13:せいちょう!
「ふぅ~、やっぱ砂漠は暑いねぇ。マジ、ジャマッデム。」
「? まぁそりゃ見た目重視っすもんね、ソレ。他の変装なかったんすか?」
「だよねぇ。でも私が発案者だから、着なきゃなのよ。」
ガチガチの最新装備、砂塵対策も万全にしてある部下の子からタオルと水を受け取り、礼を言う。彼女の様に防護服の中にクーラーでも仕込んでたら最高だったんだけど、コレ単なる布だからなぁ。首元までぴっちりだし、若干シスター服っぽいから黒くて熱も吸収しちゃうっていう。
(暑いよ~、多少防御力はあっても、熱には耐えられないよ~!)
皆様ジャマハローア~! 桃玉マルコだお!
今日の私のお洋服は、三魔官の赤色……。っぽいお洋服だ。ある意味、改造赤黒神官服と言ってもいいかもしれない。いやまぁ砂漠ってだけでここがアビドスだってことはみんなわかるでしょ? でもトリニティ国籍のしかも政治的に色々とややこしい私らが武装して勝手に入って来てたら色々と問題なわけ。聖ワドルディ学園の子たちも申請なしにお外に出たら駄目だし……。
と言うことで『学園』の子たちは完全武装&顔を隠す装備で固めてもらってるし、付いてきた私や見学に来てる『秘密のお茶会』メンバーも変装をしている。んで何の変装をするかって話になったんだけど……。
『サクラコ様に悪の教祖様っぽいの着せてさ。みんなで『魔神官様~!』ってしたら面白くない?』
って話になっちゃったんだよね。流石に学園の兵士ちゃんたちに防御力の無いコスプレさせて被害出たら元も子もないからその辺りはやめたんだけど、後方に待機しているサクラコ様は真っ白ローブとケープをつけているし、セイア様は黄女神官、リオちゃは青女神官の恰好をしている。スターアライズだねぇ。
ま! 御本人たちを呼び出しちゃったら面倒なので『ぽい』感じに収めて、ぽよ様に『殴りたくなる?』『ならない!』の試験をやってもらって無事完成した安心安全なコスプレ用品(防弾繊維使用)に仕上げちゃったから! 来ちゃったとしても私が責任をもってぽよ様を爆散召喚するから安心したまえ!
……にしても。この私達どころか『学園』の子たちもノリノリでサクラコ様に臣下の礼をするのめっちゃ面白いよね。3割くらいマジで信仰心捧げてるみたいだし。単純にこの服自体可愛いのもあってマルコちゃん大満足です。にぱー!
『マルコさん!? なんでいっつも私を悪の宗教組織のボスみたいにするんですかぁ!?』
『そりゃ、だって。ねぇ? 仕方ないことだと思うよ、魔神官サクラコ様』
『こればっかりは擁護できないわね、魔神官サクラコ様』
『セイア様にリオさんまでっ!?』
何処かから聞こえてくる叫び声に耳を傾けながら、無駄に厚い服の生地の中にタオルを突っ込み、汗を拭きながら水筒の中を全て飲み干す。横から少し非難の声が聞こえてきたが、お前は装備にクーラーがついてるからいいでしょう? それに後ろに補給車があるから問題ないでしょ!
「配分ってもんがあるんすよ? 潤沢にありますがわざわざ何度も後方に取りに帰る訳にはいきませんし。」
「でもお金出してるの私だしー!」
「それ言ったらお終いでしょうや。」
彼女の声を半ば無視しながら、大分桃色に近づいてきた髪をタオルで拭う。
昔は真っ黒だったけど……、うん。こっちも好き。
黒と桃色が入り混じった髪を撫でながら、過去のことを思い出していく。私がぽよ様と繋がってから、約3年。滅茶苦茶濃厚だったなぁ。
私は私で無事にトリニティ総合学園に入れたし。ハーちゃんやツーちゃんと一緒に正実に入った。まだ大きな仕事は回ってきてないけど、いつもの三人で毎日凶悪犯をシバいて遊び回っている。そのほかのメンツも、想定通りに。ナギサミカセイア様はティーパーティーに入ったし、サクラコ様は暗黒シスターフッドにゴー。リオちゃはミレニアムで既にセミナー入りしたらしい。
(たどり着くまでが長かったんだけど……、まぁ無事みんな入学出来てヨシってことにさせてください。)
ここまでまぁ色々あったが、世界を揺るがす様な大事件は発生しなかった。せいぜいトリニティが17回ぐらい真っ二つに割れそうになったぐらい。……いやなんでこんなにぶっ壊れそうになってるんです? これがキヴォトスクオリティ?
私個人としましてはごはんとお昼寝、あと一緒に遊べる友達がいれば満足なのに、なんでトリニティのカス鳥さんたちは反乱やら政争やら武力蜂起がお好きなんですかねぇ? おかげさまでナギサ様陣営と私の陣営が途轍もなく仲が悪くなっちゃったよ。
ナギサ様が胃を痛めて。セイア様が抜けた尻尾の毛の数を虚ろな目で数え始めて。サクラコ様が暗黒微笑浮かべながらぶっ倒れて。私が奇声あげながら顔隠して武力行使したおバカさんを両派閥ともぶちのめして。死に掛けた私たちにリオちゃがお茶を差し入れてくれるって光景が何度あったことか……!
(なんかその制圧作戦の時、たまにミカ様が突入してきて一緒に戦ったりしてたから、無駄に仲良くなったけど……。たぶんミカ様、無許可で勝手に飛び出してるんだろうな。“ナギサ様のいる方角から来た”って奴。実際セイア様がナギサ様にカマかけた時、マジで何も知らない反応してたみたいだし。)
ちなこれが事件解決後の祝いってことで、ミカ様と一緒にオール(n回目)した時の写真ね? 変顔Wピースしてる奴。これナギサ様に見せると爆散しちゃうから封印指定なの。大体こういうのが200枚ぐらいあるの。すごいでしょ!
ま! そんなことがこの三年間あったせいで、トリニティの上層部は冷え切っており、綺麗に半分になっている。一応まだ三頭政治の体制は取っているのだけど、実際は『ナギサ様率いるフィリウス&パテル分派』VS『マルコちゃん率いるセクシーフォックス連合』みたいな感じだ。
私もナギサ様も、平穏を求めているしクーデターなんか起こす気もない。けれどまぁ勘違いしてしまった人たちが暴走するのはよくあることで。こうなっちゃったってことなんだよねぇ。
(ひぃん! 良かったことと言えば、ぽよ様との繋がりがより強くなったぐらいだよぉん!)
『ぽよ! ぽよぽよ!』
いやまぁ、ぽよ様の言う通り他にも色々良いことがあったんですけどね? 一番ビッグなのがそれです。
頭上のヘイローを見て頂ければご理解いただけると思うのですが、なんと3つの丸がピンクに点灯しています。更に残りの7つも、全て青色発光。そうそう、まだ完全にとは言えないんですが、10人全員がそろったってわけです。あつめたよ! カービィ! ってことだね。
『ぽよ?』
「ォぐわッ!? お、御大!? 呼んで、呼んでないっす! お静まり、お静まりぉぉぉ!!! ぎィィィいいいいい!!!!!!」
「り、理事長!? おい救護班ッ! 早く!」
「だ、大丈夫! ダイジョブだから、ね? お願いだからそっとしといて……。」
『ぽよ……。』
いやほんとすいません。ちょっとテンション上がってお名前呼んじゃって……。
とまぁこういう風に、未だぽよ様をお呼びできるほどの肉体にはなっていない。こちらのミスでまたまんまる様に悲しいお顔をさせてしまったのは申し訳ないが……。い、いつか絶対お呼びしてトリニティ中の美味しいもの捧げさせて頂きますからね! ね!?
『ぽよ……、ぽよ! はぁ~い!』
(ふぅ、ご機嫌直して頂けて良かったぜ。……にしても。)
そんなことを考えながら、走り寄って来た救護兵に大丈夫だと伝え、自身の手を見つめる。
そこにあるのは数年前よりもかなり大きくなった掌と、その隙間から見える“遠くなった”地面。
(くっそ身長伸びちゃったんだよねぇ。……しかもまだ伸びようとしてる。いつの間にか婆や抜いちゃったや。)
現状この身は、すでに180を超えてしまっている。肉体の肉付きもかなり良くなってしまい、ハーちゃんに比べればまだ控えめだが……。ムチムチな恵体になってしまった。高3、原作が始まる頃にはもっと大きくなっていることだろう。
おそらくというか、確実にそうだとは思うのだが……。ぽよ様の神秘を扱おうと、肉体が最適化を求めた可能性が高い。一度目の“成長”同様に、肉体を大きくして強大な神秘に耐えられるようにする。そう考えれば辻褄は合うのだが……。ちょっとね? 大きく成り過ぎちゃったもんで、戦闘スタイルの変更を余儀なくされてしまった。
今じゃツーちゃん、ツルギと並んで最前線を突っ走るタンク職だ。
肉体強度もそれ相応に上がって、神秘の入ってない弾丸なら痛くも痒くも無くなったから最適ではあるんだろうけど、御大みたいにちっちゃくまんまるな感じは、完全に消え去ってしまった。もう私の肉体で丸いのって顔と胸位だよ。まぁ胸部に限っては本当にハーちゃん、ハスミの方が大きいんだけど。なんやあの発育ッ!?
(まぁリオちゃもムチムチの民だし、サクラコ様もビューティーなお体をされている。……たまにセイア様の眼が死んでるのがね、ほんとにね……。)
かといって私が何か言えば煽りになっちゃうからね……。たぶん頑張れば昔みたいにちっちゃい感じに戻ることも出来る気がするんだけど、これまで体に染み込ませた神秘が過圧縮で暴発して私が死ぬ可能性があるからさ。容易に出来ないんだよね。
っと! じゃあそろそろ愚痴も止めて楽しく元気な爆裂マルコちゃん道中を……
「理事ちょっ! じゃなかった! えっと、えっと!」
「あ~、周り私達しかいないし、もういつも通りでいいよ。んでなんかあった?」
「す、すいません理事長! で、でも! いました! 偵察隊から入電です!」
お、マジ? 最悪、数か月単位で見つからないと思ってたけど……。
「ではでは、砂蛇退治と参りましょうか。総員に作戦開始の合図を。」
「「「はッ!」」」
ビナーを食べよう! マルコちゃんのグルメレース開幕inアビドスの始まりだァ!!!
◇◆◇◆◇
「それにしても、こんな服を着ることに成るなんてね……。もう結構な付き合いだけど、毎回驚かされてばかりだわ。」
「おや、そうなのかいリオ。」
砂漠の上に敷かれたシート。そしてその上に置かれた庭園用のテーブルと椅子。照り付ける太陽からその身を守る様に設置されたパラソルの下では、二人の少女が言葉を交わしていた。
黒い神官服に青い差し色が入ったこのキヴォトスに存在するどの文化にも合致しない服。それに身を包むのは調月リオ。
高1ながら既にミレニアムのセミナーへと入り、ミレニアムへの影響力を高めている才女にして、『秘密のお茶会』の開発担当である。慣れない服を少し窮屈しそうにしながらも、今この場にある新しい体験を楽しもうとする余裕が、彼女の表情から感じられた。
「惚けずとも貴女が一番解っているでしょう、セイア。」
「まぁね。……というかこの服も厄ネタ一歩手前というか、マルコが名を呼んでいれば“終わっていた”可能性が高い代物なんだけどね。変装の意義も理解できるけど、可愛くて面白いからって理由で使わないでくれよ、ほんとに……。」
そう言いながら小さなため息をつく狐耳の少女。彼女も黒い神官服を纏っているが、その差し色は黄色。別世界に於いて三人の魔官によって構成されていたチーム、そのリーダーの装いだ。正確に言うのであれば刻まれた紋章や細かなデザインが変化しているため『パチモノ』と評される代物であったが……、“知ってしまった”彼女からすればたまったものではない。
元々セイアは、“未来視”という能力を保有していた。キヴォトスにおけるヘイローを持つ生徒たちの一部が保有する特殊能力の中でも、各段に珍しいもの。基本的にその能力が向上することはあっても、“大幅な強化”を得ることは稀なのだが……。マルコとの縁から『キヴォトスよりも何倍も神秘の濃い場所、及びそこに住む特記存在』に繋がってしまった彼女はその能力を新しいものへと開花させていた。
(未来視どころか過去視まで手に入るとはねぇ……。使いこなせないわけでもないし、相談できて受け入れてくれる仲間がいないわけでもない。ただまぁ、気苦労が増えたのは確かだよ、本当に。)
見える未来は基本的にキヴォトスのものだが、見える過去は『別世界』のもの。
幸いなことに未だ“見ただけで詰む”存在と繋がったことはないのだが……。もう頭が吹き飛びそうなくらいキヴォトスにとって過激すぎる存在たち。もし呼び込んでしまえばその場で終わりという存在たちのことを、かなり部分的にではあるが、セイアは知ることが出来ていた。
(過去視の方は未来視に置き換えることで封じることが出来るから良かったけども……。はぁ、あちらの神秘が濃すぎるせいか“視界情報だけ”入手できる仕様で本当に良かったよ。マルコが『その名を知りながら呼ばない』と言うことは、それが完全につながる“キー”になるのだろうからね。)
「……セイア?」
「おっと、考え事をし過ぎてしまったようだ。それで、なんの話だったかな?」
「この服の話よ。何がどう、“今後”に関わるの?」
少し言葉を濁しながらも、セイアに問いかけるリオ。
彼女の視線は一瞬だけ横に逸れており、その先にはこの周囲を守り陣地を形成する『学園』の兵たちが詰めていた。本来彼女たちが会合を行う場所は、構成員である4人以外近寄れない秘密の庭園にて行われる。けれどこの場にはセイア達の護衛として、そしてこの後討伐する予定である敵への戦力として、兵たちが付いてきている。
彼女たちに余計な心配を与えぬよう、リオが配慮したのであろうことをセイアは理解した。
「いやいや。その辺りは大丈夫だとも。『正式な名を理解し呼び出す』ようなことがなければ『繋がり』は生じない。確かに今後、キヴォトスの外からやって来る敵に対処せねばならぬ時は来るだろうが……。そもこの服の“元ネタ”たちは対処済みのようだからね。今は単にコスプレを楽しめばいいさ。」
「なら、良いのだけれど。……にしてもマルコは毎回厄介ごとを引き起こしてくれるわね。今回の件もそうだけど……。先月のは肝が冷えたわ。」
「あぁ、アレか。」
そう言いながら思い出すのは、天から布切れ一枚のマルコが降り注いだという一件。
しかもゲヘナの万魔殿にある中庭に落下し、巨大なクレーターを作成。本人は少し焦げただけなので良かったのだが、布地一枚の半裸がゲヘナ中枢に襲撃を掛けたと勘違いされ大騒ぎに。しかも一企業の長にして学園の理事長であるマルコの顔が広く周知されていたこともあり、外交問題になりかけた。
「アレは本当にね……、うん……。今の三年、ティーパーティーのトップたちが口から泡吐きながら倒れたせいで私が対応したんだが……。もうね、尻ひっぱたいて磔にしてやろうかと思ったよ。」
「……その、ごめんなさいね。聞いちゃって。」
「いやいいさ。一応丸く収まったからね。」
万魔殿から出動した守備隊や、風紀委員会と布一枚でガチ泣きしながら大立ち回りを繰り広げたマルコ。幸いなことに諜報員として派遣されていた『学園』の者が近くにおり、セーフハウスに隠れることで事なきを得たのだが……。トリニティ上層部は上から下までの大騒ぎだった。
何とかトリニティの気品を守るため、『別人だった』ということで内々に処理することが出来たのだが……、セイアの真っ黒に染まった瞳を見れば、どれだけ大変だったのかはご理解いただけるだろう。
「“実行”の理由は理解できるさ。私だって“知っている”からね?」
マルコなりの考え……、というかセイアも理解し何らかの対応をしようとしていた案件ではあったのだ。
この世界がもし『最終章』に突入した場合、万事うまく進めば“先生”と呼ばれる存在が全裸で空から落ちてくるというイベントが起きる。様々なイベントがあるため割愛するが、“彼”もしくは“彼女”はその肉体を生徒たちの前に晒してしまうのである。
マルコは前世から、セイアは未来視からその情報を得ていたのだが、『いや男でも女でも色々と可哀想でしょ。というか男だったら最悪露出魔でしょっ引かれちゃう……。うん? 足舐めたり生徒に首輪つける奴はしょっ引かれた方がいいのか? い、いや流石に不可抗力でそれは……!』と考えていた。
と言うことで『学園』内にいる技術者たちに声をかけ、大気圏を脱出できる特製の『人間砲台』を作成。古風な導火線で射出するそれに、用意した耐熱性の高い素材を大量に纏うことで性能試験を行ったのだ。
燃え尽きずに残った布で服を誂え、プレゼントしてしまえばいいと。
そう、こいつ生身で大気圏からの脱出及び再突入を実行しやがったのである。
「私はセミナーで、セイアは派閥調整で、サクラコはシスターフッドでの“訓練”で手が離せなかったこともあり、マルコ単独での勝手な実行。幸いなことに“まっさら”は避けられたようだけど……。言ってほしかったわ、切実に。」
「だねぇ……。今更だけど、何であの子は生きてるんだろうね? 人間やめていないかい?」
「銃どころか最近は戦車まで食べてる子よ。人間だとしても別物だわ。」
ちなみに一応大気圏を越えたとしても燃え尽きない素材の開発は成功したのだが、未だ改善点が存在し『学園の技術部』的には満足いくものではなかった。そのため今後定期的にマルコが連行され、無理矢理大空へと羽ばたくことになるのだが……。まぁそれはその時のセイアが対応すべき案件である。今の彼女は、関係ない。
「さて、雑談もそろそろ終わりにして、仕事を……。」
「お二人とも。」
声をする方を振り向いてみれば、真っ白なローブを羽織り目深にローブを被った少女が一人。
ポップスターが存在する世界に於いて“ハイネス”と呼ばれていた魔神官が着用していたモノによく似た服装。けれど確実に『縁』が出来ぬように別物として生み出されたソレを身に纏う彼女は、腰元に垂らした銀色の『柄』を揺らしながらドス黒い暗黒と共に自身の“配下”へと声を掛けていた。
「ん? あぁサクラコ……。いや失礼、ご機嫌麗しゅう、魔神官サクラコ様。」
「お茶はいるかしら、魔神官サクラコ様。茶菓子もご用意するわ。」
「んもぅ! 口ききませんよ二人とも!」
一瞬にして暗黒のオーラが消え去り、両手を挙げながらぷんすかと怒る彼女。
シスターフッドにて高1ながら既に半数をその手に収めたと言われる暗黒卿にして、『秘密のお茶会』が誇る渉外担当、歌住サクラコである。無理矢理マルコに着せられたはずなのだが……、その姿は思わず跪きたくなるほどに堂に入っていた。
「ふふっ! いやすまない。もう“ソレ”にしか見えなくてね……。して、何かあったのかい? 確か砲兵隊の様子を見に行くと言っていたはずだが。カイザーかアビドスがもう嗅ぎつけてきたとか?」
「いえ、偵察隊が“対象”を見つけたとのことです。マルコさんが作戦開始の指示を出されました。」
「……ついに、ね。」
サクラコがゆっくりと席に腰かけながら言葉を紡ぎ、どこか感慨深そうに声を漏らすリオ。
彼女たちは、この世界に眠り、そして外からやって来る“脅威”に対抗するため、力を蓄え続けて来た。既に様々な悪評を被ってしまっている者もいるが……、それも今日この日のため。
「なに、気楽にいこう。ここで勝ったとしても敗れたとしても、次につなげればいい。そもこちらもまだ全力では無いからね。倒せれば御の字、対デカグラマトンの予行演習程度に考えればいいさ。そのために色々持って来ているんだろう、リオ?」
「まぁ、ね。『PROTO DRAGOON』と『PROTO HYDRA』も飛ばしているけど、作戦空域に入らぬよう指示済みだし、武装もゼロ。補助システムの対ハッキング能力検証みたいなものだし……、今日は撮影ドローンとして頑張ってもらう予定よ。」
セイアの問いにそう答えながら、持っていたデバイスを操作するリオ。すると彼女たちの眼の前に大きなホログラムが出現し、画面としての役割を果たし始める。どうやらここから戦場を伺うことが出来るようだった。
「控えとして歩兵連隊に戦車大隊。砲による支援も可能ですが、マルコさんが望んだのは1対1。彼女の強い希望とのことでしたが……。大丈夫なのでしょうか? やはり私も出た方が……。」
「我らがリーダー様だよ、サクラコ。蛇の首でも引きちぎって遊び始めるんじゃないかい? 心配いらないさ。」
「……確かに、そうでしたね。では、見届けると致しましょうか。」
〇パチモン魔神官&三魔官シスターズ
マルコがふざけて作り出した『スターアライズ』に登場する敵キャラ達の服装の要素だけを切り取り、『縁』を作らないようにギリギリまで希釈して生み出されたコスプレ用品たち。マルコが赤、リオが青、セイアが黄、サクラコが白の服を纏っている。
製作の契機となったのは、マルコによる『ぽよ様が名前呼んできちゃうのなら、それ以外もあり得るのか?』という疑問から。何度も研究が重ねられ、セーフラインを探り出す一環で生み出されたものとなっている。確かにマルコの趣味によるものが大きいが、一応本来の役目も無事に果たした。
ちなみにこの時“ワドルディ”の名を使ってしまったのは不味かったとようやくマルコが気が付いたのだが、何故か未だに彼女は学園で彼らと出会っていないため『プププでもある程度神秘パワーが大きくないと、“縁”があってもこっちに来れないのかなぁ』と推測するに至った。未発覚ではあるが、そろそろ……?
〇『教団』
マルコたち『秘密のお茶会』が上の服装をしている時の団体名。サクラコこと『魔神官』が対外的なリーダーとなり、それに従う三色の三魔官、そしてその信徒である武装兵たちによって構成される。武装兵は聖ワドルディ学園の生徒たちが担当しており、ローテーションを組み交代しながら活動する予定。
まぁ『学園』の中には本当にサクラコのことを闇の聖女として崇めちゃってる子もおり、その子たちが率先して『教団』としての活動に参加しているため名実ともに宗教団体な可能性が高い。
ビナーが討伐後のことを考えて設立されており、ビナーの消失によって生じるカイザーの“宝探しの加速”を妨害することや、今後起きると思われる“梔子ユメの遭難”の救助が主目的となる。
〇空からマルコがァ!事件
キヴォトスに置いて銃を持たないものは全裸で出歩くものよりも少ない、というらしいがなんとマルコは銃を持たずに全裸で出歩いたらしい(布一枚はあったので何とか全裸ではないし、滅茶苦茶頑張って隠し切った)。ゲヘナでは緘口令が敷かれ、トリニティでは上層部だけ知る一件。もし公開されていればキヴォトス史に残ったであろう。
ゲヘナに潜り込んでいたトリニティの諜報員が映像と共に連絡を送ってきた時、ティーパーティーは大混乱に陥り、現在ホストとして席に座っていたお姉様は泡吹いて倒れ、その他ティーパーティーの皆様も失神。セイアは発狂し、ナギサは宇宙猫を背負いながら胃に穴が開き緊急搬送された。そこには『え、これ私が対応するの? な、ナギちゃんは……、ダメだっ! 病院送りにされちゃった! せ、セイアちゃん! 正気! 正気に戻って!? 私政治ほんとにわかんないの! これどうしたらいいの!?』と泣き叫ぶミカの姿があったという。(数秒後再起動したセイアがなんとかした)
この事件はトリニティとしては身内の恥じすぎるので全力で隠したかったのだが、どうやらゲヘナとしてもそれに乗る必要があった様子。
なんでも変質者及び現ゲヘナ生徒会長である雷帝に歯向かう不届き者として、万魔殿と風紀委員会の総勢力をもって彼女を捕縛しようとしたのだが……。期待の新人である空崎ヒナが情報部の仕事で学外にでていたこともあり、5時間も抵抗された上に負傷者多数。ガチ泣きマルコは大事なところを必死に隠しながら敵を倒すために全力だったため気が付かなかったが、横乳の顔面に全力ストレート喰らわせ、催眠スキーの装備が消し飛びビルへと突き刺し、未来のゲヘナ生徒会長の乗った戦車隊を搭乗員ごとスクラップにしていた。
雷帝がその様子を余興として眺めていたこともあり、ゲヘナ側も死力を尽くしたのだが……。ギャグ補正も掛かり、最終的に逃げられるという結果に。『大層な道化を見た』と雷帝自身の機嫌は良かったようだが、失態は失態。関係者の大規模処分及びゲヘナによる緘口令の発令。またトリニティへの『寛大な対応』が行われたようだ。
雷帝からマルコへの好感度が上がった!