この作品を投稿し始めて約一年………まだ夏休みまでいってへんのか〜〜〜〜〜い!!
まあ私が遅筆なせいですが、これまでと変わらず急がず慌てず自分のペースで完結までいきたいと思います。
一応最後の方のプロットは頭の中では完成してます。何年後に書くねんって話ですが…………。
ではでは本年もどうぞよろしく。
キーパーの人からキャプテンマークを譲り受けて右腕に巻く。
そもそも最年少の15のガキにU-20のキャプテンやらすってのが変だろう。チームの総意って言われたら仕方ないけど。
ピッチに川添と並んで第4審判のスパイクや首回り、手首のチェックを受ける。危険な物を持っていないか、身に付けていないか、規定のスパイクか見られる。
さて行くか。川添と拳を打ち鳴らしてピッチに入る。
ハーフタイムのミーティングでフォーメーションや戦い方の指示は受けているので何も問題ない。円陣を組んでるチームメイトの輪に入る。
「ミーティング通りにやるだけだ。負けてるからガンガン攻める。後ろも頼むぞ。」
「おう!」
「行くぞ!ワン、ツー、スリー!」
「「「「「「「「「おう!!」」」」」」」」」
気合の入った掛け声が上がり、各々ポジションに散っていく。
笛が鳴り、後半が始まった。
日本ボールでスタートする。最終ラインで回しながらラインを上げていく。SBから俺にボールが入る。マークに来たボランチを時計回りで躱す振りをしてボールだけ回し、身体は逆方向に回って躱す。
バイタルエリアに行くとCB2人がシュートコースを消しながら間合いを詰めてきた。時間をかけてられない。
川添とワン・ツーでDFラインの裏を突くっ!!
優君が、FWの人にパスを出そうと横を向いた瞬間、何故か優君をマークしていたDF2人を置き去りにしてペナルティエリア内にドリブルで侵入していた。ゴールへ迫る優君へFWについていたCBがマークを外して優君へ向かって行った。3人目のCBを引き付け、キーパーもニアを防ぐ為にニアポストに寄る。
その瞬間、アウトサイドでペナルティスポット付近で待っているFWの人にラストパスを送った。
それをしっかりとミートしたシュートをし、ゴールに突き刺した。
『ゴ〜〜〜〜〜〜ル!!!日本一点を返しました!1対2、その差1点!』
ゴールに勢いよく入ったボールが外で跳ねている。それをすぐさま手に取ると、すぐにセンターサークルにいる選手に蹴り渡した。
「相変わらず上手いわね、優。」
智さんが頬杖をつきながら言った台詞に興味をもち、顔を見る。それに気付いた智さんが解説をしてくれる。
「優についてた2人のディフェンダーのうちの1人が川添君にパスが出ると思って、一瞬意識がそっちにズレた。その僅かな隙を見逃さずにクライフターンで2人の間をすり抜けて振り切り、川添君をマークしていたディフェンダーを引き付けてフリーになった川添君にラストパスで勝負ありね。」
餃子をパクリ、モグモグと咀嚼をしてビールを一口。
「あの子は一瞬の意識の逸れに敏感なのよ。と言ってもそれほど大きな隙じゃないのよ?体重の掛かり具合、身体の向き、意識の逸れを突くのが抜群に上手いのよね。」
優君の突破のシーンがゴール裏のカメラからの映像で流れている。確かに優君についてる2人のうちのゴール側の選手の身体が一瞬内を警戒しているのが分かる。
試合が始まっていた。VTRを流している間に始まっていたようだ。相手の選手にボールが入った瞬間、味方と優君が挟み込んでボールを奪う。
優君の前にボールが転がされ、それをダイレクトで右サイドで待つ味方へパスをする。優君もゴール前に上がっていく。
センターに川添君?優君はボールを持った選手に近寄っていく。優君にパスが出た。シュートかドリブルかパスだと思った瞬間スルーしていた。
優君の背後から反対側の選手が来ていて、そのままシュートを撃った。
『逆サイドの橘フリーだ〜〜!シュート、入った〜〜〜!!』
『よおおぉし!!』
『日本追い付いた〜〜〜〜〜!!後半12分、橘のゴールで同点〜〜〜!』
『流れるような攻撃でした。最後如月君がヒールでパスコースを変更してるんじゃないですかね?』
『本当ですか!?映像を見てみましょう!』
映像が流れ始めた。確かに右サイドの選手のパスに右足の踵でパスコースを変えている。その変わったパスをダイレクトで左サイドの橘選手が右足で巻くようなシュートを撃って決めた。
「凄いっ………。」
思わず感嘆の声を漏らした。ハッとして口を覆うと、智さんと将史さんが笑って私を見ている。
「ほ〜んと凄い息子よ。」
「ああ、どこまで行くのやら。」
2人もここまで凄い息子にどうすればいいか分かってないのが伝わった。
日本が主導権を握っている。川添の落としに左足でミドルを撃つもボールはポストを掠めて外れた。
さっきは川添の強引な突破からのシュートをキーパーに止められた。攻撃が終わると両WGは相手のWBを素早くマークする。俺は相手のゴールデン・トライアングルのマークに着く。
後半に修正した守備の決め事を徹底出来ているからオランダの攻めも単発で終わり、精彩を欠いている。
今も相手のCBからのストライカー目掛けてのロングボールをCB2人が挟み込んでクリアする。
それを中村が拾い、SBにパスを出す。
SBからWGに縦パスが入り、俺に戻す。
ダイレクトで相手の最終ラインとキーパーの間にフライパスを送る。逆サイドの山内が走り込んでいるのが見えたからだ。
だがCBが身体を入れてクリアされゴールラインを割った。コーナーになったとはいえ、流石に5バックは固いな。
コーナーに向かい、蹴る準備をしながらゴール前を見る。高いオランダのDF陣高いな………このまま蹴り込んでも期待薄だ。
サインを出し、ショートから折り返しを貰い、ペナ角にドリブルし相手を1人躱して左足でファーサイドに鋭いボールでシュートを放つ。
「ちぃっ!!」
キーパーがギリギリの所で弾いた。ボールが逆サイドを転々と転がる。ハッとした。
「カウンター!気を付けろ!!」
相手のWBがボールの元へいち早く向かう姿を確認し、警告を出す。今自陣にSBとダブルボランチしかいない。早く戻らないと。
相手が縦にロングボールをストライカーに目掛けて蹴る。それを司令塔に落とし、裏へパスを出す。ドリブラーがドリブルで駆け上がり、ストライカーにクロスと思った瞬間、後方からペナ外に走り込んでいた司令塔へグランダーのパスを送る。
それをダイレクトで強烈なシュートを放つ。
中村が気付いてシュートコースを防ぎに行くも間に合わず、ネットに突き刺さった。
圧巻の高速カウンターを披露され、スタジアムが敵味方関係なく盛り上がる。俺もディフェンスに向かったがハーフラインを越えた所で決められた。DF陣の元へ行くと完璧なカウンターを喰らってショックを受けているのか浮かない顔をしている。
「あれ以上はない!あれが最高だ!何を慌てる必要がある!」
俺の喝に少し気持ちを持ち直したようだ。
「リードされた。今までと変わらず攻め続けるぞ。いいな?」
DF陣にこれまでと変わらない戦い方をする。守りは今まで通りでいいなと確認すると皆が頷いた。
「こっちは俺達で何とかする。リードされてんだ。後2点頼むぞ。」
そう言ってボールを俺に押し付けた。
「あいよ。」
DF陣の覚悟は伝わった。後は俺達が点を取るだけだ。
久し振りに花恋の家に遊びに来ている。と言っても部活帰りに母親が遅くなるから晩御飯をご馳走してもらうためだ。
今は花恋と如月が出ているサッカーの試合を共に観戦している。お互いに縁のある相手が出ている。俺は学校の後輩。花恋は仕事で一緒になった相手だ。一応、連絡は取り合っているが定型文みたいな遣り取りで色恋なんて全くない。如月との遣り取りを見せてもらったが、お前もう少し何かあるだろうと思う返事だった。
「凄いわね。15歳でU-20の試合に出るなんて。」
「ああ。でもあいつには今の日本代表も物足りないんじゃないかな?」
花恋の感嘆の声に、俺は如月がモヤモヤを抱えているんじゃないか心配している。
「あいつはこの間までヨーロッパでも有数のチームのトップと練習をしていた。それが栄明、日本代表と悪いが何段も格が落ちるチームメイトと練習、試合をすることになっている。この日本での生活に満足しているのか…………。」
つい俺は嫌なことを言ってしまった。
「健吾…………。」
「いや、気にしないでくれ。あいつの心の内なんて分かんないんだ。他人の俺がどうこう言うものじゃないしな。」
オランダの攻撃を中村が強烈なチャージで防ぎ、近くに来ていた如月に縦パスが入る。前を向き、左サイドの橘に強く速いグランダーのパスを送る。サイドを抉る振りからカットイン。中央からフォローに来ていた川添へパスをする。DFのプレッシャーでボールが浮くもヘッドで中央にパスをする。またたく間に駆け上がっていた如月がダイレクトで左足を鋭く振り抜いた。
ボールはバーを叩いて下へ落ちながらゴールラインを割った。そして跳ね返り上のネットに突き刺さった。
如月は走りながらガッツポーズをしてボールの回収に向かう。
「よおおぉし!!」
「すご〜〜〜い!!」
俺も花恋も歓声をあげた。すげぇ〜ゴールだ。スタジアムが一際盛り上がっているのも分かる。
「お姉、健吾、五月蝿い。」
「ごめん、ごめん菖蒲。」
「わりぃ、サッカーでつい盛り上がっちまって。」
「そうだ菖蒲、この子よ。この間一緒に仕事した相手。」
テレビに大きく映ってる如月を指差した。
「ああ、確か栄明のサッカー部の?」
「そうそう。」
「ふ〜〜〜ん。結構カッコいいじゃん。」
「菖蒲、あんた………。」
「大丈夫、大丈夫。アタシのタイプじゃないから。じゃあ戻るね。」
そう言って部屋に戻っていった。
「全くあの子は。奔放なんだから………。」
「大変だな姉というのも。」
「ホントよ、もう。」
ここまでで菖蒲の話を終わらせ、試合に意識を戻す。
如月にパスが入り、相手が寄せる。無理をせずに下げる。他の所にパスが行く。如月も寄っていきサポートをする。それを幾度も繰り返す。
左サイドでWGとSB、如月の3人が細かいパス繋いでいる。SBがポケットに入り、そこへパスが出る。逆のWG、川添がエリア内にいる。クロスが上がり川添が競り合う。前に出ていた川添がヘッドでゴールを狙うとディフレクションし、コースが変わって入った。
これで4対3。日本がリードした。如月達がゴール前で喜んでいるのが分かる。
天井にぶら下がったカメラが如月たちの様子を映し出す。
『ナイッシュー!』『勝ち越し、勝ち越し!』『後1点でハットじゃん。やっちゃう?』
『もうそろそろいいか?まだ試合は終わってない。』
『ああ、そうだな。でこれからの戦い方は?』
『何も変えん。こっちが連続で得点してるんだ。何を変える必要がある。もう1点取ってトドメを刺す。いいな?』
『おおっし!』『よっしゃあ〜〜〜!』『おう!』
如月の一声でまた士気が上がった。そこからは攻撃的に出るオランダとがっぷり四つで戦う日本代表がいた。ロスタイムに入った瞬間、日本にチャンスが訪れた。
川添からの落としを如月が受け、ドリブルを始めようとした時に、これ以上はさせんとスライディングで如月の脚ごと払った。当然ファールでイエローも出た。
身体を地面に打ち付けたようで右肩と腕を痛がっていたが、大丈夫なのか手で大丈夫、大丈夫と合図している。
正面少し右か、距離は35メートルとテレビに表示されている。
キッカーは当然如月。手を組んで前にグーーーっと伸ばし、上にも上げてグーーーっと伸ばした。そして大きな息を吐いた。
ボールをセットし、助走を取る。手を挙げた。指を3本出している。何かのサインプレーか?
笛が鳴り、バイタルエリアで日本、オランダの選手が激しく交錯する。
如月が走り出した。左足でボールを蹴る。そのボールは速く小さく鋭い弧を描いて直接ゴールへと吸い込まれた。
如月がいつものゴールパフォーマンスをしつつ、コーナー付近のカメラに向かって行く。そしてカメラを指差し、ガッツポーズをする。
追い付いた味方に押し倒され、もみくちゃにされている。
その様子も声もばっちり映り聞こえてくる。
『重いって!』『痛い痛い!』『肘!肘が入ってる!』
「何かグダグダね………。」
「あ、ああ………。」
花恋も同じ感想を抱いたか………。徐々にバラけていき、残りのロスタイムの消化に向かう。すると直ぐに笛が鳴り、タイムアップ。日本が5対3で見事な逆転勝ちをおさめた。
ハーフラインで選手同士が健闘を称え合っている。審判とも握手を交わしている。こういう所がサッカーの良いところだよな。試合中はあんだけ身体をぶつけ合い、意地と意地のぶつかり合いをしてたのに終わるとノーサイドっていうか。
今日の親善試合のM・O・Mの発表が行われた。まあ案の定というか当然というか2ゴール2アシストの如月が選ばれた。
『後半だけと思ったらフルパワーでいけました。』
『いえ、今日は運が良かっただけですよ。良い所に飛んでくれました。』
『水曜日もベルギー戦と負けたくないし、勝たないといけない試合があります。精一杯頑張りますので応援の方、よろしくお願いします!』
マジで優等生コメント。卒がないというか面白味がないというか。良い子ちゃんコメントだな。
優秀選手に選ばれた川添、敢闘賞に選ばれたオランダの司令塔のインタビューが終わり、部屋でのインタビューに移った。
『如月選手は後半からとなりましたが、その事をどう思われましたでしょうか?』
インタビューアーが前半出れなかったことを質問する。
『この監督、俺をベンチとかぶっ殺してやろうかと思いました。』
と笑いながら毒を吐いた。会見場は凍りついている。
『お前、そんな事思ってたんか!?』
監督が笑いながら如月に聞く。
『冗談ですよ。チームとして何かしらの理由があってのベンチスタートと思ってましたので、特に何もないですよ。リザーブとして働く、それだけです。』
如月が肩を竦めながら冗談混じりに言うと、場の空気が弛緩したのが分かった。あいつ、こんな事も出来んのかよ。
『監督は如月、川添と不動の司令塔、エースストライカーをベンチスタートにしましたが、その目的は何なんでしょうか?』
別の人がチームの主力2人の扱いについて質問する。
『2人の実力が抜けているのは分かっていました。秋のU-20W杯も2人を攻撃の核として戦うでしょう。ただ起用法でベンチスタートをさせることがあるかもしれません。その時、2人がチームの不満分子、不協和音となるなら置いておけなくなる。それを見たかったんです。しかし如月と川添はスタメン組のフォローや手伝い、準備を率先して行ってくれました。なので後半から出場させた、それだけです。』
最後に如月の顔を見ながら伝える。それを受けて如月は肩を竦めながら苦笑している。さも当然の事だと言わんばかりに。
『次はベルギー戦ですがスタメンはどうなりますか?』
『如月、川添、中村のセンターラインを軸に円熟させつつ色々と試したいと思っています。後数試合しかないので試せることは試していきたいと思います。』
『如月選手、次の試合の抱負をお願いします。』
『ベルギーは今年引き分けに終わったチームです。今度は白黒つけたいと思います。今日のように皆精一杯頑張りますので応援の方、よろしくお願いします。』
『試合後、お疲れの中ありがとうございました。』
司会の人が締めて、会見は終わった。如月と監督が談笑しながら会場を後にする。スゲ〜なあいつ。慣れもあるんだろうが。
「さて、終わったし俺も帰るか。」
花恋に帰る旨を伝える。玄関まで見送ってくれるようだ。荷物を持って靴を履く。カレー美味かったな。
「健吾、あんたはあんたで頑張ってる。自分の努力を否定するのは止めときなさいよ。」
「………花恋」
意外というか、案外鋭い所を度々見せて驚かされる。
「年下があんだけやってるのに焦る気持ちは分かる。でもそんなのあんたの努力が間違ってる証明にはならないから。」
「ありがとう花恋。お前が彼女でよかったよ。」
素直に礼を言えた。花恋、顔が真っ赤になってる。
「……そう、ならよかった。」
照れてそっぽを向いている。
「ありがとう。じゃあ帰るよ。」
じゃあと手を上げて別れを告げて、歩き出した。
10時を過ぎた頃に智さんのスマホに連絡が入った。優君のようだ。
「おいっす〜。」
「お疲れ。何よ連絡何かしてきて?いつもはメッセで終わりじゃない。」
「いや、千夏先輩と勉強会出来ないって伝えてないなって。」
「あんた遠征行ってんだから当たり前でしょうが。そんな事でわざわざ連絡してきたの?ていうかそんな連絡だったら千夏ちゃんに直接しなさいな。」
智さんが呆れ顔で溜め息を吐いている。“はいっ”とスマホを私に差し渡された。
「出てあげて。どうも優が千夏ちゃんに会えなくて寂しがってるようだから。」
「えっ!?いや、違っ!?」
「優君。」
受け取って画面に映る優君を確認した。照れているのだろうか、横を向いて髪を弄っていた。
「凄い活躍だったね。」
「あ、えっと…はい。ありがとうございます。」
「優君って試合中、あんな感じなんだね。上からのカメラで色々言ってるのも聞こえてたよ。」
目を大きく見開いた後、下に俯き後頭部をガリガリ掻いている。
「恥ずかしいです。試合中は興奮して色々とキツい事を言っているから。」
「ううん、そんなことないよ!キャプテンらしいキャプテンだなって。チームをグイグイ引っ張るリーダーシップがあったよ。」
顔は上げたけど照れてるのが分かる。
「次の試合も頑張ってね。応援してるから。」
「ありがとうございます。千夏先輩からの応援は百人力です。」
「お〜〜〜い如月〜〜〜?」
遠くから誰か呼びに来たようだ。
「じゃあまたね。」
「はい。千夏先輩お休みなさい。」
「うん、お休み。」
そう言ってテレビ通話を切った。
「ありがとうございました。」
お礼を言ってからスマホを智さんに返した。
「どう?やる気出た?」
「えっ?あ、はい!」
「なら良かった。貴方達はお互いに高め合う関係を築いているようね。良いことだわ。」
優君の今日の頑張りを見て、私もモチベーションが上がったのを感じる。如月家に居候させてもらえて良かった。
ベルギーとの試合も半分が過ぎた。激しい競り合いが多い試合になっている。
ベルギーの主軸は大型万能フォワードとドリブラー型司令塔、万能型フィジカルモンスターのボランチの3人。
川添、如月、中村が主力の日本と互いの長所を潰し合うゲームになっている。司令塔がボランチに激しく削られる、鎬を削る様相となっている。
今もボランチの選手を背負いながら俺に縦パスが入る。身体で相手の選手を抑えながら受ける。そこに長い足がニュッと伸びてきた。それを防ぎながらキープする。
サイドに展開するも手詰まりになり、最終ラインでもう一度組み立て直す。
勝負の分かれ目は互いの司令塔が相手のマークを振り切り、いかに仕事をするかにかかっているようだ。
俺にボールが入る瞬間、相手の身体をドンッと押した反動で距離を取り、ボールを足元に収めながら正対する。
足裏で転がして間合いを詰めようとする。アウトサイドでボールを弄りながら仕掛ける準備をする。
右から抜く。振りをしてエラシコで逆から仕掛ける。まだついてきた。ルーレットでまた逆に行く。その途中にルーレットをキャンセルしてクライフターンで相手の股を抜く。
完全に入れ替わった。ドリブルで進んでいく。このままバイタルエリアまでと思った瞬間、右横から強烈なチャージを受けた。
完全に抜いたのにもう追いついてきたのか!右手で抑えながら左足でボールをキープしながら進む。出し所がない。
強引に左足でシュートを放つもキーパーが難なくキャッチした。DFもコース切りや日本の攻撃陣のケアもしっかりとしている。
前の試合の時はコイツ居なかったからな。厄介な選手の相手を今日はしないといけないのか………溜め息出そう。
ボランチの奴がフォローに行こうかと合図してきたが、いらないと返す。この年代で助けばっかり借りてたら世界で戦えないだろう。何度か俺にパスが入るも素早いチェックで余裕のあるボールキープが出来ていない。
しかしボールロストもしない。丁々発止、一進一退の攻防が続く。それでも何となくコツというか、癖というか、相手の選手の特徴を掴んできた。
この抜群の体格とそれに伴う身体能力を活かした攻防が売りなんだろう。しかしサッカー自体はそれほど上手くない。身体能力だよりの謂わば本能に任せたプレースタイルということだ。
もう慣れてきたからそろそろ行ける。前の3人に合図を送る。
千夏先輩も応援してくれてるんだ。このまま何も出来ずに終わるなんて情けなさ過ぎる。ここらで俺が欧州一の名手と言われる所以を魅せるべき時だ。
優君が苦戦している姿が映っている。
マッチアップしている相手の圧倒的身体能力に、抑え込まれている。
「そんなに不安そうな顔しないでいいわよ。」
「えっ………?」
「あの子がこんな所で止まるわけないでしょう?私もパパも日本では有数のプレイヤーになれた。でも世界で戦うには何かが明らかに足りなかった。それをこれから見せてくれるわ、あの子が。」
智さんと将史さんの自信に満ちた表情と言葉が確信に溢れている。テレビの優君が何か合図をしている。
そして直ぐにボールが優君の足元に入る。
反転しながらボールをキープする。そして突っ込んでくる相手を一瞬でいなして、ボールは相手の股を通す。優君は身体をロールさせ背後を取る。相手が前に体勢を崩し転げている。フリーになった優君がゴールに迫る。
高速フェイントでもう一人抜き去った。
何故かゴール前がポッカリと開いている。キーパーが慌てて前に距離を詰める。其処を冷静にカーブをかけてゴールを射抜いた。そしてゴールラインに向かいそのライン上でフラッグに向かいながらいつものゴールパフォーマンスをする。
コーナーフラッグ付近でガッツポーズ。周りの選手とハイタッチをしながら先制の得点を喜んでいる。
「私の日本人有数の身体能力と感覚だよりのプレーやパパみたいな分析してプレーする。どちらも何も考えずにプレーするよりはいい。日本一になるくらいならチームメイトに恵まれればなれるでしょうね。でもその世界で選ばれた中の更に選ばれた人達と戦うなら、その2つを備えなければならないの。あの子のように。」
試合が再開し、また同じ選手と優君がマッチアップする。今度も何度かのフェイントで翻弄し、簡単そうに抜き去る。
「どうやらあの子、何か決定的なのを掴んだみたいね。癖か間合いかタイミングか……テレビ越しに観てる私には分からない、相対しているあの子にしか分からない何かが………。」
フォローに来た相手もルーレットで鮮やかに入れ替わる。今度はCBがフォローに直ぐ来る。川添選手のマークが一人になった瞬間、閃光のような、パスの通った場所が光っているのではと思うような綺麗な一本のパスがゴールに向かって差し込んだ。
ダイレクトで優しくしっかりとミートされたボールはキーパーの必死のディフェンスを嘲笑うかのように、何の障害にもならず転がっていきゴールネットを揺らした。
一瞬の静寂の後、状況を理解した観客が爆発するような歓声を起こした。
プロでよく聞く打った瞬間に入ると確信する時がある。そんなシーンのようだった。パスが出た瞬間に、“あ、これはゴールが決まる”と素人の私にも思わせるパスだった。それを理解した瞬間、鳥肌が立った。
「凄いでしょ?」
「はい……鳥肌が立つくらいに。」
「そういう時のあの子は無敵のスーパーマンみたいな活躍するから、相手が可哀想ね………。」
嘆息をしながら苦笑する智さんの言葉通りの展開になった。
ロングカウンターの起点となるロングボールを出したかと思ったら、次は得意な形のカットインからの45℃からのコントロールショットによる得点。フリーキックからのヘディングゴールのアシスト。そしてフリーキックでの得点。
結局8対2で勝利した。圧倒的攻撃力で押し切った感じ。
その得点全部に絡む大活躍だ。
「またスカウトの連絡が増えるな………」
「ホントそれよ………」
将史さんと智さんが溜め息を吐いている。アンニュイな気分って感じ。
夜中の11時、真っ暗な夜道をキャリーケースをゴロゴロ言わせながら歩く。明日学校があるから泊まらずに帰ることにした。
駅から5分ほどで家に着いた。ガチャリと鍵を開け、家に入る。玄関で革靴を脱いでいるとリビングに通じるドアが開いた。
「おかえりなさい、優君。」
いつもと変わらない笑顔と優しい声音で、そう言ってくれる千夏先輩に安らぎのようなものを感じる。
「ただいまです、千夏先輩。」
キャリーケースを玄関に置いて、リビングに千夏先輩と2人で向かう。
「「おかえり。」」
「ただいま。」
両親にも返事し、手に持っていた紙袋を千夏先輩に渡す。
「これ、駅の売店で売ってたから。東京バナナ。」
「えっと………おみ、やげ?」
千夏先輩が疑問符で尋ねてきた。お土産というよりも。
「売店で偶々見かけて、そういえば日本に帰ってきてから食べてないなと思って。そしたら急に食べたくなったから。」
両親はクスクスと笑っている。俺の性格をよく分かっている。ちょくちょくこういったのを買ってしまう癖を。
「なら寝る前に短いお茶会でもしましょうか。ホットミルク入れるから皆でそれを食べましょう。優はその間にお風呂入ってきなさい。」
風呂の後、千夏先輩から俺がいない間の学校の話や部活の話、俺の活躍の話を、俺からは代表戦やチームメイトの話など他愛ない事かもしれないけど互いの事を報告し合った。
そして前と変わらず就寝の挨拶をして互いの部屋へ入る。
“お休みなさい、千夏先輩”と言って。
ポジションをアルファベットにしてみましたが問題ないでしょうか?ないならこれからこれを中心に書いていきます。
こんな感じで代表戦の話は終わりました。
次はどうしよっかな?何にも考えてないです。とりあえず漫画である場面を拾ってこうかな?
時系列順にか前後させてか色々考えて書いていきま〜す!