ピンク玉の神秘   作:サイリウム(夕宙リウム)

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18:おこった!

 

「ぎ、ぎぇぇぇえええええ!!!!!!!!!!」

 

「あ、あはははは!!! やっばい死ぬ! あはははは!!!!!!」

 

 

はぁーい! 桃玉マルコだよ! 今ね、戦闘機の上に掴まって空を飛んでるの! 見て見て、すっごくお空が綺麗……、うん、速すぎて見えねぇわ! マッハ5ってヤバいわね! もうね、空気がね! 全身を凄い勢いで叩きつけてくるの! さらに! 音も! 遅れて! 聞こえてくるんです! え、そもそも音聞こえないだろうって? あはー! その通り! ともかく私の神秘がぽよ様じゃなかったら死んでたねぇ!

 

 

『ドラグーン1から理事長へ。速度を下げましょうか?』

 

「ううん、そのまま! 最大速で!」

 

『お連れの方、ドラグーン2の方に搭乗為されたご学友の叫びがコックピットまで響いているそうですが……。』

 

「あ、それ通常運転。」

 

 

骨伝導タイプのイヤホンから聞こえてくる航空部の隊長ちゃんの声。うんうん、初めて聞くとビビるよねぇ。私とかハスミことハーちゃんは慣れてるから急に叫び出しても何考えて何言いたいかすぐわかるんだけど、傍から見ればちょっとした恐怖体験の様だ。

 

そんな注目の人。私の幼馴染で親友の一人である剣先ツルギ、通称ツーちゃんは戦闘時や感情が高ぶるととってもハイテンションになる。もう心臓が縮み上がる程の絶叫を聞かせてくれるのだ。とっても素敵でしょ? ほらお前もツルギちゃん最高と言え! 今はまだ女子高のわちゃわちゃ感が残ってるけど、“先生”が来て恋する乙女バージョンになったらトンデモナイことになるんだぞ! ツーちゃんのシャウトは世界を救う……!

 

 

『あ、はい。……ドラグーン2、知恵を貸せ。』

 

『ドラグーン2から1へ。こちらはそのシャウトで何も聞こえない。残念だが救援は不可能だ。』

 

 

ん~? そんな真近で聞いて素晴らしさが解らないなんて人生損してる! 今度私が勝手に撮ったツーちゃんのシャウトが右から聞こえてハーちゃんの怒号が左から聞こえる私愛用の睡眠音声をプレ『こちらドラグーン2、とても素晴らしいかとっ!』ならよしッ!

 

っと、脱線しすぎた。

 

そんな彼女の神秘なんだけど……。私と付き合ってずっと模擬戦してたせいかちょっと意味の解らない進化を遂げていてね? なんかダメージを受けるたびにその分体力とスタミナが回復して、敵を倒すと神秘量が一時的に上昇して攻撃力が上がるって途轍もないことになっちゃったの。つまり一撃で沈めない限り倒せないっていう『トリニティの殺戮天使』の名に恥じない性能になっちゃったってわけ。

 

つまりそんな彼女ならまぁ戦闘機に掴まっても大丈夫でしょ! ってことですね!

 

 

「ま、マルコぉぉぉおおおおおおおおお!!!!!!!!!」

 

『名前叫ばれてますよ、理事長。耐えれても辛いのでは?』

 

「あはー! ……後で折檻されそ。」

 

 

とまぁ私も気楽に喋っているように見えるが……。とんでもなく体が痛い。

 

普段ぽよ様から流れ込んでいる神秘で全身を強化して、ようやくギリ耐えれるというレベルの風圧。少しでも気を抜けば取っ手から手を放してそのまま墜落してしまいそうだ。まぁ私もツーちゃんも落ちたぐらいでは死なないが、打ち所が悪ければ骨折ぐらいはするだろう。……まぁツーちゃんは即時回復するけども。

 

それに、私は私で別の問題。“神秘不足”が残っている。

 

 

(これくらいなら問題ないけど、まだ飢餓感がなぁ。)

 

 

ぽよ様の方は全くそんなことないし、そもあの方は別に大量に食べる必要はない。少量でも満たされればお食事を止めることが出来る方だ。つまりこの感覚は、私自身の問題。

 

そも彼は急に『これまでの100万倍送ってください!』って言っても、即座に送って下さるだろう。けれど確実に受け止める側の力が残っていないのだ。ビナーの戦いでほぼ使い切っちゃったって感じ。一応補給したおかげで軽い戦闘は出来そうなのだが、長時間は不可。戦場で何か新しく神秘を取り込む必要がある。

 

……これも全て、私の未熟さに起因する。

 

 

(ほーんと、まんまる様はすげぇや。)

 

 

おそらくだが、これまでの100万倍! でも彼にとっては体調に影響のないレベルの神秘量。

 

最近は少し慣れてくださったようだが、そもそも私に神秘を送ると言うことは、ぽよ様にとっては顕微鏡をのぞきながら細菌レベルの穴に紐を通すのと同等の難易度。ビナー戦でぽよ様のお腹が空いたのも、私に合わせて神秘量を適宜補充してくださったからに過ぎない。

 

それほど彼は、規格外なのだ。……まぁ本人はそんな力の大きさなんて気にせず毎日楽しくやっていらっしゃるけどね。

 

 

(いつもならお力を貸してもらえただろうけど……、今はぽよ様もお取込み中。私個人の力、いや私とみんなの力でこのキヴォトスで起きた戦争を、キヴォトスの力で収める必要がある。原作で聞いたこともない雷帝による宣戦布告だけど……。やるしかないのだ。)

 

 

幸いなことに、奴さんなんか強力な砲台を持って来てくれているのだという。それにどれだけ神秘が込められているのかは解らないが、オーバーテクノロジーであるならば保有神秘もそれなりに多いはず。

 

つまり神秘の現地調達が可能ってわけよ。

 

 

(その辺りも上手ーく考えて、戦っていかないとね。)

 

 

っと、そろそろだね。

 

 

『理事長、降下地点まで残り30秒。一旦速度を落とし、機体を反転させます。……本当にパラシュートなどなくてよかったのですか?』

 

「大丈夫! ツーちゃん、準備出来てる!?」

 

「ぎぃぃぇぇうぉ、ぎゃははあはははははッ!!!」

 

「うんうん! おっけーみたいー!」

 

『悲鳴というか、おかしくなって叫んでいるようにしか聞こえないのですが……。いやこの速度で叫べてる時点で相当? ……失礼。カウント開始します。』

 

 

でしょー! さっすがツーちゃん! ちなみにさっきの声は私への強い非難の声と罵倒をフルミックスして、声のハリの感じから肉体的には常にフル回復してるって感じだね! ……精神へのダメージ? マルコちゃんしーらない!

 

さぁさぁハーちゃん! すぐお助けに行くからねー!

 

 

『3、2、1。降下ッ!』

 

 

 

 

 

「マルコ、エントリーッッッ!!!!!」

 

「ぎびゃははははは!!! 殺すッ!!!!!」

 

 

 

誰を……、あ、私?

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ッ!」

 

「……やる、わね。」

 

 

トリニティの国境線の一つ。ゲヘナとの戦端が開かれたそこでは、未だ2人の戦いが続いていた。

 

将来ゲヘナにおける最高戦力、風紀委員会の委員長となる空崎ヒナ。

 

とあるピンク玉の介入によって正史よりも格段にその能力を叩き上げた正実副委員長となる、羽川ハスミ。

 

両者ともにその実力を高く買ったことで様子見から始まったそれは……、誰も入り込めない程の苛烈な戦闘へと変化していた。羽川ハスミ、彼女の不利という形で。

 

 

(ゲヘナにこんな強者がいたとは……! もっと、外に目を向けるべきでしたッ!)

 

(想像以上に、同格。そして“格上”との戦いが上手い。少しでも緩めれば、持ってかれる。)

 

 

込められた神秘によってビーム兵器と化したヒナの銃弾たちがハスミに襲い掛かるが、彼女はそれを最低限の動きで躱し、応射し、距離を詰めていく。的確にヒナの指や急所を狙うことで相手の集中力を削ぎながら近づき、銃が溢れるあまりその多くが接近戦を苦手とするキヴォトス民に効果的な0距離戦闘を挑んでいく。

 

対してヒナは、ただ不動のままそれを受け、殴り返し、銃弾を撃ち込んでいく。神秘量は格段にヒナの方が上であり、その扱い方も上。好む銃器が重機関銃ということもあり一点に重心を落しながら弱者を落し、近づいてきた強者にはカウンターを喰らわせる。そんな彼女の得意戦術に嵌ったハスミを排除しようとするが……、決まらない。

 

そもそもハスミは、絶叫を上げ相手を怯ませながら超至近距離でショットガンをぶっ放してくる幼馴染と、急に得たタフネスを存分に使い距離を詰めた途端こちらの銃器をもぐもぐし始める様な幼馴染とずっと競い合ってきた。自然と接近戦の経験値は溜まり、同時に“距離の管理”に関しての経験を多く得た。

 

更にハスミよりも神秘の扱いが上手い二人に追い抜かれぬように、可能な限り多くの師から様々な技術を習得してきたのだ。たとえ初対面の相手だろうが、それが格上だろうが、簡単に負けてあげられるほど、彼女は弱くなかった。

 

けれどどうしても神秘の差、スタミナの差による継続戦闘能力の差は、避けられない。

 

 

「そこ」

 

「……ッ!」

 

 

連続して続く攻防がハスミの体力を削り、それによって生まれる疲労。自然とそれは彼女の体を蝕み、本来ならば間に合っていたはずの回避を、不可能とさせる。

 

一瞬で視認できるほどの神秘がヒナの拳に込められ、腹部へと叩き込まれる致死の拳。

 

並みの生徒であれば気絶どころかその先すら見えてしまうほどの強烈な攻撃であったが……。即座にハスミは軽く飛び上がることで自身を空中へ。腹部へ力と神秘をありったけ送り込むことで、防御に徹する。

 

 

「ぁぐ」

 

 

けれどその程度では、流し切れず。吹き飛ばされ、地面へと叩きつけられるハスミ。

 

そのまま倒れ込みそうになった彼女であったが、意志の力だけですぐに立ち上がり、その場から離れる。直後彼女が倒れていた場所に突き刺さったのは、幾重にも放たれていたヒナの弾丸たち。喰らっていれば、そこでハスミは終わっていたであろう。

 

 

「……ゲヘナでも、相当なやり手なのでしょうね。貴女は。」

 

「そのせいで使い倒されているけれどね。あぁでも、ゲヘナの生徒会長サマからすれば脅威ですらない上に弱き愛でる対象、らしいわよ。……トリニティに言っても仕方ないだろうけど、私としては早めの降伏をお勧めするわ。」

 

 

雷帝の治世がどうなるかは解らないが、このまま戦が続けばトリニティが焼かれるのは必定。雷帝が生み出し保有するオーパーツを超えた兵器たちは、それを扱うゲヘナの者ですら躊躇してしまうものが多い。そんな恐怖に住処を焼き払われるのならば早く首を下げた方が利になるだろうと口にするヒナ。……けれどいわばただの降伏勧告。恨み合ってきたトリニティが、それを受け入れるとは到底ヒナは思っていなかった。

 

それを示すように、返って来たのは言葉ではなく弾丸。それをヒナが腕で弾くことで、戦闘が再度始まる。

 

けれど戦況は、やはりハスミが不利のまま。

 

 

(やっと相手の戦い方が解って来た、けれどコレを一人で相手するのは……!)

 

 

神秘によって光弾と化した弾丸、当たればタダでは済まないだろうソレを走りながら回避していくハスミ。

 

自然と普段ともに戦っている二人の存在が脳裏をかすめるが……。今この場にいない友を勘定に入れることは出来ない。そもそもトリニティとゲヘナが接する国境線は広く、先ほどヒナが『この“方面軍”における砲兵隊の隊長』と言ったことから、戦場はここだけではないのだ。もっと過激な戦闘が行われている場所もあるかもしれない。

 

一年とは言え、二人とも正実の上位層。ハスミ自身もそれに含まれているため、この戦線はまだ“持つ”と上層部が判断していた場合、この地に送られてくる救援はそれほど期待できないという可能性もある。

 

つまり、彼女は今ある手札だけで眼の前の存在。空崎ヒナを打倒、もしくは撤退させる必要があった。

 

 

(相手の勝利条件は私の打倒。こちらの勝利条件は……、彼女の無力化。もしくはあの“砲台群”の破壊。けれど彼女がいる限り、後者は不可能。かといって先輩方を頼ろうにも……。)

 

 

一瞬だけ背後に目をやるハスミ。そこでは彼女の先輩と同級生たちがゲヘナの生徒たちとの戦闘を繰り広げていた。確かに練度だけで言えばこちらが圧倒的に上なのだが、ゲヘナ側には数がいる。日々闘争に明け暮れているような治安の学園のため、一般生徒であろうとその戦闘力は決して低くない。国民皆兵に近いようなその気質が、数という暴力をもって正実たちに襲い掛かっていた。

 

此方の様子を認識した先輩方がハスミを支援しようと動いてはいるのだが、ゲヘナたちに阻まれ出来そうにない。

 

 

(一人で……、打開の道は……。)

 

「よそ見とはいいご身分ね。」

 

「ッ!」

 

 

必要のない視線の動き、それによる思考のブレ。ほんの一瞬だけだが、彼女たちにとっては無視できない大きな隙。いずれ学園最強と謳われる彼女がそれを見逃すはずもなく……。ハスミの眼前に。突如現れるヒナの肉体。先ほどまで彼女がいた場所には、消し飛ばされた地面の跡が。

 

踏み込まれた。

 

そして、ハスミの腹部にもう一度叩き込まれるのは。“銃口”。これまで見たことのない程の神秘が集まり。

 

解放。

 

悪魔の“終幕”が、天使を襲う。

 

 

 

 

「がッ!?」

 

 

 

 

ハスミのヘイローが明滅する。

 

先ほどのダメージも重なり、意識を失いそうになる彼女だったが……。

 

 

(終われる、かァ!)

 

 

意志の力だけで銃を払い、自身の膝をヒナの顔面へと叩き込む彼女。

 

どれほどの強者であろうと意識を失うであろうヒナの攻撃、それを放ったことで彼女も少し気を緩めてしまったのだろう。そのせいでハスミの攻撃に反応できず、ノーガードで受けてしまうヒナ。勢いそのままに、後方へと吹き飛ばされ距離を作られてしまう。

 

けれどハスミの膝に残る感覚は、軽い。何とかまだ立ててはいるが、未だヘイローが明滅していることから、限界が近い。これ以上の戦闘続行は厳しいだろう。

 

 

「……驚い、た。凄いのね、貴女。」

 

「はぁ、はぁ、はぁ……。」

 

「素直に称賛するわ。ここが戦場じゃなければ……、いえ。ごめんなさい。」

 

 

有り得たかもしれない可能性を口にするヒナだったが、雷帝が戦争を始めてしまった以上。ゲヘナとトリニティの仲が悪化することはあっても、改善することはないだろう。考えるだけ無駄であろうと判断した彼女は口を閉じ、再度銃を構える。無意識で行っていた神秘を込める過程は行わず、ただの弾丸を放とうとする。

 

ここまで戦ったハスミへ出来るだけ痛みを与えないように、ヒナなりの配慮だった。

 

けれど。

 

彼女の耳に響く、聞き慣れぬ破裂音。

 

キヴォトスでは聞くことのない筈の、ソニックブームだ。

 

 

「ッ! 戦闘、……アコッ!」

 

 

急いで通信機を起動し、彼女の副官に通達。全軍に対しての砲台の防空仕様への変更を指示しようとしたが……。通信機の電源を入れた瞬間。頭上から強大な二つの殺気を感じ、即座にその場から離脱するヒナ。

 

 

その直後、地面に叩きつけられる黒と桃の弾丸。

 

轟音と共に地面を圧壊させ、強大なクレーターを作り上げる二人。

 

けれどそれほどの衝撃など、なんてことない様にその“影”が、動く。

 

 

トリニティが誇る、三本柱の結集だ。

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ハスッ、……マルコッ! 動くな!」

 

「あはー、な ん で?」

 

 

自身がそうマルコに叫べていたのは、奇跡に近かった。それほどまでに、危なかった。

 

ツルギ自身の肉体に宿るその神秘によって、全身に襲い掛かる衝撃を即座に回復させ、結果的に無傷にする。着地と同時にその手で土煙を払い、周囲の状況把握。空からハスミの存在を確認できたのは確かだが、その戦況までは解らなかったからだ。

 

故に、今にも気絶しそうなほどに追い込まれたハスミを見た瞬間。声を上げてしまう。

 

普段は気恥ずかしくて口に出さないが、ツルギ自身にとって彼女は大事な親友の一人。幼いころからずっと一緒で、お互いの考えなどすぐにお見通し。もし友に何かあればすぐに駆け付ける様な関係性で、何物にも代えがたい二人の存在。

 

そんな大事な友、ハスミを傷付けられたのだ。

 

ゲヘナとトリニティなどという自身にとってどうでもいい関係などこの場では意味を為さない。ただ友をやられたことへの怒り。戦争という互いの兵には罪を追求することの出来ない特異な環境であることを理解しているツルギであっても、その感情は抑えられない。思わず怒りのままに体が動き出そうとした瞬間。

 

口から飛び出たのは“制止”の言葉。脳裏に過った可能性が、それを為したのだ。

 

思わず、同様に着地した彼女の方を見てみれば……。

 

 

 

 

 

 

異様なほど黒く染まった、マルコの眼。

 

 

 

 

 

 

軽い口調とは真逆の表情。感情など一切感じられぬほどにまで“怒りと憎しみ”に支配された者の眼。普段陽気でおちゃらけている彼女からは一切想像できない激情に駆られた目。

 

けれどその心の中で“何か”が肉体を引き留めているのか、此方の問いに、まだ答えてくれる。

 

 

「退け。」

 

「ねーねーツーちゃん。なんで? な ん で?」

 

「私の獲物だ、譲れ。……それとも、もっとわかりやすく言えばいいか? お前、止まれないだろ。ハスミを連れて一旦下がれバカ。」

 

「あはー!」

 

 

全く抑揚のない声でそう笑うマルコ。

 

ずっと一緒の時間を過ごしていたから解ること。こいつは、桃玉マルコは“愛”が強い。

 

男女の恋愛を意味するものでなく、仲間への愛や友への愛が途轍もなく強く重い。本人はまだそれを自覚しておらず、よくある冗談のようにふるまってみせているが、私やハスミからすれば全然違う。何事も本音で言い合え殴り合いながらも笑い合える私達だから言えることだが、マルコのそれは“異常”だ。極端に、それを失くすことを恐れていると言ってもいい。

 

昔からそうだったし、当時は幼いころに両親を失ったせいでそうなってしまったのかと考えていたが……。もっと何か他のこと。マルコの“本質”に起因し、それが年々大きくなって行ったのだと今は考えている。とにかくアイツは、懐に入れた者に対して惜しみない愛情を振りまいているのだ。

 

大きな愛。彼女との関係性が深ければ深いほどに、注ぐ愛も大きく深くなっていく。

 

 

(それが反転した時、どうなるか考えればすぐに理解できただろうが。)

 

 

普段から色々と問題を起こすマルコだが、本人の意思で越えてはならぬ一線を踏み抜くことはない。

 

たまに不運に見舞われたり、本人のふざけすぎて途轍もない問題を引っ張って来ることもあるが。決して悪意を持って罪を犯すことはなく、殺しを手段として扱うこともなかった。ツルギ自身、マルコが裏で何をしているのか全て把握しているわけではないが……。その一線だけは越えていないだろうと、感じていた。

 

けれど何事にも例外がある様に、マルコにとって“友を傷付けられる”のは地雷に等しい。本来マルコが持っている愛が、倫理観を吹き飛ばしてしまうほどに反転し、敵に向かって襲い掛かる。その黒く染まり全てを吸い込んでしまいそうな目が、証明してしまっている。

 

今はまだ、“倫理”以外の何かが彼女を押し止めているようだが……。

 

放置すれば、やり過ぎる。相手がどうなろうと、それこそ肉塊になろうと止まらない存在になり果ててしまう。いくら戦時と言えどここはキヴォトス。友を殺人者にしたいと思うわけがなかった。

 

 

「もう一度いう、ハスミを連れて下がれ。ついでに後ろの先輩たちの手助けもして来い。」

 

「……あはー、しっかたないなぁツーちゃんは。」

 

 

まだ欠片ほど残った理性で、納得してくれたのだろう。ほんの少しだけ黒が緩んだ瞳をツルギに投げかけながら、ゆっくりとハスミの方へと向かっていく彼女。

 

未だマルコの中にはドス黒い感情が燃え上がりつつある。

 

それを収めるには……、少し手荒にするしかないだろう。幸いというべきか、本気を出さなければ不味い手練れ。戦いの相手と考えれば、十分すぎるほどの相手だった。

 

 

「まぁ私も、腸煮えくり返ってんだけどなぁぁぁ!!! ぎゃははあははははは!!!!!」

 

 

殺しはしない、気絶で止める。

 

だが“痛み”は覚悟してもらおうか。

 

 

 





〇トリニティの三本柱

正義実現委員会が誇る新一年生のトップ3名。既に高1の時点で「マルコ・ツルギ・ハスミ」抜きの正実と引き分け(制限時間切れによる決着つかず)に持ち込めるぐらいには強い。マルコはネームド級か一部の上級生しか使えない“神秘の含んだ攻撃”でもないと真面にダメージを与えられないし、ツルギは攻撃しても回復するし時間が経てば経つほど討伐数で強化されていくおばけだし、ハスミは意味わからん技量で無力化してくるのでもう色々と怖い。

ただ全員に弱点がないわけでなく、マルコは燃費が悪くもともと対危機レベルの敵を想定しているためか手加減が苦手、ツルギはまだ経験不足なことがあり意識外からの攻撃に弱く、ハスミはその技量に支えられた強さなので精神的疲労と決定力の不足というものがある。まぁ3年になる頃には全員改善して来るのだろうが……

そんな強さから、現三年のとある先輩が『これからの私達、マジ無敵。お前らはトリニティの柱になれ! あと東大に行け!』とふざけて言ったことで『トリニティの三本柱』が定着した。ハスミとツルギは解らないが、マルコは絶対に東大にはいけない。おべんきょきらい!


〇戦争に対するスタンス

・マルコ
はえー、やっば。とりま雷帝ぶん殴ってさっさと停戦しなきゃ……。もうこの作戦終わったらもう一度お空からフォールして突撃してやろっかな? もちろん服は頑丈なのを着て。……は? ハーちゃんがボロボロ? は? は? は? あいてヒナちゃ? は? ころ、ころ、ころ? は?

・ハスミ
まぁゲヘナに対する悪感情があることは否定しませんが、どちらかが消えてなくなるまで殺し合いたいわけではありません。町を破壊されたり先輩や友を攻撃された報いは受けてもらうつもりですが、それ以上は特に。あ、あと。私がやられて怒ってくれるのは嬉しいんですけど、ツルギ~! マルコ止めてぇ! それ! それ放置したら駄目な奴! 私気絶しそうだから本当にお願いしますッ!

・ツルギ
戦争って外交の一手段だし、兵である私たちは上の決定に従うだけだからな……。ゲヘナも考えがあってのことだろうし、戦っているゲヘナ兵も上の命令を受けてるだけだ。任された業務は果たすが、余計な感情は持ち込まないようにするつもり。……まぁ親友傷つけられて大人しくしてるほど私も“大人”じゃないが。あと普通にマルコは歯止め効かなくなるからやめろ? な? 悪いこと言わないから?


〇そのころの横乳

ヒナ隊長、砲台の防衛の為に出て行ったきりですけど大丈夫でしょうか……。確かにお強いのは理解していますが、心配です! かといってトリニティ相手に戦うのは正直……。せ、先日の顔に叩き込まれた拳がフラッシュバックして……。えっ!? なにこの音! 一瞬空に影が、ってヒナ隊長から通信!? けどお声が返ってこない……、緊急事態! そしてさっきの“影”! ぜ、全軍に通達します! トリニティの航空戦力です! 対空防御かいしぃ! あ、あと! 特殊弾頭! 目玉の弾も準備出来次第発、射してください! うてー! あと手が空いている者は武器持って私について来てください! 隊長の援護に回ります!



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