アニメもいよいよ始まりましたね。
此方も頑張って更新していきます。
優君に手伝ってもらいながらの居残り練習を終え、2人並んで帰る。半年くらい経ったから隣に優君が居らず、1人で帰ると物寂しく感じるようになった。
居心地がよくて、気疲れもしないし、会話もお互いの部活のことを順に話しているとあっという間に家に到着する。
今日もあっという間に着いてしまった。
「「ただいま(ただいま帰りました)」」
カラリと玄関とリビングとの扉が開いた。
「お帰りなさい二人共。お風呂沸いてるから順番に入っちゃいなさい。」
智さんに言われると直ぐに優君が。
「レディーファーストです。千夏先輩、お先にどうぞ。」
手でもお先にと勧めてくる。
「優君が先でいいよ。私、お風呂長いから。」
「いえ、俺は芝や土何かで汚れてますから千夏先輩がお先に。」
そんなふうに譲り合っていると、その光景に呆れたのか苛立ったのか智さんがダンっと柱を叩き一言。
「長いっ!さっさとじゃんけんで決めなさい。」
有無も言わせぬ迫力でさっさと決めるように促してきた。
私達二人は大人しく勝ったほうが先とじゃんけんをして優君が勝ち、先に入ってもらった。
30分程で部屋をノックされた。準備していた着替えを持って部屋を出ると湯上がりで少し顔も身体も火照らしている優君が立っていた。前を開けて、“どうぞ”と道を空けてくれる。
「あ、ありがとう。ならお風呂頂くね。」
こんな優君が近くにいると心臓が保たない。足早に去る私に後ろから声がかかる。
「ええ。ゆっくりしてください。母さんと晩ご飯の準備進めておきますので。」
服を脱いでお風呂場に入る。先ずは髪を洗い、身体を洗う。1日の汚れを落とす。それから浴槽に身を沈める。今日は柑橘の香りがする。この爽やかな香りにリラックス効果あるそうで、確かに慣れたら落ち着く。優君の香水にどことなく似ていて、いつもより側にいるような気分になる。
そんな事を思うと恥ずかしくなり、お湯を掬って顔にかけて顔を洗う。好きを意識すると私がこんな風になるとは思っていなかった。
優君は覚えてないようだけど、私が小さい頃に、バスケを始めた時に会っている。それがこんな形で再会するなんて思ってもみなかった。言ったら思い出すかな?それとも覚えてないかな?
それすらもどこが楽しんでいる自分がいる。
お風呂から上がり、リビングに行くと食事の用意がほぼ完了していた。
今日は将史さんは研修会でいないようで3人の晩ご飯になった。なので楽をしようと手巻き寿司になったようだ。私と優君の前に大きい丼に入った酢飯。中央に豪華に盛られた魚介が鎮座している。
智さん用のビールを持ってきた優君が私に渡す。何時からか智さんにビールを注ぐのが私の仕事になった。最初は優君が注いでいたけど、ハッキリと楽しくも嬉しくもないと言って私に注いでというようになった。まあビールを注ぐくらいはいいんだけど、あそこまであからさまに優君を嫌がる、私を嬉しがるをされるとなんて言っていいか困る。
そこから手を合わせて、食事を開始した。
優君の代表スケジュールが話題になった。11月にあるU-20W杯とその前の事前合宿で3週間学校を休むことになる。その前にも練習試合で何日もいなくなるようだ。12月の選手権予選にはギリギリ帰ってこれるようだ。
私達のウィンターカップは11月に予選、12月のクリスマスイブから一気に行われる。一回全国に行くと欲が出る。あの舞台にもう一度立ちたい。あの舞台でもっと勝ちたい。優勝したいって。
食事が終わり、食器を台所に運ぶと昨日に引き続き、優君の分析の解説を聞く。昨日は私個人のプレーだったが、今日はチームでの動きの話をしてくれる。相手の基本的な戦い方から始まり、デザインされた攻撃。それに対して栄明の守り方。逆に此方の攻めに対する湊崎の守り方と解説してくれる。
これで分かったのは相手の攻め方のバリエーションが此方より遥かに多かったことだ。
絞りきれず場当たり的な対応で後手に回り、相手に着実に得点を積み重ねられた。
全部聞き終わったら、凄く疲れていたが充実感を感じていた。これをチームで共有していいかと尋ねると、“どうぞ、ご自由に”と言ってくれた。これでもっともっと私が、チームが強くなれる。
昨日今日と勉強会をしなかったけど脳が痛いほど疲れている。これが頭を使ってプレーするってことなんだ。前までのはまだまだ全然甘かった。優君はあそこまで使っているから凄いんだと思い知らされた。
部屋に戻ったらスマホが振動していた。画面を見ると渚からだった。ビデオ通話だ。
タップして出ると画面に渚が映った。
「やっほ。今少しいい?」
「うん。どうしたの?」
少し俯きながらポリポリと後頭部を掻いてから、真面目な顔をした。
「副キャプテンになってプレッシャーもあると思うけど、私達みんな千夏の事サポートするし、私達はこれから絶対上手くなるから千夏一人じゃなくてチームで強くなろう。」
「っ……!?」
「私だけじゃなくて優香も湊崎ではろくに活躍出来なかった。もっと練習して上手くならないとって思った。だからみんなで上手く強くなろう。」
「うん。ありがとう渚。」
「何かあった?今日の練習終わりと比べたら少し違ってみえたから。」
ホント、渚って。意外と人を見てるよね。
「うん。優君と色々話して………困ったら渚達が助けてくれるから思いっ切ってやればいいって言ってくれたんだ。でその後にこの電話だから。」
「そっか。ならよかった。じゃあ明日も朝から練習あるからそろそろ切るね。お休み。」
「うん、お休み。」
通話が切れるとメールやメッセージが着ているのに気付いた。見るとキャプテンを始め、優香や同級生から渚と同じような事が書かれていた。本当にいいチームメイトに恵まれた。
そして日付が変われば、明日になったら私の誕生日。優君が日付が変われば祝いに来てくれる。時計を見るとあと30分もない。
日付が変わる5分前。部屋を出て千夏先輩の部屋の前にいる。廊下は冷房が効いておらず、蒸し暑いが、それとは違った暑さを感じる。襟首を弄りながら緊張を解そうとするも、どうにも落ち着かない。スマホが震える。1分前か………。
スマホをチェックし続けていると、8月26日0時00分になった。
フーーッと一息吐いてから扉をコンコンとノックする。すると微かに、でもしっかりと“どうぞ”と千夏先輩の声が聞こえた。
「失礼します。」
そう言ってガチャリとドアノブを回して扉を開ける。千夏先輩の部屋ってこんな感じなんだと思いながら視界に入る景色に目をやる。それに何かいい香りがする。アロマかなにかを炊いているのかな?
ベットとテーブルの間の空間に座っている。その対面に正座して座る。そんな俺がおかしかったのかクスクスと笑われた。
自分でも変に緊張しているというか、戸惑っているのがおかしくて笑うしかない。
一頻り笑い合ってから真面目な表情に戻して、空気も戻す。
「Happy Birthday,Ms.Chinatsu.I hope you have another wonderful year.(誕生日おめでとう千夏。すばらしい一年になりますように。)」
英語で祝いの言葉を告げた。内容が分かったのだろう。嬉しそうに笑って“Thank you very much indeed for the birthday messages. They really mean so much to me.(お誕生日メッセージを本当にありがとう。とても嬉しいです。)”と英語で返してきた。
驚いて目をパチクリとさせている俺の様子がおかしかったのだろう。千夏先輩がクスクスと笑っている。
「これくらいなら私も喋れるよ。優君には負けるけど、これでも優等生ですから。」
エッヘンと自信満々に威張る振りをしている。こういったイタズラが成功したように笑う千夏先輩も可愛いな。
「誕生日プレゼントは明日……いや、もう今日ですね。夕飯後に父さん達と一緒に渡しますね。」
「うん、ありがとう。」
「「……………」」
会話が止まってしまった。
もうすることがない。そろそろ部屋に戻るとするか。
「お互い明日も早いので部屋に戻りますね。お休みなさい。」
「………うん。お休みなさい。」
軽く一礼してから部屋を出た。扉を閉めると大きく息を吐き出した。まだまだ夏で夜も暑いから仕方ないけど、薄着の千夏先輩は本当に心臓に悪い。
自分の部屋に戻り、ベットで横になる。早く寝ないと。
インターハイが終わり、夏休みも残り僅か。残った宿題に焦りを感じる頃。本日8月26日は私の誕生日。
体育館の重い扉を開けると、“パンッ”“パンッ”“パンッ”“パンッ”“パンッ”と目の前でクラッカーを鳴らされた。
「「「「「千夏!誕生日おめでとう!」」」」」
そして祝いの言葉を言ってくれる。そしてクラッカー紙吹雪と紙や銀のテープが飛んでき、降りかかる。
「ありがとう。」
クラッカーの中身で汚れた地面を1年生が手早く掃除してくれる。
「はいはい、どうぞ。これ被って〜。」
「これプレゼント〜。」
袋に入ったプレゼントを渡される。
「なになに?」
リボン留めされた包装を解くと中にシャツが入っていた。
広げると見覚えがある生き物がプリントされていた。
「千夏画伯の鹿Tシャツ!練習で着てね!」
“何時見てもシュール”と私の描いた絵の感想も漏れ聞こえる。
「あーーー、優君じゃん!」
渚が声を上げた。外を見ると午前の練習が終わって汗だくの優君が首にタオルを下げて、ドリンクボトル片手に此方に歩いてきていた。呼ばれたので側に来て、挨拶をしてくれる。
「どもっす。」
「今、千夏の誕生日祝ってたんだ!優君も祝ってあげてよ。」
渚がそんなふうに声をかけると此方に上がってきた。
「誕生日おめでとうございます。今年1年が千夏先輩にとって良い年でありますように。」
祝いの言葉を言ってくれて、“では”と去ろうとすると渚が待ったがかけた。
「え〜〜〜。言葉だけ〜〜〜!?何かプレゼントしてあげてよ〜〜〜!」
そんな図々しいお強請りまでしたので私が慌てた。優君は家に帰ってから夕飯後にプレゼントをくれると言っていたので、ここで貰うと何か申し訳ない。
優君もプレゼントと言われてもと、今自分が持っているものを確認している。首にかけた汗を吸ったタオル、サッカー部のドリンクボトルとろくに持っていない。
すると荷物を床に置き、首元を弄りだした。首の半分をピッチリと覆う服を着ているから取り出しづらそうにしているが、ネックレスかな?それを外して、此方に差し出してきた。
紐に下げられた金属パーツに紫色の綺麗な石が輝いていた。
「これしかないので。」
そう言って私に手渡そうとしてきた。
「いや、いいよ。こんないいの。」
私のセリフに苦笑しながら答えてくれた。
「これ、Secondary Schoolの時にスペインで衝動買いしたものなんです。価格も年相応のお小遣いで買えるレベルのなのでお構いなく。」
後ろを向いてくださいと言われ、大人しく向くと、スッと首に腕を回して付けてくれた。
「先端の石はアメジストで、色々と意味があるのですが魔除けや浄化の効果があるとされています。誕生日プレゼントとしても中々に良いものかと。」
“うん、似合ってます”。そう言って笑う優君に“ありがとう”とお礼を言うと、“いえ、改めてお誕生日おめでとうございます”と改めて言ってから一礼して去っていった。
「いや〜〜、相変わらず爽やかだね〜〜。」
「ね〜〜!しかもシレーーーっとカッコよく良いものプレゼントするしっ!」
いいのかな?先端の石を持って見ながら思った。でもここで返すとかも違うし。
「練習の邪魔にならない?」
えっ?あっ、そっか。優君のサイズだから私には少し大きいけど、それがTシャツの中に入れると隠れる。
「外さないとダメかな?」
「いんじゃない?邪魔にならなければ。」
うん。飛び跳ねてみても動かない。問題ないからこのままでいっか。
夕日に照らされる道を2人肩を並べて歩いている。
「本当に良かったの?大切な物だったんじゃあ?」
帰って行われる千夏先輩の誕生日パーティーでも俺からプレゼントがある。それを思えば、部活の時に渡されたアメジストのネックレスは予想外のプレゼントだったのだろう。今も返そうかと言っている。再度貰ってくださいと伝えると分かったと言ってくれ、胸元にある石をYシャツの上から触っている。
家に着くと母さんが出迎えに来てくれた。さっさとお風呂に入るように言われ、千夏先輩にお風呂を勧め、俺は2階のシャワーを使う。今日は用事がこれからあるから簡単に済ます。
頭の水気をタオルで拭きながらリビングに行くと産まれてから見たことないような飾り付けがされていた。母さんの気合の入りようには笑うしかない。
「オーブン、温めておいたから。」
そう言ってキッチンを譲ってくれる。
昨日のうちに仕込んでおいた七面鳥が常温に戻されていた。それをオーブンに入れて、焼いていく。鳥の中に入れた野菜は加熱と下処理をしているから鶏を焼いて、中の野菜が熱くなれば完成だ。
千夏先輩もお風呂から上がって来た。リビングの飾り付けに歓声をあげ、テーブルの上に置かれた料理に歓喜の声も漏らす。
ナイスタイミングでセットしていたタイマーがなった。扉を開けると良い感じに焼けていたし、ハーブの香りが漂ってきた。
鉄板ごとリビングに持っていく。鶏丸々1羽に千夏先輩が驚いている。
「さて、晩ご飯にしましょうか。」
母さんの合図でいそいそと俺も席に座る。俺はトニックウォーター。千夏先輩はお茶。父さん母さんはちょっといい赤ワインを開けるようだ。父さんが手際よくオープナーでコルクを抜いて、グラスに注ぐ。トクトクという軽快な音が鳴った。
太刀魚と鱚の塩焼き、サーモンのマリネ、サザエとアワビとウニの刺身、シーザーサラダ、父さん作のローストビーフ、俺作の七面鳥の丸焼きの豪華絢爛な晩ご飯だ。
鶏の切り分けは俺の仕事だ。ナイフを真ん中に刺してスッスッと切り込みを入れていく。パッカリと割ると中の野菜がお目見えした。
人参、ジャガイモ、ミニ玉ねぎ、セロリを入れていた。千夏先輩に苦手なものがないか聞いてから皿に取り分けてあげる。父さん達の分も取り分ける。
父さんもローストビーフを切って取り皿に載せてくれている。
「ではグラスを持って。」
母さんの合図でグラスを掲げる。
「千夏ちゃん、誕生日おめでとう!」
「「おめでとう!」」
「ありがとうございます!」
祝いの言葉とお礼をして食事が始まった。飲み物で口を湿らせてから、自分で作った鶏を口に運ぶ。
外の皮はパリッとしていて、蜜を塗ったから甘い。中の身もハーブと香味野菜の味と香りがしっかり染みていてしっとりとして柔らかく仕上がっている。そして塩味を感じる。うん、上手くいった。
「これ美味しいよ、優君。」
千夏先輩からもお褒めの言葉を貰い、大満足だ。17歳の抱負というか目標を改めて言ってもらったりしながら食事が続く。
両親は2本目の白ワインも空け、ホロ酔いになり、俺達も食事を終えたので片付けをする。残った料理をキッチンに持っていき、タッパーに詰める。明日の俺と千夏先輩の弁当のおかずになる。千夏先輩も手伝ってくれる。今日の主賓だから手伝いはいいと言っても引かない。やっぱり優しく、気が利く女の子だな。
軽く水で洗いだ食器を食洗機に入れるようにお願いする。ズボラで適当な母さんが楽できるようにと父さんが結構良いものを入れた。それに綺麗に入れていく千夏先輩。多分入れる食器の枚数を何となくではあるが把握しているのだろう。綺麗に並べている。
2人肩を並べて家事をしているのに気付いて笑ってしまった。
「どうしたの?」
そんな俺を不思議そうに尋ねてきた。
「いや、何か夫婦みたいだなって。」
俺が特に深く考えずにポロリと言うと、その状況に気付いた千夏先輩が顔を紅くして俯いた。
「おっ!いいわね、それ!私は反対しないわよ。………でも千夏ちゃんが優の奥さんなんて、豚に真珠、猫に小判ね。」
母さん達にも聞こえていたのか声が飛んできた。それにしても。
「よくそこまで息子を貶せるなっ!」
全く母さんは口が悪すぎる。そして俺への評価が辛辣すぎる。
そんな俺達親子のやり取りを千夏先輩はクスクスと笑っている。
片付けも一段落し、いよいよお待ちかねの時間だ。
父さんがタブレットを操作して、千夏先輩に差し出した。
『千夏っ!誕生日おめでとう!!』
千夏先輩のお母さんの大きな祝う声が聞こえてきた。
「ありがと〜お母さん。」
『千夏、誕生日おめでとう。』
「お父さんもありがとう。」
お父さんの低い声も。
「お父さんもいるなんて思わなかった。」
うん、俺も正直お父さんがいるなんて。仕事があるからメールかラインで終わりと思っていた。
『将史さんから欧米はこういった家族の誕生日は仕事を休んででも祝うものだと言われてな。特に千夏と私達は離れて暮らしている。そういった所でも欧米は配慮してくれると。』
将史さんが………。見るとお酒で顔を赤くしながら笑っている。小さく頭を下げると優君に似た笑みを浮かべて頷いた。
「さてそろそろメインに行きましょうか。優、お願い。」
智さんが優君に言うと、キッチンに向かう。冷蔵庫から箱を取り出し、いそいそと何かしている。
「じゃあ行くよ。」
リモコンでリビングの電気を消した。明かりはケーキに刺さったロウソクの火とお母さん達が映るタブレットだけになった。
優君がケーキをテーブルに置いた。
「「「『Happy birthday to you,Happy birthday to you,Happy birthday, dear 千夏(千夏ちゃん)(千夏先輩)!』」」」
「「「『Happy birthday to you,Happy birthday to you,Happy birthday, dear 千夏(千夏ちゃん)(千夏先輩)!』」」」
優君がどうぞロウソクの火を消してと手振りで示したので、フーーーっと息を吹いて火を消した。
ロウソクの火が消えて少し暗くなった。不意にタブレットの明かりも消えた。真っ暗になった状況を確認するように周りを見渡すも暗くて何も分からない。
困惑しながらも動くと危ないからじっとしていると、パッと明かりが着き、優君が電子ピアノ、将史さんがギター、智さんがなぜかタンバリンを持っていた。
「スリー、トゥー、ワン。」
ギターとピアノが鳴り、曲が始まった。
『HAPPY BIRTHDAY』笠井俊佑
私の誕生日を祝うと共に祝える自分達も嬉しいと言ってくれている歌詞だけど優君にそんな風に言ってくれて嬉しい。
それにしても優君ってピアノ弾けるんだ。それに歌もめちゃくちゃ上手い。針生君も上手いけど優君も負けず劣らず上手い。
将史さんも演奏上手いな。お母さんは口を押さえて笑うのを我慢している。どうも同級生の智さんだけタンバリンなのが面白いみたい。
二番も両親への感謝、周りへの感謝もしないとダメだよといった歌で、歌詞に共感するところが多い。
間奏に入って将史さんのギターソロ。優君も智さんも演奏を控える。
ラストは私を見詰めながら歌ってくれる。心の底からおめでとうと思ってくれているのが伝わる。
曲が終わると拍手をした。お母さんもお父さんもしている。
『智、あなたタンバリンって……っ。』
お母さんは笑いながら言うと肩を竦めながら反論した。
「仕方ないじゃない。私楽器出来ないんだもん。」
「優君、ピアノ弾けるんだ?」
それに対して優君が苦笑した。何かあるのかな?
「ジェーンが英才教育の一環でピアノをやっていたんですが、嫌がる彼女にやらせる為に、俺も一緒に受けたんです。」
嫌がるジェーンの姿は容易に想像できた。
「優はそこそこはまったわね。電子ピアノを買って欲しいって頼むくらい。」
「そうそう。弾けないと悔しそうにして、サッカー辞めてピアニストになるんじゃないかと心配になったよな?まあ日中はサッカーの練習、夜はピアノと分けてしてたから、そこまで心配していなかったけど。」
へぇ〜〜〜。やっぱり練習しているんだ。そりゃあそうか、流石の優君も練習せずに弾けるほど天才じゃないか。
「弾けないと悔しかったですから練習は一杯しましたね。今思うと、あそこまでする必要なかったけど………負けず嫌い何でしょうね。」
自分の性格を振り返って、苦笑いを浮かべた。
続いてプレゼントを渡された。両親からはお小遣いを智さんに渡されていた。これで服なり、何なり好きなものを買いなさいと言われた。
将史さんからは秋冬物のコート。智さんからは商品券を貰った。智さんが現役の時に所属していたチームの親会社ので、女性用下着の会社のだ。カタログから何から渡された。
貰ったものを確認するために取り出したせいで、優君にも中身を見られた。恥ずかしい。赤面しているのを感じる。
優君が気を取り直すように“ゴホン”と咳払いをしてから、少し大きな包みを差し出してきた。開けるとスポーツウェアが入っていた。長袖長ズボンの材質から何から良いやつだ。
色も落ち着いた感じので気に入った。“ありがとう”とお礼を言うと、“喜んでもらえたならよかった”と嬉しそうに笑う。
両親が自分達はこれでと言って、さっきから放置のケーキを食べる様に促してきた。
私や如月家みんなで時間も時間なのに参加してくれてありがとうを伝え、改めて両親から私におめでとうと言ってもらい、通話を切った。
楽しみにしていたケーキを見ると、所々歪な部分はあるけど綺麗に出来ている。
これも優君が作ったようで、中に夏のフルーツが入っていて、上にイチゴが飾られている。
モモ、メロン、マンゴー、パイン、ブドウと盛り沢山で上にもイチゴが載っている。
甘くて美味しい。一切れにするつもりがお代わりをしてしまった。まだあるので明日も食べよう。楽しみだ。
今日もいつもの様に勉強会をして、優君と2階に上がる。部屋の前で別れる前に、今日最高の誕生日になったことの感謝を伝えると、“大切な人が産まれた日ですから。”と言われた。
固まる私をよそに“お休みなさい”と言われ、私が我に返って返事をするより先に部屋に入っていった。
『HAPPY BIRTHDAY』笠井俊佑
誕生日の歌を探していた時に良いなと思って使わせてもらいました。
次の更新もアオのハコを予定しています。文化祭の話になっていきます。
のんびりとお待ちください!