アオのハコ 一筋の光明   作:雪の師走

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次は試合の描写になります。

上手く書けるか分からないですが頑張ります。

更新は銀英伝、SEEDの後になるので時間が空くと思います。



特別な日

学校が終わり、いつものファミレスのドリンクバーで紅茶をとってくる。外は1月でまだまだ寒いので、暖かい店内と温かい紅茶が冷えた体をジワリジワリと温めてくれる。

ゆっくりと飲んでいると、入退店のベルが鳴った。新しいお客さんか待ち人か見ると、年末に会って以来の友人が入って来た。私を探しているのかキョロキョロと店内を見渡している。

私が片手を上に上げると、気付いたのか近寄ってきた。

「お待たせ。遅くなってごめんね、花恋。」

律儀な子ね〜。まだ時間前なのに。

「全然待ってないわよ。それに時間前だから。それよりドリンク取ってきな。ドリンクバー注文しといてあげるから。」

私がそう言ってあげると“うん”と言ってドリンクバーに向かって行った。

私と同じ紅茶を持ってきた。千夏が席に着く。

「メールと電話ではしたけど、改めて新年明けましておめでとう。」

「おめでとう〜。」

年越ししてから鹿野家はバタバタしてたから、改めて挨拶をした。

「いや〜よかったね〜千夏!日本に残ることができて!」

「うん、お母さんの親友が偶然日本に帰ってきたばかりで、タイミング良くウチの海外転勤の話をしたら、預かろうかって言ってくれたんだって!」

私の安堵の言葉に、千夏も大層嬉しそうに言う。

「しかも森川智子さんの家なんて!バスケ日本代表の元キャプテンで銅メダリストの!お母さんの友達なのは知ってたし、年末か年越しの日本帰ってきてた時に挨拶をしに来てくれてたみたいだけど、部活に行ってて実際に会ったことなかったから、お母さんの話が本当か怪しんでたんだよね。」

「まあ、一回も会ったことないならね。」

そんな他愛ないことを話していると、3月末から居候させてもらう如月家の話になった。どうも土日に最初の泊まりをしたらしい。智さんのお手製ちゃんこが絶品だった話や優君と高所トレーニング施設“アルファスタジオ”に行ってハードトレーニングで足がパンパンになった話を楽しそうにしてくれた。

うんうん、楽しいのはいいよ、良いことよ。で、優君って誰よ!?まさかとは思うけど年頃の男がいるの!?

「ちー、もしかして年頃の男がいるの?」

恐る恐る聞くと、千夏は屈託なく頷いて肯定した。

「まじかー、ホントに大丈夫な訳?だって年頃の男がいるんだよ?ちーは可愛いし綺麗だから……その…いわゆる……エッチなこととか!に、その…………。」

私がハッキリと言うべきか悩みながらゴニョゴニョしていると千夏は考え込みながら、言葉を選びながらだが私の顔をしっかりと見ながら伝えてきた。

「そりゃあね。私だって年頃の男の子が居る家に年頃の女の子の私が居候って悩んだよ。でも会ってみると智さんがめっちゃしっかりしてて、厳しくしてるからか優君は真面目で自分の目標に向かって努力してるのが分かったし、互いの目標に向かって頑張る同士って感じ。」

「いや、だからって………。」

「それに智さん、優君が変な事したら手足がビュンビュン飛ぶから。」

いや今になって昭和マネジメントかよ。まあ家庭内で問題になってないならいいけど…………。

「で、同居する優君?ってどんな子なのよ?」

私が質問するとスマホを弄りだした。何?写真でも一緒に撮ったの?

「これこれ、この子。」

そう言ってスマホを私に差し出した。それを受け取り、画面を見る。

「えっ!優君ってサッカーの如月優な訳!?」

私の驚いた声と顔にちーも反応する。

「あれ、花恋知ってるの?優君の事?」

モデルの仕事柄、スポーツ選手と絡む仕事もあるかもしれないから一応知識として日本と海外のトップクラスに有名選手は知ってはいるが、この子は別件で知ることになった子だ。

「実は来月のバレンタインデーの日にサッカーの試合があるのよ。U-17と19のスペシャルマッチなんだけどね。」

「うん。」

「ちーも試合が始まる前の選手入場の時に選手が子供と手を繋いで入ってくるのは見たことあるでしょ?」

「ニュース何かで見たことあるね。」

「うん、ちょうどバレンタインだから高校生モデルと大学生モデルがすることになったのよ。エスコートキッズならぬエスコートガールね。」

「えっ!?そうなの!」

「互いに高校年代、大学年代だしバレンタインだし、ちょうどいい企画と思ったのか。そんな仕事が回ってきたから彼とも会えるわね。」

「えっ、じゃあ優君に伝えておくね。」

「伝えるって私の事?」

嬉しそうに言いながら頷く千夏が眩しい。

「親友がそんな大舞台に出るなんて嬉しいし、そこに優君が居るなんて。」

ますます嬉しそうに言う千夏。まぁ、アンタがそれで良いなら私もいいわよ。

そんなこんなで和気藹々と親友との新年最初のお茶会は1時間程で終わりを迎えた。まあ、互いに家に帰って夕飯が待ってるしね。

「じゃあちー、またね。」

「うんまたね、花恋。」

そう互いに言って別れた。少し進んで振り返るとちーが何時もと変わらずシャンシャンと歩いている。この光景をまだ見れる事に安堵と嬉しさが胸を満たした。今年もいい一年になりそう。

 

 

 

 

 

金、土、日曜日は如月家に行く。いや帰るので何時もと違う道を通って帰る。駅前から住宅街に向かって歩いていく。店を出る前に智さんに今から帰るメールを送ったら、“了解”と直ぐに返ってきた。

夜の住宅街だからか少し薄暗く、何時もと違う道だから心細く怖いと思った時、曲がり角から出てきた人とぶつかりそうになった。

「わっ、すみません。」

「Sorry、ごめんなさい。」

互いに反射的に謝りながら一歩後退して距離をとった。曲がってきた人の顔を見ると、見知った人だった。

「優君!どうしたの、こんな所で?」

ホントにこんな所で何してるのかな?

「母さんに外は真っ暗なので千夏先輩を迎えに行ってこいと。」

「え〜〜〜〜、そんなのよかったのに。」

智さんの気遣い、優君の行動に恐縮してしまう。

「No、こんなに暗いんですから迎えに行くのは当然です。母さんに言われなくても此方から迎えに行く所でした。メールも送ったんですが………。」

「えっ!ごめん、帰ってる途中だったからスマホ鞄に入れっぱなしだったから気付かなかった………。」

「いえ、無事ならいいんです。さあ、帰りましょう。母さんが生姜焼きと豚汁を作って待ってますよ。」

「生姜焼きに豚汁!!私大好きなんだ!」

喜び勇んで出てしまった私の歓喜の声に、優君は年下なのに私を年下のように微笑ましいものを見たような慈愛に満ちた顔で此方を見てくる。止めて、恥ずかしい…………。

「なら早く帰りましょうか、我が家に。」

そう言ってスルリと私の肩に掛けてあった部活のバックを取った。ちょっ、私の荷物!?

「いいよ、自分で持つから………。」

「気にしないでください。」

「気にするよ〜〜、私の荷物なのに。」

「なら手ぶらで帰ったら母さんに“何で千夏ちゃんの荷物持ってあげなかったのっ!”って怒られたくないからって事にしてください。」

そう言われると何も言えないじゃない。ならお礼だけは言わないと。

「分かった。なら、ありがとう優君。」

私のお礼に、いつもの春の陽だまりを思わせる暖かなふわりとした笑みを浮かべた。

「あっ!そういえば親友がモデルやっててね。バレンタインデーの試合でエスコートガールやるんだって!」

「わおっ!Really!!ならお願いがあります!」

珍しく優君が興奮しながらお願いをしてきた。

「えっ、何?花恋に?」

「花恋さん?て言うんですか?自分のエスコートガールに立候補してほしくて。互いに希望出したら入場の時の相手が決まるので。サッカー協会の担当に希望出してくれって言われてるんですが日本のモデルを高校生どころか大人の方も知らないから困っているんです…………。」

頭を掻きながら困り顔をして、表情を曇らせながらお願いしてきた。

「そんなことでいいなら後で聞いておくね。花恋がいいなら希望出してってお願いしておくね。」

「Thanks、助かります。FullNameを後で教えてください。担当に話を通しておくので。」

「いいよ。花恋の許可が出たら教えるね。」

“良かった〜”と胸に手を当てて、ふぅ~と息を吐いていた。

そんな会話をしていると家に着いた。スッと前に出て、扉を開けて“どうぞ”と言って入るのを促してくる。優君の優しさが所々で見える。育ちが良いのか、教育が良いのか、性格が良いのか、環境が良かったのか。

「ただいま帰りました。」

「ただいま〜〜〜。」

二人肩を並べて玄関に入ると、嬉々とした表情をした智さんがやってきた。

「お帰りなさい、千夏ちゃん!さ、荷物を部屋において着替えて降りてらっしゃい。晩御飯にしましょう。準備はほぼ終わってるわよ。」

そう言ってキッチンに戻って行った。優君にチラリと視線を送っただけで、颯爽と去っていく智さんにポカンとしてしまった。

「えっ……あ、はい。」

「どう思います、千夏先輩?迎えに行けって言った当人が働いた息子に何もなしって………?」

失笑か苦笑かをしながら呆れたような口調で言う優君に何も言えずにいた。

「あははは…………。」

乾いた笑いを漏らすしかなかった。

「荷物、部屋に置きましょうか。」

そう言って二階に一緒に上がり、部屋の前で渡された。

「降りてくる時に洗濯物を一階の洗濯機に入れておいたら夜の内に母さんが洗っておいてくれますよ。俺、先に降りてますね。」

ハイと持ってくれていた荷物を渡してくれた。受け取ると伝える事は伝えたと下へ降りていった。

部活着やタオル何かを入れるのに使いなさいと渡されている籠に入れ、一階の洗面所の洗濯機に入れた。部活着は縦型の洗濯機に入れてと言われているので、そうする。

何が凄いって洗濯機が2台あって、普段着と部活着を分けて洗う所だと思う。量も多くなるのと洗剤量や強さを分けるためらしく。智さんが強く望んだみたいで、上下にドラム式と縦型がデデンと鎮座している。

リビングに入ると、生姜焼きの良い香りがする。部活終わりの空腹を刺激する。

遅くなった事を詫びると、気にしなくていいと言ってくれる。スッと優君が温かいお茶を入れてくれる。至れり尽くせりで此方が恐縮する。ならと将史さんにビールを注ごうとすると、“ありがとう”と優君にそっくりなふんわりとした笑顔を浮かべている。

「いや〜〜優の嫁さんに注いでもらってるみたいだな〜〜〜。」

とんでもない発言が飛び出てきた。驚いて固まっていると、横から智さんの声が飛んできた。

「貴方、天然な発言しないの。千夏ちゃんが困って固まってるじゃない。」

そしてハイとご飯がこんもりとよそわれたお茶碗を差し出してきた。“ありがとうございます”とお礼言うと智さんも着席し、食べましょうかと声をかけてきたので、皆で手を合わせて“いただきます”と声を出してから食べ始める。

本日のメニューは、豚肉の生姜焼きに千切りキャベツ、海藻サラダ、鰯の丸焼き、ポテトサラダ、ひじき煮、具沢山の豚汁。

バスケにサッカーとカロリーを多大に消費する私達の栄養補給と疲労回復、筋力増強のメニューになっている。

生姜焼きの生姜と濃厚な醤油ダレが美味しい!ご飯が進む、進む。

豚汁も白菜やネギ、人参、玉ねぎ、里芋、牛蒡、こんにゃく、豚肉とボリュームがあって食べ応えがある。

疲れた体に美味しいご飯が染みるような感覚を覚えながら黙々と食べていく。

食事も一段落した時に、智さんが思い出したかのように優君と外で話したバレンタインデーにある優君の試合の話になった。

「そういえば千夏ちゃん、バレンタインの日なんだけど優の代表戦があるのは知ってる?」

「はい、さっき帰り道でその話になったんです。私の友達がエスコートガールをするって。」

「あら!そうなの?美人の友達って皆美人なのかしら?でもちーママの親友の私は美人じゃないし…………?」

「いやいや、智はカッコいいよ、うん!」

「そこは美人って言いなさいよ!」

智さんの反芻になんて返したらいいかと考えていると横の将史さんが智さんをカッコいいと褒める。ただ若干回答がズレてて智さんの肘打ちが飛ぶ。

そんな様子を私の隣に座る優君は呆れたような仕草と表情で溜め息を吐いていた。私は乾いた笑いを漏らすしか無かった。

「ああ、話が逸れたわね。その日、土曜日だから千夏ちゃん、ウチに来る予定なんだけど私達も試合に行ってて夜は居ないのよ。でなんだけど、千夏ちゃんも一緒に来る?」

その日は自分の家に帰ろうと考えていたのに、思わぬ提案をしてくれた。

「えっ!?いいんですか?」

「いいわよ。同居はまだだけど私達は千夏ちゃんを家族の一員と思ってるもの。優、チケットの手配よろしく。」

手元で熱いお茶の入った湯飲みを弄んでいた優君が“分かった”と言ってスマホで電話をかけた。

「ども、如月です。もう一つチケット手配してもらいたいんですが……………えっ、無理?はあ………?」

困った顔で智さんを見た。

「両方とも日本代表だから家族の観戦が多くて席がないって。」

「どっかないの!?聞いて!いや、貸しなさい。」

スマホを寄越せと手を差し出す智さんに、大人しく優君が渡す。

それから結構長々と話すと、満面の笑みで“ありがとうございます〜〜”とお礼を言い、電話を切るとスマホを優君に返した。

「千夏ちゃん、VIPルームを取ってあげたから友達誘って観に来なさいな。10人まででドリンクバーが付いてるから好きに飲んでね。フードメニューは全部優に代金を付けとくように頼んだから食べたい物をお腹一杯食べなさい。チケットは数日中に届くから渡すわね。入場は正面玄関に松本って人が待っていてくれるみたい。その日ずっと担当してくれるから用事があれば何でも頼みなさい。」

怒涛のマシンガントークに圧倒される。内容にも圧倒された。

「そんな…悪いですよ。チケットを用意してくれるだけでも有り難いのに、VIPルームに代金は優君持ちなんて………。」

余りに凄い待遇を用意してくれて恐縮しちゃう。

「アッハッハッハッハ。いいのいいの、気にしないで。それなら私達と一緒にボックス席に座る?優の彼女って設定で全国デビューしちゃう?」

「えっ…あ、いや……その…………。」

智さんの言葉に、何と答えたらいいか分からずモゴモゴしてしまう………。

「母さん、千夏先輩が困ってる。冗談も程々にしとかないと嫌われるぞ。」

「ごめんごめん、調子に乗ったみたいね。遠慮しないでいいわよ、優の招集、出場手当が貯まってたからここらで使わないと。」

優君を見ると、優しい笑みを浮かべながら頷いた。

「分かりました。では遠慮なくいただきます。優君の活躍、楽しみにしてるね。」

「これは………頑張らないといけませんね。」

肩を竦め戯ける仕草とは裏腹に顔は真剣な眼差しをする優君に年相応の幼さと数々の修羅場を潜ってきた勝負師としての一面の相反する姿を垣間見ることができた。

 

 

 

 

 

う〜〜〜〜〜んと唸りながら手元の紙を見ている。件のブツだ。数日後には届いたチケットを優君に渡された。花恋を誘ったらモデルは別の席で見ることになってるからと断られた。

渚とか部活の友達を誘うか。そう思って話しかけようとすると、先に話しかけられた。

「ちー、何見てんだ?まさかラブレターか?」

声の方に振り向くと針生君が声をかけたようだ。

「ち、違うよ。優君のお母さんから来月のサッカーの試合のチケット貰ったからどうしようかと…………。」

「行きゃ〜いいじゃん?」

「団体のチケットだから誰誘おうか悩んでて…………。」

「何人行けるの?」

「10人まで。」

「えっ!?てことは団体席か?」

言い難い事を聞かれて言葉を濁してしまった。

「えっ、あ〜〜智さんが空いてたVIPルームを取ってくれたんだ………。」

「えっマジで?!俺も行きたいんだけど空いてない?」

「一応、仲のいい部活の子誘うつもりだから空いてたら声かけるね。」

「マジで!よし!そういえば花恋は誘わないのか?」

親友なのを知ってる針生君が、これまた言い辛い事を聞いてきた。

「え〜〜〜と、花恋はその試合でエスコートガールをする予定でモデルの人と用意された席で見ることになってるって。ほら、バレンタインだから高校生モデルと大学生モデルがエスコートガールを務める事になってるんだって。」

後半は何故か早口になってしまった。だって言い辛いんだもん。

「そうか……、分かった。決まったら伝えてくれ。待ってるから。」

「えっ、あ、うん。」

意外にあっさりとした返事に、こっちが変な緊張をしてしまった。

何処で聞きつけたのか沢城君にもせがまれたので、人数に余裕があればと答えておいた。

時間を見つけて声をかけていくと、渚、優香、まり、さな、あかり、ちかが行きたいらしい。これで私を入れて7人。

針生君と沢城君を入れて9人。あと一人どうしよう。

クラスの友達を誘うとなると誰を誘っても角が立つ。そんな事を悩んでいると、見かねた針生君が西田君を誘っていいかと聞いてきた。男子2人だと流石に寂しいからもう1人頼むって言ってきたけど、悩んでた私に気を遣ってのことなのは察っせた。

了承し、これで10人揃った。自分がする訳じゃないのに試合が待ち遠しい気持ちになる。楽しみだ。

 

 

 

 

バレンタインの日、2月14日。優君の試合の日だ。何時もと変わらず6時にアラームで目が覚める。二階で顔を洗い、身嗜みを整えてから下に降りるとトマトのいい匂いがする。リビングに繋がる扉を開けると、キッチンに優君が立っていた。

「あ、おはようございます、千夏先輩。」

いつものふんわりとした優しい笑みを浮かべながら優君が挨拶をしてくれた。

「おはよ〜、優君。キッチンで何をしてるの?」

キッチンを覗くと、深めのフライパンに多分ミートソースだろう液体を掻き混ぜていた。

「俺の勝負飯ってやつです。特製ミートソースパスタです。」

隣で料理している智さんが詳しく教えてくれた。

「大事な試合でいつも食べるのよ。まあ、お決まりのメニューってやつね。で千夏ちゃんはどうする?一応、いつもの和洋食両方あるわよ?」

「私も優君に頑張って欲しいから縁起を担いで、優君特製ミートソースパスタにします!」

嬉しそうに私の返事を聞いて、直ぐにパスタ茹でますと言って準備し始めてくれた。

10分とかからずにお皿を2つ持ってきて一つを私の前に置いてくれた。美味しそ〜〜〜〜。

“では、食べましょうか。”と言ってきたので、“うん”と返し、手を合わせ、“いただきます”と挨拶をしてから食べ始めた。

ん〜〜〜、トマトの酸味とお肉の旨味、よく炒めた玉ねぎの甘味が口一杯に広がって幸せな気持ちになる。

食べ終わって後片付けをする。終わると優君はスーツに着替え始めた。今日一日の予定を聞いてみた。こういう時の予定って聞いてみたかったんだよね。

「9時にホテルに集合なんです。昼をホテルでとって、午後から近くのグラウンドで練習して、夕方にスタジアムに行って夜に試合の予定です。」

着替えを終え、荷物を玄関に持っていく優君に付いていった。見送りだけでもしたかったから。

「頑張ってね。応援してる。」

「ありがとうございます。」

ハイタッチをしようと手を掲げると、スッと手の平を重ねてきた。目を瞑って瞑想しているみたい。10秒程で目を開け、パンッと勢いよく手を叩いてきた。

「パワー貰いました。頑張れそうです。行ってきます。」

勝負師のような、戦う男の顔になっていた。これがイギリスで欧州でジュニア世代の一線で活躍してきたサッカー選手“如月優”の姿なんだと思った。

部活でも真剣にやっている姿は見てきたけど、試合となるとこんなに変わるんだ。不覚にも息を呑むほどカッコいいと思った。

 

 

 

 

練習が夕方に終わり、皆で駅前に6時に集合と確認しあって学校から帰宅し、準備を整えて駅に向かう。試合会場は住んでいる所から電車で移動しないといけないので結構バタバタした。

電車を降り、改札から出ると優香とまり、さなが待っていた。

「遅くなってゴメン。」

待ち合わせ時間5分前に到着した事を詫びる。

「まだ時間前だから大丈夫。それを言うならまだ着てないのもいるから。」

そんな事を言っていると後ろから“うぃ〜〜〜す”と言う声が聞こえてきた。沢城君、来てたんだ。

ハンカチで手を拭いているからお手洗いにでも行ってたのだろう。そんな事を考えていると“ゴメンゴメン、遅くなった。”と言いながら渚とちか、あかりが来た。その少し後ろにじゃれつく西田君をあしらう針生君もいる。

「コイツ、待ち合わせの時間に遅れてきやがって電車に飛び乗る羽目になったよ。到着が待ち合わせの時間一分前だから遅れちまったし。」

「ゴメンって〜〜〜。皆もごめん!」

愚痴る針生君と謝る西田君のいつものコンビだ。

「それにしてもポスターが至る所に貼ってるね。」

渚の声に皆があちらこちらを見回す。見慣れた日本代表の青のユニフォームと白のユニフォームを着た選手が左右に3人ずつ写っている。優君も白いユニフォームを着て一番前に写っている。

「じゃあ皆揃ったし、行こっか。」

音頭をとってスタジアムに向かっていく。特別な試合までもう少しだ。




優の母親

如月智子 (旧姓 森川)にしました。
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