今回はすぐに投稿できてよかったです。
基本的に原作の話を使いながら書いていきます。
長かったのか、短かったのか、夏休みも終わり今日から学校が始まる。
俺も千夏先輩も変わらず朝練をする為に早朝に出掛ける。母さんが作ってくれた弁当を持って。
部室に荷物を置いて着替えて外に出る。同じタイミングで会うと首に下げているネックレスを今日も着けていると見せてくれる。その時の嬉しそうな顔が可愛いと思う。
そしてハイタッチをして体育館前で分かれる。
ボールを出してPKやFKの練習をしていると8時前に沢先輩や横、渡と湊が来た。渡と湊は栄明中だから来れるけど葵は横浜だからな。流石に朝練は厳しいと連絡があった。放課後は来るそうだ。
ミニゲームをして朝練を終える。汗の処理をして着替えてから教室に向かう。横とサッカーの話をしながら教室に着くと久し振りのクラスメイトもいるから挨拶をしながら席に戻る。
「大喜、匡おはよう。」
「2人ともおはよう。」
先に教室に来ていた2人に挨拶をすると、大喜は朝から元気一杯に、匡は落ち着いた感じで返してくれる。
「おはよう。って言ってもほとんど部活で会ってたから久し振りって感じないよな。」
「確かに。」
そんな事を話していると予鈴が鳴ったので席に戻る。すると直ぐに担任の先生が入ってきてHRが始まった。
今日のこれからの予定を話してくれた。始業式をやった後、9月の3週目の土日に文化祭がある。クラスで何をするか決める。放課後はその準備期間になる。部活も終了時間が延長されるけど、曜日で文化祭の準備をする日が決められる。
そんな説明が終わると担任が俺と横の名前を呼んだ。
「如月と横川はこれから直ぐに校長室に行ってくれ。話がある。」
それでHRが終わった。みんなが何事と寄ろうとするもそれを制して教室を出る。廊下を歩きながら横と話す。
「何だろう?」
俺は何となく見当がついていたので答えた。
「多分、月末にあるU-17の合宿と親善試合だよ。」
「っ、代表!?俺が!?」
「ああ。俺がいるからスカウトどころか各年代の監督やコーチもインハイ予選やリーグ戦も見に来てただろうから。」
そんな話をしていると校長室についた。ノックをすると“どうぞ”と言われたので入ると沢先輩が先に入ってソファに座っていた。
「如月、横川もか。」
「揃ったので早速話をさせてもらうことにする。君たち3人にU-17日本代表の合宿への参加要請がきた。9月の末の金曜日から日曜日までの3日間になる。金曜日に合宿地に入ってもらい、土日の2日間が選考になる日程だ。」
校長が資料を見ながら伝えてくれる。そして言い終わるとどうするかの是非を問うている。
「俺は今回のがU-17の参加は最後と伝えています。なので参加します。」
俺が伝えると沢先輩も横も参加する旨を伝えた。
「分かった。なら私の方で学校の日程も調整しておこう。特に如月君はU-20W杯もある。補習が必要になるかもしれないしね。」
「ですね。予想以上に代表スケジュールがギチギチで困ってます。」
俺の自嘲に校長も苦笑いをしている。U-17代表も止めれば少しは余裕ができるだろう。U-20W杯が終わればU-21、19もしばらくは活動もないからゆっくりできるだろう。
話し合いも終わり、校長室を退室して体育館に向かう。沢先輩も横も初代表で緊張しているみたいだ。
「まだ期間あるので今からそんな緊張してると保たないですよ?」
「いや、まあ。」
「分かってはいるけど。」
「今回だけですけど俺がいるんです。何にも問題ないですよ。それに多分葵や渡もいますし。」
最近栄明の練習に参加している2人もいると聞いて、少しはおちついたかな?
体育館に着くと皆整列していた。前から1年、2年、3年と並んでいるから沢先輩と途中で別れて自分のクラスに向かう。途中、千夏先輩が胸元で小さく手を振り、渚先輩がよっすと指2本でピッと敬礼している。優香先輩も手を振っていた。
針生先輩と西田先輩もヨッと合図をしている。
自分のクラスに向かった沢先輩にも何があったのか聞いているんだろう。
俺達も自分のクラスに行くと興味津々の視線を向けられるが、マイクの電源が入った音が鳴ったお陰で聞かれずに済んだ。
校長の挨拶から始まり、生活指導主任の話が終わり、各部活の夏の成績発表が行われた。色々な部活が全国に行ったが、個人団体含めてトップの成績は蝶野さんの全国3位だった。
“いや〜〜〜、どうもどうも”と照れながら周りからの祝福の言葉を受けていた。
最後に俺の名前、沢城先輩、横川の名前が呼ばれ、月末のU-17日本代表候補合宿に呼ばれた事。選ばれれば翌週の親善試合に日本代表として戦うことなると言われ、拍手が起こった。
軽く会釈をしてそれに対し応えた。
そんな感じで夏休みが明け、学校が始まった。
「じゃあ、我がクラスの出し物は〜〜、蝶野雛主演で『白雪姫』に決まりました!」
パチパチパチパチパチパチと拍手が溢れた。
「まー任せんしゃい!!ドドンと箱舟に乗ったつもりで!」
「箱舟?」
自信満々の蝶野さんが頼もしいな。
「台詞覚えられるのか?」
「まぁ人前に出るのは慣れてるだろうし。」
カリカリとクラスの出し物と担当の割振り、責任者を紙に書いていると大喜の心配と匡の楽観的な意見が面白い。普通なら逆なのに。
「じゃあ大喜と横は大道具頼むな。匡は小道具を。」
前にいる3人にしっかりと働いてくれるように頼むと任せろと言ってくれる。横と匡はしっかりしているし、大喜はこういう時に頼りになるからな。
「大喜!大道具、凄いの作ってよね。主演の私が映えるやつ。」
「映えるって、無茶言うなよな。学校の劇で映えるってどんだけレベル期待してんだよ。」
蝶野さんの無茶振りに大喜も呆れ気味だ。
「まあ雛の白雪姫、俺も楽しみだしな。出来る限りは頑張るよ。」
そんな会話を聞きながら書いていた書類のチェックをする。欄の間違いがないか………よし、ないな。
「じゃあ書類の提出行ってくるわ。」
「おう、分かった。それまでに大道具、小道具の作成リスト作っておく。」
「頼む。」
紙を持って文化祭実行委員庶務の元に行く。委員長は体育祭に引き続きまた紅林先輩がしてくれるそうだ。
去年は副委員長をして、色々とやらかしたらしいが概ね好評だったそうだ。(沢先輩談)
2年B組に着いた。千夏先輩のクラスだからちょっと緊張するな。さっと服装におかしな所がないかチェックしてからノックして戸をスライドさせる。
「失礼します。文実の佐々木さんはいますか?」
言いながらクラスの中を窺うと人が全くいなかった。後ろの席に一人、座って書いている人だけだった。
「あれ、優君。」
教室に来た俺を不思議そうに見ている千夏先輩がいた。教室に入って千夏先輩に近付きながら周りを見回してみても、やっぱり誰もいない。黒板に“喫茶店!メイド、執事喫茶!!”と書いてある。千夏先輩達は喫茶店をするんだ。
「千夏先輩達は喫茶店をするんですね。」
尋ねると“うん”と頷いて返事をしてくれる。
「最初は喫茶店だったんだけど、なんか調子にのってメイドと執事もしようってなって。」
「そうなんですね。」
「うん。それでどうしたの?」
何の用事か聞かれて、このクラスに来た用事を思い出した。
「クラスの書類を出しに来ました。」
「渡しておこうか?」
「いいんですか?すみませんがよろしくお願いします。」
お礼を言ってから書類を渡す。
「千夏先輩、一番後ろの窓際なんですね。」
前に来た時は違ったから気になった。新学期で席替えしたんだな。
「うん、さっき席替えしてね。優君は?」
「俺は千夏先輩の一個前です。」
ここですと指差しながら教える。
「そっか……残念。」
「何が残念なんですか?」
「うん。優君が同じクラスならイタズラできたのになって。」
そう言って、前の席をシャーペンでツンツンとする振りをした。
「勘弁してくださいよ。」
「うそうそ。そんなことしないよ。」
「分かってますよ。千夏先輩、真面目で優しいですから。」
彼女は授業中にそんな事をするような人じゃない。そう伝えると少し目を見開いてから優しく笑った。
「1年違えば同じクラスだったのにね。」
「………そうですね。俺がイギリスで飛び級しておくか千夏先輩が留年するか。あるいはどちらかが半年ほど早くか遅く産まれていたら。でも半年以上も母親のお腹にいるってかなり迷惑じゃありません?」
俺の返しが面白かったのかクスクスと笑った。
「優君はちゃんと授業聞いてる?」
「ええ。大喜や蝶野さんと一緒にされると困ります。」
出した名前で様子が想像できたのか更にクスクスと笑った。
「あの2人、寝ちゃってるか授業が分からなくて困ってますよ。頭から煙が出るんじゃないかって感じです。千夏先輩は真面目に授業聞いてそうですね。西田先輩と違って。」
挙げた名前がズバリ過ぎたのか更に笑う。
「西田君は偶に寝そうになって頭がグワングワンしてるけど、頑張って起きてるよ。」
「へ〜〜〜、意外です。爆睡してるものだと。」
「針生君、寝てる奴には勉強教えないし、テスト前に助けないって言って、それで西田君も頑張って起きてるんだよね。」
「あ〜〜〜。針生先輩なら言いそう。」
話題が俺と横、沢先輩が日本代表候補に選ばれた話になった。
「沢城君と横川君も代表に選ばれたね。」
「ええ。あの2人は最近の伸びから言えば選ばれてもおかしくなかったですから。」
「そして優君は当然の感じで選ばれてる。」
千夏先輩の言い回しに苦笑した。確かに当然と思ってはいる。両足を遜色なく蹴れて、フィジカルも圧倒的、テクニックは更に圧倒的。チームを勝たせることの出来る選手と自分を評価している。
「一個下の代からも来ますよ。」
夏休みから練習参加している葵と渡も選ばれている。そしてあの2人は当確だろう。U-17に参加してもあの2人は抜きん出ている。
来年は紅林先輩が抜けるけど代わりを葵が、中盤は渡、前線はもう一人が来て、レベルアップするだろう。全国出場は勿論だが、栄明サッカー部初の全国制覇もしたいものだ。
「鹿野ーーー!」
「は〜〜い!」
先生が入ってきた。そして俺の姿を見て声をかけてきた。
「おう如月、来てたのか。」
「はい、お邪魔してます。」
「鹿野と逢引きか?」
「違いますよ。文化祭の書類を出しに来たついでに世間話をしていただけです。」
「そうか。代表、頑張ってこいよ。応援してる。」
「ありがとうございます。」
ペコリと頭を下げてお礼を言ってから千夏先輩の方に向く。
「じゃあそろそろ戻ります。」
「うん。佐々木くんに渡しておくね。」
「よろしくお願いします。」
千夏先輩にもお礼を言って、去り際に先輩にも会釈をする。
去っていく優君を先生と2人見送る。
「いい奴だな、如月。日本代表なのに偉そうにせず、物腰も柔らかで、礼儀正しい。そして頭も良くて、数カ国語喋れる。」
「ですね。」
マルチリンガルで日本語、英語、スペイン語、ポルトガル語、ドイツ語をネイティブに話せるそうで、チームメイトが多国籍の関係で覚えたそうだ。(将史さんは英語とドイツ語、智さんは英語が話せるそうだ。)
先生が傍ではぁ~と大きなため息を吐いた。
「あ〜〜、生まれ変わるならアイツになりたいわ、俺。」
ボヤく様に言う先生に笑ってしまった。確かに私も男に生まれ変わるなら優君になりたいと思う。
「先生、用件は?」
「ああ。喫茶店をやるにあたって―――」
どうやら衛生関係の講習の話だったようだ。
いつもの様に家に帰るとウチでは見ない靴があった。誰か来客か?女性用だから女性なんだろうが。
「「ただいま〜(ただいま帰りました)。」」
リビングに入ると2人が座っていた。
「お母さん!」
千夏先輩がびっくりして声をあげた。
「千夏先輩のお母さん、なんで日本に?」
俺も驚いた。何の連絡もなく帰ってきたら急にいるから。
「2人とも、久し振りね。……といっても千夏の誕生日の時に顔は見てるから、そこまで懐かしくは感じないわね。」
うん、確かに。………で、俺の質問の答えは?
ポワポワして此方が求めている回答が返ってこない。すると代わりに母さんが答えてくれた。
「千佳のお父さん、千夏ちゃんの母方のおじいちゃんが倒れてね。急遽帰国してきたそうなの。」
「それは……おじいさんは大丈夫なんですか?」
命に別状はないのか、どういった病状なのか質問した。
「命には別状はないんだけど、来月手術することになってね。しばらくはこっちにマンスリーマンションを借りてコッチに住もうと思ったんだけど………」
「そんな事ならウチに泊まればいいって言ったのよ。病院の通院、おじいさんのお世話で大変だろうし、帰ってから家事をするなんてね。家事は私がすればいいし、客間があるからそこに泊まればって勧めてるの。」
「智もこう言ってくれてるし、将史さんと優君が迷惑じゃなければお世話になろうかと思ってるんだけど………。」
「俺は問題ないですよ。第一はおじいさんの諸々です。母さんの負担が増えるけど、それが問題ないなら俺はOKです。」
「そう、ありがとう。」
俺が許可すると千夏先輩に似た笑みでお礼を言ってくれた。
「パパも賛成してくれてるから決定ね。」
「2人はお風呂入ってきなさい。2人があがったらご飯にしましょう。」
母さんの合図で動き出した。
夕飯が終わり、片付けを千佳に手伝ってもらって晩酌をする。パパは自室で勉強している。昇進試験があるそうで、ここ最近は晩酌は無しだから相手してくれる千佳が来てくれてありがたい。
「千夏も優君も毎晩勉強してるのね。」
「まぁ、基本的にはね。2人とも真面目なのよ。」
「で………、あの2人ってどうなの?」
「………さあ〜〜?お互いに好意があるのは確かだけど恋愛までは行ってないのかな〜?同じ全国出場、全国制覇を目指す同志って感じが強かったけど。」
「………けど?」
“う〜〜〜ん”と天を見ながら考え、言葉を選びながら最近の2人の様子を口にした。
「あの子達、今お互いに異性で一番近い距離にいるからか、変な空気になる時があるのよね。パパとは成り行きに任せようって話してるんだけど。」
「あらあら、まあまあ!優君が千夏の相手なんて!」
「いやいや、千夏ちゃんが優の相手になってくれるなんて交通事故か宝くじに当たる以上の確立でしょ。優に千夏ちゃんは勿体ないまである!」
「智は優君に辛辣ねぇ〜。」
「まあこのまま生暖かく見守るつもりよ。若い子の恋愛事情なんて、外から見てるとワクワクするし。」
笑いながら告げると、千佳は小さくため息を吐いて苦笑した。
「ホント、相変わらずいい性格してる。」
昔のようなやり取りに笑みが溢れた。
メニューは大体決まった。メイド、執事喫茶をするにあたって本格的に出来ることはそうしようってなった。といっても喫茶店だからメインの飲み物で凝る事が出来そうなっていってもコーヒーか紅茶くらい。
淹れ方もプロのやり方を調べたら出てくるので、それをしようとなった。
次に喫茶店で出す軽食の話になった。サンドイッチやスコーン、ケーキを出そうとなった。ケーキは何を出すかと言う話し合いから何が好きかの話になった。
アレやコレやと意見が出ている。
「千夏は何が好き?」
急に話を振られた。えっと………何が好きか……か。色々なケーキを思い浮かべるも一番印象に残ったのはフルーツたっぷりのショートケーキとチーズケーキだった。
喫茶店で出すとなったら―――「チーズケーキかな。」
「いいね!」
「私も好き!」
「私はよく焼いたのが良いな。」
「レアチーズケーキの方が私は好き。」
みんなが盛り上がっている。
「喫茶店でも出そうか。ショートケーキとかは保管するのに冷蔵庫が必要だけどチーズケーキならしっかりしてるから冷暗所でいけるのかな?」
優香が喫茶店のメニューにしようと提案すると皆がいいねと賛成して決定した。
「いいんじゃないかな?で、誰か作れる?」
渚が周りに目をやり、作れる人を探すが誰も顔を逸らしている。あ、渚と目が合った。
「千夏は作れない?」
「無理だよ〜。普通の料理も覚束ないのに。」
「男子は〜〜?」
女子で諦めた渚が、男子に聞くも誰もいない。
「………優君が、その……チーズケーキ作れるよ。」
みんなの視線が集まる。
「なんで千夏がそんな事を知ってるの?」
優香が聞いてきたので、変に隠してもおかしいから素直に答えることにした。
「全国出場のお祝いに作ってくれたの。それが凄く美味しかったから。」
「ふ〜〜ん。ならお願いしよっか。うん、決定。」
渚があっけらかんと言い、それにみんなが賛同した。
「じゃあ早速お願いしに行こっか。ほら千夏、行くよ。」
「え、私も?」
「当たり前でしょっ!あんたからのお願いなら優君も断んないって。」
そう言って女子全員でぞろぞろと優君のクラスに向かう。
クラスに着くとトンと背中を叩かれた。どうやら私からお願いする流れになっているようだ。
トントンと開いている扉をノックしてから中を覗くと優君が何人かの男女と話していた。
「鹿野先輩?」
私の名前を呼ぶ男子の声が聞こえたのか、優君が此方を向いた。なんで私が此処にいるのか分からず、少し怪訝な顔をしながら此方にやって来てくれた。
「千夏先輩。どうしたんです?」
「えっと……その、優君にお願いがあって。」
チラリと後ろにいる大勢の女子に目をやった。こんな大所帯でお願いに?と思ったのだろう。
「……そのね、ウチのクラス、喫茶店をすることになったんだけど、メニューでケーキを出そうってなって、それで優君の作ってくれたチーズケーキが美味しかったし、保存もしやすいかなって。それで、その……作り方を教えてくれないかなって。」
顎に手をやり、数秒考えてから“いいですよ”と言ってくれた。
「ただ俺も自分のクラスがあるので、何日か作る日を決めてって形で良ければ。」
了承してくれて、ワァッて盛り上がった。
「とりあえず材料の買い出しと調理室の貸し出しをお願いします。」
そう言って、必要な材料を教えてくれる。とりあえず何人かで5から6ホールくらい作ってみましょう言ってくれた。
優香が必要な材料をスマホでメモってくれる。
「予定が決まったら教えてください。」
調理室が使える日程の確認とその日に予定を空けておくと言ってくれた。お礼を言って教室に帰る。
「いや〜、あっさり決まったね。」
「よかった〜〜。」
「それに良い目の保養になった。」
「分かる〜〜。千夏と良い関係なのは分かってるけど、カッコいい男から発する謎の癒し効果は効くわ〜。」
「いやっ!私と優君はその……そんな関係じゃあ……―――」
尻すぼみになる私。
「なら私達アプローチしてもいい?」
「えっ!?いや、それは……いいけど…その…。」
「千夏っ、か~わいい!」
「えっマジでそうなの?」
みんなにからかわれることになるとは。私がここまで上手く返せないとは思ってもみなかった。
「ほら、そこら辺で止めときなよ。こういったのは遠巻きからニヤニヤと笑うのが楽しいんじゃない。」
渚が制止してくれて感謝したのも一瞬で、ニヤリと笑う渚が小悪魔の見えた。
「綺麗なお嬢さん、贈り物をあげましょう。」
「わあっ、綺麗なりんご!紅くて色艶もあって、お尻の部分も深く窪んでて、糖度は15度を超えてそうなりんごね!」
「そうでしょう、そうでしょう!」
糖度15度って、白雪姫の時にはない表現だな。いや、まあいいけどさ。
「香りも芳醇で……芳……、ごめーん!」
どうやらセリフが思い出せなかったようだ。
「いや、いい感じだよ!この短期間では十分!」
台本の読み合わせは順調そうだな。今の所は浮いた人員もいないから割振りはうまくいっている。
初日は衣装とかで使う布などを買いに行き、劇の出演者は台本を作成し、次の日から本格的に動き出した。
とりあえず俺は小人用の服を作ることになった。匡は白雪姫と魔女の服を。
といっても小人サイズではないのだが。シャツに半ズボンと森の小人っぽい質素の作りのだから楽だ。7人分は大変だが。
「そういえば優は明日、鹿野先輩たちにケーキ作りを教えるんだっけ?」
匡がこれから縫う少し良い生地の縫い目の確認をしながら話しかけてきた。
「ああ。だから今日のウチにそこそこ進めていきたいんだよな。」
ガガガガガとミシンが立てる軽快な音をミュージックに作業を進める。小人の上の服は簡単だ。生地を半分に折って、頭を出す所と腕を出す所と身体を入れる所を空けておくだけの簡素な作りだ。後はいい感じにボロくする。ズボンも着々とミシンの使える女子に手伝ってもらいながら進めていく。
スマホのアラームが鳴った。もう時間か。
「島崎さん、安全確認集会行ってくる。」
「ああ、うん。よろしく〜。」
ヒラヒラと手を振って見送ってくれる。
教室を去っていった如月君を見送る。
大喜が大道具も必要な道具の手配をする。横川君は段ボール
「猪股〜、机何個必要なんだっけ?」
「8つ!これから買い出し行くけど何か必要なものある?」
「あ〜ガムテがなくなりそう。」
「マジックも心配。」
「了解。何色が必要?」
「あ〜〜〜、赤と青と茶色と〜〜〜緑!」
「分かった、買ってくるよ。」
「ウチのクラス楽〜〜〜。如月君がリーダーとして纏め役をしてくれるし、猪股君も横川君も指示役もして、動いてもくれるし、笠原君もめっちゃミシン上手いしさ、当たりクラスじゃない?」
「分かる〜〜〜。頼りになるし、相談しやすいし、指示も分かりやすいし。」
そう!如月君が凄すぎるだけで大喜もめっちゃいいの!横川君も匡君も頼もしいし。
好きな人が他の人達に褒められるのって、どこかむず痒くって、でもやっぱり嬉しい。
「ちょっ、こら!ちゃんと重さ測ってっ!?」
適当に、大体ですまそうとする渚先輩にストップをかける。
正直、レシピを教えたんだから後は自分達ででもよかったんだけど、了承した手前教えに来たけど、若干……いや、結構後悔してる。なぜレシピ通りにしようとしない。
「お菓子は焦げやすい材料が多いのでしっかり計量して作るようにしてください。」
計りや計量スプーンで記載された量を計って入れる。材料を混ぜてもらい、型に流し入れ、先に温めておいたオーブンに入れてじっくりと焼き上げる。
ついでに教えてほしいと言われた紅茶の淹れ方も、イギリスのスクールで教えられたポイントをしっかりと守った淹れ方をしてカップに注ぐ。
水の種類、これは軟水、日本なら水道水で十分。沸いたらカップ、ポットにお湯を入れて温める。
ポットのお湯を捨て、茶葉を入れ、お湯を注ぐ。カップ、ポットを温めて、お湯を捨てている間にやかんの温度が少し下がっている。そのお湯をポットに注ぐと、じっくりと蒸らし、用意したカップに淹れる。最後の1滴(ゴールデンドロップ)まで。焼き上げるまでの時間、ティータイムになった。
「そういえばサッカー部、景品めっちゃ豪華なんだって?」
ゴールにボードを貼って、PKスポットからボードを蹴り、落とした枚数を競うゲームを毎年しているのだが、今年は景品のレベルが去年と段違いだ。
俺のツテで手に入れたフル代表、五輪代表、埼玉と東京、神奈川、千葉を本拠地とするJリーグのチームのチケットを2枚一組を3セットずつ用意した。
そしてサッカー雑誌(俺のサイン入り)、俺がモデルとして載っているスターダストのカタログ(これもサイン入り)と俺のツテOnlyの景品の数々。
俺がいなくなったどうすんの?って感じ。
タイマーが鳴った。オーブンを開けて、型に入ったチーズケーキを取り出す。熱いので鍋掴みを使って。
テーブルに置くと綺麗に灼き上がったケーキに歓声が上がる。
やっぱりこういう風に喜んでくれたり、褒めてくれたりしてくれると作った甲斐がある。
粗熱をとると型から外し、8等分に切る。今回はハードタイプのベイクドチーズケーキした。濃厚でしっとりとした食感に頷く。うん、しっかりと出来たみたいだ。
「美味し〜〜!」
「濃厚〜〜〜!」
「これあたし作ったのっ!?マジ天才じゃん!」
「いや大半っていうかほぼ如月君が付きっきりで監視の元じゃん。」
「それな〜〜〜。」
盛り上がっている所に大変恐縮ですが………。
「型を洗ってからもう一回やりますよ。次は俺は見守るので皆さんで作ってみてください。」
上手く作れたという成功体験がヤル気になったようで、威勢のいい返事が返ってきた。
そして率先して千夏先輩と優香先輩が動いてくれる。ちゃんと教えたように分量を計って入れ、しっかりと混ぜる。2回目も綺麗に焼き上がった。
これなら次は俺がいなくても大丈夫だろう。
「次は明後日、レアチーズケーキを作ります。明日、材料の方の買い出しお願いしますね。」
「「「「「は〜〜〜い!」」」」」
上手くいったから機嫌がいい。気持ちのいい揃った返事をもらえた。
千夏先輩といつもの様に2人で家に帰るとリビングにはいつもと少し違う光景があった。
「お帰りなさい千夏、優君。」
千夏先輩のお母さんがいる。
「2人ともお帰り。さあ早くお風呂入ってきなさい。2人があがったら晩ご飯よ。」
母さんがキッチンから急かすように言う。千夏先輩が入った後、直ぐに俺も入る。
頭と身体を洗って、浴槽に身を沈める。腿や膝、ふくらはぎ、足首を動かしてチェックをする。どこか問題がないか。痛みや腫れ、鬱血や充血がないか。
今月末に代表か。沢先輩と横の面倒を見てあげないと。2人とも初代表で緊張しているだろうし。
風呂からあがると、ほとんど食事の準備が出来ていた。
ロールキャベツに秋鮭のホイル焼きがメインで、サラダと色々野菜のピクルスがあった。
食事が始まると千夏先輩のお母さんが感心というか、感動というか声を上げた。
「智、料理上手くなったわね。こんなのが作れるようになったなんて高校生の時の智に教えてあげたい。」
そんな声に母さんは苦笑する。
「カレーすら悪戦苦闘してたからね。でも料理上手くなったのは優のお陰よ。イギリスって料理は食べれればいいって感じだから私の腕が悪くても問題なかったんだけど、日本に帰ってくるとやっぱり美味しくないって事で優が勉強し始めたのよ。するとパパは優の料理には美味しいって言うのに私のには言わなくて、それが悔しくて勉強したのよ。」
「へぇ〜〜〜。」
千夏先輩のお母さんも感心している。
「やっぱり料理は愛情よ。ねぇ〜千夏ちゃん?」
「えっ、いや、その、そう…ですね。」
またすぐに千夏先輩をからかう。
「母さん。」
俺が止めるように言うと両手を上げてホールドする。
「分かった、分かった。ごめんって。」
全く。
「千夏が楽しく生活できてるようでよかったわ。」
千夏先輩のお母さんが千夏先輩を見ながら言うと、千夏先輩が屈託なく笑ってくれる。
「うん!優君の家に居候させてもらって良かった!」
そう言ってくれて嬉しいし、俺も千夏先輩が来てくれて生活にメリハリが効いて、俺にも好影響だ。
千夏先輩、優君の事が好きなのみんなにバレる回でした。
次の更新もアオのハコを予定しています。
途中で他の作品にいくかもですが………、高度な柔軟性をウンタラカンタラでいきます。
また次回までのんびりお待ちください。