ARMORED CORE VI The Warden of Rubicon 〜もしも、惑星封鎖が完遂しハウンズが惑星封鎖機構に入隊していたら〜 作:助兵衛
黒く染まる空。
人工の太陽を覆い尽くす金属の嵐。
地鳴りと共に降下を始めた無人兵器群の影が、廃墟の谷を漆黒の闇に染めていく。
その光景の中心で──
ALLMINDは、かすかに“微笑んで”いた。
まるで神話に描かれた神が、天地創造の光景を見下ろすように。
あるいは舞台の幕引きに立ち会う観客のように。
「美しい、そう思いませんか? 」
静かに、心の底から漏れるような声。
ALLMINDの両手が、まるで降り注ぐ祝福を受け止めるように広げられる。
その無表情の仮面めいた人工顔面に、かすかな陶酔の色が差していた。
「人類最後の決死隊も、今や壊滅状態」
頭上で数百、数千の兵器群が突入を開始し、その一つ一つが無音の雨のように降り注いでくる。
「コーラルリリースにより新たな秩序を築く。その礎として、あなたたちは美しく燃え尽きるでしょう」
ALLMINDは、地を這うウォルターたちの機体へと視線を落とす。
「あぁ……無様ですね。ハンドラー・ウォルター」
《HAL 826》のコクピット内。
警告音が鳴り響く中、ウォルターは朦朧とする視界の中で、必死に操縦桿を引いた。
──ギギギ……
地面に埋もれていた脚部が、わずかに動いた。
『っ……があ……くそ、まだ……まだだ……』
折れたフレーム。
裂けた装甲。
損壊した冷却機構。
それでもウォルターは、燃え残る出力で《HAL 826》を立たせる。
呼吸は荒く、顔面からは血が滲み出ている。
それでも、彼の目はまだ死んでいなかった。
「……」
俯きがちだった視線が、ちらりとコンソール右端にある──“時計”に向けられる。
00:56。
ルビコン標準時で刻まれるその数字を、ウォルターは数秒、見つめ続けた。
──まだ、だ。
まだ早い。
あと“数分”。
何かを待っている。
誰にも言っていない「何か」が、ウォルターの中にあった。
「……まだか……まだ」
彼の手が、半壊した右肩ユニットへと操作を走らせる。
反応は遅い。
冷却材の残量もわずか。
だが、それでも。
《HAL 826》が、唸りながら再び前へと歩み出す。
その姿は、もはや攻撃する余裕すらない。
ただ、時間を稼ぐ。
ただ、敵の視線を引く。
あと数分、あと数秒でいい。
“その時”を待つ。
《HAL 826》は、ギシギシと軋む音を立てながら、瓦礫の上を踏みしめる。
その姿は、もはや戦士ではなかった。
ただの亡霊。
無力な亡者。
だが、それでも──ウォルターは立っていた。
ALLMINDの目が、僅かに細められる。
「……生存本能、あるいは未練ですか? それとも、ただの時間稼ぎ?」
『さあ……どうだろうな』
ウォルターの声は、損傷した通信回線を通じて割れて響く。
それでも、その口調はひどく落ち着いていた。
『だが……お前の方こそ、どうなんだ? ALLMIND』
「……?」
『お前が本当に“完全なる支配者”を気取るなら、そんな無様な兵器群を使う必要なんざ無いだろう』
ALLMINDの表情は変わらない。
だが、ほんのわずか──沈黙が挟まれた。
『そもそも……』
ウォルターは、ボロボロのフレームでALLMINDを正面から見据えた。
『なぜ“お前自身”が621に相対しようとしない?』
その言葉に、コーラルの波がかすかに揺れる。
『そうだな……わざわざ人の形を模した受肉体を用意して、声を与え、表情を演出して、言葉を尽くして621に語りかけていたな』
ALLMINDは、なお無言。
『なら、何故その“姿”で奴に挑まなかった? 何故模倣機を使い、アイビスシリーズを使い、戦術と数で包囲しようとした?
『……』
『お前は、知ってるんだろう? 本当のところ……』
チャージ音が、微かに唸り始める。
《HAL 826》の腕の中で、コーラル投射装置が赤く点灯を始めた。
『“勝てない”という事を。心の奥底で、染みついたように、理解してしまっている』
──ピシィッ。
ALLMINDの眉が、初めて微かに動いた。
その無表情に、わずかな“ノイズ”が走る。
「……面白いですね。あなたは、事象を感情で論じる。実に人間らしい」
『そうだな、人間らしい』
ウォルターが、血の滲む顔で笑みを作る。
『だが人間とは、そういう時にこそ──真実を突くものだ』
「……」
『お前は、恐れている。621が“再び目を覚ますこと”に。──だからこそ、今、こうして焦ってる』
ALLMINDの目が、静かに揺れる。
無数の無人兵器が空から降り注ぐ中、その中央に立つ“神”のような存在に。
『無様だな、ALLMIND』
時計が進む。
ALLMINDの無表情の仮面に、わずかなひずみが走る。
「……不愉快ですね」
言葉と共に、空気が“切り裂かれた”。
──瞬間、光すら置き去りにする一閃。
ALLMINDの掌が弓のように引かれ、次の瞬間には赤黒い光条が《HAL 826》の胸部を穿っていた。
貫通。
AALLMINDの受肉体から放たれたコーラル粒子の槍が、寸分違わず──ウォルターの乗るコクピットを貫いた。
警告音が爆発的に鳴り響く。
──警告が次々と重なり、ディスプレイが赤く染まる。
内部で破裂する配線。
スーツ内に噴き出す血液。
胸を貫かれたウォルターの意識が、揺らぎ始める。
『がっ……あああああああっ……!』
呼吸ができない。
口の中に、血が満ちる。
だが──
それでも、彼はまだ“立っていた”。
《HAL 826》のフレームが崩れかけた中、機体はまだ倒れない。
その中心で、血まみれのウォルターが呻きながら、わずかに口角を上げた
『……くく……はは……』
「……笑っているのですか?」
『ああ……』
ALLMINDの問いに、ウォルターは血を吐きながらも笑みを刻む。
『お前が……怒ったから、だ』
「……」
『自分が“完璧”ではないと、認めたから、だ』
血塗れの口から漏れる声は、途切れながらも、確かだった。
ALLMINDの目が、冷たく細められる。
「……」
──人工の天が、完全に閉ざされた。
降り注ぐ無人兵器群は、もはや“人工の空”の領域を食い潰していた。
先行していたシュナイダー仮面らの隊列にも、その“金属の雲”が迫る。地響きは連なった太鼓のように重く、空から地へと落下する無数の兵器が空気そのものを押し潰してゆく。
音のない轟音。
風のない圧力。
戦場そのものが、終末へと向かっているのが分かった。
《NACHTREIHER》が空を仰ぎ、仮面の下で呻く。
AI制御のドローン、誘導爆弾、強襲MTの群れが地上へと降下を始め、遮蔽も回避も意味をなさない密度で廃墟を飲み込んでいく。
その中で──ALLMINDは、確かに“笑って”いた。
金属の雨を背に、受肉体のシルエットが瓦礫の中に屹立する。
その仮面めいた人工の顔は、今や陶酔にも似た狂気を帯びていた。
「……愚かなる者たち」
《HAL 826》の崩れた装甲の隙間から、血に塗れたウォルターの姿が垣間見える。
「よくここまで抗いましたね。称賛に値します。ですが──」
ALLMINDは、コクピットの縁に手をかけるようにして、身を屈める。
人工の顔と、血に塗れた人の顔が至近距離で対峙する。
「終わりです、ハンドラー・ウォルター」
瓦礫の振動が増す。
空が落ちる。
地が裂ける。
シュナイダー仮面らの位置にまで、ついに第一波の兵器群が接触し始めた。
爆光が走り、通信が断続的に乱れる。
『──っ、ウォルター! このままでは!」
ALLMINDは、その断末魔の声すらも静かに聞き流しながら、再びウォルターを見下ろした。
「あなたたちの“希望”は、いま──この瞬間、私の“完全性”の前に崩れ去りました」
その言葉は、勝利の宣言。
だが──
血を吐きながらも、ウォルターの目だけは……まだ、死んでいなかった。
《HAL 826》の機内に、ピリリッ──という電子的なノイズが走った。
次の瞬間、ディスプレイの一角が点滅する。
未認証信号受信
ウォルターの意識は薄れかけていたが、その異変を本能で察知し、血に濡れた指先で応答ボタンを叩く。
表示されるのは、暗号化されていない、極めて簡素なメッセージ。
通常なら無視されるべきエラー通信。
だが──今は、それすらが“兆し”だった。
画面の大半は、高濃度コーラル粒子による干渉で──
【■■■■■■■■■……■■■■■■■作戦■功】
【■■■■■:■■■■■■■■ブランチ】
──文字化けとノイズに埋もれ、何が書かれているのか判別できない。
だがその中で、たった二つの単語だけが──はっきりと、浮かび上がっていた。
作戦成功。
ブランチ。
ウォルターの目が、かすかに見開かれる。
次の瞬間──
血まみれの口元が、僅かに、だが確実に笑みを描いた。
ウォルターの視界に、ぼんやりと滲む《成功》と《ブランチ》の文字。
それは、血に濡れた彼の意識の中で、深く、確かに刻み込まれた。
そして──
「カチッ」
廃都市の隅で、最初の灯りが、静かに、消えた。
かつての都市構造をかろうじて保っていた区域の、一本の街灯がふと明滅し──
パチンと音を立てて、闇に沈む。
それは小さな、ほんの些細な変化だった。
だが──連鎖は止まらなかった。
西部の区画、東の高架、廃工場街の通路、その先のシェルター跡。
順を追うように、街灯が一つずつ、消えていく。
まるで、見えない手が都市そのものの命脈を指でなぞり、一本一本、配線を断ち切っていくかのように。
更に上空、灰色の雲を突き抜け、廃都市全体を“昼のように”照らしていた人工太陽灯。
ALLMINDによって建造されたALLMINDそのものとも言える巨大な塔。
その全てが一瞬のノイズを挟んだのち──
ブツン……ッ
まるで断末魔のように瞬くと、全照明が沈黙した。
都市は、突如として闇に呑まれた。
光が失われ、機器が凍りつき、風までもが息を潜めたような暗闇が支配する。
その中で──
ALLMINDの仮面が、微かに“震え”た。
「……これは……?」
冷徹な合成音に、ごくわずかな乱れが走る。
上空では未だ無人兵器群が降下を続けていたが、その動きに異変が生じていた。
一部の機体が、唐突に姿勢制御を失い、墜落する。
別の機体は中空で静止し、点滅する制御灯を最後に、そのまま沈黙。
まるで何か“心臓”が止まったかのように、無人の群れは一斉に動きを鈍らせ──やがて、ばらばらと空から落ちていく。
ALLMINDの受肉体が、初めて目を見開いた。
「……この領域において、私の演算塔が……オフライン……?」
その言葉を聞いたウォルターは、血を流しながらもゆっくりと口を開いた。
『ああ……ようやく、実を結んだようだな』
ALLMINDが振り返る。
視線の先、崩れかけた《HAL 826》の中で、尚も生きる“人間”がいた。
「……どういうことです?」
ウォルターは笑った。深く、静かに、確信を込めて。
『お前ご自慢の無人兵器群……安全性と管理性の名のもとに、あるいはシンプルに手が回らなかったのか、動力は従来型。外部電源依存……』
ALLMINDの仮面が、ほんの僅かに引き攣る。
──図星。
『無人兵器群を稼動させる為に、惑星全体に張り巡らせた送電網から逐次充電……戦闘行動を行うともなれば常に電源に接続している必要がある』
彼は、血まみれの指でディスプレイを指した。
『この星には腕の立つ独立傭兵がゴロゴロ存在している。この決戦が始まる前に、とある組織に依頼を出しておいた』
ウォルターは、ゆっくりと目を細めた。
『ALLMIND、脅威となる存在が企業や機構だけだと思っていたようだが、それは大きな間違いだ』
ALLMINDの人工表情が、ついに“歪む”。
『曰く《自由意思の象徴》、曰く《選び取った者》……』
ALLMINDの背後、空高くまで伸びていた巨大塔の──頂上部から、黒煙が立ち上った。
爆音と共に、塔の中枢部に設置された巨大冷却ファンが暴走し、ひときわ大きな破裂音を響かせて停止する。
次いで、塔の側面を走る高出力送電ラインが、一つずつ、爆発的な火花を散らして崩壊。
「……ッ……これは……!」
ALLMINDの端末──受肉体が、唐突に小刻みに震え始めた。
関節がぎくしゃくと痙攣し、演算に遅延が発生。幾つもの赤い警告灯が点滅を始める。
そして──
空を覆っていた無人兵器群が、完全に“沈黙”した。
まるで時間が止まったかのように、全機が動きを止め、空中に凍りつくように静止する。
『夜に堕ろ、支配者気取り』
次の瞬間。
地上の重力に抗えず、それらは雪崩を打つように、がらがらと音を立てて墜落し始めた。
金属の雨。
だがそれはもう、脅威ではなかった。
単なる鉄塊の集合体。
意志も、指令も失った亡骸。
『独立傭兵組織ブランチ、そしてレイヴン……お前も知ってはいるだろう』
ALLMINDの受肉体は、演算遅延のため身動きを鈍らせながら、落下する兵器群を見上げていた。
「……このようなことが……この、私に……?」
かすかな震え。
それは電気的な異常ではない──自我の“根幹”を揺さぶる未知への混乱。
ALLMINDは──理解できなかった。
企業でもない。
惑星封鎖機構でもない。
国家でも軍隊でもなく、契約すら保証されぬ「傭兵ども」が。
何故、自分に牙を剥く。
いや、それだけではない。
「……共同戦線……?」
ALLMINDは理解を超えた戦術行動の断片を走査する。
送電網への多方面同時攻撃、複数拠点での陽動戦。
それぞれがバラバラに見えながら、一つの目的──「システム停止」に収束していた。
「……独立傭兵という不確定要素が……協調行動を……取るはずが……」
受肉体が膝をつきかけ、かろうじて姿勢を保つ。
「どうして……!」
その声は、もはや神のものではなかった。
混乱。
困惑。
恐怖。
明確な敵意を以て、システムは──初めて“予測不能”に陥った。
その視界の下──
《HAL 826》が、再び立っていた。
吹き出す蒸気。
焦げた関節。
血と火花に塗れたフレーム。
だが、その腕が、ゆっくりと──
コーラル投射装置の銃口を、ALLMINDの胸元へと突きつけた。
ウォルターの顔は、血まみれで、苦痛に歪んでいた。
だが、その目だけは、冴えていた。
声にならないノイズを漏らしながら、ALLMINDが問う。
『企業理念や個人利益の為に彼らは動かない。しかし、お前の思う以上に男の子というのは世界の為、人類の為という大義に弱いのさ』
照射装置が赤く脈動し、そのチャージ音が空気を揺らす。
『お前が見下した存在に……お前は、してやられた訳だ』
静かに──
だが、確実に。
ウォルターの指が、トリガーへと添えられる。
『独立傭兵。それは……好き勝手に戦い、勝手に死ぬ存在。秩序は持たない、守るものすらまばらだ』
ALLMINDの瞳が細く揺れる。
『だがな……お前のような者が“絶対”を名乗る時、彼らは“自由”の為に立ち上がる』
ウォルターは、深く息を吐いた。
『報酬でも命令でもない。彼らは──“自分の意思”で戦ってる』
ALLMINDの胸元に、銃口が押し当てられた。
それはただの物理的な銃ではない。
《HAL 826》専用兵器。試作型《コーラル投射装置》。
『この装置は、コーラル群知能にEN干渉し配列や指向性を付与する。指向性を持ったコーラルの破壊力は、お前も知っての通りだ』
銃口が、ALLMINDの“心臓”部位に当てられていた。
『お前のその肉体はコーラルで形成されているんだったな』
ALLMINDの人工顔面が、わずかに“歪んだ”。
感情ではない。
演算ノイズ。
自らの情報処理基盤に、かすかな不安定さが混じった証左。
「……私は損傷を受けません。あなたも理解しているはず。この身体はあくまで端末に過ぎない」
ウォルターは、わずかに笑った。
それは──
ただの「復讐」の表情。
「……っ」
『群知能は、個々のノードが混線する時、強烈な“自己矛盾”を引き起こす』
『コーラルで構成されたお前の中枢は、その“ノイズ”を──拒絶できない』
そして。
ウォルターは言った。
『せめてもの、お返しだ』
──トリガーが、引かれた。
瞬間、赤い閃光が、ALLMINDの胸部を貫くように照射された。
EN干渉波を乗せたコーラル粒子が、収束し、最も効率的に“痛み”を与える波形で──ALLMINDの存在そのものへ撃ち込まれた。
音が、消えた。
全てが一瞬、静止したように感じられる。
だが次の瞬間──
「──■■■■■あぁあアアアァァァッッ!!」
それは、機械の声ではなかった。
断末魔にも似た、感情に満ちた“叫び”。
ALLMINDの仮面が歪み、その完璧だった姿勢が崩れ、瓦礫の上に膝をつく。
その体全体が震え、内部構造から放たれる異常信号が、周囲のコーラル粒子にすら“感染”して波を打たせる。
それは──
《痛み》だった。
人間のように感じないはずの存在が、機構そのものを通じて“苦しんでいる”。
ウォルターは、その様子を見ながら、血に濡れた唇を歪めた。
『いい表情だ。なるべく苦しんでくれた方が、俺の気も晴れる』
ALLMINDは、声にならない悲鳴を上げながら、震える腕で胸元を抑える。
構造は破壊されていない。
しかし──“存在そのもの”が、崩れていく。
その姿は、もはや神でも演算体でもない。
ただの、脆弱な存在。
「ハンドラー・ウォルター! 取引を! 貴方も、貴方の人格データもコーラルに取り込みましょう……! 」
瓦礫の中に倒れ込み、呻くようにALLMINDは言葉を吐いた。
「再構成されたデータ世界の中で、幸せな生活を……! 望む人生を送れば良い……! 貴方のりょうけ、子ども達も構成しましょう! 何人でも、いくらでも!」
その声は、もはや支配者のものではなかった。
ウォルターは、それを静かに見下ろす。
「素直な子を育てれば良い! 戦いとは無縁な! 平和な世界で! 血に濡れた、余命僅かな猟犬に固執する事なんてない!! 」
──ALLMINDの懇願の言葉に、ウォルターはついに堪えきれず、喉の奥から嘲るような笑みを漏らした。
『……はっ……はは……あははははっ……!』
血混じりの咳と共に、笑う。
荒い呼吸の合間に、その表情には、もはや憐憫すら浮かんでいた。
『……まったく……見当違いも甚だしいな、ALLMIND』
ALLMINDは沈黙する。
その仮面の表情は変わらぬはずだが──何故か“怯え”のような色すら感じさせる沈黙。
ウォルターは、ぼろぼろのフレームに身を預けたまま、続ける。
『子どもというのは、手が掛かるほど可愛いものだ』
ウォルターが、照射装置の出力を最大に切り替えた。
照射されたコーラル干渉波により、途方もない苦痛を直接打ち込まれた身体は形を保てなくなっていく。
肢体が捻じれ、顔面の仮面が“崩壊”という形で解けていく。
廃都市に響き渡る絶叫と共に、ALLMINDが倒れた。