朝6時にアラームが鳴り、脳が少しずつ動いていくのを感じながら身体を起こす。
枕元に置いている水を一口飲んで、何時ものルーティンである全身を軽く動かして異常がないか確認する。
終わると、完全に意識を起こす為にシャワーを浴びに行く。両親が少し良い家を借りたのか2階にもシャワー室があるのが凄くいい。朝忙しい時間帯に洗面所が使えないのは困るからな。
籠に脱いだ衣服を入れていく。シャワーを出すと一階で家事をしていてお湯を使っているのか直ぐに出てくるのがお湯に変わる。ザッと上から下までお湯をかけ、水気を切ってからシャンプー、ボディソープで全身を洗う。身体を洗う時は所々で気になる部位を揉んだり撫でたりしてチェックする。それが終わると外に掛けてあるタオルでザッと身体の水滴を拭き上げ、置いてあるバスタオルを腰に巻いて、洗面所のガラスの前に立つ。そこにあるフェイスクリーム、ボディクリームを塗り込んで、部屋に向かおうとすると、今日は何故か急に扉が開いた。
目覚ましが鳴り、寒さに身を震わせながら身体を起こす。何時もと周りの景色が違う事に違和感を覚えるも、直ぐに引っ越した事を思い出した。居候する事に緊張も戸惑いもあったが如月家の人達の優しさに卒業までの間、楽しく生活出来ると思えて一安心した。
眠気を覚ますために顔を洗おうと洗面所に向かう。この家は2階にシャワーと洗面所があるのが特徴の家だ。それと廊下の突き当たりに冷蔵庫を置いてくれている。わざわざ一階のキッチンまで取りに行くのが面倒だろうと言うことのようだ。
カラリと扉を開けると目の前に裸があった。この家の子供の如月優君だ。鍛えられたその上半身を見て固まってしまった。
男の人の裸を見て、綺麗だと思ったのは初めてだ。
「Sorry、千夏先輩。どうぞ使ってください。」
そう言って前を空けてくれた。
「ご、ゴメンね、ノックもせずに開けてしまって。」
「No problem、気にしないでください。終わったので代わります。」
「あ、うん。ありがとう………」
どうしても彼の端整な肉体美が頭から離れない。顔を振ってから顔を洗う。冷たい水が眠気を覚まし、顔の火照りを冷ます。
「ふぅーーーーー。よしっ。」
大きく一息吐いて、気合を入れる。昨日、智さんから聞いたキツイトレーニングを考えると気持ちを引き締める必要がある。
一階に降りてリビングに行くと、キッチンで動き回る智さんとテーブルで新聞を読みながらコーヒーを飲んでいる将史さんがいた。
「おはようございます。」
2人に挨拶をすると、笑顔で挨拶を返してくれた。椅子に座ると将史さんが話しかけてきた。
「おはよう、千夏ちゃん。よく寝れたかい?」
「はい、ぐっすりでした。」
「なら良かった。睡眠はコンディションやパフォーマンスに大きく影響するからね。」
話していると智さんが将史さんに朝食を持ってきた。
「はい、あなた。千夏ちゃんは朝ご飯は和食、洋食どっちがいい?和食はお父さんのと一緒で洋食ならトーストに卵、ベーコン、サラダ、スープね。」
バリエーション豊かな朝食に驚き、自分の好みをリクエストする。
「和食でお願いします。いつも家では朝は和食なので。これからも出してもらえるなら和食でお願いします。」
にっと笑い、オッケーサインをしてくれた。
「オッケー、千夏ちゃんは毎朝和食ね。お父さんと一緒ね。魚は鮭と鯖があるわよ。どっちがいい?」
「えっ!?選べるんですか?なら鮭でお願いします。」
「了解。5分待ってね。熱いお茶と冷たい水ならテーブルにあるから飲んで待ってて。」
そう言ってキッチンに戻って行った。
「悪いけどお先に頂くよ。」
「あ、はい。どうぞお構いなく。」
将史さんが尋ねてきたので、食べるように勧める。先に起きていた優君がいないのが気になった。
キョロキョロしていると、私の挙動に気付いた将史さんが理由を教えてくれた。
「優なら部屋でストレッチしているよ。何時ものルーティンってやつでね、もうすぐ降りてくると思うよ。」
タシタシと階段を降りる足音が微かに聞こえてきた。
「ほらね?」
「はい。」
そんな話をしているとリビングの扉が開いて、優君が入ってきた。
「はよ〜〜す。」
キッチンに向かって行き、手に持っていたコップを置いてから、此方に来た。
「おはよう父さん。千夏先輩もおはようございます、寒くなかったですか?」
「ああ、おはよう。」
「おはよう優君。寒さは気にならなかったよ。毛布に羽毛布団があるから」
「そうですか、なら良かったです。」
優君と話していると智さんが私の朝食を持ってきてくれた。
「はい千夏ちゃん、どうぞ。おかわりも必要なら言ってね。優は和洋どっちにする?和なら直ぐに出来るわよ、魚は鯖になるけど。」
「なら和食で。」
「はいはい。直ぐに持ってくるわね。」
そう言ってパタパタとキッチンに行く。一分たったくらいで優君の分の朝食を持ってきた。
「千夏ちゃんの鮭焼くついでに鯖も焼いてたのよ。優が食べないなら私が食べればいいだけの話だしね。」
カラカラ笑いながら優君に朝食を置いて戻っていった。
熱いお茶をフーフーと冷ましながら啜っていた優君が手を合わせて“いただきます”と小さく口にして食べ始めた。
食べる所作が綺麗でボーーーっと見ていたのを気付かれた。
「鯖食べますか?」
ただ何を見ていたかまでは分からなかったみたいだ。見当違いの事を言ってきた。私、そんなに食い意地張ってるように見えるのかな?もしかして初日の果物の事でなのかな?
「なら半分ずつにしません?」
魅力的な提案をしてきた。言葉に詰まり、う〜〜んと悩んでいると、鯖をスッと背中の線に沿って2つに分け、此方に皿を差し出してきた。
「どうぞ。」
ふんわりと笑う優君が春の陽だまりのように思えた。
私も鮭を差し出すと“ありがとうございます”と言って取っていった。
それからは静かに朝食を食べ、優君は鮭を熱いお茶をかけてお茶漬けにしてサラサラと胃に流し込んでいった。同時に食べ終わったから揃って食器を下げにキッチンに行くと、智さんがコーヒーとトーストで朝食を取りながらタブレットで多分録画のNBAの試合を見ていた。
「ああ、食器は水に浸けといて。後で纏めて洗うから。」
そう言われたのでシンクの籠に食器を入れ、部屋に戻ろうとする。優君も戻るのか揃ってリビングを出る。
「千夏先輩、じゃあ9時にリビングで。」
「うん、分かった。」
そう言って別れ、部屋に戻った。
9時前に降りてリビングに入ると和室で優君がテレビを観ていた。入って来た私に気付いて声をかけてくれた。
「もう来たんですね。」
和室に向かうと、青とオレンジのユニフォームのチームが戦っている。
「この試合って?」
「ああ、この間スペインに行った時ので日本対オランダの試合です。負けたのでどうすれば勝てたか分析していたんです。」
スペインに行っていた!?代表で!?
「今月の頭から2週間程遠征をスペインとフランスの2か国に。スペイン、オランダ、フランス、ベルギーと試合してきました。」
日本代表に選ばれてたんだ!
「優君って日本代表なんだね……」
「一応U-15、17、19に選ばれてます。」
「優君って凄い人だったんだね。」
私の感嘆の声に、苦笑している。
「といっても、イギリスに居たので中々参加出来なかった事も多かったですよ。アンダーの試合は招集に拘束力が、所謂必ずチームが派遣しないといけないと云うのがないので余り参加出来てないのですが………」
「ねぇ、海外遠征ってどうなの?やっぱり楽しい?」
私の質問に、優君は顎に手をやり考え込んだ。
「その土地の物が食べれたら良いんですが、基本的に外出禁止なのでホテルで出される食事ぐらいで楽しんだりっていうのは中々出来ないんです。移動中のバスから名所を見るくらいですよ。」
「へぇ〜〜そうなんだ?」
「ええ。よし、千夏先輩そろそろ行きましょうか。」
時計を見ると数分時間が過ぎていた。
「わっ、話し過ぎちゃったね。準備は出来てるから。」
そう言ってリビングに戻り、置いてあったカバンを手に持つ。
「じゃあ行こっか。案内よろしくね。」
ニコリと優君に笑いかけながらお願いすると、彼はふわりと柔らかく微笑んだ。
イギリスの料理って本当に美味しくないのやイギリスの気候、人気のスポーツの話を千夏先輩に聞かれて答えたり、俺が千夏先輩に栄明の部活動の話を聞いたり、バスケの話や友達の話を聞いたりしていると、あっという間に目的のビルに着いた。
ここですと、言いながら扉を開けて先に入って、どうぞと入るのを促す。お邪魔しますと言いながら入る千夏先輩に笑ってしまった。つい微笑ましくて。
奥からオーナー兼トレーナーの大城さんがやってきた。
「よっす、優坊。元気にしてたか?」
「ども大城さん、急に人数増やしてすんません。」
カラカラと笑いながら了承してくれた。
「気にしなさんな、前日に連絡してくれたら問題ないよ。でそっちが追加の人?」
「はい、鹿野千夏さんです。千夏先輩、此方は此処のオーナー兼トレーナーの大城さん。」
大城さんを千夏先輩に紹介すると先輩は丁寧にお辞儀をして挨拶をする。
「あの、鹿野千夏です。よろしくお願いします!」
「そんな丁寧にしてくれて、ありがとう鹿野さん。」
クククッと嬉しそうに笑う。
「じゃあ鹿野さんは初めてだから最初の説明から始めようか。こっちの部屋にどうぞ。」
そう言って俺達を直ぐ側の部屋に案内してくれた。
「先ずは鹿野さん。此処は高所トレーニング専門のジムになっています。ランニング系とウェイトトレーニングの2種類を標高2500mの高地環境を再現した場所で行ってもらう形になっております。」
大城さんが施設の資料を渡して、次々と千夏先輩に説明していくのを隣で一緒に聞いている。
「主に効果としては、筋力の向上、持久力の向上、自律神経が整うことで睡眠の質の改善や疲労が取れやすくなる。細胞の活性化によるアンチエイジングや美容効果が確認されております。」
資料を指し示しながら説明を続ける。
「お二人はスポーツ選手として今回トレーニングされるということで、此方がメニューとなっております。ダッシュ45秒のレスト15秒を10本3セットに各種筋力トレーニングを行う予定です。その後は当施設の食堂で運動後に食べるアスリート食を召し上がっていただき終了となっております。」
そう説明を締めくくり、更衣室に案内してくれた。着替え終わり更衣室を出て、低酸素ルームで柔軟、ストレッチを始める。そう待たずに千夏先輩も出てきて、対面で柔軟、ストレッチを始めた。
「私こういう所初めてだからワクワクしてる。」
「そうなんですか?なら初体験ですね。かなりキツイですが千夏先輩の良い経験になればいいのですが。」
楽しそうに身体を動かす先輩に負けずしっかりと動かす。
「そろそろランニングに移ってアップを進めて。」
トレーナーの大城さんが次のステップに進むように促されたので二人でランニングマシンでアップに移る。
暫くランニングを行い、全力が出せるように身体を動かしていく。トレーナーの大城さんがもうそろそろ良いかいと言ってきたので“大丈夫です、やりましょう”と返す。先輩に尋ねると大丈夫と言ってくれたので、大城さんに今からするトレーニングの説明を受ける。
「これから決められた速度で走ってもらいます。45秒走ってもらい、休憩が15秒。それを十本行い、1セットになります。そこで十分休憩し、もう一回、10分休憩し、もう一回の合計三セット行ってもらいます。かなりキツイメニューですが決めた速度を切らないように頑張って走ってください。」
そう言ってタイマーとブザーをセットしてくれ、始まった。
時間と速度を見ながらダッシュを行う。かなりキツイメニューだ。本数を重ねる事に心臓、下半身、肺が悲鳴を上げているような気分になる。大汗をかきながら一回一回力を入れて行う。
隣をチラリと見ると、千夏先輩も息を荒げながらも頑張って走っている。俺も負けられない、負けたくないと思いながらひたすら走る。
後ろから大城さんが“頑張れ”、“いけるいける!”などの応援をしてくれるのが時々分かったが一々反応することが出来ないくらいしんどい。
十本を走り終わると、崩れ落ちるようにマシンから降りた。ゼェーゼェー言いながら荒く呼吸を繰り返す。
低酸素ルームから出て呼吸を整えようとする。千夏先輩に声をかけ、出ましょうと言うも。
「む、無理。きつ過ぎる。」
どうやら動けないようだ。確かに初めての時、俺も足が動かなかった記憶がある。仕方ないと踵を返し戻る。
「ちょっ!ちょっと優君!」
急に慌てだした。アワアワとしている先輩に笑ってしまう。
「落ちちゃいますよ、千夏先輩。大人しくしてください。」
倒れていた千夏先輩を抱きかかえ、部屋を出る。慌てていた先輩も危ない危険だと言うと大人しくなった。休憩室に着くとソファーに横たわらせて、休息させる。
「とりあえず呼吸を整えて、心拍数を落ち着けるように。直ぐに次のセットが始まるので、それまでに少しでも体力を回復させましょう。」
二人で荒れた呼吸を整える。ある程度落ち着いたと思ったらピピピピッと音が鳴る。1分前の合図だ。二人で顔を見合わせて笑いながら頷き、また低酸素ルームに入っていく。
根性のある千夏先輩が一緒になってトレーニングをしてくれるのが、自分も負けられないと励みになる。
三セット終わると、俺も先輩もフラフラのヨロヨロになっていた。とりあえず呼吸を整えながらカチカチになった足をマッサージし、互いに足を伸ばし合う。
休憩が終わると。上半身のウェイトトレーニングを行う。ただこれは成長期の俺達には自重トレ(自分の体重と同じ負荷)になるように大城さんが調整し、行っていく。速筋と遅筋の両方をシッカリと鍛え上げていくトレーニングが効く。全部で2時間程のトレーニングを終え、ぐったりしていると汗の処理をして昼食を食べてきなさいと伝えられた。
千夏先輩と二人、フラフラと更衣室に行き、シャワーを浴びて着替えて出てくる。上の階のレストランに向かう。
時間が経ち、体力が回復したのか千夏先輩が話してきた。
「何時もこんなメニューしてるの?」
「いや流石に毎日は来れないので週二回って所です。それも欧州遠征があったので間が空きましたが。後は練習後に来たりするのでメニューの増減は多少はありますが。」
「やっぱりトップクラスでやるには、それくらいの努力が必要なの?」
「ただサッカーをするなら必要ないでしょう。上のレベルでやるのに必ず必要とも言えないでしょうね。自分は同じ時間の練習をするなら効果の高い、密度の高い練習をしたいと思っているのです。」
話しているとレストランに着いたので扉を開け、千夏先輩を先に入る様に促す。ありがとうとお礼を言って、先に入ってくれた。
テーブルにつくと、3分と待たずに料理が運ばれてきた。
栗とほうれん草のポタージュから始まり、冬野菜のサラダ、寒ブリの昆布締め、白菜と豚肉のせいろ蒸し、旬の魚の握り寿司、冬の果物とコース仕立ての料理を楽しく話しながら舌鼓を打った。
「ご馳走様でした。今日はありがとうね。」
千夏先輩がお礼を言ってくれるのはありがたいが………。
「余り気にしないでください。一人で黙々とするよりも張り合いがありましたし、美人の先輩の前ですから情けない姿は見せられないと張り切ってしまいました。」
肩を竦めながら言うと、面白かったのかクスクスと笑ってくれた。
「優君ってちょくちょくそんな風に私を褒めるよね。紳士の国イギリスにいるとそんなお世辞を言えるようになるの?」
「事実ですよ。男の意地とでも思ってください。」
「優君にもそんな気持ちがあるんだね。」
千夏先輩の発言に苦笑してしまう。
「俺も男ですから女子の前で情けない姿やだらしない所を見せたくない気持ちはありますよ。まして千夏先輩みたいな美人で可愛い女性の前ではね。」
俺の肩を竦めながらの発言にまたクスクスと笑う。
「またそうやって私を持ち上げる。なら美人で可愛い私が帰りにジュースを奢ってあげよう。」
楽しそうに年上風を吹かしながら言う先輩に俺も笑ってしまった。
「ありがとうございます、せ〜んぱい。」
真面目な表情でからかう様に言うと、二人で一瞬顔を見詰め合い、堪えきれず噴き出し大笑いしてしまった。
日曜日も千夏先輩と一緒に同じ低酸素ルームでのトレーニングをすることになった。といっても昨日と違い今日は長距離をゆっくり走りながら偶に軽いダッシュをするといったメニューで、一定のペースに軽い負荷をかける足に乳酸が溜まるので地味にキツイ。
お昼を一緒に食べて、午後は引っ越しで必要になった物があるので買い物に行くというので荷物持ち役で一緒に行くことにした。新しい寝間着が欲しかったのもあるが。
二人連れ立ってショッピングモールに行く。千夏先輩の買い物は直ぐに終わった。本が倒れない様にする仕切りが欲しかったようで5分とかからなかった。
次に俺の買い物に付き合ってくれるようでパジャマ売り場に二人で向かう。
あれこれと触ったり見ていると、千夏先輩が“優君優君”と言って手に持ったファンシーなパジャマを持ってきた。国民的アニメのキャラクターで、一言で言うなら可愛い部類入るだろう。
「これ良くない?」
楽しそうに薦めてくる千夏先輩に、俺も笑顔で返す事にした。
「ならそれにしましょう。2つ買うので一つは千夏先輩が着てくださいね。お揃いにしましょう。」
俺の返しに戸惑いの表情を見せる。
「え、あ、いや〜、その〜、………」
「どうしました?可愛いんですよね。なら一緒に着ましょうよ。」
含み笑いを漏らしながらいう。
「ごめんなさい、悪ふざけが過ぎました。」
素直にペコリと頭を下げて謝る先輩の姿に笑ってしまった。
「あははは、ですね。俺はこれにします。」
そう言ってネイビー単色のを手に取った。値段とサイズも確認した。うん問題なし、決めた。
「何か、普通だね。」
「いやいや、パジャマに普通じゃない要素いらんでしょ。しっかりとよく寝れることが目的なのに。」
「確かに。」
そんな会話をしながら会計に向かう。
夕方に二人揃って家に帰ると母さんが今日はちゃんこ鍋だと教えてくれた。
俺は初めての高校の練習参加、千夏先輩は休み明けと気合を入れる為らしい。出来たら呼ぶから好きに過ごしてなさいと言われたので、とりあえず部屋に荷物を置いてこようと話し、二階に上がる。
「昨日、今日とありがとう。良い経験が出来たよ。」
お礼と“じゃあ晩御飯の時に”と言って部屋に入って行った。
日が沈み、母さんが晩御飯にしようと呼びかけてきた。部屋を出ると、ちょうど千夏先輩も部屋から出てきた。
「行こっか。」
「はい。」
千夏先輩の後に続いておりる。リビングに入ると母さん特製ちゃんこ鍋の醤油のいい匂いがする。
テーブルについて皆で食事を始める。野菜がしっかりと煮えていて特製肉団子も軟骨に蓮根が良い食感だ。父さんがビール片手に陽気に食べている。千夏先輩も笑顔を浮かべて食べている。
俺も好きな料理の一つなので、千夏先輩に負けじとハフハフと熱さを感じながら食べる。1時間もすればある程度食べ終わり、食後に移ろうと言う時に母さんが千夏先輩に話しかけた。
「千夏ちゃん、一つお願いがあるの。この子を学校に案内してくれない。サッカー部の先生に挨拶しないといけないのだけど、誰か知らないのよこの子。ま、私もだけどね。」
「えっ!?そうなんですか!?」
千夏先輩が驚愕の顔をしている。
「推薦の形だけど書類出して、テレビ電話でぱぱっと受け答えして終わりなのよ。イギリスに居たから試験を受けに日本に来るのは手間が掛かるから高校同士で互い話し合ってそうなったのよ。」
「はあ⋯⋯⋯」
「でお願いできる?」
「構わないですけど、私朝練に行く予定なので朝早いですよ?」
「それでいいわよ。ねぇ、優?」
「はい、よろしくお願いします先輩。」
俺は大人しくしくペコリと頭を下げる。
「なら7時に出発ね、優君。」
朗らかに笑う千夏先輩をやっぱり可愛いなと密かに思った。
アドバイスで段落や空白入れてみたんですが、スマホだと個人的にかなり書きにくかったので止めときます。
あまりにそういう感想が来るなら、もう少し入れようかなと考えてはいますが………。