ピンク玉の神秘   作:サイリウム(夕宙リウム)

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17:もふもふ?

 

「アコ、傷は大丈夫なの? こっぴどく顔をやられたと聞いたのだけど。」

 

「あ、はい隊長! もう元気ピンピンです! ……まだ鼻が痛むのは確かですが。」

 

「そう……。」

 

 

一応同学年なのだからあまり畏まらないでほしいな、と考える白髪の少女。

 

場所は変わり、ゲヘナの駐屯地。勝手に動き出し位置を定め、給弾以外は自動で稼働し続ける砲台を眺めながら。雷帝の指図によって情報部所属ながらもトリニティ侵攻軍の部隊長として任命されてしまった“ヒナ”は、半ば現実逃避の様に空を眺めていた。

 

本来透き通る程に真っ青なはずだった空は、硝煙で黒く濁り、帯の様に伸びていく砲弾しか見えなかった。

 

 

(嫌だな、戦争。)

 

 

ゲヘナ内での民意は、ほとんどがトリニティへの侵攻に好意的である。ヒナは珍しい反戦派、というか仕事せずにお家で休みたい派だったのでかなり乗り気ではなかったが、自身の先輩や“雷帝の眼”がどこにあるか解らない以上、少なくとも真面目に業務を行わなければならなかった。

 

何せゲヘナとトリニティの仲は最悪だ。

 

お互い何故争っていたのか解らなくなるほどにいがみ合ってきた相手を、ぶん殴れるのだ。これほど楽しいことはなく、戦意の上がり方も驚異的。雷帝によって行われていた恐怖と暴力による統治、そのストレスのはけ口として使われている可能性も考えられたが、とにかくゲヘナ側のやる気はすごかった。

 

情報部であるはずなのに砲兵隊を任されてしまったヒナが、内心途轍もない居心地の悪さを感じるくらいには。

 

 

(……なんでアビドスの後はトリニティ?)

 

 

つい昨日まで、空崎ヒナはアビドスへの潜入を行っていた。

 

雷帝が進めるプロジェクトの一つである『列車砲』の警備や、現地作業員の調査。また数年前から砂漠内で活動を行っているカイザーの動向の把握に……、突如として大軍をアビドス砂漠へと進めた、キヴォトス内でも新しい『学園』の偵察も、だ。

 

生徒数が少ないとはいえアビドスは他の自治区、そこで許可なくゲヘナの人間が諜報員として活動するわけだからそれ相応のストレスがかかる。いくら入学直後に雷帝に確保され、情報部所属として扱き使われてきたヒナ。既にゲヘナ五指に入る程には実力を上げて来た存在であっても……。少しシナシナになってしまうほどにはしんどかった。

 

特に肝を冷やしたのは、アビドス砂漠に戦闘機が飛びそこから探査機が大量に出て来た時。彼女の戦闘力は既に情報部の中で頂点に等しいのだが、諜報員として活動する以上自身の存在が露見してしまうと言うことは絶対に避けなければいけない。つまりここで“暴力”に頼ることは出来ないのだ。

 

その場は何とか雷帝から支給されていた機器を使うことで、電子的に“そこにいない”状態を維持することに成功したのだが……。雷帝が卒業した瞬間、即座に情報部から逃げてやろうとヒナが思うほどには、酷使されてしまっていた。

 

 

(今日はお昼まで寝ようと思ってたのに……)

 

 

そんな時、ようやく雷帝からもらえたお休み。

 

『まだ仕事はある』と言われたが、休む時間をくれると言われたのも確か。彼女はかなり上機嫌で自室へと戻り、体にこびりついた砂を落し、あまり使われていないせいで新品同様の寝台に飛び込み、惰眠を貪ろうとしたところ……。

 

新たな辞令が下った。

 

確かに帰還時の移動時間で睡眠をとるなどして肉体を最適な状態に保つことはしていたが、今から休もうとした瞬間に配置転換の命である。一瞬“クー”してやろうかと思ったヒナであったが、流石の彼女でも雷帝に勝てるとは思わない。かなり気落ちしながらも、空崎ヒナは戦場となるトリニティへと赴いたのだ。

 

情報部としてではなく、“砲兵隊”の隊長として。

 

 

(抵抗が少ないことは確かだけど……。楽な仕事。)

 

 

トリニティとの戦争と聞き、彼女なりの覚悟を決めていたヒナ。

 

確かに砲兵は前線から離れた位置に陣取るが、その攻撃力の高さから相手にとって『真っ先に排除したい』存在である。つまり前線を突破されれば、多少無理をしてでも砲を守らなければいけない。

 

そして更に、“砲台”の運用は非常に緻密な計算を要する。距離だけでなく天候の要素を加味し、砲弾の値段分相手に打撃を与えなければいけない。それに要する計算手順は決して素人が出来るものでなく、素人が部隊の指揮など出来そうなものではなかった。

 

部隊長として配属されるため士官待遇、任地までの車を回されたヒナであったが、普段の様に移動時間を睡眠に当てることは出来ず、現地に着くまで必死に砲学についての教本を頭に叩き込んだ。何せ雷帝は使える者には厳しい程度で済むが、使えない“モノ”にはそれではすまないのだから。

 

 

(戦闘には自信があるけど、大砲なんて昔軽く教本を見た程度。だから急いで学び直したのに……。全自動とか聞いてない。)

 

 

けれど彼女を待っていたのは、ほぼ全自動化された新型砲台。FlaK 100だった。

 

ゲヘナで旧式となり始めていたFlak系列の砲台を、雷帝がその未知のテクノロジーによって大幅に強化し、砲身が焼き切れることになるが『毎秒100発』を可能としたオーバーテクノロジーを越えた何か。砲弾が無限ではないことや、可能であればトリニティ中央への侵攻まで使い続けるという方針から現在は『毎秒10発』で収めているが……。既に埒外な存在であった。

 

ヒナが少しトリニティの方を見てみれば、既に瓦礫を越え残骸となったトリニティの町が見える。広域に『避難勧告』を出しながらの進軍なため被害者は“いない”だろうが、見るだけで肝が冷えてしまう。

 

 

(たしかに、これなら砲台さえ守り切ればトリニティの本校まで進めるだろうけど……。恨まれるわよ、雷帝。)

 

 

消し飛ばされ、“耕された”町を見てトリニティが何を思うのか、解らない程ヒナは考え無しでない。

 

先陣を切るゲヘナの歩兵や、砲台の前で陣取りながら進軍する戦車隊の面々からは未だ高い士気を感じられるが、あの残骸の山が続けばいくらトリニティを恨むゲヘナ兵であろうと、士気は下がるだろう。町を壊しながら進むのだ、罪悪感は計り知れない。

 

確かに確実に反抗される占領政策を進めながら進軍するよりコストは良いが、このまま中央が定めた『砲台を使用しトリニティ中央までまっすぐ線を引く』作戦を使用し続けた場合。勝っても負けてもゲヘナは『恨みを買い過ぎる』。トリニティはもちろん、戦場を見た他校や連邦生徒会。そして罪悪感に耐えきれなくなり、これを命じた雷帝を恨むであろうゲヘナ生徒にも、だ。

 

それこそ、キヴォトス全てを雷帝が手に入れ、全員の上に立ち支配しない限り、ゲヘナはずっと“人道を理解しない悪魔”になってしまう。

 

 

(そういう政治のことはあの人の得意分野と思っていたのだけれど……。もしかして既に“全て”取れる手段がそろった? 確かに、あの列車砲も稼働させれば連邦生徒会も一撃。でももしこれが事実ならキヴォトスは一体どうなって……)

 

 

「ヒナ隊長!」

 

 

思考を回しているさなか、何故か胸部側面を露出させる改造制服を着る同級生が、声を掛けてくる。わざわざヒナについてくるために、情報部の先輩に頼み込んで今回の侵攻では少女の“副官”となったアコだ。同級生で努力の人だということはヒナも知っているのだが、なぜそこまで慕われるのかは理解できていなかった。

 

 

「正実の部隊をレーダーが発見したとのこと! 小規模ですが塹壕を掘り耐えていたようです! それと、本部から“空”に警戒するようにお達しが!」

 

「……空? 武装ヘリかしら。」

 

 

アコの言葉を聞き、口元に指をやるヒナ。

 

トリニティで戦闘機の開発が行われていることは彼女も知るところではあるが、わざわざ本部。雷帝のおひざ元から“戦闘機”ではなく“空”と明言されたあたり、他に何かあるのかもしれない。地上への砲撃を止め、対空用へとその仰角を上げ信管の調整を行う必要があるだろう。

 

それに、砲兵隊で全て終わってしまっている現状。歩兵や戦車の方から文句を言われる可能性が出てくる。砲弾も無限ではないし、少し砲身を冷却させておきたいという意図もあった。

 

 

「前の連中に伝えて、“砲を休ませるから手柄は譲る”と。兵たちには休息、砲台には“対空防御”の指示を出しておきなさい。」

 

「かしこまりました! 補給部隊が持ってきた『新型対空砲弾』はどうしますか?」

 

「……一応、準備だけはしておいて。」

 

 

そう言いながら、“眼玉”のマークがかかれた砲弾を後方から運んでおくよう指示するヒナ。

 

 

(正直、戦争はしたくない。けれど今のゲヘナには“雷帝”に反抗できる者なんていない。政治でも、武力でも。すべての力に於いてあの人は私達の遥か上に至ってる。もっと、沢山守るべきものがあれば旗印にでもなって戦ったのかもしれないけど……。)

 

 

もしそうであっても、結果は見えていた。何せ雷帝を除いたすべてのゲヘナ生徒が彼女に立ち向かったとしても、確実に負けると信じられるほどに、離れた実力差があったからだ。高1の中でトップの戦闘力を持つヒナであっても、成長しきった自分でも勝てないと思わせられるレベル。ヒナ含めて、“雷帝に逆らう”という思考は持てない程になってしまっていた。

 

そして未だ雷帝によって処刑された存在はいないが、あの人ならばしてもおかしくないと思わせる様な“覇気”がそこにあった。逆らうことを“考えること”すら、恐ろしい。

 

 

(職務は、全うする。けれど……、誰か“アレ”を止めてくれれば。)

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

「っ! 砲台が止まった! 冷却か! よし、全員前に出るぞ! 本隊が到着するまでに可能な限り削る! 私ら2年は前の歩兵を! 道は作ってやるから、ハスミたちは戦車をやれ! 後ろは気にすんな、誰一人そっちには行かせねぇ! 砲塔の側面に張り付いて中に弾を叩き込め! 歩兵の前にいる戦車なんかカモだ!」

 

「しゃぁぁぁ!!!」

「つっこめー!」

「悪魔の存在は駄目! 磔刑ぇぇえええ!」

 

「は、は、ハスミちゃん! どどど、どうすれば!」

 

「私が先導します、先週行った対戦車訓練を思い出しながらやれば、大丈夫です。最悪、私一人で片づけますから。」

 

 

不安そうな目を向けてくる同級生たちにそう言い聞かせ、装備の点検を促す。

 

自身も残弾の確認を終えた後。指示を出された部隊長に続く先輩たちと同じように、急遽作った塹壕から飛び出していく。既にこの地は、瓦礫の山と化してしまった。幸いなことに住民たちを避難させることは出来たが、これ以上の被害を避けるためには、戦わなければいけない。

 

 

(……ゲヘナめ。)

 

 

今日は、なんてことない普通の日だった。寮からツルギと共に登校し、いつものことではあるが少し様子のおかしいマルコと挨拶し、正実の部室へ。配給される物資や弾薬を受け取り、パトロール予定であるゲヘナとの国境線辺りまで先輩や同級生たちと向かう。

 

確かに同学年の子たちからは、ツルギやマルコと共に『正実の三本柱』なんて呼ばれていますがまだ経験不足。不良の退治は出来ますが、トリニティに住まう人々に安心を与えるという“基本”の業務はまだ不得意です。そのため少しでもその経験を積もうと出発したのですが……。

 

待っていたのは、砲弾でした。

 

 

『ハスミ! 避難指示出せ! 私ら2年は前に出る! 一年は端から端まで町を見てこい! 瓦礫に埋まってるかもしれねぇ、引っこ抜いて後ろへ送れ!』

 

『わ、解りましたっ!』

 

 

言われたままに動き出し、何とか市民を避難させ、前線へと戻る。そこには砲撃に耐えるため瓦礫を寄せ集め、塹壕を掘った先輩たちの姿が。幸いなことに死者はいないようでしたが、直撃を喰らったのか意識を失った方が数人。すぐに反撃に移りたかったのは確かだが、砲弾の雨が厄介すぎた。

 

あれだけの砲撃が続いたのならば、絶対に冷却期間が存在するはず。

 

砲弾の雨に耐え、破壊されゆく町を眺めるしか出来なかった私達にやって来た、ようやくの好機。

 

 

(私は、ツルギの様に強くはない。)

 

 

高校に上がってからもどんどんと強くなった親友の一人、剣先ツルギ。敵から受けた衝撃を利用しその体力を回復させ、敵を倒すことで体力のみならずスタミナ、そして銃弾の威力を上げられるようになってしまった『殺戮天使』。もう一人の友人が言うには“神秘”と呼ばれる私達に宿るエネルギーが原因とのこと。

 

幾ら攻撃しても倒れず、敵がいる限りどんどんと強くなっていくのが、彼女。私では、いつの間にか勝てなくなってしまった相手。

 

 

(私は、マルコの様に硬くはない。)

 

 

いつの間にか、私を抜き去ってしまった親友の一人。桃玉マルコ。先ほどの“神秘”を込めた攻撃でなければ碌なダメージを与えることが出来ない耐久力。そして瞬発的な力であれば私達三人の中で一番破壊力が高い。一応銃は持っているが、撃つよりも殴った方が確実だと言い始めたトリニティの『化け物』。

 

踏み込みの速度で敵わず、距離を離しても詰められ、接近戦で彼女に勝てることはない。私では、いつの間にか勝てなくなってしまった相手。

 

確かに、技術面では大幅に勝っているのだろう。知識や指揮能力では、私が上ではある。けれど自身が、羽川ハスミが望んでいた『隣に立つ』には程遠い。

 

前に、進み続けなければならない。

 

 

 

 

(こんなところで、ゲヘナ如きに負けていい筈がないッ!)

 

 

 

 

「クソ羽野郎だ! 撃て撃てェー!」

 

 

「悪魔を地獄に叩き返せッ! ハスミッ!」

 

「そこッ!」

 

 

指示を受け、即座に“指揮官”らしき存在の脳天に、走りながら弾丸を叩き込む。同時に残り5発を近くにいた服装が豪華な生徒、おそらく“次の指揮官候補”に叩き込むことで、敵の指揮を破壊する。反撃として飛んできた弾丸をローリングで回避しながら、弾を再装填。勢いを落さずに前進していく。

 

 

「よくやったハスミ! おい2年! 1年にキルスコア負けるぐらいなら正実辞めちまえ!」

 

「はぁ!? ふざけんなよ隊長! 雑兵5そっち行ったぞ! 全員やれよな!」

「着剣ッ! 叩き込めぇぇ!!!」

「手榴弾を投げろー!」

 

「ぎゃー!」

「ばか! 叫ぶ暇あったら投げ返せ!」

「わ、解ってらぁ!」

 

 

ゲヘナから投げられた手榴弾。

 

正確には正実が投げ込んだ後に投げ返されたソレを蹴り飛ばし敵の頭上で炸裂させながら、周囲の状況を確認する。敵の陣容は、歩兵、戦車、砲台の三つ。最低でも戦車ぐらいは片づけておきたいが、後から合流するであろうツルギやマルコ、本隊のことを考えると砲台も削っておきたい。こちらの最終目標は、そこだ。

 

……おそらくだが、虎の子の戦車を温存するために後方に下げていたのだろう。けれど同士討ちを恐れるあまりその機動力と砲撃力を活用できないでいる。確かに戦車から弾は飛んでくるが、どこか控えめだ。歩兵による包囲をメインとし、戦車を支援砲台代わりにしているのだろう。

 

騎兵の様に一撃離脱を繰り返されれば面倒だったが……、これなら崩せる。

 

 

「付いてきてください。」

 

「は、はいっ!」

 

 

距離を詰めてきていたゲヘナ兵に拳を叩き込み、頭を掴んで敵集団に投げ込みながら、先輩から任された仲間たち、同級生たちに指示を送る。相手に自身の立場を教えることにはなるが、関係はない。相手が銃口を向けるよりも素早く照準を合わせ、弾を撃ち込み、それでも倒れなければ膝を入れていく。

 

そもそもの相手の練度が低いせいか、包囲の数は多いが先輩方の練度であれば耐え、同時に注意を引き付け続けることが出来るだろう。その間に頂いた指示通り、戦車隊を無力化するべきだ。

 

 

(しかし……。なぜ歩兵はゲヘナの主力、風紀委員会の制服ではないのか。練度から見ても、搔き集めの雑兵に近い。かといって戦車の方は万魔殿のマークが入っている。本来は戦車で歩兵の介護をするつもりだったのか?)

 

 

いくら強大な学園であるゲヘナやトリニティでも、保有できる戦力には限界がある。治安維持に割ける予算も、外敵に備えるための予算も限られているのだ。そう考えれば、主力である風紀委員会へのダメージを抑えるために、一般からかき集めた雑兵を用意するのも解る。

 

となれば、この場にいない風紀委員会はどこで何をしているのかが疑問になるが……。

 

 

(今は戦闘に集中しなければ。)

 

 

そんなことを考えながらゲヘナの歩兵に膝を叩き込み、無理矢理吹き飛ばすことで即席の足場に。

 

追加でその開けられた穴を塞ぐために走り寄って来るゲヘナ兵に向け、スカートの中に隠していた手榴弾をピンを抜いた後に少し寝かせてから投擲して処理。それまで応射程度しか出来ていなかった同級生たちを包囲網から突破させる。

 

 

「先輩たちが抑えてくれます、私達の仕事をしましょう。」

 

「り、了解ッ!」

 

「注意を引きます、回り込んでください。」

 

 

急いで爆弾を取り出している同級生たちを横目に、包囲網から抜け出してきた私たちに照準を合わせ始めた戦車たちを見やる。……歩兵よりも練度は上。ならばまだ、やりやすい。

 

 

「行きます。」

 

「え、ちょ! ハスミちゃん!?」

 

 

背後から聞こえる声を無視し、前へと踏み出しながらトリガーを引く。

 

ちょうど装填し終わった戦車の砲塔。砲口の中へと私が放ったライフル弾が消えていき、着弾。大爆発を引き起こす。車両はお陀仏になるが、この程度であればヘイロー持ちが死ぬことはない。弾丸ひとつで戦車を倒せるのだ、これほど良い“狩り”はないだろう。

 

少し前までならば、銃弾の威力が足りずわざわざ対戦車ライフルを担ぎ出さねばならなかったのですが……。

 

 

(神秘の運用、マルコに無理矢理教わっておいて良かった。)

 

 

マルコが熱を出した後に辿り着き、それを見て自力で気が付いたツルギ。置いて行かれてはたまらないと、ツルギよりは言語化の得意なマルコを縛り付けて無理矢理聞き出したものだったが……。これのおかげで大分選択肢が増えた。ツルギの様に“異能”となるほどまで伸ばせてはいないが、弾の威力が上がるだけでも十分だ。

 

 

「次。」

 

 

飛んできた戦車の弾を首を逸らすことで避け、相手の給弾が終了した直後にトリガーを引く。

 

この場にいる戦車は、32台。砲塔を狙われることが解れば、弾丸ではなく“轢き殺す”ことにシフトするだろうが……、私は一人で戦っているわけではない。

 

 

「は、ハスミちゃんに続けー!」

「キャタピラ取ったどー!!!」

「えっと、えっと! 蓋開けてピン抜いてポイして閉める!」

 

「は、おま! いつのま、ぎゃぁぁぁ!!!!!」

 

 

キャタピラの車輪に、おそらく先ほど拾ったのだろうゲヘナ生徒の銃を突っ込むことで無理矢理動きを止める。すぐに復帰されるだろうが、一瞬の隙さえあればヘイロー持ちの中学生であろうとその装甲の上に飛び乗れるのだ。後は戦車の覗き穴を無理矢理こじ開け、手榴弾でも投げ込んでやればいい。

 

 

「ばか! こういう時は備え付けの機銃で……、アレ?」

 

「対処済みです。」

 

 

追加で6両ほど破壊しながら、ようやく戦車付きの機銃を乗せた車両が動き始めますが、対歩兵能力のある車両には優先して弾を撃ち込んでいる。既にその銃口は私の弾丸によって埋められており、その機能を果たすことは出来ないだろう。

 

……こういう、車両との戦いは“婆や”さんから叩き込まれましたからね。慣れているのです。

 

 

「これで……、最後。」

 

「え、戦車の出番もう終わ、びゃぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」

 

「や、やった! 倒せた―!」

「私2両!」

「3両もやっちゃったもんね~!」

「……ハスミちゃん一人で20以上やってね?」

「わ、私らチームでやってんのを一人で? はえー。」

 

「皆さん、喜ぶのもいいですが、後方の先輩方に救援を……、ッ! 危ないッ!」

 

 

マズルフラッシュを感じ、狙われたであろう同級生の間に滑り込む。

 

制服の裏に装甲を貼っている腕で受け止めたのだが……。この重さが抜ける感じ、割られた。神秘を流し込んで能力の向上をしていたのにも関わらず、だ。

 

 

「あら……、流石正義実現委員会とでもいうべきかしら。」

 

「……皆さん、下がって先輩たちと合流を。」

 

「え、でも。」

 

「すぐにッ!」

 

 

私達の眼の前に舞い降りる、白い悪魔。

 

肌で感じられる威圧感。

 

強敵、だ。

 

 

「今は砲兵を任されているわ、空崎ヒナ、よ。……どう? こっちも手傷を負ったわけだし、ここで手打ちというのは。この方面軍だけだけど、引いてあげるわ。確か……、『三本柱』の羽川ハスミ、よね? 貴女ならばこちらも理由になるわ。“砲台”を守るため、ってね。」

 

「……応じるとでも? ここで貴女を落せば砲台も破壊できます。」

 

「でしょう、ね。なら……」

 

 

私の名を知るゲヘナの生徒。

 

ヒナと名乗る彼女が、構える。

 

 

「少し、眠ってもらうわ。」

 

 

 





〇雷帝のビックリドッキリメカ『FlaK 100』

過去、ドイツが使用していた砲台がキヴォトスの流れ込み生産されていたのを、雷帝が魔改造を施した者。100の文字は百年後も活躍し続けるMS……、と言うことではなく単純に毎秒100発での攻撃か可能という所からとられた。外見や重さなどは従来のFlakシリーズと同じだが、威力は意味不明なレベル。対空も対地も対戦車もなんでも可能。自動照準なので給弾以外は勝手にやってくれる兵器。8.8㎝の弾が機関銃のように飛んでくれば流石のキヴォトス民も死ぬので本当に危険。雷帝は知らないが、ゲヘナも普通に殺しはしたくないので作中では“道を作る”ためにしか使用されない模様。

確かに音速で飛ぶ戦闘機を落すことは難しいが、対応策は存在するらしい。


〇そのころのマルコ

「ツーちゃん! ハーちゃん助けに行くためにこれ乗っていくよ!」
「いやもう車回してんだが……、これって。これか?」
「そう! ウチの『学園』の主力マルチロール機! 『PROTO DRAGOON』! 取っ手が付いてるから掴んで乗れるよ! とってもはやくて加速もやばいの! すぐ着くよ!」
「それ乗るって言うより掴まるでは? というかコレどれだけ出るんだよ。」
「ハイドラ2ちゃん~?」
「えっと、ドラグーンの方は最高でマッハ5っすね。ハイドラの方でもマッハ3ぐらいは出せるっす。 あ、まだプロト機なんでもっと上がっていきますっすよ!」
「……掴まれんのかソレ?」
「マルコちゃんが実証済みでっす!」
「ならいけるか……。よし、エアライド隊だったか? 悪いがハスミの所まで連れて行ってくれ。」
「拝命しました。作戦空域の外れですが、最速でお届けします。ただ本当に取っ手しかついていませんので、滑落した場合は救助できませんのであしからず。」
「…………ほんとに大丈夫なんだよな? マルコ?」
「私いけたんだし、ツーちゃんもいけるっしょ!」
「ほんとか? ……まぁ、親友迎えに行くんだ。これぐらい何でもない、か。」
「そ! 私が『知ってた』ハーちゃんより大分強くなってるから大丈夫だとは思うけど……、待っててねハーちゃん!」



〇まだ連邦生徒会会長ではない超人

わ、わぁ~~ん! 先生に怒られましたァ!

た、確かに確定金封筒1,青封筒9はダメですよね……。仕方ありません! 私も鬼じゃないですし、そっちが特別なイベント中なのも把握済みです! かなりガチャ運頂いたのは確かですが、おかげさまで何とかなりそうです! 外から色々引っ張ってきちゃってるゲヘナとトリニティの問題はありますが、そこは私が何とかして見せましょう! というわけで良い感じに調整しておきました! 一度引いてみてください!!!



【10回募集】



金 青 金 金 金
金 金 金 青 金



ふぅ! 仕事しました!!!

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