ピンク玉の神秘   作:サイリウム(夕宙リウム)

22 / 31
22:あっさり!

 

「……むぅ。」

 

「あれ、いつもみたいにキキキって笑わないんですかマコトちゃん隊長サマ。」

 

「……一応隊長なんだが?」

 

「だったら私は先輩……、ってマジで元気ないね。この前戦車ごと両断されたのがトラウマにでもなった?」

 

 

役職は上であるが、学年はこちらの方が下。やりにくい部下の問いに沈黙で返すマコト。

 

ここはゲヘナの地、正確に言えばアビドス砂漠に存在する雷帝によって買い上げられた地だ。トリニティとの国境線から遠く離れたこの場所にはゲヘナの生徒たちが多く集まっており、雷帝の命で急ピッチの整備が進められていた。

 

大量の作業員に、それを防衛するための戦力。

所有権がゲヘナにあるとはいえ元々は別自治区の土地であるため配備された数は少ないが、装備は手厚く装甲車のみならず戦車も用意されている。陣地構築も行われており、万全とは言わないがしっかりとした態勢。そしてそれを指揮するのは、未来の生徒会長にして1年の中でも駆け足で出世街道を登って行く羽沼マコト。

 

そんな彼女の眼の前には、誰もが圧倒されるような巨大な砲台があった。

 

 

(奴は、雷帝は何を考えている? いや、そんなことよりも……)

 

 

けれど彼女の顔は、ずっと浮かないもの。

 

確かに意気揚々と戦車大隊で出撃した結果、謎の光る棒を振り回しながら突撃して来る存在に追い回され、最終的に暗黒のオーラを全身から噴出させていたシスターに戦車ごと一刀両断されたのは事実だし、気絶する瞬間に見たあの『真っ赤なビームサーベル』のせいで赤く光るものを見ると身構えてしまう様になったのは確かではあるが……。

 

彼女の心は別のモノ、眼の前の兵器へと向けられていた。

 

 

(列車砲シェマタ、これは本当にキヴォトスに存在していいものなのか?)

 

 

マコトの脳裏に過るのは、わざわざ雷帝から手渡されたこの砲台のスペック。雷帝からすれば趣味ですらない『隙間時間の暇つぶし』の一環として生み出された兵器ではあるが、その能力はマコトから見ても恐怖を覚えるものだった。

 

彼女も『トリニティのフィリウス分派のトップがキヴォトス外から持ち込んだ戦闘機』の存在は理解しており、キヴォトスが持つ技術と別の系統で進んだものが外に存在し、部分的にキヴォトスを凌駕しているのは事実である。けれどそれは“陸続き”の外であり、文字通り“世界の外”からやって来た物ではなかった。

 

戦闘機程度であれば、まだ理解できる。けれど目の前の砲台は。簡単にどこにでも『太陽を落せる』それは、明らかにこの星の技術ではない。雷帝が開発者として驚異的な能力を持つことは理解しているが、それでも生み出せるかどうか解らないもの、それこそ“星の外”から流れ込んできた技術を使用したのが、この砲台だった。

 

 

(雷帝が一人でたどり着いた可能性も否定できないのは確かだが……。この砲台も、技術も、危険すぎる。)

 

 

文字通り着弾地を蒸発させ、ヘイローを持つ存在すら消し飛ばす。まさに敵地を更地にするための兵器。

 

列車という形態から線路を用意すればどこにでも動かすことができ、動力炉からエネルギーを発生させプラズマ弾を生成するため弾要らず、燃料の問題はあるがそれも線路で運ぶことが出来る。そして核の様に土地を消し飛ばすが放射線をまき散らさない故に後の復興もまだ何とかなるレベル。これさえあれば砲艦外交をもってキヴォトスを手にすることが出来る代物だった。

 

だからこそ、マコトは恐怖する。

 

 

(……私が生徒会長の座についた暁には、いや雷帝が退位した直後に破壊した方がいいな。量産体制が整いつつあると聞くし、今からでも情報部に手を伸ばしそちらも破壊しなければ。)

 

 

戦争をしている彼女たちではあるが、キヴォトスに於いて人死。特にヘイローを持つ者の死は酷く稀だ。実際このたびの戦争も物的損害は両者ともに酷いことになっているが、重傷者はいても死者はいない。確かにゲヘナとトリニティは古来から恨み合っているが、本当に命を奪うことはない。おそらく両者ともにそれをした瞬間、どちらか全てが絶滅するまで殺し合うということを理解しているが故に、無意識的に一歩手前で踏みとどまっているような状況だ。

 

けれどこの砲台の引き金を引いたとき、一瞬でそのラインを踏み越え、行き過ぎてしまう。

 

それこそトリニティだけで収まらず、ゲヘナがキヴォトスをその手中に収め、全て“ゲヘナ”にしてしまわない限りは収まらぬであろう怒りを、憎しみを買ってしまうだろう。

 

確かにマコトも、キヴォトスをその手中に収めることを夢見る乙女ではある、けれどその手法ぐらいは自分で選びたかったし、その通った道が大量の屍の上に成り立つなど避けたいと言うのは当たり前だった。

 

 

(雷帝が何を考えているのか解らないが、奴はこの私に列車砲の引き金を渡してきた。この部隊の指揮権がそれだ。……空中に向かって威嚇として打ち込むことはあるかもしれないが、それ以外では使うべきではない、な。出来て威嚇だ。)

 

 

列車砲の使い道や廃棄方法を思案しながら、“雷帝”のことを思い浮かべるマコト。

 

現ゲヘナの頂点であり、この戦争を始めた張本人。

 

マコトからしてもその真意を読み切ることが出来ない人物であったが、最近それが拍車をかけている。昔は世の中のすべてを退屈な存在だと称し何事もつまらなそうに眺めていた奴が……、最近はまるで恋する乙女のように、いや狂愛に染まった笑みを浮かべていることが多い。まるで何かを待ち構えるように。それまで持っていなかった優美な剣をその手に持ちながら、ずっと玉座に座っている。

 

 

(確かに奴は考えが読めないし、力だけでゲヘナを従えさせることのできる奴だったが……。統治者としてもかなりの上澄み。小競り合いはまだしも今のような何の得もない全面戦争をするような奴ではなかった。)

 

 

戦争は基本的に、“短期間で相手を屈服させ条件を飲ませ”なければ利益が出ないのが基本だ。外交の一手段でしかなく、話し合いに話し合いを重ねどうしても利害の一致が出来なかった時に使用されてしまう最悪の選択肢でもある。キヴォトスに於いて人的資源の消費は“本当の最悪”が起きぬ限りないだろうが、金も物も加速度的に消費され、すべてが擦り減って行く。“有能な統治者”がそれを選ぶとは考えられなかった。

 

つまり他の目的、もしくは個人的な欲望を叶えるために奴は、戦争の引き金を引いた可能性が高い。

 

確かに、マコトが権力を手にすれば『危険すぎる』という名目で破壊したであろう雷帝の私物、後に『雷帝の遺産』と呼ばれるようなものがどんどんと前線に送られ、トリニティに破壊されて行っている。マコトにとってその点は今後の手間が省けたのだが、『まるで何かを誘うような』行動は非常に目に障った。

 

 

(…………色々と気になるが、今は考えるべきではないか。)

 

 

思考を取りやめながら、マコトは“戦後”を考え始める。

 

戦争を始めてしまった以上、戦いに勝っても負けても難しい立場に追われる可能性が高いゲヘナ。

 

まずトリニティに勝ったとしてもそれで終わり、とはならないだろう。トリニティを文字通り消し飛ばしたとしても、その責を連邦生徒会から問われてしまう。おそらくどんな返答を返そうが総力戦宣言、ゲヘナとそれ以外の学園との戦に成るはずだ。そうなった場合、勝つにはゲヘナ以外の学園を相手がひれ伏すまで消していく必要がある。どれだけの屍が生まれるか考えたくもない。

 

かといって程々にトリニティを叩き占領したとしても、待っているのは反乱地獄だ。委任統治にしようがトリカスでゲヘナ嫌いのトリニティがそれを受け入れるはずがない。連邦生徒会も動くだろうし、それをトリニティと同じように叩いてもまた反乱が起き、対処すべき地区が広がるだけ。

 

更に敗北したとしても、もちろん旨味はない。確実に雷帝は廃位され、ゲヘナの統治体制に問題ありとしてトリニティや連邦生徒会からの口出しを受けることになるだろう。『あちらがこちらに配慮してくれる』という淡い望みもあるが、確実にゲヘナは弱体化を喰らう。そうなれば暴徒で構成されたこのゲヘナはより崩壊し、統治もクソもなくなる。

 

 

(だが……、私が頂点に辿り着くまで2年もある。それに向けて上手く“調整”するのならば、話は別だ。勝とうが負けようが、打つ手を誤らなければ自然とこの手に“生徒会長の地位”が飛び込んでくる。)

 

 

幸いなことにマコトはまだ1年生であり、『雷帝の後始末』に追われるうちに任期が終了してしまう2年生ではない。つまり上が掃除し、やりやすくなった後の生徒会長の座に就ける可能性があった。

 

確かに難しい舵取りを迫られるだろうし、現2年生の補佐として動かなければならないだろう。けれど頂点に辿り着くことから逆算していけば何も難しいことはない。これまで頂点へと昇りあがるために雷帝に胡麻をすっていたマコトであったが、その方針が少し変わるだけだ。

 

 

 

(戦争が終わるまでは“これぐらい”の地位がちょうどいいな。それにこの『列車砲』を好きに扱える地位は酷く好ましい。このまま列車砲の引き金を『使わずに握ったまま』終戦させてもらうとしよう。……危険な兵器だろうと、使い方を間違えなければ“慈愛の君”としての名声も狙えるわけだからな。)

 

 

彼女の脳裏に浮かぶ、あり得たかもしれない未来。

 

もし雷帝から攻撃命令を受けたとしても、マコトは最後までそれを人に向けて放つことはない。命を貴び町への被害を考慮し、降伏を呼びかけ続ける。それを続ければあら不思議、『雷帝だろうと倫理に反するのであれば従わない』誇り高い武官の完成だ。確かにゲヘナへの受けは悪くなるだろうが、“対外的”な名声を稼ぐのにはちょうどいい。

 

勝っても負けても、外交からは逃げられないのだ。そんな時、彼女が“撃たなかった”という事実は確実に得になる。そのためにはまず、より一層部隊の指揮系統を整え、先走り暴走することを避けなければならない。

 

 

(キキキ。何、これぐらいはな?)

 

 

マコトが脳内で軽く笑いながら、思考を纏め自分にとって最適な図を脳内で描いていると……。彼女の傍にいた先輩にして部下の通信機が、鳴る。

 

 

「はいはーい、こちらマコトちゃん隊長サマ付き副官……、は? 防衛線が突破された? 先頭は赤いビーム剣? しかもピンクもいる!?」

 

「げぇぇ!!!」

 

 

ゲヘナトラウマ量産御一行様の、ご到着だ。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ぎゃ、ぎゃぁぁぁぁ!!!!!」

 

「退きなさい、命までは取りません。貴女にも『友や家族』がいるのでしょう?」

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!!!」

 

 

周囲に暗黒のオーラをまき散らしながら、真っ赤なビームサーベルを振り回すサクラコ様。

 

銃弾を全て断ち切り、敵の装備や銃器を切り落とし、非殺傷モードで敵を切り付けていく姿はまさに暗黒卿。“型”を知る私からすれば完全に守りの剣だからちょっと違和感凄いんだけど、傍から見れば闇の力に染まった武装シスターが配下を連れて敵を滅殺してる光景にしか見えないのよね。

 

 

「さ、流石はサクラコ様! チノ=リを得ていらっしゃる……!」

「もしやかの奥義! ブラ=サガリをも目にすることが出来るのでは!?」

「何をしている! サクラコ様に不甲斐ない姿をお見せするつもりか! 口を開くなら剣を振れ!」

 

「……なんか世界観違いません、マルコ?」

 

「まぁウチの部隊も大概だから……、何も言えないですハーちゃん。」

 

 

私の親友、羽川ハスミにそう答えながら『学園』の部隊の方を指差す私。

 

今回連れて来たのはビナー戦で活躍した偵察小隊こと、“バンダナワドルディ”と似た力に覚醒したっぽいバンダナちゃんが率いる『バンダナ小隊』だ。まぁ隊長がポップスターに浸食されたせいか、ちょっと戦い方があっちよりに成っちゃったみたいでね? ほら見てよ今投げてるまん丸な爆弾。というか“ボム”。

 

 

「人の頭くらいあるな。しかも完全な球体。コミックか何かからそのまま取り出したような奴だな。……だが破壊力はかなり。一発で気絶させたぞ。」

 

「……あの、フライパンで爆弾を投げつけてるのは突っ込んだ方がいい奴ですか?」

 

「私に聞くな、ハスミ。触れないようにしてたんだから……。」

 

 

そうそう、普通に銃器で戦ってる子もいるんだけど、なんかすごい戦い方してる子もいてね?

 

あっちでよくあるミニゲームみたいに、フライパンでラリーしてるんだよね。何故か最初味方で撃ち合いながら速度が出てきたら相手に放り込む、っていうか。しかもたまにミスって自爆してるし、相手から返されてやられてる子もいる。でも即座に復帰できてる辺り、バンダナちゃん以外もワドルディに成りかけてない? まぁその隊長であるバンダナちゃんが前線引っ張って槍で無双してるから文句ないけどさ……。

 

というかその爆弾からもかなり“あちら側”の神秘を感じるんだけど、マジでどこから持ってきたの? え、学園で普通に売ってる? そ、そっかぁ……。

 

 

(戦争終わったら時間作って学園全部監査しよ。“ワドルディ”の名前のせいでなんか色々魔改造してるって聞くし、多分コレ放置し過ぎたらいけない奴……!)

 

 

そんなことを考えながら、ゲヘナの子が落とした銃器で私も適当に弾丸を放っておく。既にサクラコ様とバンダナ小隊で何とかなってるけど、何もしないのはちょっと申し訳ないので。

 

でもまぁ、列車砲っていう特大兵器の割には防御が薄い。相手がガチガチだったら一旦列車砲を破壊して帰ろうかと思ってたけど、このままなら無事に列車砲片手にゲヘナに殴り込み。雷帝モグモグ大作戦を始めることが出来そうだ。……あ、本気で食べるつもりはないからね?

 

 

「……本当に雷帝の所まで行くつもりですか? いや確かに以前“私も連れていけ”と言いましたし、早期終戦には最適かとは思うのですが。本気で?」

 

「ん、ほんき! 雷帝を襲う!」

 

 

ハーちゃんの問いにふざけて返しながら、少し思考を回す。

 

単純にこの戦争は、私達にとって都合が悪い。『トリニティ』にとっても、『秘密のお茶会』にとってもだ。

 

戦争はとっても金がかかるし、民意が全体的に攻撃的になってしまう。市民のゲヘナへの悪感情がどんどんと高まっちゃって上層部でも制御できなくなる可能性があるのだ。私たちが想定する世界の危機は多種多様に渡り、キヴォトス内外で起きると想定している。そんな時に民意が邪魔して連携が取れないのは致命的だ。

 

ゲヘナと連携を取れていれば防げたのに、あっちが声を上げられずこちらが手を伸ばせなかったせいでゲヘナが滅び、ゲヘナを養分にして誰も手が付けられなくなった敵がキヴォトスを襲う……。ということもありうる。それを考えると、戦争が長期化して『仲直りしにくくなる』のは避けないといけない。

 

 

「と言うことで雷帝を倒しに行く必要があったんですねぇ! ……というかハーちゃんもツーちゃんも準備万端じゃん。ほんとは私と同じこと考えてたんでしょう~?」

 

「「それはない。」」

 

 

そ、そっか……。

 

でもまぁ二人とも凄い装備だよねぇ。

 

特に目を引くのは、ハーちゃん。まさにフルアーマー装備と言ったところ、あれあれホシノちゃんの『臨戦』だっけ? アレみたいな感じ。正実カラーの黒で統一しながら装甲板いっぱいつけて、スカートの中からは大量の武器弾薬がはみ出ている。結構な重さだろうにソレで一切動きが変わらないのは凄いよねぇ。

 

そんな重装備のハーちゃんとは違い、剣先ツルギことツーちゃんは比較的今まで通りだ。違いとしては背中に大量のショットガンを担いでいることぐらい? わたしならぐちゃっと積み上げたのを背負っちゃいそうだけど、綺麗に一つずつお背中に並べられてる感じ。ツーちゃんの丁寧さが出てていいよねぇ。

 

 

「ま、このままなら楽ちんに制圧……」

 

「や、やらせはせん! やらせはせんぞ! この列車砲はマコト様の計画にとって必須! トリニティなんかにッ! やらせはせんぞ!!!」

 

「お~、こんなとこにいるんだ。ハーちゃん?」

 

「もう撃ち抜きました。」

 

「ぎゃぁー!」

 

 

響く小気味いい悲鳴。

 

バンダナちゃんに制圧されたゲヘナ生徒のマシンガンを拾い上げ、叫びながら斉射しようとしたマコト様を速攻で無力化するハーちゃんの攻撃。脳天直撃気絶コースだね! ……というかヒナちゃんとも衝撃的な出会いだったけど、マコト様もマコト様で凄いなぁ。

 

でも今は敵だからね、制圧ヨシ!

 

 

「今はフートンで寝ておれマコト! ついでにこの良さそうなのは貰っていくからな……!」

 

「こっちもキャラが崩壊してきましたね、っと。確か、バンダナさんでしたか?」

 

「はッ! 先日理事長から拝名いたしました! また列車砲外部の制圧は完了、聖堂騎士が内部へ勝手に突撃したため、じきにそちらも完了するかと!」

 

 

マコトさまのマントを勝手に剥ぎ取りお腹に掛けてあげながら遊んでいると、バンダナちゃんが報告してくれていた。彼女の指さす方を見てみると、確かにあたふたしたサクラコ様の姿が見える。また変な喋り方と謎解釈が成立して飛び込んでしまったのだろう。

 

外からでも、ビームサーベルを振った時の独特な音が鳴り響いているし、任せても大丈夫そうだ。まぁまぁ強い上にサクラコ様への敬意で溢れてる超狂信者ちゃんだしね、すぐに終わりそうだ。

 

 

「っと! じゃあ聖堂騎士たちが暴走して勝手に爆破しちゃう前に、動力を押さえに行きますか。」

 

「動力、か?」

 

「そ。どこの技術で作られたか解んないけど、そのコアが全部担ってるんだって。」

 

 

諜報員からの情報によると、この列車砲のエネルギー供給から調整まで、全てコアで管理しているようだ。砲台を動かす力も、プラズマ弾とするエネルギーもそこからってわけだね。起動状態で爆破してしまえば私達諸共消し飛ぶわけだし、さっさと制圧してスイッチを切っておく必要がある。

 

そんなわけでさっきマコトさまの懐を漁って出てきました列車砲の設計図! 正確には見取り図かな? サイズがサイズだからね、地図がないと中を歩くのも苦労するだろうと思って探ってみたけれど、案の定懐に隠していた。うんうん、私ってば運がいい!

 

 

「あぁ、だからさっきからゲヘナの服を漁っていたのですね。」

 

「……服剥いてそのまま食うのかと思ったから警戒してたんだが、要らなかったか。」

 

「流石に私でも人は食べないよ!?」

 

 

そんなことを言い合いながら、バンダナちゃんに外の警備。あわあわしてたサクラコ様を正気に戻して聖堂騎士の手綱を何とか握る様にお願いし、私達3人で動力室まで足を運ぶ。

 

すると見えてくるのは、青色に光る極大の球体。軽く3mほどはあるだろうか。それが耐熱ガラス越しにこちらを覗いていた。感じるのは、キヴォトスでは滅多にお目に掛かれない強烈な神秘、おそらく科学を突き詰めて天元突破した結果、神秘を得たタイプの存在だ。何重にも耐熱ガラスなどで囲い、そしてこちらが神秘で肉体を強化したとしても感じる熱と圧倒感。

 

これを元に疑似的な太陽を作り出して弾丸として放ってくるとは聞いてたけれど、これなら納得。

 

 

 

「凄いな。」

 

「だね。っと、スイッチは、これか。」

 

 

ツーちゃんのつぶやきに軽く返しながら、その動力を落していく。排熱までちょっと時間がかかるみたいだが、これで暴発の危険性は減ったわけだ。……とりあえず、列車砲の制圧任務はこれで終わりかな? ちょっと拍子抜けしちゃいそうなほど簡単だったけど。

 

まぁこの後雷帝をぶん殴りに行くって考えればそれぐらいの方がいい……、せや!

 

ちょっとハーちゃんにツーちゃん! そこで待っててね!

 

 

「え、えぇ。別にいいですが……、って何してるんです!?」

 

「マルコ! まだその動力炉排熱終わってないぞ!?」

 

「へいきへいきー! おりゃー!」

 

 

扉を蹴破り、動力室の中に突貫する。一気に熱がこの身に襲い掛かるが、別にいい。

 

目指すはこの列車砲のメインコア。

 

まぁ大体何するか解ってるとは思うけど……、いただきまーす!

 

 

「あーん! んぐっ! ……ごっくん。」

 

「ま、まるのみ……。」

 

 

……お? お? おおお? ここれは……!

 

いけるかも!!!

 

そうと決まればすぐ挑戦! ダッシュダッシュ!

 

 

「ちょ、おい! マルコ! どこに!」

 

「ハーちゃんツーちゃん! とりあえず列車砲から離れて! 面白いことするから!!!」

 

 

メインコアを飲み込んだ瞬間。感じたのは自身の中に宿る神秘の増量。

 

ヘイローに浮かぶ玉、幾つ分増えたか解らないけれど、確実に個数が4以上に成っているはずだ。それに、口に入れた瞬間“飲み込める”って確信が私の中にあって、ごっくんできた。そして何より、私の中で“出来る”って感情が溢れ出てる。

 

なら、やってみよう!

 

即座に列車砲から飛び出し、どんどんと上に登って行く。棒に手を掛け上へ上へ、私が頂点に辿り着く頃には、外に急いで追って来てくれたハーちゃんとツーちゃんの姿が見える。どうやらもうこの列車砲の中に人はいないようだ。……条件はそろったね。

 

砲台のてっぺんに足を掛けた瞬間、全力で蹴り上げ大空へと飛び上がる。まだぽよ様みたいにホバリングは出来ないというか、やり方が解んないんだけど……。神秘の増加によって『口のサイズが可変』になったいまなら!!!

 

 

開けるのは、大きな口。

 

かぶりつくのは、列車砲。

 

 

 

 

「「「「「「は?????」」」」」」

 

 

 

 

 

ほおばりヘンケイ! 『れっしゃほうほおばり』!!!!!!

 

 

……お! これ私の自由に動かせるじゃん! 大砲の部分はほおばりしてるから撃てないけど、列車としては自由に行ける!

 

 

「みんなー! 早く乗って乗って! これでゲヘナに殴り込みにいくよー! 倒せ雷帝!!!」

 

 

 

 





〇ほおばりヘンケイ『れっしゃほうほうばり』

マルコが無理矢理列車を頬張った姿、実は結構顎が痛いらしいが、何とかなっている。確実に見た目がヤバいが突っ込んではいけない。かわいいほおばり、いいね?

なお列車としての運用は出来るが、砲台部分を頬張ってしまっているので発射は不能。機能的にはなんか出来るようだが口の中を撃ち付けることになるのでしない。マルコの桃玉神秘が5つ以上になったことで解放された。


〇そのころの雷帝

腹を抱えて大笑いしながら一応万魔殿に防衛体制を整える指示をだし、ゲヘナ中央駅あたりの人払いを指示した。部下たちは初めて雷帝が声をあげて笑う所を見たため、戦々恐々としながら指示に従ったとのこと……。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。