ。」
母さんに釘を刺されたので、分かった分かったと答えながら今この瞬間にスマホで連絡を入れ、予定を変更しておく。
「千夏先輩、明日の9時にここに集合ということで。持ち物は室内で運動できる靴、運動着、着替え、タオル、バスタオル、飲み物で。」
伝える事を伝えると母さんは意地の悪い顔をして千夏先輩に脅しをかける。
「千夏ちゃん、地獄を見てきなさい。」
「えっ!何があるんですか!?」
千夏先輩をからかって満足したのか笑いながら伝える。
「ただのトレーニングよ、トレーニング。めちゃくちゃキツイけどね。」
物騒な事を話していると、風呂が沸いたから千夏先輩に先に入りなさいと父さんが促しにきた。父さんは酒をしこたま飲んだから朝シャワーを浴びるようだ。母さんも片付けが終われば入るそうだ。俺は2階のシャワーを浴びて寝ると言い、2階に上がろうとすると着替えを取りに行く千夏先輩が追いかけてきた。
「これからよろしくね、優君。」
追い越して屈託なく笑う千夏先輩の眩しい笑顔が可愛くて顔が赤くなるのを感じた。
登場人物紹介
如月 優 (きさらぎ ゆう)本作主人公
サッカー少年、イギリストップクラスのチームの中心として活躍。父親の転勤に付いて日本に戻る事に。
(本人はどうせ国際ルールでトップリーグは18歳まで出れないし、ユース所属も親が在英でないと出来ないからとあっさり日本行きに賛同)
如月 将史 (きさらぎ まさふみ)
製薬会社勤務のサラリーマン。出向で英国製薬会社に勤務。この度、日本に戻ることに。学生時代は大学まで野球部。
会社スポンサーとして貰ったチケットで女子バスケを見に来て、後の妻を知る。友人の紹介で交流するようになり、結婚まで至る。男勝りの妻にベタ惚れ。
如月 智子 (きさらぎ ともこ)
現在は専業主婦。小学校からバスケを始め、社会人リーグまで続ける。日本代表に選出され、オリンピックにも出場。銅メダルを獲得し、その時キャプテンを務めていたことから、女子バスケのレジェンド選手に挙げられる。ポジションはガード。
こんな設定でいきます。後で追加すると思います。