書くの疲れた〜。原作もいい感じになってきました。
私も頑張んないとな〜。
次の話は明日投稿します。
短めで、ちょいちょい挟んでる未来の話ですが。
試合が終わって、優君がこっちにやってきた。
サイドラインの飲み物が入ったボトルを一つ取って口に含み、頭から被っている。多分中身は水が入っているのだろう。頭を左右にブルブルと振ってから髪を掻き上げて水を払っている。
流石の優君も呼吸がまだ荒く、胸が動いている。
そんな優君に相手の監督が話しかけてきた。ユニフォームを指差していたから、多分弁償の話になっているんだろう。
「さて12時回ったし、そろそろ体育館に行こっか。練習前に軽く食べないとダメだし。」
キャプテンが1時から始まる練習に向けて体育館に行こうと声を上げた。みんなゼリー飲料や栄養補助食品を持ってきているので、手早くそれを食べる予定にしていた。
「午後も頑張ってね。」
キャプテンがベンチ前に戻ってきていた紅林先輩に声をかけた。
「おう、サンキュー。お前もインハイ前なんだ。しっかりとな。」
足のケアをしながら返事をしている。
「応援ありがとうございました。」
少し遅れてベンチにやってきた優君が感謝の言葉を言いながら、何故か付いてきた。不思議に思って尋ねると。
「ユニフォームの替え、部室なんで取りに行かないと。」
肩を竦めながら笑う優君が年相応で可愛く見える。
「凄かったよね。全国出てたら優勝も夢じゃなかったんじゃない?」
優香が、多分此処にいるみんなが思った疑問を聞いた。去年の優勝チームで、今年も堂々の優勝候補筆頭をあそこまで圧倒的に攻略したんだ。その感想は至極当然でてくる。
「今年の優勝チームは千葉経大付属ですよ。」
自信満々に言う優君の表情から確信しているようだ。
「去年はエースの川添とボランチの中村、最終ラインの3人が一年で経験が浅かった。高校サッカーの経験を積んだあのメンツから点を取る、守る。中々難しいね。」
青森津軽を相手にスーパーな活躍をした優君がそんな事を言うなんて。
「総合力で相手の方が上です。そしてウチの守備陣で川添を止めるのは至難の業です。点の取り合いになると思いますが、分が悪いです。」
意外なくらいに冷静で客観的な分析をする。
「じゃあ午後も頑張ってね。」
部室棟に着いたからみんな2階に上がっていく。優君はそれを手を振って見送ってくれる。私は本人に聞きたいことがあって残っていた。
「ねぇ、本当にジェーンとは何にもないんだよね?」
聞いた後に心臓がバクバクしているのが分かった。何を言うのかドキドキしている。
「彼女とはサッカーのライバルであり、お手本であり、切磋琢磨する仲間ですね。周りから色々と色恋沙汰の話をされましたが、どちらかといえば勝ちたい相手という意識のほうが強すぎて、そういった相手として見たことはなかったです。」
ホッとした。優君の表情から本当に恋愛感情がないのが分かった。きょとんとして思いもかけないことを聞かれ、困惑した表情を浮べている。
「な、なら、明日の花火大会一緒に見に行かない?………ダメ…かな?」
「いいですよ。予定ないので。」
「ホントに!?」
「え、ええ。」
「なら一緒に行こうね!約束だよ!」
「分かりました。約束です。」
やった!2人で花火大会に行く約束をしちゃった。詳しいことを決めようとすると。
「お〜い優!ユニ取りに行くのに時間かけ過ぎだぞ。お前待ちなんだから急げっ!」
横川君が遠巻きから急げと声をかけてきた。
「あ、やべっ。すみません千夏先輩。急がないとなんで。詳しいことはまた後でっ!」
パタパタと急いで部室に入り、すぐにユニフォームを片手に出てきた。優君の前に手を翳すとパンッと叩いてすれ違った。
ユニフォームを着ながら駆けていく後ろ姿を見ながらエールを送った。“頑張れ優君”と。
連チャンで試合をするから飲み物だけ飲んで、ピッチに入る。
スタメンが少し変わっている。今回は練習試合という事で栄明高校生ではないが来年入るという事で了承を貰い、葵と渡がスタメンに入った。
フォーメーションも変更することになった。4−3-3の前3人を俺と葵、渡で務める。俺をトップに両翼に2人が張る形だ。
今回の試合は役割をバッサリと分け、前3人で攻め、キーパーも入れて後ろ8人で守る。
なんでこんな極端な事をするのかを後ろで守る人達も、ベンチやベンチ外の人にも理解してもらう。これが日本代表に入るレベルの、日本、いや世界でも通用するレベルのパスワーク、フリーランニング、スキルだと。
「葵、渡。分かっているな?」
「はい。」
「うぃっす。」
「俺達のレベルを青森相手に見せつけ、そして栄明を導く。来年はこのレベルがベースになるって。」
俺が何をしようとしているか理解していると頷いてから散らばる。
ピーーーっと笛が鳴り、青森津軽のボールでゲームが始まった。
俺達3人は攻撃に全力を注ぐ為に、ボールに近い最終ラインとボランチをマークしてパス回しに参加させないように立ち回るだけにしている。
CB2人とSB2人、ボランチ2人の計6人が俺達3人をケアしているから4人で8人が守る栄明ゴールを攻めている。まぁこんだけ人数差があったら守れるわな。
紅林先輩がクリアを俺に向けてする。素早く落下地点に入ってCBを背負ってポストプレーをする。マークを外しながら左サイドからこっちに向かってきた渡にヘディングで落とす。流石渡、ケアに来たボランチをワンアクションで躱す。渡が中央に入ってきたから俺は左に流れる。
渡が右に張った葵にパスをすると同時にダイアゴナルランでCBの背中から中央に向かって走り込む。
葵がダイレクトでペナルティエリアにアーリークロスを上げるとフリーの俺が悠々とボールをトラップ出来た。冷静に無数にあるシュートコースの内の一つに蹴り込む。
流れるようなパス回しと展開、フリーランニング、フェイント、ポジショニング、マークを外す動きと、特別なことは一つもない基本的な事を遂行した結果のゴールだ。
葵と渡が近寄ってくる。ハイタッチをしてゴールを喜びながらセンターサークルへ歩いていく。チラリと後ろを見ると相手が話し合っている姿が見える。誰が誰のマークをつくのか、フォローやヘルプの話もしているだろう。
だけど悪いがこっちもハリーの前で無様な姿は見せられないのよ。
片付け終わって、部室に向かおうとすると入れ替わりの女バスがやってきた。
「よっす〜〜〜お疲れさん。」
船見が相変わらず軽い感じの挨拶をしてくる。
「お疲れ。サッカー部どうだった?」
昨日から気になっていた事を聞くと、キャアキャアと騒ぎだす女バス。
「いや〜〜ジェーンさんとハリーさんに写真撮ってもらっちゃった!一生物の記念だよね?」
「マジそれ!」
やっぱりあの2人はイングランド代表のウェルズリー兄妹か!?
「マジか〜〜俺ファンなんだよな!!サインとか貰えないかな?」
「頼めばしてくれるよ?こういう職業だからファンサービスも仕事の一貫だって。急ぎの時じゃなければ問題ないって言ってたよ。」
ちーがそう教えてくれた。マジかよっ!?色紙を途中で買いに行ってよかった〜〜〜。
「じゃあ俺も着替えて見に行くわ。練習頑張れよ。」
最後に応援の声だけかけて部室に行く。
汗の処理と着替えを済ませ、サッカー部のピッチに向かうと選手の声が聞こえてきた。
許可をとってあるからベンチに行くと、岡本監督が“よう、ご苦労さん”と声をかけてきた。それに“ありがとうございます”と会釈をして監督の隣に目をやると、一際目を引く美男美女が座っている。2人ともオーラがハンパねぇな。気圧されるものがある。世界最高峰の舞台で戦う選手だと分からせられる。
「あそこ座れよ。女バスが座ってた。」
そう言ってジェーン・ウェルズリーの隣を指さした。会釈をして座る。
ピッチに目をやるとプレーが止まっている。如月がボールを脇で抱えていて、相手チームの人が審判に詰め寄っている。PKか?
「ユウがボールを浮かして脇を抜くパスをしたんだけど手で防いだんだ。100%PKだからあんなに抗議しても意味ないんだけどね。」
ハリーさんが笑いながら仕方ないけど判定は覆らないって言っている。ジェーンさんも冷たくフッと微かに笑った。
審判がピピっと笛を吹き、散るようにジェスチャーをする。胸のカードを示し、しつこいと出すよと警告する。それを受けて渋々引き下がった。
その間、如月は暇だったのかボールをバスケみたいに指先で回して遊んでいる。俺がいるのに気付いたようだ。片手を上げて遠巻きに挨拶してくる。
抗議が終わったのか、如月もボールをセットする。今回は右で蹴るようだ。助走をとって笛が鳴ると一瞬の躊躇もなく、すぐに蹴る。左上の厳しいコースに簡単に。あんなとこに蹴られたらキーパーノーチャンスだろう。
点差を見ると、もう栄明が3点取っていた。
「えっ、一方的じゃね〜か………。」
その答えをイングランド代表が答えてくれた。
「ユウとあの2人が突出して良い選手なんだよ。阿吽の呼吸で近づいたり離れたり、ポジションチェンジをしたりと有機的かつ複合的にゴールに向かって行っている。縦パス、横パス、落とし、キープ、ワンタッチで躱す、それを瞬時の判断で行なっている。」
「ティキ・タカですか?」
俺が知っているサッカー用語で聞くと嬉しそうに笑ってくれた。
「よく知ってるね。短いパスをテンポよく、リズミカルにつなぎながら、常にボールを保持して試合の主導権を握る戦術だ。ポジショナルプレー。いわゆる選手が流動的にポジションを変え、常に数的優位、パスの選択肢が多い状況を作り出さないといけないが、それを彼らは数秒のキープする事で時間を作ることで数的不利をカバーしている。」
“ほら”と前を指差す。そこにはテンポよくパスを回したり、一発で抜いたり、相手を背負ってキープしたりと様々な手段で相手ゴールに迫る3人がいた。
如月がペナルティエリアに侵入し、左サイドからシュートを打とうとすると相手が全身を使ってブロックに来た。それを冷静にシュートフェイントに切り替え、足裏で中央にパスをする。
そこに何故かフリーになった藤堂が悠々と右足でグランダーのシュートをゴールに流し込んだ。
これで4点目、前半30分でこの点差がつくとは………。そんな事を思っていると、藤堂からパスを貰った如月がダイレクトでパスを出そうとしたのをキャンセルして、ルーレットで後ろを向いた時に一瞬の隙と空白の時間、空間を生み出し、前を向く瞬間に如月のフワリとしたパスをゴール前に出し、DFラインの裏のスペースに飛び出した馬原がダイレクトで流し込んだ。
敵はフリーズしたかのように顔だけボールの行方を追うしかできない。キーパーも一歩も動けていなかった。
「あのパスが出せるなら文句はないでしょう、兄さん?」
「ああ、昨日発破をかけた甲斐があったよ。」
呆気にとられている俺達の様子を見てとったハリーがクスクスと笑う。
「あのパスはイングランドでもヨーロッパでも話題になる芸術的なスキルだ。ついた異名が“Master of Time”、時の支配者。」
「ユウに英語で言ったらいいわ。渋い顔をして嫌がるから。」
ハリーは嬉しそうに、ジェーンは楽しそうに笑う。
そんな時にザワリと後方がざわめいた。なんだと立ち上がって見ると20人近い外国人が此方に向かって歩いて来ていた。
「もう来たのか………。許可をとってあるのだろうな?」
そんな事を言いながら立ち上がって、そちらに行くと集団の外国人もハリーに気付いたのだろう。フェンス際まで来ると姿勢を正して待ちの体勢になった。
「お前たちは明日到着予定だろう?何故いる?」
俺が尋ねると俺と同い年のGKのピート、CBのウォーレンに話しかけると肩を竦めながら答えた。
「俺達も予定を前倒しにしたんだよ。」
「お前さんが先に日本に行き、ユウの試合を観ると聞いた。相手は日本で一番の高校と聞けば、我らがKINGの活躍を観たいと思うじゃないか。U-21に最年少で加入して、またたく間に主力となり、エースナンバーの10番を背負い、想像を遥かに凌駕する活躍を見せる我らがKING。私達を惹きつけてやまない当代随一のファンタジスタを!」
後半は謳うような口調でユウを語る。確かにユウのプレースタイルは皆がこうなりたいと一度は思うゲームメイカーであり、フィニッシャーでもある選手だ。
そして此処にいる皆がそんなユウに一目置いている。最年少でありながら彼をエースと言うのに不満が出なかった。
正直、最初に入った時はあまりにも下手くそで何でコイツが此処に来たんだと育成コーチも、選手も思っただろう。
イギリスでも名門で強豪のチームに素人に毛が生えたレベルの子が来るような場所じゃない。
チームの規則で半年は所属できるけど、その後は他のチームに行くことになると全員が思っていた。
みんなのレベルを目の当たりにしたユウは、次の日から家でも練習を積み、練習日には朝一番に来て自主練、通常練習が終わると時間の許す限り居残り練をするようになった。
その姿勢が何時まで続くのか、期限の半年でチームに残れるレベルまで成長しないとみんなが高を括っていた。
ところが半年経つと、同年代ではトップクラスに近い力量になり、更に半年経つとトップになっていた。
次の半年には飛び級の話が出ていて驚いた。
どれだけ成長してるのか興味を持って、ジェーンに聞いたら今では自主練の一対一で成績は五分五分になっているらしい。
そこからも成長が止まることはなく、毎年飛び級して去年はAチームの練習相手をBチームに入って務めるくらいになった。
当然そんな選手、イギリスで噂にならないはずがなく、多くのクラブ関係者がユウを観に来た。
そしてユウの人間性。努力家で、勉強家で、チームの為にという献身性、周囲を巻き込むリーダーシップ、能力向上への飢え、公式戦で見せる貪欲なまでの勝ちへの執着。
俺の指導も相まって、どこをとっても不足ない男になった。出来たらジェーンと良い関係になってくれたらと思ったけど、男勝りな妹を御せて、恋仲になるなんて………ユウは引き摺られていたな………どんな罰ゲームだよ。
おっと、話が逸れた。
ユウは今現在フリーの状況。様々なクラブからのオファーがあるだろうが、ユウの性格ならオーナーとの男と男の約束を遵守するだろう。
3年後、誕生日を迎えると同時にプロになり、我々は最高の舞台で最高のシンフォニーを奏でることになるだろう。
その前に4日のチャリティマッチで日本の人達が虜になるだろう。
高い笛の音が鳴り響いた。前半がやっと終わったか。
縦パスを落とすと葵が受けて、ワンタッチで1人躱す。そして俺にリターンを出すと、スペースにすかさず走る動きをする。
俺はリターンをスルーし、奥にいる渡にパスが渡る。一瞬スルーしたボールに気を取られた相手を振り切り、ゴール前に走り込む。
渡がダイレクトで返す振りをして、マークに来た相手を抜いて斜め前を走る俺にパスを出す。それも俺はスルーして、更に奥にいる葵に渡る。それをダイレクトで相手のDFラインの後ろに俺へのスルーパスを出す。
全力で走り込みながら、ダイレクトで前に詰めてきたキーパーの股を抜くシュートを決める。
雷のマークみたいにギザギザの形でパス回しをして、ゴールを決めた。
ゼェゼェと荒い息を整えながらボールを取りに歩いて向かうと笛が鳴った。試合終了か。
結局8対3、俺達の勝利に終わった。サッカーのスコアかよって思わなくもないが俺と葵、渡の世界クラスの選手で殴り続けた試合だった。
本音を言えば3失点が余計だな。青森津軽が6人で俺達3人を抑えられないといった考え、SB2人が高い位置を取り、点を取りに行くことによって、此方の攻撃の時間を減らそうとした。
攻める時間を作る事で、此方の攻める時間を減らす選択をした訳だが、まあそれが上手くいったんだろう。
そして全員がプレスバックを全力で行い、残っている選手がリトリートで時間を稼いでいる間に戻る。鍛え上げた青森津軽のフィジカルがあるから出来る作戦ではある。
「お疲れ様、葵、渡。」
「お疲れ様でした。」
「お疲れ様です。」
葵と渡は体力にまだ余裕がありそうだな。
「あの……本当に大丈夫なんですか?」
葵が心配そうに聞いてきた。視線はDF陣に向いている。あの守備強度がDFが本職の葵には冬の選手権を勝ち抜けるのか不安なんだろう。
「まあこれから練習だよ。幸いな事に基本は出来ているから、これからレベルアップさせていくよ。」
「ならいいんですけど………。」
「そっちも問題ですけど攻撃陣もでしょ?優さん1人じゃないっすか。」
渡も俺が上げ膳据え膳のパスを出している状況を危ぶんでいる。
「仕方ないさ、中堅校に行くってのはそういうことだから。」
肩を竦めなが言うと、2人が眉を顰めた。こいつらは……全く……俺の現状に不満を持ちつつも、ぐっと我慢して飲み込んだ。可愛いやつめ。
「来年には俺達が行くので、その時は優さんの期待に応えます。」
「そっか。待ってるよ。」
「「はいっ!」」
この2人ともう一人の隆二は問題ない。問題は強豪相手に攻めれない、守れない、ボール回しがおかしくなる。パスを正確に出せない。ここだという時に躊躇することもある。
基礎技術に差がある。ここに関しては長年の差があるから仕方ない。ポジショニングも理解してきているが、試合が動いている状況で遅れたり、忘れてたり、間に合わなかったりと相手のプレス強度が高かったり、実力のある相手との試合で、ここという時に今一つになる。
ここら辺は要改善だな。相手チームの監督に挨拶に行くと複雑そうな顔で挨拶を受けてくれた。
「今日はありがとうございました。」
「いや、こちらこそ。それにしても君の実力を低く見すぎていたよ。チームの奴らからは凄い凄いと聞いていたが、正直ここまで凄いとは思わなかったよ。」
「個人の力量で押し切っただけです。青森津軽さんや千葉経大を相手にするにはチームとしての総合力が絶対に必要になります。そこを選手権までに積んでいかないと………。」
「君はチームに、そしてサッカーに対して冷静で客観的でシビアに見れるようだね。」
頭を下げる事で答えた。
「今年は千葉経大さんと優勝を争うと思っていたが、とんでもない伏兵が現れた。まあ夏にその存在を知ることができてよかったと思おう。では選手権で当たったときはよろしく。」
そう言って自分の教え子の方に去っていった。いい監督だな。熱血漢と言われるが、ちゃんと技術的な指導も出来るし、一軍で使う明確な指標を提示してくれ、クリアしたらちゃんと一軍との試合や一軍で試合で使って、自分に足りないものや増さないといけない所を密に指導すると聞いているが。
今も俺達3人に崩された事を怒りながらも、何故そうなったのかを指摘している。
ああいった監督のチームは毎年のアベレージが高く仕上がる。
さて、ベンチに戻ると針生先輩がいた。ハリーやジェーンと仲良くなっていた。
「針生先輩、また観に来たんですね。」
「だから何度も言ってるだろ?俺はサッカー見るの好きなの。ちゃんと意図を持って攻守を行なっているチームの試合を見るのが特にな。」
ニヤリと俺を見て笑う。今回の葵と渡の3人での攻撃の事を言っているのだろう。こういう造詣の深い人がいるのが嬉しいね。勝った負けた、凄い上手いで喜ぶ人もいいけど、もっと深い所を理解してくれると選手として、プレーしがいがある。
「さて………あっち行ってきます。」
今までスルーしていたけど、ここに至ってはこれ以上は無視できないだろう。フェンスの所にいる集団に近づいた。
「ヘ〜〜イユウッ!」「キング〜!」「マスタ〜ア〜!」
俺のイギリスでの数ある異名をからかう目的で大声で言う。最年少の俺をからかってオモチャにしようとする悪い先輩達だよ………。
「合流明日でしょ?何でいるんです?」
「ユウの試合をハリーが見る為に早く行くって聞いて、オーナーに頼んだんだよ。そうしたらOKしてくれてね。」
「今日はジャパニーズヤキニクを食べに行くんだ!」
「明日はスシ!」「テンプ〜ラ!」「クシカツ!」「モンジャ〜!」
次々と日本の代表的な料理を言ってくる。俺も来ないかと誘われたが先約がある。
「明日は友達と花火を観に行くから。終わったらホテルに行くよ。」
すると親指を下に向けて、ブーブーとノリが悪いと不平を言い出した。先約なんだから仕方ないだろ。
見るものも見たから帰るようだ。えらくあっさり帰るなと思ったら昼食を食べてないようでラーメンを食べに行くらしい。
みんなと握手をしたり、拳を合わせたり、ハグをして別れた。
案内役のデイビッドも大変だな。引率するアジアチーフスカウトの苦労が偲ばれる。
どうやらハリーもついて行くことにしたらしい。母さんには急に予定が変更になってすまないと謝罪の電話をしておくと言っていた。
もう一泊する予定だったが、コイツらを監督しないといけないと思ったようだ。
見送っていると、青森津軽高校も帰る準備が整ったようだ。皆で校門前に見送りに向かう。調整しに来たつもりが、俺にコテンパンにやられ、俺と葵と渡の日本代表の更に上澄みに面白いようにパスを回され、崩されたから意気消沈してしまっている。
これで2週間後の12日から始まるインターハイ、大丈夫なのかな?俺には関係ないからいいけど。
バスが見えなくなるまで見送りをする。まだ3時。
さっきの試合での失点の振り返りとその対策をハーフコートで行い、もう半分を縦に使って出番の少なかった人が主体になってミニゲームをする。
6時になる前に片付けをみんなでして、順にプールで下半身を冷やす。汗の処理をしっかりとして、帰る準備をする。
いや、今日頑張ったご褒美に自分にアイス抹茶ラテを買おう。体育館内にある自販機に行くと後ろから声をかけられた。
「優君、また抹茶ラテ?」
「今日頑張ったご褒美です。」
「確かに頑張ってたね〜。なのでここはお姉さんがご馳走してあげよう!」
「えっ、どうしたんですか?」
「だから〜優君が凄くカッコよかったから差し入れっ!」
「…あ、ありがとう……ございます?」
「なんで疑問形なの?」
「いや、急にでどうしたらいいのか………。」
気になっている人にかっこよかったと言われ、嬉しい気持ちになり、更に奢ってもらう。まあ気にせず感謝と喜んでおこう。
お金を入れて、ピッと自販機のボタンを押すとガコンと音が鳴り、缶が落ちる。それを取り出して、“はいっ”と差し出してくれる。
「私を国立に連れてって。」
「……………っ!」
ぶふっと吹き出した。口を手の甲で抑えて笑う。
「千夏先輩、なんでそんな古いネタを。」
「優君だって知ってるじゃない。」
「俺は父さんが野球やってたから、そのマンガを読んだことがあるんです。」
「私はマンガ読むの好きだから。古い名作で読んだことがあって、せっかくだから優君に言うと面白いかなって。」
「国立か………ということは準決勝まで勝ち進まないといけないのか。」
「いけそう?」
「千夏先輩がそれを望むなら叶えますよ。」
微笑ましく思い、笑いながら約束すると何故か千夏先輩が固まって顔を赤くしていた。差し出している抹茶ラテを受け取り、一口飲む。
「帰りましょうか。」
「うん。」
校門に向かって並んで歩きながら、そういえばと思い出した。
「日本の花火って見るの初めてかもしれないです。」
「そうなの?」
「小さい頃の記憶にないので。なので楽しみです。」
「なら思いっきり楽しもうね。」
「はいっ!」
お互いに顔を見合わせて笑ってしまう。楽しみで。
お次の話の予定は大喜の大学練習と雛との花火大会、優と千夏の花火大会の話の予定です。
更新順は、銀英伝、アオのハコ、SEEDかな?
次の更新まで気長にお待ちください。