色々と時間軸変えてるのでご理解ください。
原作のシーンをちょこちょこ変えての話になります。
千夏先輩の母親の名前、千佳にしました。(いつか原作で出てくるのか、もしかしたら出ずに完結とか………)
代表戦から帰ってきた次の日。いつも通り朝のランニング、朝食、千夏先輩と登校、朝練と毎朝のルーティンになっている行動をする。
紅林先輩や沢城先輩、他の同級生や先輩達とミニゲームを行う。毎回ポジションや攻守をシャッフルしながらも実戦を想定して行うし、時間設定も決めてダラダラ攻める事が出来ない様にしているので結構ハードだ。立ち位置やボールの受け方、パスの出す先、走る先を毎回チェックし、アドバイスをする。
皆が一生懸命やってくれるので、此方としても教え甲斐があるし、やっていて楽しい。
短い朝練が終わると片付けを終え、部室で汗の処理や着替えをして、教室に向かう。部室も最初は汚かったがチームで綺麗にしようと決め、掃除を毎週しっかりとやり、換気や簡単な清掃を毎回している。
教室に横川と向かう。クラスメイトや知り合いに挨拶をしながら席に向かうと、女子がワラワラと近寄ってきた。
「如月君、凄かったよ〜〜〜!!」「うん、カッコよかったよね!!」「ホントそれ!!」
褒め言葉を次々と掛けてくれるのはありがたいが、ここまで来ると喧しいな。大喜も匡も近寄って来てくれないし、蝶野さんと島崎さんも俺が困っている姿を笑っていて助けてくれない。横川は日直で自分の席に荷物置いたら教室から出ていった。助けもせずにだから薄情なやつだ。
予鈴が鳴り、皆に席に戻るように伝えると渋々ではあるが席を囲んでいた女子が戻ってくれた。教室から出ていった人もいたから他クラスの人もいたようだ。
近くの席の匡も戻ってきた。薄情者め。ジト目で見ているとフッと笑って席に着いた。
梅雨に入り、昼から雨が降ってきた。折り畳み傘を持ち歩いているので問題なかったがよく降る。
リビングから見える庭を見ると大きな雨粒が落ちてきているのが分かる。
智さんと夕飯の準備をあらかたし終えて2人で優君の帰りを待っている。サッカー部は雨が降っているのと室内での練習場所がなかったので休みになったそうで、歯のホワイトニングをしに歯医者に行っている。将史さんは出張で九州の方に行っていていない。
「よく降るわね。暫く天気が悪いから傘を忘れないでね?」
「はい。」
2人で温かいお茶を飲みながらのんびりする。優君がいない今、前から聞きたかったことを聞いてみた。
「あの……優君が日本で高校に通いながらプロリーグに参加しないのって理由があるんですか?以前所属していたチームにプロとして卒業後に戻るって言っているのは知っているんですが。」
2種登録っていう制度?を使えば高校に通いながらプロの試合に出ることも高校の試合に出ることもできる。それを何故しないのか不思議だった。
私の質問を聞き終わると、智さんが手元の湯飲みをクルクル回しながら考え込んでいる。
聞いちゃいけないことを聞いたのか不安になる沈黙だ。私と目を合わせた智さんに視線に力が入っているのが分かった。
「多分だけど、あの子の中でプロデビューのチームは決まってるのよ。………千夏ちゃんは憧れていた同級生っている?今でも昔でもいいけど。」
智さんの質問に1人の幼馴染と言ってもいい女の子を思い出した。
「います。目標であり、憧れの人が。」
智さんがうんと深く頷いた。
「優にもいたの。そういう子が。」
湯飲みに口を付け、一口飲み息を吐いた。
「あの子が6歳の時にイギリスに行き、直ぐに近所の子と仲良くなった。ダニーって言って明るくて元気でサッカーが上手くてね。優は日本では私がバスケ、パパが野球をやっていたからその2つをやっていたけど、向こうに行くとその2つを辞めてダニーに誘われてサッカーを始めたわ。」
イギリスに行って直ぐの話を嬉しそうに楽しそうに言う智さん。
「ヨーロッパって地元愛とか地元チーム愛が強い人が多くてロンドン育ちのダニーが好きなロンドンのチームに8歳の時に一緒に入門したの。名門サッカーチームだから千夏ちゃんも名前くらいは聞いたことあるんじゃないかしら?」
尋ねられ、頷いた。サッカーに詳しくない私でも聞いたことはある、聞き覚えがあるチームだ。日本でも多くの人が知っているだろう。
「優は自分が実力的に一番下ということを自覚していた。そして自分の時間を全てサッカーに費やした。まあ、サッカーの魅力に嵌ったってことね。そして遅れているあの子が追いつくために名選手のプレーを自分の身体を使って真似を始めた。実験、検証、改善というプロセスを繰り返し行い理解し、自分の身体に合うようにインクリメンタル、マイナーチェンジ、ブラッシュアップしてメキメキと成長していった。」
さっきまで優君の努力や頑張りを嬉しそうに話していた智さんが表情を急に悲痛なものに一変させた。
「10歳になった年にあの子は始めてチーム内でU-12に飛び級をした。………そしてダニーがクビになったの。理由は次の主軸は優でポジションや役割が被るから。同年代で下位互換のおんなじ選手は2人もいらないんだって。」
心臓がキュッとなるのが分かった。そして鼓動が聞こえる。早く激しく、不規則にドッドッドッと鳴っているのが分かる。
「優の存在が親友の首を切った。親友の夢であり目標でもあったこのチームでプロになる夢を絶ってしまった。それが原因かあの子は更にサッカーにのめり込んでいったわ。まるで落とされたダニーの代わりに夢を叶えようとしてるのか、落とした優が活躍することでダニーが落ちたのは仕方ないと思わせたいのか、ダニーの事を振り切ろうとしているのか。まあ詳しいあの子の心情はあの子にしか分からないわ。」
「………智さん……。」
暗い表情で昏く笑う智さんに私は何も言えなかった。
「そこから急激に伸びてたあの子は更にグングン速度を上げて伸びていった。僅か3年で素人から世界のトップクラスに仲間入りをした。それこそ学校と寝食以外は全てサッカーに捧げていたわ。正直私やパパが引く程ね。」
「智さんもですか?」
私の問いに思わすといった感じで失笑し、首を横に振った。
「学生どころか選手時代の私なんかも目じゃないわよ。ハッキリ断言できる。今あの子に匹敵するプロフェッショナルの精神で競技に取り組んでいる卓越したスキルを持つ学生は様々な競技で世界を探しても100人といないわね。」
力強く言う智さんの目が悲しそうに潤んでいる。優君の努力を称賛してはいても、そこまで追い込んでいた自分の息子に哀れさ(憐れ)を感じているのだろう。
「ただいま〜〜〜。」
リビングの扉が開き、優君が入ってきた。いつの間にか帰ってきていたようだ。
「おかえり。」「おかえり優君。」
「いや〜雨強くなってきた。ズボンの裾ビショビショになったよ。」
どうやら雨音で玄関の扉が開く音は聞こえなかったようだ、
「なら風呂に入ってきなさい。その間に晩御飯の準備しておくから。」
“うぃ〜〜”と返事をして2階に向かっていった。
「さて晩御飯にしましょうか。」
「手伝います。」
「ありがとう。」
2人連れ添ってキッチンに向かった。
和室で試合の分析を終え、一息ついた。集中していたからか、いつの間にか外で雨が降っていた。
喉が渇いたな。水でも飲むか。リビングに向かうと母さんが晩御飯の準備をしていた。
「母さん、雨降ってきたみたい。」
「えっ?もう降ってきたの?」
外を覗いて確認している。俺はキッチンの冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して一口飲んで和室に戻ろうとした時に頼み事をされた。
「優、悪いんだけど傘持って千夏ちゃん迎えに行ってくれない?」
「別にいいけど千夏先輩、何処に行ってるの?」
確かにリビングにいない。迎えに行けということは何処かに行っているのか。
「部活帰りに整体に行ってるのよ。ほら急げ。」
「へ〜〜〜い。」
さっさと行けという命令を受け、千夏先輩の傘を持って家を出る。整体の場所は聞いていたので自分の傘を差して歩く。
10分もかからずに見えてきた。軒下に誰かいる……千夏先輩か、ナイスタイミングで迎えに来れたみたいだな。
「千夏先輩、迎えに来ました。」
声を掛けると、此方に振り向いてくれる。そして俺の存在を確認すると“あっ!”って顔を何故かした。
俺も軒下に入ろうかというところまで近付くと、千夏先輩に隠れていた1人が見えた。
「あっ、如月君!?」
「えっ?あっ、蝶野さん!?」
蝶野さんが俺と千夏先輩の顔を何度も見てピンときたのか質問してきた。
「もしかして付き合ってるとか?」
「いえ、付き合ってはいません。」
「じゃあ何で迎えに来てるの?」
どうしようか………俺のミスだ。千夏先輩はどうしたいのかチラリと横目で見ると目が合った。笑っている。バレちゃったかと苦笑しているのだろう。一つ頷いたので俺も腹を括った。
「ここじゃあ店の迷惑になるからウチで話そう。ここから5分くらいで着くから。」
そう言い、差していた傘を蝶野さんに渡そうとした。見れば手ぶらな蝶野さん。傘を持ってくるのを忘れたのだろう。
千夏先輩の手に折り畳み傘があるのを考えれば家まで送ると言っていたか貸そうとしていたのだろう。
「え、いいよ。ちょうど傘3本あるなら私千夏先輩の折り畳み傘で。」
「でも………。」
「ほら私は借りる分際ですので一番小さいので大丈夫です、ハイ。」
千夏先輩も困った顔をしてこちらを見やる。俺はどうしようもないと肩をすくめる。それに対して千夏先輩も意図が伝わったのか仕方ないという顔をした。
結局、俺は自分の傘を、千夏先輩も自分の傘、蝶野さんは千夏先輩の折り畳み傘になった。
家への帰路。誰一人喋ることなく俺を先頭に黙々と歩いた。
家に着いてリビングにいる母さんに友人が来たと告げる。蝶野さんを紹介すると蝶野さんのお父さんの事を聞き、よろしく言っておいてと伝言を頼んでいた。
母さんが夕飯食べていくか尋ねると、家で用意されているから大丈夫と答えていた。さてそろそろ本題に入ろう。
「俺が詳しい事を話すよ。俺の部屋に行こう。」
蝶野さんに伝えると頷いた。千夏先輩も付き添うと言っていたがプライベートな話もしないといけないから遠慮してもらった。風呂に入っている間に話をしておくのでと伝え、蝶野さんを2階に案内した。
自室の椅子に座る様に勧め、俺はベットに腰掛けた。
「何となく理解出来た。」
俺と母さん、千夏先輩のやり取りで察しがついたのだろう。
「千夏先輩は俺の家に下宿している。」
「でしょうね。」
「ああ。」
「この事、大喜は知ってるの?」
本題を放り込んできた。答え辛い質問をしてくる。
「いや。俺の口からは伝えてない。勿論、千夏先輩も。基本的に隠してはいないけど、わざわざ周りに言い触らすこともないってスタンスでいる。」
「そう……………。」
蝶野さんが何を言いたいのかは察しがついている。大喜や匡、部活の友人に言わないのは言い触らされるの警戒しているからなのではと言いたいのだろう。
「校長からも気を付けるように言われているから俺も千夏先輩も学校の友達や部活の人にも言っていない。」
「…………分かった。なら私も黙ってる。」
「ありがとう。感謝する。」
スッと頭を下げて礼を言う。
「如月君は千夏先輩の事を好きになってたりはしないの?あんなに美人で頭も良くて性格もいい。これで好きにならない方がおかしくない?」
「好ましく思ってはいるよ。真面目で努力家で、一生懸命で一緒にいて色々と影響を受けているから楽しいし。でも恋愛関係になるにはお互いに色々と理解し合う必要があると俺は思ってる。俺も千夏先輩も恋愛に対して軽い感じでいける性格じゃないから。」
「そっか……意外と深く考えてるんだね。」
意外とって何だよ。俺、蝶野さんより頭も良いし、色々と考えてるんだけど。
「蝶野さんだって大喜の事、一目ぼれってわけじゃないんだろう?色々な出来事が積み重なって友情から愛情に変化していったんじゃないの?」
「あ、愛情って!そんな……恥ずかしい。」
顔を真っ赤にして恥ずかしがる蝶野さんが面白くて笑ってしまう。そんな俺をむーーーっと睨んでくる。
“ごめん、ごめん”と軽く謝り、少し遅くなったし話はここまでにしよう。そう言うと“分かった。私もこの事は誰にも言わないでおく”と言ってくれた。1階の2人に声を掛けて蝶野さんを家まで送ると伝えると蝶野さんは遠慮したがもう8時を過ぎて暗い。そう言うと母さんが車で送ると言い出した。
それなら安全でさっさと終わると言い、車のキーを持って外へ向かおうとしている。尚も遠慮しようとする蝶野さんを一睨みで沈黙させた。怖いって母さん。
先に晩御飯食べときなさいって言われた。千夏先輩と2人で先に食べ始めた。八宝菜とイサキ、アジ、イワシの刺身の晩御飯。
蝶野さんとの話を、黙っていてくれるって言ってくれた事を話しながら食べていると、直ぐに母さんが帰ってきた。
母さんが頷いたから問題ないようだ。千夏先輩と2人、ホッと息を吐いた。
車を走らせながら横に座る女の子に話しかけた。
「千夏ちゃんの事、秘密にしてくれてありがとう。」
「いえ、わざわざ言い触らす趣味もありませんし、言うようなことじゃないので。」
恐縮するような様子を見せている。
「あ…あの!どういった関係なんですか…鹿野先輩と如月君の家って………。」
勢いづけて質問しようとしたものの下世話な質問をしたと途中で思ったのか尻すぼみになっていった。
「私と千夏ちゃんのお母さん、千佳が同級生でね。中高と勢いで突っ走る私のフォローをよくしてくれたわ。私は前にガンガン進んでいく性格だから他の部員の面倒なんか見なかったし、悩みなんかも聞いたことなかった。千佳はのほほんとしてるのに周りをよく見てて、私が先頭を走る、引っ張る、私の背中を追ってこいタイプなら千佳は後ろから支えてあげる、背中を押してあげる、寄り添ってあげるタイプだった。何者にも代え難いチームメイトで同級生で幼馴染で親友よ。だから私に出来ることなら何でもしてあげたいの。」
「いい関係ですね。」
「そう?ありがとう。」
そう遠くない場所だからあっという間に着いた。
「家まで送ってくれてありがとうございました。」
車の中でペコリと頭を下げてお礼を言ってくる。
「いえいえ、お父さんによろしく言っておいて。じゃあね。優と仲良くしてやって。」
“では”と扉を開けて家に向かっていった。玄関の前の雨に当たらない所に着いたら、振り返りまた一礼した。礼儀正しい子ね。さて帰りましょうか。車を発進させた。
1時間目の数学を終え、次の現国の準備をする。と言っても教科書を変えるだけだからそんなに手間はかからない。
俺より前に座る大喜と蝶野さんは授業内容が分からずちんぷんかんぷんなのだろう。グロッキー状態か眠気と闘っているのか頭が前後左右にフラフラと動くから見ていて面白い。
匡と横、島崎さんは真面目に授業を受けており、ノートもしっかり書いている。欠席分のノートも男子2人から借りたし。
ポケットに入れたスマホが震えた。家族以外の通知は音もバイブの鳴らない設定にしているから何だろうと思った。帰りに何か買ってこいかな?でもそれなら午前の今から言わないか。
取り出して画面表示を見ると千夏先輩からだった。全文は表示されないのでロックを解除して読むと眉を顰めた。
『私のジャージ持っていってない?』
今日、朝に母さんが洗っといたと言われて渡された物だ。ぶっちゃけあんまり確認せずに部屋に持っていった。そしてそもそも論だ。
『今日俺、体育ないんで持ってきてないです。部屋に置きっぱなしです。』
そう返信した。というかそう返信するしかない。だって持ってきてないんだもの。ていうか母さん、俺と千夏先輩の間違わないでよ。
『そっか、どうしようか。』
そう返事がすぐに来た。もうどうしようもないだろう。
『俺のでよければ使ってください。洗濯したてなので汚くはないと思うので千夏先輩が良ければ。』
そう返した。持って帰って洗えばすむ話だ。既読になって間が空いてから返事がきた。
『優君がいいなら借りるよ。本当にいいの?』
本当にいいの?よく分からん。何が駄目なんだ?俺のジャージを使うだけだろう?逆に何が問題なのかがさっぱり分からん?
『俺は一向に構いません。遠慮なく使ってください。』
そう返事した。
『ありがとう。じゃあ遠慮なく借りるね。』
返事が返ってきたのでスマホの画面を消し、ポケットに入れた。
さてそろそろ授業が始まる。水筒のお茶を一口飲んで授業に備えた。
昼休みになり、教室で大喜、匡、横の4人で昼ご飯を食べるんだけど何か外に生徒がぞろぞろといて俺達を見てヒソヒソと話をしてから去っていくか俺達の様子を窺っている。何ならクラスの男女もヒソヒソしている。大変居心地が悪い空間だ。
何なんだ一体?3人に聞いても分からずじまいで困惑している。大喜が授業で寝ているのが問題になって補習でも決定したのかと笑いながら言うと、大喜がその時は蝶野さんを道連れにすると言い、皆で笑ってしまった。
そんなくだらない話を食べながらしていると1人の男子が近づいてきて話しかけてきた。
「如月、ちょっといいか?」
俺?それにこの人誰だっけ?どこかで見覚えがあるけど………横川が俺が男子にピンときてないのに気付いたのか耳元でコソッと耳打ちしてくれた。隣のクラスで男子バスケ部の前田というらしい。
「……ああ、いいけど………何か用?」
「その……鹿野先輩と如月って付き合ってるのか?」
さっきまでざわついていたクラスがシーンと静寂に包まれた。
ん?千夏先輩と付き合ってる?それって男女の仲かって聞いてるんだよな?
「いや、お世話になってる先輩ってだけだけど?急に何?」
「いや、その………如月のジャージを鹿野先輩が着て体育をしてたから付き合ってるんじゃないかって話が学校中に広まってて。」
What!?何の話だ!?日本ではジャージを貸すと付き合っている云々の関係になるのか?とりあえず周りの人に弁明しないとダメだと感じた。
「どうも鹿野先輩のジャージと俺のが入れ替わったみたいで、俺は今日体育がないから俺ので問題ないなら使っていいですよって言っただけだよ。部室に体操着置いてきちゃって鍵閉められてるから取りに行けないし。」
「何時入れ替わったの?」
匡が単純に疑問に思ったのか質問してきた。全く考えてなかった、何て答えよう。
「……朝練の時にぶつかった拍子に荷物落として、その時かもしれないな。」
マズイな。これは千夏先輩と口裏合わせて置かないと。
左手でこっそりとスマホを取り出し千夏先輩をタップし、メッセを送る。みんなと話しながら視界の端の端に捉えた画面を指先で操作し、話している内容を送る。
「じゃあ2人は付き合ってないって事でいいんだな?」
廊下から中を伺う人達も前のめりで聞く体勢になっている。なので俺は事実を述べた。
「今現在、鹿野先輩と俺が付き合っているという事実はないよ。」
すると男子はホッと溜め息を吐き、女子はあ〜〜あと残念そうな声とはぁ〜〜という溜め息を吐いている。
千夏先輩に顛末と俺が答えた内容を送ると、“了解”と返信が返ってきていた。
なんかマジで疲れた。イギリスでは普通に知り合いの女の子に雨降った時とかに上着を貸していた。日本では異性の女子に貸すのがそんな事になるなんて知らなかった。色々と気をつけないとだめだな。
「悪かったな、食事中に。」
軽い謝罪をして、前田くんが去っていった。食べ終わったからさっさと寝よう。そうすれば煩わしいこの状況もシャットダウンできる。3人に一言断りを入れ、自分の席に戻り寝る体勢にはいる。
放課後、俺と千夏先輩の仲を勘ぐる奴らをフル無視し、部活に行き、終わったと思ったら男子が出待ちしていた。
暇人かよ!?それに懇切丁寧な対応を行い、やっとの思いで解放された。
紅林先輩が時間だからと切り上げるように言ってくれたのも大きい。なんだかんだで頼りになる先輩ではあるな。
ちょっと行った所にある公園で千夏先輩と合流し、下校する。遅くなった事を謝り、昼からさっきまで大変だった事を話すと私も女子に色々と聞かれて大変だったと告げられて、2人可笑しくて笑ってしまった。
家に着いて、風呂に入り、いつも通り晩御飯を食べて食後のお茶でまったりしていると父さんが話があると言ってきた。
「急で悪いんだけど次の土曜日の夜は皆で祭りに行かないか?」
急な展開、話の内容に俺も千夏先輩もついていけてない。
説明されて納得がいった。どうも父さんと同級生がとある神社の関係者で来ないかと誘いを受けたようだ。で再来週の7月には俺も千夏先輩もインターハイの予選が始まる。なので今のうちにということのようだ。
風鈴を数多く飾る神社で、その風鈴を飾り始める初日だから出店もあるから来ないかと言っている。父さんと母さんは挨拶をして同級生と色々と積もる話があるから2人は出店で食事をすましてくれということらしい。
俺も千夏先輩も構わないと答えるとなら部活終わりに着替えて4人で行こうと決まった。
母さんは千夏先輩に浴衣を着てほしいそうで、すごく嬉しそうにしている。俺にも着るようにと言ってきた。了解と答えた。
「優君、浴衣持ってるんだ?」
千夏先輩が不思議そうに尋ねてくる。
「ええ。イギリスのチームイベントで自分の国の民族衣装を着る機会があって、それで買ったんです。」
“へぇ〜〜〜、そうなんだ”と言っている千夏先輩に衝撃の事実を伝えた。
「俺、日本のお祭り始めてなんです。」
「えっ!?そうなの!?」
千夏先輩が驚いた顔をして両親にもそうなのかと聞いている。
「あ〜〜〜確かにそうかも?」
「あ〜〜〜確かに連れてったことないな。」
「なので千夏先輩、エスコートお願いしますね。」
情報として出店を知ってはいるが詳しくは分からないから千夏先輩に案内をお願いすると、千夏先輩はワクワクが隠しきれていない表情で頼もしげに任せてと請け負ってくれた。
「たこ焼きでしょ、焼きそば、牛串に〜、焼きとうもろこしに〜、そうだ!じゃがバター私好きなんだよね〜!」
楽しいそうにしている千夏先輩を見ていると俺も楽しくなってきた。
「他にはどんなのがあるんですか?」
「他?ベビーカステラに、チョコバナナ、りんご飴、綿あめに〜かき氷!それから〜、あっイカ焼きにフランクフルト、唐揚げに焼き鳥なんかもあるよ!」
へ〜〜〜そんなにたくさんの出店があるんだ。凄いな。何食べようかな。それにしても食べ物ばっかりだな、千夏先輩。
楽しそうにお祭りの話をしていた千夏先輩が我に返ったのか恥ずかしそうにしている。
「は、はしゃぎ過ぎですよね………。」
申し訳なさそうに言う千夏先輩を母さんが豪快に笑い飛ばし、父さんは朗らかに笑う。
「ぜ〜ん然、気にしないで。これぐらい楽しそうにしてくれたら嬉しいものよ。ねえ?」
「ああ、そうだな。優は淡々としているから千夏ちゃんくらい楽しそうにしてくれたら面倒の見甲斐があるよ。」
夫婦2人、俺の子育ては物足りないようだ。
「なら次の土曜日の夜は予定空けとくように。」
「「は〜い!」」
声を揃えて返事した。2人顔を見合わせて笑ってしまう。そろそろ勉強の準備をしようと2階に2人で向かう。
「お祭り、楽しみだね?」
嬉しそうに楽しそうに言う千夏先輩に、俺も嬉しそうに返事をした。
「ええ。楽しみです。」
週末の楽しみが増えた。待ち遠しいな。
優のイギリスでの過去の話です。
実はこれ実話で最後の1年で急激に伸びた自分とチームメイトの高校の推薦が代わりかけたって話を大きく、エグくしたものになります。(お陰でその友達との仲も険悪なものに一時期はなりました)
自分の場合は体格が急に変わってそれに伴って伸びた感じです。
母親はバスケの選手として忙しく、父親は仕事で忙しく、優は習い事のバスケと野球で忙しく、お祭りを経験してない設定にしました。
実は自分もお祭り行ったの小学生の後半で低学年の時は行ったことないのでそうしました。
自分は祭りの食べ物は焼きとうもろこしが好きでしたね。なんか一本丸ごと食べるの特別感があって好きでした。焼き肉とかバーベキューだと皆で食べる様に切ったり切られてるから。
皆さんは何が好きです?感想書かれてた方はついでに教えてくれたら嬉しいです。
更新の予定は書きかけのSEED、アオのハコを2話、銀英伝の順かな?
早くアオのハコ、夏の大会まで書きたい!内容頭に浮かんでるのに!
アオのハコ、次の話の予定は夏祭りで〜す。お楽しみに!