アオのハコ 一筋の光明   作:雪の師走

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お先にアオのハコ出来たので投稿します。

インターハイ前の話になります。

優の前のチーム名出てますが、適当です。
(某チームにしましたが、ぶっちゃけ自分はマンチェスターの赤い方のファン?というか御大が引退してからのドタバタコメディが面白かったので好きですが、特段どのチームが好きというのはありません)


プール掃除と終業式

テスト明けの土曜日。今日は1時間早く起きた。優君が左足の固定が外れたので朝のランニングならぬ朝のウォーキングをするそうなので私も付き合おうと思ったからだ。

外で待っているとすぐに部屋から出てきた。そして外で待っていた私を見つけ、目をパチクリさせていた。

「千夏先輩、朝早いですね?」

「優君、今日から復活でしょ?なら私も付き合おうかなって。」

私がそう言うと嬉しそうに笑ってくれた。

「なら行きますか。」

すぐ近くの公園に肩を並べて向かった。

いつもは走る場所をノンビリと歩く。真夏だけど朝早いからか昼の厳しい暑さも幾分かマシだ。それに池周りを歩いているからか風が吹くと涼しくて気持ちいい。

それに緑が豊かで植物の匂いと木陰がそこそこ快適な散歩になっている。

「インターハイまでもう少しですね?」

「うん。いよいよ始まるよ。」

「観に行く事は出来ませんが、遠く離れた埼玉から応援してます。頑張ってくださいね。」

ああ、こうやって笑って私が欲しい言葉をくれる優君が好きなんだろうな。

澄み切った青空を見ながらのんびりと歩く。

「暑いですけど風が吹くと気持ちいいですね。」

「うん。これぞ夏って感じ。」

「夏といえば千夏先輩の誕生日もあと一月です。何かしてほしい事はありますか?誕生日ケーキとか料理は母さんが張り切ってたから大丈夫として、俺個人にしてほしい事は何かありませんか?」

急にそんな事を言われても………どうしよう、何も思い浮かばない。ん〜〜〜〜〜、……………そうだっ!

「なら誕生日になったら最初に会っておめでとうを言ってほしい。………ダメかな?」

「分かりました、それが望みなら。日付が変わった瞬間か朝の時かどちらにしますか?あんまり夜遅くだと迷惑じゃないですか?」

「ん〜〜〜、ならその時だけ夜更かしOKということで。」

「分かりました。なら26日になったら部屋に伺います。」

「うん。待ってる。」

待ち遠しい約束をすることができた。

「そろそろ帰りましょうか。」

「うん。」

いつもの様に私の歩幅や速度を気遣ってくれる優しい優君が隣にいる。それだけで嬉しくて、楽しくて、幸せな気持ちになる。

 

 

 

 

 

ハーフゲームをすることが練習では多い。時間やタッチ数の制限をつけてもする。ディフェンスが撤退しながらのカウンターの練習や人数差をつけたりとバリエーションを加えてやっている。

点を決められたらバービーや縦シャの罰ゲームもあるので皆真剣にやっている。

ポジションをシャッフルしてCBが攻める役やFWがCB役をすることもある。最初は意味があるのか分からなかったが、こういう動きをされたら嫌がるのかと学ぶ所がある。

それにアクシデントで臨時で別ポジションをすることもある。その時に出来ませんでは話にならない。そういう意味でも経験値を上げるのに役立っている。

「中1枚で上げても仕方ないでしょ!?相手の人数は揃ってるんですから。反対側の人や中央の人も入ってターゲット増やしてかないとっ!」

今も如月が身振り手振りでアドバイスをしている。ライン間で貰う。キーパーとDFライン間を突く。あいつは俺達に基本の徹底と高い遂行能力を要求する。

跳ねないグランダーの正確で速いパス、ピタリと足下で収めるトラップ、次の動きを想定した体の向きやポジショニング、相手のいないスペースへ動き続ける献身性。

サッカーを上手くなろうとするのに必要不可欠で、立ち返るべき基本の徹底の遂行を。

そしてそこには上手くいった時の楽しさといかなかった時の悔しさがある。今俺は、俺達は成長していく楽しさともっと上手くなりたい、なぜもっと練習をしなかったのかという悔しさがある。

如月に言わせればそれが上手くなる秘訣だそうだが、それを俺達は感じている。

ただ一つ文句があるなら如月の奴、リフティングしながら指導、アドバイスするからそっちが気になって集中出来ない。ボールをほとんど見ずにやっている超絶技巧だ。身振り手振りの指導の時は足の甲や膝裏、頭、肩に乗せてやるから凄ぇよ、あいつ。

 

 

 

 

 

練習後、珍しく監督が話があると言ってきた。

「急で悪いが1週間後の31日に練習試合をすることになった。」

「相手はどこですか〜?」

先輩の質問に、苦笑した監督。珍しい反応だな?

「相手は青森津軽。インターハイ前の調整試合をしたいそうだ。分かっているとは思うが青森はインターハイ優勝候補筆頭だ。対してウチは新チームになってまだ日が浅い。厳しい相手だろうがせっかく試合をするんだ。勝ちに行くぞ!」

「「「「「「オオオ〜〜〜〜〜!!」」」」」」

高校最強と呼ばれるチームが相手で否応なしに気合が入る。

「さて、気合が入った所で罰走がある奴は走ってこい。他も片付け班とあがり班もテキパキ動けよ。解散っ!」

「「「「「ありがとうございました!!」」」」」

さて、俺は縦シャ2回か………練習終わりにキツッ。

明日は午前プール掃除か。如月も手伝ってくれるし、他の人達も何人も誘うって言ってたから早く終わるといいな。

 

 

 

 

朝のランニングと朝練のフリーキック練を終えて、ピッチを後にした。これから午前は芝のメンテとチェックをする予定で練習出来ないから、横に誘われたプール掃除を手伝うことにした。終わって水を張ったら使っていいって言われたから、久し振りに泳ぐことにした。

全身運動で負荷も適度にあるから練習前のアップにもってこいだな。今日から本格的に練習参加するから足の調子をしっかり見ておかないと。

横とTシャツ短パンに着替えてプールに向かう。それにしても埼玉って暑いな。蒸し蒸しジメジメとしていて汗が止まらん。

タオルを首にかけてるけど首周りが熱を持ってきた。早くプールに入りたい。掃除を始めてもないのに思う。

「おはようございます。」

横と挨拶をしてプールに行くともう何人かがいて挨拶を返してくれた。

「おはよう優君。」「おっす優君。」

千夏先輩と渚先輩か。確か渚先輩が体育委員だったから千夏先輩は手伝いに来たのかな?

「お前も来たんだな。」

「おお、如月もプール掃除手伝いに来てくれたのか!?」

針生先輩と西田先輩もいた。針生先輩がクラス委員長だったから西田先輩が体育委員か?と思ったら期末でとった赤点の免除のプール掃除だった。

「はい、隣の横川の付き添いです。終わったらプール使っていいって聞いたんで。怪我明けのトレーニングに水泳はもってこいですからね。」

「お前も水泳トレかよ。なら競争でもするか?お前が勝てば飲み物奢ってやるよ。」

針生先輩って意外とこういうこと言うんだな。意外だった。

「いいんですか?俺、結構やりますよ。」

「なら決まりだ。終わったら勝負だぞ。なあ西田?」

「うぇぇぇっ!?俺も!?」

「横はどうする?」

「俺も?分かった、やるよ。4人だから下2人が上2人に奢るにしますか。」

「いいねぇ。燃えてきた。」

「ならチャッチャと掃除してしまいますか。」

袖を捲って少しヤル気をだした。

 

 

 

 

 

1時間程でみんな飽きてきたのか疲れてきたのかダレてきた。

野球部の先輩が水を周り人に掛けて遊んでいる。あ、やべっ!?あ〜〜〜如月と俺にもかけられた。

隣でブラシを使って掃除していた男がポタポタと頭から水が滴り落ちている。そして微動だにしていない。水を掛けた人も固まって動かない。

ふぅと息を吐いて、ビショビショに濡れた髪を掻き上げた。

「遊ぶのは一向に構いませんが、終わってからにしませんか?もう流したら終わりなので。」

そう言って先輩に注意すると、意外と腰の低い先輩だったようで謝ってきた。そしてテキパキと動いてくれた。コイツのこういう所が凄いなと思う。先輩だろうと関係なく注意する所が。

濡れたシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。どうしようか悩んでいると隣の如月は少し手間取りながらも、躊躇なく脱いだ。

すると女子が“キャッ”と嬉し恥ずかしいような声をあげたり、ヒソヒソと話す人がいたりするのだが、隣の男は全く気付いていない。

脱いだ服を飛び込み台に掛けて乾かそうというのだろう。俺にも脱がないのかと聞いてきたので、俺も脱いで隣のレーンの台に置いた。

如月が鹿野先輩、船見先輩と話しているが如月と鹿野先輩、2人楽しそうに話しているな。遠くから見ると鹿野先輩が如月の鍛え上げた腹筋を意識してるの丸分かりでウケる。まあ、俺は出歯亀になるのは勘弁なので温かく見守るとしましょうかね。

 

 

 

 

プール内の掃除が終わり、水を貯めている間にプールサイドの掃除をして、掃除道具を片付ける。男子は1年生が片付けているみたい。

渚と片付け終わってプールに行く途中、男子更衣室の扉が開き、優君が出てきた。短パンスタイルの水着を履いて、上着に白のジップパーカーを羽織っていた。

何度も見てるけど、優君の上半身を見ると綺麗だと思う気持ちと気になる人の肌を見てしまいドキドキする。

「これから針生先輩と西田先輩と競争するんですよ。勝ったら飲み物奢ってもらえるんです。」

「西田も好きだねぇ〜。」

「いえ。言い出しっぺは針生先輩なんです。」

「針生が?珍しいわね、あいつがそんな事をするなんて。」

「ええ。軽く泳いだらレースするんで時間があれば観に来てください。」

「分かった分かった。応援したげる。」

「ありがとうございます。」

優君がこの場から去っていった。

渚に頭をコツンと叩かれた。

「ちー、あんた裸見すぎ。分かりやすくなったわね〜。優君の事、好きなんでしょ?」

「好きになってきてはいると思うけど。まだこれが恋なのかは………。」

「そっか……まぁ少しずつ前に進んでいるだけマシかな。ただ優君がいつまでもフリーでいるとは思わないように。顔を良し、性格良し、成績良し、おまけにサッカーは世代No.1。狙ってる娘も多いからトンビに油揚げをさらわれるなんてならないようにね。」

「イジワルなこと言う〜〜〜。」

「自分がいて、相手がいるから恋愛になるの。千夏には良い恋愛をしてほしいからさ、後悔しないようにね。まあ同居してるっていう大きなアドバンテージがあるんだから、それを活かしていきんさいな。」

いつものように頼りになる渚だ。

「ありがとう渚。」

素直にお礼を言う。

「どういたしまして。………さて、では私達は優君の勇姿を見に行きましょうか?」

そう言ってプールへ引っ張っていってくれた。

「それにしても如月、すげぇ〜身体してんな〜。」

西田君の大きくて特徴的な声が聞こえてくる。

「いや、これでも結構肉つきましたよ。1週間丸々運動出来なかったので。下半身に影響があるから筋トレもダメって言われてたので。」

そうな優君の声も聞こえてきた。

プールに着くと、みんな水の中にいて気持ちよさそうにしている。男子ばかりで10人いないくらいが好き好きに泳いでいる。

「さて審判役も来てくれたことですし、そろそろ始めましょうか。」

優君が言いながらプールサイドに上がってきた。

「千夏先輩、渚先輩。お時間を取らせて申し分ないのですが審判をお願い出来ませんか?」

「オッケー!ちー、お願いね。」

了承しておきながら私にお鉢を回してきた。

「お願いします千夏先輩。」

「う、うん。」

参加者が飛び込み台に並んだ。針生君と西田君、優君に横川君、野球部の前田先輩に陸上部の大澤君の6人が参加者のようだ。上3人が下3人から奢ってもらうルールでやるようだ。

みんなの準備が整った。

「よ〜〜い……どん!」

私が合図すると一斉に飛び込んだ。やっぱり水泳をやってた針生君がリードしている。優君と横川君が僅差で追っている。他の人達は少しずつリードが広がっている。

折り返しで優君が少しずつ追いついてきた。スパートを掛けたみたい。少しずつ針生君を追い抜き、リードを広げていく。

………ゴール!優君が腕一本分早くゴールした。2位は針生君、3位は前田先輩、4位は横川君、5位は大澤君、6位西田君となった。

「いえ〜い!」

「如月はえ〜な。」

「リカバリーで泳ぐのが練習メニューに組み込まれていたのでその御蔭です。毎週結構みっちり泳いでいたので。」

「奢りどうする?今がいいか?」

「放課後でいいんじゃね?どうせみんな午後から部活だろ?」

「ならそうするか。」

部活の終わる時間が決まっているので、そこでやりとりをするようだ。そんなことを話し合って放課後に優君と針生君が奢ってもらうことが決まったみたいだ。

男子特有のやりとりを温かく見ていると、その視線に気付いた優君が私にピースサインをしているのを見つけ、それだけで嬉しくて笑ってしまう。

 

 

 

 

 

9時半から体育館で全校集会が行われる。今日が一学期最後の日で終業式となっている。

校長の話、生活主任の話が終わり、生徒会の話となった。夏休み明けに文化祭の出し物の時に少し盛り上がった。

日程の話があり、準備期間が2週間で9月の半ばに本番となる。初めての高校文化祭!何するのかは決まってないけど楽しみしかないっ!

その後は、インターハイに出場する選手の応援をすることになった。出場する選手が壇上に上がり、個人、団体種目はキャプテンが一言を順々に言っていく。

鹿野先輩や針生先輩、1年では雛が上に立っている。そしてインターハイには出ないけど優が例のチャリティマッチで五輪日本代表と対戦するから一緒に上がっている。

最後に優が挨拶をすることになった。

『1年の如月です。インターハイに出る皆さんの横に出れない自分がいるのが違和感といいますか……なんかすんませんって感じです。』

優の場違い発言で少し笑いが起きた。

『え〜〜8月4日に埼玉スタジアムで19時から去年のクラブユース選手権で優勝したロンドンブルーFCと五輪日本代表が対戦することになりました。自分は前に所属していたチーム、ロンドンブルーの一員として参加します。テレビ放送もされますが………。』

話の内容が別次元過ぎる。いつも仲良くしている優が遠い立場の人だと思い知らされる。

『オーナーの計らいで栄明在校生の方は生徒手帳を提示すると7番ゲートからの一角で無料で観戦できることになりました。お時間のある方はよかったらスタジアムで世界一のチームと日本代表の戦いを生で見てください。対戦相手は自分が今年の目標にしているカテゴリーです。選ばれるように最高のプレーをするので応援してもらえると幸いです。よろしくお願いします!』

そう言い、深く一礼する。皆が拍手することで大きな音になった。“頑張れよ〜”や“応援行くからな〜”といった声も飛び交った。

俺が行けないステージに行く羨望の気持ちと自分の実力が足りず、手が届かなかったことによる腹立ちや忸怩たる思い、来年このままで雛や優に追いつけるのかという焦りから来る焦燥感、そこからくる自分の実力が足りない事への苛立ちが胸にどぐろを巻くようにグニャグニャグルグルと回っている。

膝に顔を押し付けて見られないようにし、唇を強く噛み締めた。来年は絶対に追いつく。この気持ちを絶対に忘れない。そう心に誓った。

 

 

 

 

「明日から夏休みな訳だが、あまり羽を外さないように。節度ある行動を心掛けて、くれぐれも……「わっかりましたー!」「じゃあね〜高ちゃん先生〜!」「さいなら先生。」あっ!おいっ!お前らっ!コラッ!」

先生の締めの挨拶をしようとするも、長くなってきた話を嫌った運動部のノリのいい奴(お調子者)が勝手に締めて解散となった。

「全くあいつらは…………紅林に毒されとるな。ハァーーー。」

と大きな溜め息を吐いていた。

ボンヤリとしていると、いつの間にか匡と雛が前に立っていた。

「夏休みになったのに、あのテンションの低さ。」

「分かる。宿題が憎いんだよね。分かる。」

雛の全くと言っていいほどの見当外れな言葉にツッコんだ。

「違うわ!」

「じゃあ君は宿題なんて敵じゃないと?」

そう言われると…………。

「そうじゃないけど……。」

「せやろ。………じゃあさじゃあさ、明日の部活のあとに図書館に籠もって、みんなでやろうよ!」

人差し指を立てて、くるくる回しながら“めいあ〜〜ん”と嬉しそうに話している。

「もしやお前…答え写すつもりじゃ…」

図星を突かれたのかそっぽを向いて、口笛を吹いて誤魔化している。全く雛は………。

「あの~ーー、それ俺達も混ぜてもらっていいかな?」

クラスメイトの伊藤が自分達も勉強会に参加したいと言ってきた。

「私も〜〜〜!」

島崎さんも参加するようだ。

「いいよ!みんなでやろ〜〜〜!」

“お〜〜〜っ!”と威勢のいい掛け声が上がった。

側にいる優と横に参加するか聞くと、2人共申し訳無さそうな顔をして謝ってきた。

「ごめんサッカー部、明日1日練だから無理だ。」

「悪いね蝶野さん。答え見してあげれなくて。」

優は雛をからかっている。

「く〜〜〜っ!当てにしてた2人がいないとは!?」

雛の無念な声にみんなで笑ってから集合時間と場所を決めて、部活に向かう。

「これで宿題の心配はなくなったね!」

島崎さんに匡がいるから頼りにしているのだろうけど。

「まだやってもないのに。」

夏休みになったからかウキウキ、足取りが弾むような雛が可愛いな。

「楽しみだなー、夏休みやりたいことたくさん!」

「ゆーて、インターハイで忙しいだろ?」

4日に始まるインターハイまであと少し。追い込みかけないとダメなんじゃ?

「バド部もほぼ毎日練習あるんでしょ?」

「そーだよ。針生先輩もインハイ行くからな。その練習に付き合わないと。」

「サッカー部はどうなんだ?練習は毎日あるの?」

匡が少し前を歩く優と横に尋ねた。

「7月最終日に青森津軽と練習試合するんだよ。去年の夏冬連覇してる相手だからヤル気マックスだよ。」

横が珍しく燃えている。

「俺も怪我明けのゲームだからエンジンかけてかないと、チャリティマッチに間に合わん。」

おっとこっちも燃えている。

 

 

 

 

 

7時に朝練をしに千夏先輩と並んで登校する。いよいよインハイ本番。千夏先輩も気合が入っている。

「じゃあ今日も頑張ろう!」

「はい、頑張りましょう!」

部室前でパーンとハイタッチして別れる。千夏先輩が2階に登っていく。俺も鍵を開けて荷物を置いて、スパイクとか必要な物を持ってピッチに向かう。

さてアップするか。軽くボールを使ってフリーキックをしていると10分くらいで横、沢先輩、紅先輩が来た。そこからみんなの準備が出来るとハーフのゲームをする。

青森津軽の練習試合が控えているから、みんな熱を帯び、活気もある。

おっと、もう8時になる。少し抜けると伝え、小走りで校門前に行く。2人が仲良く話している。俺に気付いたのか手を上げて合図をした。

合流して部室に荷物を置き、そのまま職員室にいる岡本監督のところに連れていき、挨拶を済ませ、監督を入れて4人でピッチに向かう。

「集合!」

監督の声で皆が集まる。

「明日からしばらく中学生2人が練習に参加する。来年の特待生だ。U-17にも選ばれているからお前たち勉強させてもらえ。」

ほら自己紹介と前を譲る。2人が皆の前に立って挨拶をした。

「今日からお世話になります。藤堂葵です。ポジションはCBですがSB、ボランチも経験あります。よろしくお願いします!」

拍手をし、次の番になる。

「馬原渡です。先月ブラジルから帰国しました。ポジションはボランチより前のポジションならどこでも出来ます。よろしくお願いします。」

拍手をし終え、監督から練習の説明が2人のためにされた。

9時から練習が開始なら9時までにフルで動ける準備を各々がすることになっている。朝練組もいるから9時から皆が揃ってアップは時間の無駄と廃止された。あと1時間程ある。それまでに準備を終えるようにと告げられた。

9時になり、練習が始まった。フィジカルトレーニングで先ずは肉体を追い込む。そこから小休止を挟んでハーフコートでミニゲームをする。6対6、8対8、10対10と少しずつ人数を増やし、難易度を上げていく。

それでもやっぱりあの2人は際立って巧いな。トラップ、パス、ポジション取り、身体の使い方が上手い。流石俺に度々聞きに来ていただけはある。英国にいた時も電話やチャット、代表でも根掘り葉掘り聞いてくるような奴らだ。

午前ラストはコーナー、フリーキックからのセットプレーの練習をすることになる。キッカーで俺、来年は馬原も入る。こういったセットプレーも大きな得点源になる。

色々と試す。攻守を変えたり人を変えて。俺がDFに入ってキッカーを沢先輩にしたりと俺が居ない時も想定しての練習もしておく。

 

 

 

 

 

 

いつもの様に千夏先輩と2人で帰ると、道中で31日にある地元のお祭りの話になった。と言っても俺は祭りの存在を知らなかったので、あることに驚いた顔をして、千夏先輩に驚かれたが。

「うん。……あるんだけど一緒に行けないかなって……………ダメ…かな?」

そんな小首を傾げて、可愛い顔をされると困るんですが。

「予定がないので良いですけど……他に誰か来るんですか?」

「その……せっかくだから2人で行きたいなって………。」

「………分かりました。どうします?一回帰ってから着物に着替えますか?それだと遅くなるな………?」

どうしようか悩んでいると、千夏先輩がおずおずと提案してくれた。

「部活終わりにいつも通り公園で集まって直接行こうよ。時間が勿体ないから。」

「そうですね。分かりました。そうしましょうか。」

俺が賛成すると嬉しそうに笑う。それだけで俺も嬉しくなるなんて単純な男だなと自嘲する。

「なら約束っ!」

“んっ!”と小指を差し出す千夏先輩。その指に笑って指を絡めた。

 

 

 

 

 

葵も渡もチームに上手く溶け込めたようで何よりだ。来年はチームの主力として機能してくれないと困るピースだ。その彼らがチームでギクシャクするのはマイナスでしかない。

まあチームメイトの人柄的に問題ないとは思っていたが、仲良くなれているので安心した。横が率先してくれているのも助かる。先輩の負傷交代からレギュラーを掴んで今まで離すことなく務めている横がああやって仲を取り持ってくれている。

それに青森津軽との練習試合の前日である今日も暑い中、皆が運動量を落とすことなく走っている。

8対8や10対10のハーフコートゲームも白熱し過ぎではと思うくらい身体を張り、気持ちを全面に押し出したプレーを全員がしてくれている。

ラストのAとBに別れてのゲームも互いに点を取りに行く試合になった。

B組には実力を認められた葵と渡がスタメンとしてレギュラー組の相手をしてくれている。

葵は臆することなく先輩だろうと関係なく指示を出し、渡もパスを要求し、勝ちを目指して闘ってくれる。それだけでコイツラを来年取る価値があった。

練習が終わり、罰走、片付け、アイシングと別れ、順々にケアを終えると帰る準備をし、家路につく。

夏休みは夜7時までと練習時間が決まっているので、どの部活も同じ時間に部室に来るので、大混雑だ。

全国を決めた女子バスケ部や針生先輩がいる男子バド部もギリギリまでやっている。俺達も頑張んないとな。

横、葵と渡、沢先輩と紅先輩と話しながら校門に向かい、帰ろうとすると校門前に守衛さんと別の人影が2つあった。

そのうちの一つが此方に向かって来ているのが分かった。

 

 

 

 

渚と歩きながら帰っていると前に優君がサッカー部の人たちと帰っているのを見つけた。真ん中にいる子2人が練習参加している中学生なのだろう。

来年の主力になるって優君が言うくらいだから上手いのだろう。優君が積極的に間に入ってチームの輪に入れないとと言っていたけど、あの分だと上手くいっているのかな?

「ちーも分かりやすくなったもんだ。前に優君いるね?」

隣にいる渚に簡単に気付かれて、恥ずかしくなり俯いた。たぶん顔も赤くなっているだろう。夏の暑さとは違った火照りを感じる。

「夏祭り、ちゃんと誘えた?」

前にバスケ部で行かないかとさせられた時に断った理由もバレていたようだ。

「う、うん。一緒に行く約束出来たよ。」

「サッカー部の面々と行く予定なかったんだ?」

先約がなかったことに渚は驚いていた。私もサッカー部の人たちと行くと思っていたけど、優君は祭り自体を知らなかったようで、祭りの存在にびっくりしていた。

それを笑いながら伝えると、仲がいいのか悪いのか分からない関係って渚が言いながら笑っている。

校門が見えてきた。前で渚と別れて少し行った公園に向かうのがいつものルート。今日は優君がすぐ前にいるから待たせることないなと思った時。

「ユウ!!!」

優君を呼ぶ声と共に金髪ロングの女性が飛び込み、抱きついた。それを見た瞬間、時が止まり、身体が凍ったように動かなくなった。




次もアオのハコのなると思います。

話の内容は大喜と雛の恋路の予定です。その後に話の続きに戻る予定にしてます。

アオのハコを2話更新してから銀英伝、SEEDかな?
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