(ぽよ! ぽよぽよ! ぽよぉぉぉおおお!!!)
はい、わ、解っています。この度は大変申し訳なく……
(ぽーよ! ぽよッ! ぽよぽよ!)
い、いえ。そんな、お手を煩わせるわけには……! はい、はい。私自身で何とか致しますので。えぇ、決してそのようなことは致しません! た、確かに友や仲間を傷付けられると我を忘れると言いますか、キレちゃうといいますか、ぽよ様みたいに戦闘スイッチが入ると言いますか、入り過ぎて歯止めが利かなくなると言いますか……
(ぽよ!!! ぽよ!!!!!)
だ、大丈夫! 大丈夫ですから! もう落ち着いてますから! なにとぞ! なにとぞキヴォトスご訪問は勘弁願いたく……! 最悪ぽよ様がこっちに来ることでキヴォトスがポップスターに浸食されるとかも有り得てしまうので! あちらのヤバげな方々が弱き我らで遊ぼうとやってきちゃうので! 私がどうにもならないと判断するまでは! お許しくださいませ!
そ、それに。ぽよ様まだ『鏡』の捜索中でしょう? そんな折に御迷惑をおかけするには!
(ぽよ?)
あ、もう解決……。
……はぁ!? もう解決したの!? 早くないですか!? ついさっき鏡のこと聞いたばかりですよ!?
(ぽよー。ぽーよ! はぁ~い!)
いつもの通りなんか目の前にいたでっかい木をシバき倒して、なんか魔法使いみたいなのとかでっかいロボみたいなのとか、知らない間に敵対してた大王様を倒して。いつの間にか再会してたシャドウカービィと共闘して、彼からダークメタナイトが行方不明だってことを聞かされて、それを探していたらラスボスみたいなのを発見。とりあえずそのなんかドクロの親玉みたいなのを倒したら鏡を落したから、それを元の位置に戻しに行った、と。
……はえー、迅速。
(ん? どうしたカービィ。……あぁ、彼女か。)
(ぽよ!)
(すまないが一応彼女にも例の件を伝えておいてくれ。)
れ、例の件って……? あ、話の腰を折ってすいません。聞きます。
ぽよ様と仮面騎士卿の説明によると、ポップスターの願望器である“ディメンションミラー”を取り返すことは出来たが、敵の背後関係などがまだ解っておらず完全に解決したとは言い難いようだ。
ゲーム的に言うと、ストーリーはクリアしたけど裏ボスとかやりこみ要素には手を出していないという感じらしい。
それでメタ様が鏡を調査した結果、何でも“ディメンションミラー”自体の情報がコピーされてアナザーディメンションあたりに流れてしまったらしい。ポップスターから私たちのいるキヴォトスはまだぽよ様しか認識していないらしいのだが、アナザーディメンションがこちらに開いてしまった場合、運悪く鏡の情報が流れ込んでしまう可能性があるという。
(えっと。アナザーディメンションが不思議ちゃん空間というか、どの世界からも繋がる“道”みたいなものに成りうるので、“鏡”の情報が来ちゃたらヤバみってことですね!)
(そうなる。君たちの話を聞く限り、いくらコピー品でも対応することは不可能だろう。勿論違う世界に流れる可能性もあるため気にし過ぎる必要はないが……。有事の際はカービィ共々いつでも呼ぶといい。カービィのワープスターについて行けば、我がハルバードで出向くことも可能だ。)
わ、わぁ……。凄いことになって来たぞ。
いやまぁメタ様のお話的にキヴォトスに流れ着くのは宝くじの一等に当たるレベルの確率らしいが……。頭に入れておいて損はないだろう。なんせ今の私達には“鏡”への対抗手段がない。概念系の兵装があればまだ抗えたかもしれないが、ぽよ様でさえ複製できてしまう強大な神秘を御せる方法などこのキヴォトス単体で生み出せるわけがないのだ。もしかしたらリオちゃとかが覚醒して、彼女が生み出したハイパーアバンギャルド君が鏡をぶっ壊してくれるかもしれないが……。とにかく“今”は無理だ。
っと、お返事お返事。
ぽよ様にメタ卿! 了解しました! その際は何が何でもお呼びしますね!
(あぁ、息災でな。)
(ぽよ! ぽーよ?)
は、はい! 解ってますとも! マルコ、やり過ぎません!
「……ふぅ。乗り切った、かな?」
「マルコ?」
「あぁ、ごめんハーちゃん。」
ぽよ様達の気配が離れていくのを感じ、何とかお怒りを鎮めて頂いたというか、私が暴走しないと理解していただいたことを肌で感じつい言葉を漏らしてしまう。
そうすればまぁ私が抱っこしている彼女にその声が聞こえるわけで、心配そうに声を掛けてくれた。
いや、本当にごめんね。怖がらせちゃったでしょ? 怒りに呑まれかけてたのか、若干記憶があやふやだし。
私、ハーちゃんに乱暴してない?
「えぇ、大丈夫です。助けてくれて、ありがとうございますね。……でもマルコ、わざわざ抱きかかえなくてもいいんですよ?」
「ボロボロのハーちゃんに拒否権なし!」
「まぁ一人で歩けるか怪しいですしね……。とにかく、落ち着いてくれて安心しました。」
そんな風に私にお姫様抱っこされながら小さく呟くハーちゃんことハスミちゃん。
う~ん、恥ずかし! というかマジでツルギ、ツーちゃんが止めてくれてなかったらどうなってたか自分でも解んないや! それに、ぽよ様が怒ってくれなかったらまだ続いてただろうし、ほんと皆には感謝しかないです。
……あの時の私は、“バンダナ”ちゃんをビナーにやられた時よりも怒りに満ちていた。相手を完全に消し飛ばそうとしていたし、おそらく敵が消えてなくなるまで私は攻撃してしまっていただろう。欠片だけ残っていた倫理観と、『原作で深く関わる彼女、空崎ヒナを殺すことは出来ない』というわずかな理性のおかげですぐに飛び出すことはなかったが、あの場にツーちゃんがいなかった場合。何をしてしまったかは自分でも解らない。
(うーん、反省だなぁ。)
「気にすることはありませんよ、マルコ。確かに感情に支配されるのは良くないことかもしれませんが、怒ってくれたことは純粋に嬉しいのです。……まぁ、今度はその選択肢を最初から排除してくれれば、とは思いますけどね?」
「……ありがと。」
恥ずかしさのせいか少し声が小さくなってしまったが、お礼は口にしておく。
友達が人殺しになるとこなんか、誰も見たくなんてないもんね。確かに戦争中だけど、ここはキヴォトスなんだ。私達が“生徒”である限り、その手段を取ることは許されない。
っと! 反省はこれでお終い!
さぁーって! 後ろで先輩たちが戦ってるし! それ制圧して後退しましょうか! ハーちゃんハーちゃん! 武器借りていい? 私のメイン武装まだハンドガンなせいで飛距離足りないの! あとお腹空いて普通に自分の弾全部食べちゃった!
「良いですが私の愛銃は食べないでくださいね?」
「食べないよ!?」
「どうだか?」
そんな冗談を言い合いながら、彼女の銃を借り受け、照準を合わせ始める。ボロボロになってもまだ少しは動けるのか、リロードなどはハーちゃんの手伝いを受けながら。未だ戦い続ける先輩たちの援護のため、弾をぶち込み始めた。
親友の彼女みたいな超技術を持たない私だが、婆やに扱かれたおかげで大体の銃は扱える。頭部を狙うと外しちゃうだろうけど、的のデカい腹部辺りであれば何の問題もない。ハーちゃんがスカートの内側から取り出す弾を次々と放ち、数を減らしていく。
……というかいつの間にスカートを四次元ポケットにしたの? 明らかに出てくる弾の量おかしくない?
「正実の制服は良いデザインですが、市民の方々を威圧しないためか武器を収められる収納は少ないですからね。貴女の婆や様に教わり改造してみました。あらかじめ戦争と聞いていれば普段の銃弾だけでなく、近接用のサブマシンガンや爆弾、その他色々仕込んできたのですがね……。」
「ほんとにどうやって仕込んでるの?」
ウチのメイドさんもそうだが、ハーちゃんもスカートの中が4次元ポケットになっているようだ。本人の言葉によるとスカートの裏地に細工して、物品を固定して持ち運んでいるみたいだが、傍から見ればただのひらひらスカートにしか見えない。そう言えば制服の上にも追加装甲を縫い付けているって言うし、ハーちゃんがどんどんカチカチになっちゃう……!
っと、これで最後か。
そんなふざけたことを考えていると、ちょうどゲヘナ兵のラストを撃破することに成功した。私が到着した時点でも結構なゲヘナの歩兵たちが先輩たちを囲っていたが、気絶し倒れている数はそれより多い。合計で千ちょっとはいてもおかしくないだろう。そんな激戦だったせいか、それまで戦っていた先輩たちもボロボロだ。ハーちゃんみたいに立てない程追い込まれてる人はいないが、これ以上の戦闘は避けた方がよさそうだ。
その中の先輩の一人。たしか今日この地域のパトロールを管轄していた隊長の人が周囲を見渡し、味方以外の動く存在がいないことを把握した直後、私に声を上げる。
「救援感謝だマルコ! 本部はどうなってる!」
「既にゲヘナの宣戦布告を把握済みです。すぐに国境線に本隊が到着するかと。あと、私とナギちゃん様の秘密兵器がお空で作戦行動中です。制空権はこっちのもんですよ? ちなみにそれで無理矢理現着しました。」
「あの音と影は見間違いじゃなかったか……、空が味方で何より! 了解した! っし、これより私らは撤退する! 砲台が残ってんのは気がかりだが、弾も体力も限界が近い、おいまだ立ってる一年! ハスミに肩かせ! 敵砲の射程外まで下がるぞ!」
長時間にわたった戦闘のせいか、思わず座り込んでしまっている同級生の姿がちらほら。
けれど隊長センパイの声で飛び上がり、まだ余裕のある子たちがこちらによって来てくれる。ハーちゃんをゆっくりと地面に降ろしながら彼女たちに任せ、借りていた銃を手渡して返す。うんうん、ちょっとお腹を重点的にやられちゃったみたいだから、医療系のスキル持ちの子はそこ見てあげて。
「わ、私救急キット持って来てる!」
「肩貸す……、うんハスミちゃん高すぎ! 先輩代わって下さい!」
「磔刑死刑磔刑死刑……あ、私? あぁ、はいはい。ハスミ、ちょっと我慢してね。」
「それで、マルコ。お前はどうする。本来ならツルギも連れて全員で下がるべきだが……。行くのか?」
「んふー、解ってて聞いてるでしょ先輩!」
両手を腰に当てながら、胸を張って笑いながらそう答える。
先輩もそうだが、ここで戦ってたみんなの精神状態があまりよくない。顔色に強く出ている。まぁパトロールしてたはずが急に戦争になったんだ、キヴォトスだからそうそう命を落とすことはないけれど、極限状態に身を置いたときの疲労は凄い筈。ちょーっとでも明るいとこみせて元気振りまかないとね!
……さ、お仕事の時間だ。
本調子ではないが、神秘を全身に行き渡らせながら、戦闘へと意識を切り替えていく。
けれど途中で視線を感じ、その方へ。そこには肩を貸してもらいながらではあるが、何とか立った親友の姿があった。
「行くのですか?」
「もち! まだツーちゃんも戦ってるしね! ……まぁ参加したら怒りが再燃しちゃいそうだから突っ込むことはしないけど、エモノはまだいるしね。」
身長差のせいか上手く肩を貸せていないが、何とか同級生と先輩たちに体重を預けた彼女が、そう問いかけてくる。
ヒナちゃん、未来のゲヘナ最強ちゃんも上の指示で動いているんだろうし、本来は恨むべき相手じゃない。むしろ今後を考えるならば即座にその手を握り友好的に接するか、ゲヘナから引き抜いてしまってもいいレベルの力の持ち主。流石にそれをすると未来の風紀委員会が過労死しそうなのでしないが、仲よくするのに越したことはない相手だ。
でも、そう簡単に割り切りが付くほど私は大人ではない。“大人”ではなくなってしまった。私の心はそれを納得しきるまでもう少しの時間を必要としている。ぽよ様みたいに『一回殴って反省したみたいだから!』で受け入れられるほど私は無邪気でもない。……まぁ、原作知ってるとお話ししてみたい相手ではあるからね。
今は触れずにツルギ、ツーちゃんに任せるのが最適だろう。
「それがよいかと。……貴女たちに置いて行かれないように鍛えていたのに。ままなりませんね、全く。」
「だよねぇ、私も毎日ままならない。そも戦争なんて寝耳に水だったしさぁ。」
「えぇ、本当に。……マルコ、さっき返してもらったこの子。持って行ってください。」
「……いいの?」
ハーちゃんの視線が、その肩に掛けられた彼女の愛銃に向けられる。
「必要があるのならば、食べても構いません。けれど欠片でも、ちゃんと持って帰ってきてください。私が回復する前に、勝手に雷帝を叩きに行ったりすれば一生口きいてあげませんからね?」
「……うん、もっちろん!」
そう言いながら彼女の銃を受けとると、背後から響く爆発音。
どうやら砲台たちが対空射撃を始めたようだ。ウチの子たちがそうそう落ちるとは思えないが……、さっさと壊すに越したことはないだろう。確かに戦闘機隊のエモノだが、私が食べちゃダメって話でもない。“つまみ食い”しにいこっか。
「っし! じゃ、行ってきます!」
◇◆◇◆◇
『着陸確認。こちらも仕事に戻るぞ、ドラグーン1。』
『そう、だな。……理事長は相変わらずだが、ご学友も十分意味が解らん。』
『同意する。』
ドラグーン1,『学園』の航空部の部長でありエアライド隊の隊長である僚機に、そう答えるドラグーン2。
確かに自分たちもヘイローのおかげで死にはしないだろうが、気絶は確定。打ち所が悪ければ後遺症も考えられる距離から落下したのだ。そのダメージを無視して直後に動き出せるなど、もはやコミックの世界である。娯楽に溢れた学園の所属なせいかその辺りの知識は二人とも豊富に持っていたが……、現実でやられれば話は別である。
そんなことを考えながらも、慣れた手つきで機器を操作し、ロックオンシステムを対地用に切り替える二人。
『超特急で来たせいでハイドラはまだ後ろだ、先行したナギサ様の所は既に敵後方を襲撃中。この間にスコアを稼がせてもらおう。』
『ドラグーン2、逸る気持ちはわかるが落されるなよ?』
『誰に言ってるんだ、相棒?』
その直後、ほぼ同時に地面に向かって急降下を行う両機。それを食い止めるためか、ようやくゲヘナ側の対空射撃が始まったが、幾ら連続的に放たれる砲弾であろうと“竜の名を冠する”2機を落せるわけがない。一本の線となり空をうねり回る砲弾たちを回避し、確実にミサイルを発射していく『PROTO DRAGOON』たち。
彼女達のスコアが、次々と追加されていく。
本来、戦闘機というものが搭載できる弾頭。ミサイルは10前後が限界である。ナギサが配備した“ラプター”もその制約からは逃れられていないのだが……。彼女達が駆る『PROTO DRAGOON』は神秘に溢れた世界であるキヴォトスで設計、製造された機体であり、ポップスターというキヴォトスよりも極大の神秘に溢れた世界の技術が流れ込んで生まれた存在だ。機体速度も、保有弾数も、“現実”に収まるわけがない。
『まぁどこに格納されてるのか、って不安は常にあるんだけどな。整備班の奴らとか虚空に吸い込まれてくミサイル見て泣いてたし。』
『普通に怖いものな、アレ。頼れる乗機であることは変わらないが、お前がどこに行きつくのか。少しぐらいは教えてくれてもいいんじゃないか?』
急降下からの攻撃により、更に計4台の砲台を破壊しながら自身の機体に語り掛けるドラグーン2。
プログラム上そうなっている故に仕方がないが、彼らは『わにゃ』としか返してこない。搭乗者にも解るように翻訳を噛ませているおかげで普段の航行には何の問題もないが、パイロットたちが感じている“ほのかな意思”が何を伝えようとしているのか、それを気になってしまうというのも仕方のない話だった。
そんなことを考えながら、一旦高度を上げて離脱しようとした時。無線機が司令部からの通信を伝えてくる。
『こちらドラグーン1。HQ、問題か?』
【あぁ。急な雷雲が出て来たせいでフーベルト隊の一機が雷を喰らった。飛行に問題はないが機器が異常を吐いたため帰還させた。】
通信の言葉から、周囲を見渡す二人。けれどどこにも雷雲の姿は見えず。疑問が脳裏に過る。
確かに天候が良いとは思えないが、それも度重なる砲撃による硝煙などによるもの。雨が降ってもおかしくはない曇り具合であることは確かだが、雷を伴ったそれを認識することは出来ない。未だ学生とはいえ戦闘機乗りとして天気の見方は心得ている。だからこそその“雷”の原因が解らなかった。
【敵集積地点への爆撃は問題なく進んでいる。だが雷雨が続くようであれば作戦を一部変更するとのお達しだ。砲台を鹵獲し、それで敵の集積地を叩く。地上と連携してことに当たってくれ。】
『ドラグーン1、了解。理事長に通信を……、ッ!』
全身を襲う悪寒に従い、操縦桿を全力で横に倒すドラグーン1。強烈なGが彼女の体に伸し掛かるが、先ほどまでその機体が存在していた場所に叩きつけられる、幾重にも重なった雷撃。
そして、それを放ったのは……、いつの間にか空に浮かぶ、大量の目玉たち。
2mを越える瞳が、空を埋め尽くし彼女たちを見つめていた。
『砲台だっ! 砲台から打ち出されてるッ! ゲヘナの新兵器だ! HQ! テレーズ隊とフーベルト隊を下がらせろ! 私らは耐雷コーティング済みだがそっちは対策してないだろ!?』
【まて、すぐに通達……! 作戦空域に大量の雷雲の発生を確認! どうなっている!?】
ドラグーン2の叫びが通信に響き、それを受けた司令部が動こうとするが……。もう遅い。地上の砲台から打ち出された特殊弾、目玉の砲弾が空に解き放たれ、周囲の雲を吸収することで“活性化”する。
本来のサイズと比べれば纏える雲は格段に少なく、保有神秘も弱い。けれど確実に、ポップスターにおける雲の怪物が、キヴォトスに舞い降りたのだ。
『ッ! 手動で放つ! FOX2!』
一瞬その数と神秘に飲まれそうになった両機だったが、すぐに復帰し行動を開始する。
それまでの対地ロックオンを外し、目視でミサイルを放つドラグーン1。これまでの鍛錬のおかげか動き始めた目玉に吸い込まれていったそれは確実に相手を葬り去るが……。彼女は必要以上の集中力を消費したことを悟る。即座に対空ロックオンへとシステムを切り替えるのだが、機体が反応しない。いや“敵の目玉”を、“ただの雲”としか認識してくれない。
ドラグーンたちがそれを理解した直後、悲鳴のような通信が無線機から聞こえてくる。
『ちッ! こいつ雲そのものだっていうのか!? ロックオン出来ない! ッ! 回り込まれた!』
『テレーズ隊! フーベルト隊の援護に回れ! なんでもいいから撃ちまくって敵の気を散らせ!』
『ミサイル命中! ミサイル命ちゅ……、ダメージなし! 効いてないぞッ!』
【ッ! 全機作戦空域から離脱しろ!】
通信機から混乱に満ちた声が聞こえたことから、ドラグーンたちがいる空域以外にも出現したことを悟る二人。通信から撃破された機体はまだいないようだが、あちらの機体は『対戦闘機』を想定して生み出されたもののはずだ。エアライド隊の乗機の様に『ありとあらゆる脅威に対抗し撃滅する』ために思いつく限りの防護策が施されているとは考えられない。非常に危険な、状態だ。
そもそも『PROTO DRAGOON』はキヴォトスで産まれ、ポップスターの要素を多く注ぎ込まれた機体。そのもの自体に神秘が宿っており、その攻撃手段であるミサイルにも『生徒が放つ弾丸のように』神秘が宿っている。けれどナギサ配下の彼女たちが乗りこなすのは、人類科学を発展させキヴォトスの神秘に適応しただけの『F‐22』。神秘をもって威力を向上させるのではなく、ミサイル単体の破壊力で敵を倒す機体だ。
複製品とはいえ、神秘に塗れた世界で産まれた“雲”には相性が悪すぎる。
『……スキャン完了、敵数120! ドラグーン1、ロックオンいけたか!?』
『だめだ! まだ雲として認識してる! ハイドラ! 『DRAGOON』の演算領域じゃ足りん! 頼む!』
『今ハイドラ2とやってる! 10秒待て!』
雷撃を避けながらも弾頭を叩き込んでいくドラグーンたち。
単座で通常サイズの『PROTO DRAGOON』の持つ演算領域は他の戦闘機に比べれば格段に広いが、幾ら彼女たちの機体でも戦闘を行いながら『一部の雲を敵として認識するシステム』を組むのは不可能だ。故に未だ後方に控えている『PROTO HYDRA』たちへ支援を頼む。
『……ッ! 出来たっす! ハイドラ2よりエアライド隊全機! 対雲ロックオンシステムを配布するっす! それとHQ! そっちにも送るんで共有を!』
『よくやったッ!』
【すぐに対応する!】
即座にシステムを反映させるドラグーン。その直後、先ほどまでまっさらだったレーダーがすべての敵を認知し、真っ赤に染まる。ロックオンシステムも動き出し、即座に眼前にいた目玉へと照準が整った。
『FOX2! 相棒、殲滅するぞ!』
『当たり前だ! ドラグーン1からハイドラ各機! 数は多いがそちらの機体性能でも雷撃の回避は可能だ! まだ目玉の素が地上にある可能性もある! 合流してくれ!』
『ハイドラ1 了解! 蹂躙する!』
『おまかせっす! ハイドラ2アウト!』
直後空域へ到着し、全域へとロックオンを定めていくハイドラたち。対地上用に開発された本機ではあるが、対空戦が全く出来ないわけではない。むしろドラグーンより少し空戦能力が劣るだけで、『一度に吐き出せる弾頭の数』だけを考えれば圧倒しているともいっていい。
『そっちが砲弾の雨なら、こっちはミサイルの雨っす!』
その言葉と共に、地上へ空へと叩きつけられていくミサイルたち。
確実に砲台を破壊し、確実に目玉を消滅させていく。負けじと雲たちも雷撃を戦闘機たちに投げかけるが……、そもそもドラグーンには当たらず、ハイドラは当たったとしても装甲の厚さから跳ね返してしまう。
『よっしゃーす! このままいけば全部ぶっ壊してナギサ様の部隊もお助けするっすよ! 恩売っておけば反省文書くの手伝ってくれるかもっすし!』
『ハイドラ2、無駄口を……。敵パターン変化ッ! 集まり始めたぞ!』
『させるな! 全機!』
“今”の自分たちでは勝てぬと悟ったのだろう、雲たちが一点に向かって一斉に動きだす。即座にエアライド隊が阻止するために動き始め、攻撃を叩き込んでいくが……。止まらない。むしろその行動は加速し、まだ地上で放たれていなかったはずの特殊弾まで吸い込み、“合体”していく。
ドラグーンたちの行動虚しく、生み出されてしまったソレ。戦闘機たちよりも何倍も大きな雲、そしてその中央に浮かぶ大きな目玉と、雲の端に見えるいくつもの角たち。
彼女達がその巨大な敵に思わず息を飲んでしまった瞬間。司令部にいたセイアが、口を開く。
【『みちなる わく星でも 空さえあれば あらわれる。おなじみ おなじみ クラッコだ』だったか? もし同じ存在であればすでにキヴォトスは滅んでいるはずだが、私が“見た”ものより何倍も弱い。】
彼女が持つ異能である、未来視の派生。ポップスターの過去のみを覗くことが出来るようになった彼女は、雲の怪物である“クラッコ”を象徴する言葉を口にする。キヴォトスを埋め尽くさないようにするためか、使役者によって纏う神秘を弱くされているようだが、“クラッコ”であることには変わりない。
キヴォトスにとって、対処すべき危機だ。
【エアライド隊、“出番”だ。即座にマルコを拾い共にそれを撃破しろ。どこからゲヘナに流れ着き、だが使役されているかは解らない。だが我らが世界にとって不釣り合いな存在だ。お帰りいただけ。】
「「「「了解ッ!!!」」」」
〇ぽよ様RTA
なんだかマルコが大変そうだからと言うことで、余計な寄り道(ミニゲーム)などはせず完璧で最速のクリアを目指し、達成した。でも道中しっかり踊ったりしているので、本人としてはとっても楽しめたという。『鏡の大迷宮』以後会う機会の無かったシャドウカービィといった昔の友人と再会できたのでニコニコちゃんだったが、マルコがあと一歩でヤバいことになっていたのでとっても怒った。お友達とは仲良くね! ……え、お友達が裏切ったら? なぐってとめる(例:マホロア)。
〇クラッコ
『カービィ』シリーズではおなじみのボスクラスの敵。雲形の生物で、大きな瞳と多数のトゲを持っている。空を飛び回りながら体当たりをしてきたり、雷を落としてきたりして攻撃する。最初は小さい“クラッコJr.”。目玉に球が4つの状態だが、成長して大きくなりながらカービィに迫ってくる。(大乱闘Xより)
上記の敵が雷帝によって劣化コピー及び改造されたのがキヴォトスに舞い降りたクラッコ。不死性を持たないため倒されればそれっきりだが、合体して本家のクラッコよりも大きく成れるようになった。(出力はキヴォトス基準なのでぽよ様からすれば雑魚)
〇FOX2
ブルアカにおけるフォックス小隊の二人目ニコ……、ではなく戦闘機における味方へのミサイル発射の合図のようなもの。発射するミサイルの種類によって後ろの数字の番号が変わったりする。エスコンなどでよく聞く言葉。なお素人知識なため詳しくは個々人で調べて頂きたい。