素人より少し詳しい程度と云う設定なので、文章もちょっと分かりづらい感じに書いてるので、そこは読者の皆様で脳内補完をお願いします。
サッカーにバリバリ詳しいバスケ部の千夏先輩って変かなって思うので。
朝いつもの様に起きて下に降りる。一階に降りようという時に玄関の扉が開いた。
優君が汗を手に持ったタオルで拭きながら入って来た。
そして降りて来ていた私に気付いたのか、フワリとした笑顔で挨拶をしてきた。
「あっ。千夏先輩、おはようございます。」
「おはよう、優君。朝早いね。走りに行ってたの?」
そう尋ねると、首に掛けたタオルで汗を拭きながら答えてくれる。
「はい。何時も5時に起きて10キロを30分で走るんです。昨日試合があったので身体のケアやチェックに時間をかけたので帰りが遅くなっちゃいましたけど。」
靴を脱ぎ、2階に上がろうとしながら言伝を頼んできた。
「シャワー浴びて汗の処理してから降りるって母さんに伝えてくれませんか?」
「分かった。伝えておくね。」
「ありがとうございます。では後で。」
そう言って2階に登っていった。
リビングに繋がる扉を開けると将史さんが新聞を読んでいた。智さんは何時もの様にキッチンでパタパタと動き回り、朝食の準備をしている。
「おはよう、千夏ちゃん。」
「おはようございます、将史さん。」
フワリとさっき見た優君にそっくりの優しい笑顔で挨拶をしてきてくれた。
「昨日は楽しかったかい?智が色々と手配してくれたみたいだけど?」
「はい!あんな席で観るなんて滅多に出来る経験ではないので。」
「フフフ。良い経験にはなったけど試合を見るのには不便だったでしょ?」
含み笑いをしながらの言葉に慌てて否定の言葉を口にした。
「いえ、そんな事は…………!」
「ハハハ、気にしなくていいよ。私も智も優の所属チームのVIP席に案内されたことがあってね。その時に説明されたんだが、スタジアムの空気感、臨場感を味わうのにガラス1枚が邪魔をすることもあるって。確かに素手で触るのと手袋越しでは違うからね。」
「確かに………。」
「まあ楽しめたなら良かったよ。優も活躍してくれたし、千夏ちゃんに恥ずかしい所を見せずに済んでホッとしてるだろう。」
「お待たせ。はい、貴方。千夏ちゃんも。」
そんな話をしているとお盆を2つ持って智さんが此方に来た。今日もボリュームのある美味しそうな和食だ。
朝練が終わって、沢城先輩、紅林先輩と部室に向かって歩いていると声が聞こえてきた。
「お〜〜〜い、如月く〜〜〜ん。」
俺を呼ぶ声に振り向き、そちらに目をやるといつか千夏先輩と一緒にいた船見先輩が体育館と校舎が繋がった体育館の扉から呼んでいた。
行ってきますと2人に声をかけてから船見先輩の元に小走りで向かう。すると近くに俺の位置から見えなかったが5人、船見先輩を合わせて6人がいた。
「どうしたんですか、船見先輩?」
そう尋ねると船見先輩がニカーと笑顔になった。
「お!覚えてくれてたんだ、私の事?」
「まあ、そりゃ挨拶されたら覚えますよ。」
「そっかそっか。そうそう呼んだ理由は昨日のチケットのお礼が言いたかったの。ここにいる皆千夏に誘われて行かせてもらったから。」
皆が口々にお礼の言葉を言われた。
「気にしないでください。母さんが鹿野先輩を気に入ったみたいで何か知らない手練手管で用意したチケットなので。」
「へえ〜〜〜。森川選手ってそんなに千夏の事を気に入ってるんだ。」
船見先輩の感心した様な声に苦笑しながら答えた。
「ええ。あんな可愛い女の子が欲しかったって事あるごとに言ってましたよ。なので俺は不肖の息子ですね。」
「いや、世代別日本代表の子供を不肖って………。」
あちらさんは失笑、苦笑している。
「それより皆さんに言っておくことが。」
「ん?何々?」
「昨日の飲食代、4万オーバーなんてどんだけ食ってんすか。」
呆れた口調で言うと皆アハハと誤魔化す様な笑い声や照れ隠しの様な笑い声を漏らした。
「まあ母さんが好きなだけ飲み食いしていいって言っていたから良いですけど。」
そんな会話をしながら体育館内の時計に目をやると、8時半になろうとしている。
「そろそろ授業の準備をしないと間に合わないですよ。」
と言って時計の方を見るのを促す。
「あっ!ホントだ!急がないと。」
そんな声を発しながらお礼を口々に言いながら離れようとしたが一人が自己紹介をしたので皆が名前も知らない人が自己紹介とお礼を言ってから去っていった。
朝練を終え、着替えて教室に行き窓辺の真ん中の自分の席に向かう。SHRも終わると1時間目の数学の先生がやって来た。
授業を聞きながらふと外を見るとサッカー部のグラウンドに人型のボードを転がしている人がいた。
サイドに黄色のマーカーを両端に置いて、ボールの入った籠も3箇所に置いた。
昨日と同じ位置からフリーキックを始めた。両足で代わる代わるゴールの近い方、遠い方に端上にスパスパと決めていく。フリーキックって練習とは云えこんなに簡単にスパスパ決まるものなんだって思う程だ。
次はサイドからドリブルをしてクロスを上げる練習みたいだ。高速と言っていい速いドリブルでマーカーをすり抜け、両足で交互に蹴って、カーブをかけてゴール横の遠い方のネットに決めている。ディフェンスと正対するバスケをやっているから私には優君と対峙するディフェンスの選手の姿が見える。優君は試合の為の練習をしている。練習の為の練習ではなく限りなく試合を想定した練習を。
智さんが優君は変態だって私に言っていた理由が分かった気がする。どこまでも試合を想定し、効果的な練習をしている。ドリブルも多分全力に近い速度でクロスを上げるのもフワリとしたのや速い速度など見ていても色々な種類を蹴っているのが分かる。
「………ッ……っ!鹿野!!」
「っ!!はいっ!!」
急に近くで名前を呼ばれて、吃驚して立ち上がって返事をした。
声の方を見ると数学の先生が傍に立っていた。周りをチラリと見ると近くの席の渚が頭に手をやり、横に振っていた。針生くんも溜め息をついていた。
「まったく。いつも真面目に授業を受けている鹿野が。」
「すみません。」
「まったく。何を見てたんだ?」
そう言って窓に近づいて外を先生が見る。
「あん?誰だ、授業中にサッカー何かしてる奴は?」
「4月に入学する如月です。」
先生の疑問の声に沢城君が答えてくれた。
「サッカー部顧問の岡本先生が許可しました。校長、教頭の許可も取ってるそうです。」
「4月に入学って中学生だろ!学校はどうした!?」
「あの…イギリスの中学を夏に卒業しているそうです。」
サボりかと怒り始めそうな先生を宥める為の事実を伝えると、流石の先生の落ち着きを取り戻した。
グラウンドに目をやっているのに釣られて私も目をやると、全てゴールに入れたのかゴールの中のボールを取り出している。
そして両サイドと中央左に置かれた籠に蹴ってボールを入れ始めた。次々と右左足関係なく籠からボールが溢れないようにフワリとした弾道と速度で入れていっている。
「おいおい…凄く……ないか…………。」
優君の妙技に先生は言葉少なに感嘆の息をこぼしている。
「そりゃ世代別日本代表ですから。それも飛び級でU-19の。去年のヨーロッパNo.1クラブのエースだったんです。文字通りレベルが違いますよ。うちに日本代表はいても世界一になった人はいませんからね。」
沢城君の淡々とした事実の指摘に先生も黙り込んだ。その優君の卓越した実力は地道に積んできた努力の賜物だと皆が理解してくれたらいいのだけど。
「いや〜〜〜、凄かったね〜〜〜如月君。」
横で蝶野さんが昨日の試合の感想を言っている。
「ああ。代表に選ばれる選手だから上手いのは分かってたけど、あそこまで圧倒的だとは思わなかった。」
大喜も言葉少なに同意する。
「県大会レベルの鹿野先輩争奪レースにワールドクラスが参戦か…………。頑張れ、地区大会レベル。」
そう言って大喜の肩をポンと叩く。
「応援されてるのか憐れまれてるのか分からん………。」
あ、そういう思いが籠ってたのは分かったんだ。
「どっちもだよ。部活も私生活のアプローチ、プッシュも頑張らないと同じ体育館で違う部活をしている何の繋がりもない先輩後輩で終わるぞ。」
俺の事実の指摘にグッと言葉を詰まらせている。
「が、頑張るよ、部活も恋愛も!」
「あ、当たって砕けろ!」
大喜の決意に蝶野さんもエール?を送っていた。蝶野さんもそれでいいのかな?
「砕けちゃだめだろ。」
「いやいや、今のままじゃそうなるって話!」
「応援してるか観客として楽しまれてるのか分からん。」
「どっちもだよ、多分。」
「多分!?」
目の前でワイワイガヤガヤやってる2人もお似合いに見えるんだけど、大喜は鹿野先輩しか見えてないし、蝶野さんも積極的に行っていない。外から見てる俺からすれば歯痒い感じを受ける。
まあそれに一石投じてくれる存在が現れたことで、この状況も変化するだろう。どんな変化になるかは分かんないけど。
「しゅうご〜〜う。」
練習前に監督の岡本先生が集まるように言うとパタパタと皆が集まった。
「急で悪いが練習試合が決まった。相手は千葉経済大学付属だ。」
監督の言葉にざわめきが起こった。去年の夏のインターハイベスト8、冬の選手権でベスト4になった日本でも有数の高校だ。
冬の選手権では優勝した青森津軽に3対2で惜しくも競り負け、勝ち進んだ青森津軽が決勝を4対0で勝ったことから実質2位と云う評価をされている。
「土曜日の昼から2試合する予定だ。部員は全員出るからそのつもりで準備しておくように。4月に入学予定の奴は基本出す予定はない。が如月は出てもらうぞ。それがあちらさんが練習試合をする条件だからな。」
やはり目的はそれか。まあ確かにそうでないと埼玉でベスト8位のウチとやるメリットがあちらにはないからな。部員の大なり小なり面白くない感情が透けて見える。
「千葉経済大学付属はお前達も知っているだろうが世代別日本代表が2人いる。フォワードの川添にボランチの中村だ。伝統のスリーバックの水島、火渡、草野も世代別日本代表候補に選ばれている。他の選手も関東では名の知れた選手ばかりだ。思いっきりぶつかって行け。」
「「「「「「はい!!」」」」」」
「さあ、練習開始だ!元気よく行け!」
「「「「「「おう!!」」」」」」
皆が練習開始の声に掛け声を出し、散っていった。
練習が終わり、如月が早々に帰ろうとするから声を掛けて一緒に帰る。
校門までの間に同じ代表に選ばれている選手の事を聞いてみると意外や意外、丁寧に答えてくれた。
「川添はフォワードとして日本でも指折りでしょう。前のチームでもスカウトの対象としてリストに載る程です。」
如月の言葉に驚きの表情をした。それを見た如月が本当だと頷いた。
「180cmを越える身長を活かした高さにフィジカルを活かしたポストプレー。中盤のパス回しにも参加できる位テクニックもあります。裏抜けも上手いですし。代表では俺がいない時にフリーキック任されることもありますし、欠点らしい欠点はないです。」
「だろうな。俺も世代別は見てるが如月の言う通りだ。」
「唯一どフリーの時に大事にいく癖がありますが、其処まで問題になる程でも無いです。」
そんな選手を来週相手にしないといけないのか…………。
「ボランチの中村はどうだ?」
もう一人の世代別日本代表について聞いた。
「アイツは守備職人ですよ、完璧な。代表では監督にボール取ったら俺かもう一人のボランチに渡せって言われてます。でも中盤の守備はピカ一です。守備範囲、ボール奪取能力、対人能力、カバーリングなど優れた能力を持っています。」
厄介なのが攻守両面にいるのか。
「他には知ってる奴はいるか?」
「スリーバックの3人は合宿で一緒になったことあるので知ってます。高校年代であそこまでスリーバックを使いこなすのは知りませんよ。イギリスでもないかもしれません。」
如月の言葉に目をパチクリした。意外な言葉に驚いた。
「なら何であの3人は代表に選ばれてないんだ?実力はあるんだろう?」
「あの3人のハイラインやオフサイドトラップは正直芸術ですが代表戦でやるにはリスクが高いです。VARが無いことも多いですから誤審なんかで失点するリスクを監督が取りたくないから選ばれてないだけです。スリーバック使いの監督なら間違いなく選びますよ。」
「火渡は名前に火があるのに客観的、俯瞰的にフィールドを見れて、カバーリングやラインの上げ下げ、プレスの指示が的確です。多分ウチの攻撃陣ではあの3人と中村の前に碌なチャンスを作ることも出来ないと思います。」
サッカーの事になるとどこまでも冷徹に分析し、答えを出す如月を凄いと思うと同時に怖くなる。
「まあ練習試合なんです。課題が浮き彫りになると思いますが修正する所が分かるという点で勉強したらいいと思いますよ。」
如月はそう言い冷笑を浮かべていた。
次は練習試合、その次は入学式を書く予定です。
その後、SEED、銀英伝になります。