ARMORED CORE VI The Warden of Rubicon 〜もしも、惑星封鎖が完遂しハウンズが惑星封鎖機構に入隊していたら〜   作:助兵衛

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第4話 奇襲

 621は冷静にタンクからアームを引き抜くと、ブースターを起動し、建物の外へと飛び出した。HUDには急速に接近する複数の敵MTの反応が多数点滅している。彼女の乗るSENTRYはEN兵器を構えながら、部隊の位置を確認し、即座に合流ルートを設定した。

 

『621、敵部隊は予想以上に多い。急げ』

 

 ウォルターの声が耳元に響く。彼女は簡潔に「了解」と信号を返し、廃墟の間を縫うように加速する。周囲の瓦礫がブースターの爆風で吹き飛び、コックピットの中に振動が伝わる。

 

 旧市街の中心部近く、部隊のSENTRYたちが解放戦線のMT群と交戦していた。EN兵器を放つが、敵MTは遮蔽物を巧みに利用し、なかなか撃破できない。現地企業であるBAWS製のMTは旧型ながらカスタマイズされており、奇襲や地形を活用する戦術に優れていた。

 

『SENTRY部隊、敵に囲まれている! 防衛ラインを維持しろ!』

 

 LC機体パイロットの声が共通無線に響くが、混乱した部隊は対応に苦戦している。撃破こそされないものの、ジリジリと戦線は押されつつあった。

 

『621、これは、どうやら入念に練られた計画の様だ。部隊は分断され、混乱の隙を突かれた』

 

 621のSENTRYが滑るように部隊の戦列に合流した。即座に複数敵MTに対しマルチロックオン、肩部のミサイルポッドから複数の誘導ミサイルを発射する。

 

 爆発音と共に、遮蔽物に隠れていた敵MTの一団が粉々になった。その正確無比な攻撃に、近くのSENTRYパイロットが驚きの声を漏らす。

 

『あいつ、例の傭兵か……! なんて動きだ……』

 

 廃墟の隙間を縫うように進みながら、建物の陰に隠れていた解放戦線のMTを次々と撃破していく。

 

 惑星封鎖機構のMTであるSENTRYと、ルビコン解放戦線の所有する現地企業MTではそもそもに圧倒的な性能差が存在している。解放戦線は巧みなゲリラ的戦術によって損害を回避し戦闘を行っていたが、621が戦線を食い破るかの如く、縦横無尽に戦闘を行い始めたせいで当初の優位性を徐々に失いつつあった。

 

 解放戦線のMT群は次々と撃破されていく。621のSENTRYは、極限まで効率的な動きで戦闘を進め、敵の包囲網を切り崩していた。だが、621のHUDには次々と新たな敵機が補充されるように点滅している。

 

『621、解放戦線の動きが妙だ。戦力を消耗しながらも撤退の兆候がない』

 

 ウォルターの冷静な声が耳元に響く。彼女の赤い瞳がHUDの端末に視線を向け、微かに操作を加える。敵の動きに規則性があることに気付いたのだ。

 

 その瞬間、部隊共通無線から警告が飛んだ。

 

『全機注意! 建物内部に隠されたIED(即席爆発装置)を確認! 即時離脱──」

 

 共通無線が警告を発するのと同時に、旧市街の建物が激しい爆発音を伴って崩壊した。解放戦線が仕掛けた大規模なIED(即席爆発装置)が連鎖的に作動し、瓦礫の嵐とともに炎が吹き上がる。煙と火炎が戦場を覆い尽くし、惑星封鎖機構の部隊は混乱に陥った

 

 SENTRY部隊の一部が爆発の巻き添えを受け、瓦礫に埋もれる機体も出始める。敵MTはこの混乱の隙を突き、遮蔽物から飛び出して惑星封鎖機構の部隊に奇襲を仕掛けた。

 

 621はブースターを全開にし、火炎と煙をかき分けながら戦場の中心へ向かう。HUDが混乱する中、次々と点滅する敵機の反応を冷静に解析する。

 

『621、敵の目的は明白だ。この混乱で我々の防衛ラインを崩し、一気に主戦力を引き込むつもりだろう。抜かるなよ』

 

 ウォルターの冷静な指摘に、621は無言で信号を返した。

 

 爆発の余韻が残る中、戦場には瓦礫の山と煙が立ち込めていた。建物の崩壊により、周囲の視界は大きく制限され、惑星封鎖機構の部隊は一時的に混乱していた。SENTRY部隊は散開しつつも、敵の奇襲を防ぐために必死に防衛線を維持している。

 

 その時、地面を揺らす異様な振動音が響き始めた。まるで地震のような連続した重い振動が、煙に覆われた戦場に近づいてくる。621の機体は警告音とともにHUDに新たな巨大な反応を検知した。

 

『未確認の大型MT接近中! これは──』

 

 共通無線にも緊張した声が響く。

 

『傭兵支援システムALL MINDのデータベースに該当する識別信号を確認! 解放戦線の四脚MT! ログハントの対象者だ……!』

 

 煙の向こうにゆっくりと姿を現したのは、解放戦線が投入した切り札、BAWS製の大型四脚MTだった。その姿は威圧的で、重厚な装甲と異様な脚部構造が目を引いた。巨大な四本の脚はどんな地形でも安定して踏破できるよう設計されており、時に跳躍やホバリングを織り交ぜて部隊に急接近して来る。

 

『621、無理に相手をする事はない。現在の武装では持て余す相手だ……』

 

 621はウォルターの忠告を無視し、四脚MTに照準を合わせた。ミサイルポッドのロックオンが完了し、数発の誘導ミサイルを発射する。

 誘導ミサイルは四脚MTを囲む様に飛行し、次々と着弾していく、爆炎が連続して巻き起こり、その巨躯を覆い尽くす。

 

『猟犬がやったぞ! 誘導ミサイル全弾命中──』

 

 ミサイルの直撃により、四脚MTの周囲に爆煙が立ち込めた。SENTRY部隊のパイロットたちは一瞬の歓声を上げたが、その喜びも束の間──

 

 煙の中から四脚MTの巨体が現れる。

 ミサイルの戦果は、その堅牢な装甲にわずかな焦げ跡を残すだけだった。

 共通無線に混乱と恐怖が走る。四脚MTはその重厚な装甲を存分に活かし、ミサイルの直撃をものともせずに進軍を再開した。

 

 ドンッ、ドンッ、と腹に響く低音が連続する。

 

 四脚MTの肩部グレネード砲が炸裂し、周囲の瓦礫と共に惑星封鎖機構のSENTRY部隊を吹き飛ばしていく。その火力と装甲は、戦場を支配していた。

 

『四脚MTが暴れているようだな。遅滞戦闘に徹し、執行機体が到着するまで持ち堪えろ』

 

 共有無線にグレイ執行上尉の冷静な声が響く。

 恐怖に覆われつつあったSENTRY部隊は、指示を聞くや否や、瞬時に平静を取り戻し徹底した遅滞戦闘を展開し始める。

 

 解放戦線が優位に戦闘を進める事が出来ているのは、惑星封鎖機構の中核戦力を分断し、機体性能に劣る量産型MTを相手にしているからこその戦果だった。各地で解放戦線に対応する上位パイロット達は戦況を観察しつつ、部隊の再編を試みていた。

 

 621は四脚MTを正面に捉えたまま冷静にブースト移動を繰り返し、砲撃を回避し続ける。

 周囲では、解放戦線と封鎖機構のMTが熾烈な戦闘を繰り広げていた。四脚MTからは距離を取り、あくまで執行機体に乗る上位パイロット達が到着する時間を稼ごうとしていた。

 

 だが、そこで更に厄介な事態が発生した。

 

『新たな大型反応が接近中! ルビコニアン共め、何処にこれ程の戦力を』

 

 共通無線に緊張した声が走った。

 

 621のHUDに新たな赤いマーカーが浮かび上がる。それは四脚MTと同型の大型MTの反応であり、戦場の別地点から複数の方向に向けて出現していた。

 

 増強された解放戦線の戦力は、各地の惑星封鎖機構の部隊を同時に脅かしている。LCやHCといった執行機体たちがその対応に追われ、621達に支援は届かない。

 

『これが解放戦線の狙いか……各部隊を分断し、同時に圧力をかける戦術だ。計画的だな』

 

 ウォルターの冷静な声が耳に届くが、621は黙したまま敵を凝視していた。

 

『621、覚えておけ。お前の目的はあくまで生き延び、情報を持ち帰ることだ。それ以上の無茶は……』

 

 彼の忠告を遮るように、621はコンソールを操作した。

 

 

『621、何をするつもりだ?』

 

 ウォルターが疑念を口にする間もなく、621はEN兵器に内蔵された安全リミッターを解除した。

 

 ──EN兵器、オーバーチャージ開始──

 

 HUDに警告が次々と表示される。熱量の急激な増加、EN消費量の限界突破──これらはジェネレーターの運用想定を超えた危険な操作だ。しかし、621の表情には微塵の揺らぎもない。

 

『良いだろう。621、お前の選択を尊重する。分の悪い賭けだが、価値はある』

 

 621は誰に応えるでもなく、微かに頷いた──

 

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