「はいとうちゃーく! 着いたよ! ほら降りて降りて―!」
車体を横に傾けみんなを列車砲から降ろしながら、ちょっと口の中を動かす。
(……うん、かみ砕けるな!)
列車砲のコアのおかげで私の神秘量が上がったおかげか、ぽよ様の神秘をより扱いやすくなった。早い話、ぽよ様にまた一歩近づけたのだ。まだまだ遠くて一生たどり着けない遠き場所にいる彼だけど、今は一歩でも進めたことが純粋に嬉しい。お陰様で口のサイズが可変になったから、なんでも丸呑みできるようになっちゃった!
一瞬ほおばりの向きを変えて、このまま列車砲に神秘ぶち込んでゲヘナにぶっ放してやろうかと思ったけど……。たぶんそれしたら雷帝ごとゲヘナ壊れちゃうのでやめておいて、穏便に私のご飯にすることにする。
と言うことでそのままごっくんしてやろうと思ったんだけど……。
(砲台の所が伸びてて喉に引っかかりそうだな、ちゃんと嚙んでたーべよ!)
中に誰も乗っていないことを再確認し、ほおばっていたものすべてを口の中に収める。
あとは念入りに咀嚼し圧縮しながら口のサイズを元に戻していき、最後には全部ごっくんちょ! 普通ならお腹がパンクしちゃいそうなサイズ差だけど、なんて言ったって私は『桃玉マルコ』なのだ。胃の容量なんて無尽蔵なんだよねー!
「よっと、ごちそうさま!」
空中で全て胃に送り込み完全に元通りになった後、そのまま地面へと足を突く。いやはや、ここがゲヘナの中央駅か! 目視できる位置に万魔殿があるし! いい所じゃない! ウチの系列店が出店するってことで資料だけでは知ってたけど、普段は活気がありそうで良い商場になりそう!
……けど思いっきり敵地に私達トリカスが攻め込んだって言うのに全然反応ないな? なんでだろ?
「あの……、理事長?」
「あ、バンダナちゃんじゃん! どったの!」
「思いっきり強く頭を殴ってくれませんか? 記憶飛ぶくらいの奴で。」
「いやほんとにどうしたの!?」
青い顔してそんなことを言いながらやって来たバンダナちゃん、驚いて後ろにいた皆の方を見てみれば、なんか全員青くなるか白くなってる。て、てか! ハーちゃんにツーちゃんにサクラコ様! なんですみっこで真っ白になりながら三角座りしてるんですか!? 脱色! 脱色してる!
え、え!? というかなんか駅全体からすすり泣く声とか発狂する声とか、頭をコンクリに叩きつけてる音するんだけど何!? 何があった!!! もしやスタンド攻撃を受けている!? おのれDIO!
「みんな大丈夫!? 誰にやられた!」
「……何なんでしょうね、本当に。」
「私に聞くな……。」
「神よ……。」
ッく! 反応が悪い! お目目もなんか白く染まってるし、声かけても肩揺すっても反応がないぞ! くっ! 何の攻撃だ!? 列車砲から降ろした時にはこうなっていたということは、ゲヘナ到着時点で襲撃されたということ! 誰の仕業だ! 隠れてないで名を上げぃ!
「お、お前のせいだよバカ野郎……!」
「さ、三年の先輩ッ!」
「なに、あの! なに!? ほんとお前の体どうなってんだ!?!? なんで口広げたら列車砲ほおばれるんだよ! なんでそれで動かせるんだよ! なんでそのまま食えるんだよ! んでなんでお前のサイズはいつも通りなんだよ! あぁぁぁああああああああ!!!」
「口のサイズっすか? あぁ見てくださいよ! 今なら人呑み込める大きさなんか簡単にできちゃうんですよ! みてみて! ほら、あぁ~ん!」
「……ぁ、……ぅあ…(ガチ泣」
泣いちゃった!
……え、これ怖がられてる感じ?
そんな! ぽよ様が為した衝撃の超かわいいが“ほおばり”なはず! 確かに衝撃があったのは確かだが、各方面から称賛と可愛いの声が絶えなかった最強の能力だぞ! ならばその神秘を受け継いだ私も可愛いし、私がほおばりしても可愛い!
可愛い奴が可愛い行為をすればもう超絶かわいいのではなかったのか!?
『ぽよ!』
(ですよねぽよ様! 御大も可愛かったって思いますよね!)
うんうんと頷いてくださるぽよ様。
やっぱりかわいいよね私達。というか口開けてから先輩ガチ泣きし始めちゃったし、これどうやって収拾付けるんだろ? 多分私達を待ち構えていたゲヘナの子たちもなんか大泣きしたり発狂したりしてる子ばっかだし。見た子全員SANチェック喰らったような状況みたい。
……もしかしてほおばりって封印指定?
そんなことを考えていると、復帰が比較的早かった奴ら。ゲヘナの一団の方から声が響いてくる。
「ば、ばけものを倒せー! うてー! とにかく撃てー! 私らがゲヘナを守るんだァ!」
「うえぇぇぇん!!!」
「アハハ、大きい…彗星かな。イヤ、違う、違うな。彗星はもっとバーって動くもんな。」
「ぴゃぁぁぁ!!!」
「くるなぁ! くるなぁぁ!!!」
「……あれこの前の全裸の奴じゃね?」
そう叫びながら、積み上げた土塁を盾に撃ち始める彼女たち。
ならばこっちも撃ち返し……、あ駄目だわ。ウチの子たちほぼ全滅してる。しかも私が一瞬サクラコ様の方を見た瞬間、早めに復帰したらしい聖堂騎士の子たちが歯をガチガチ言わせながらこっちにライトサーベル向け始めた。あはー、これもしかしてマルコちゃんピンチ?
と、とりあえずその辺りの仲直りとか『マルコちゃんこわくないよー!』作戦は後にするとして、とっておきの作戦を発動しよう! 私がぶん殴りに行ってもいいんだけど、ちょっと本当にトラウマになっちゃって可哀想なので……。
アレを使うよ!
通信機を起動し、繋げるのは“ミレニアムの彼女”。
「リオちゃ! 出番だよ!」
『了解したわ。すぐに……、あなた以外全滅してるというか、恐慌状態のようだけど、大丈夫?』
「あ、うん! 同士討ちみたいなもん! たぶん大丈夫!」
『同士討ちは大丈夫じゃなくないかしら? ……とりあえず発進させるわ。』
彼女がそう言った瞬間、ゲヘナの市街地の各所から店舗が消し飛ぶ音と、大地が開く音。
我が社が経営していたスーパーなどの店舗部分が崩壊し、現れるのは巨大な大穴。覗き込めば巨大な建造物と、地下深くまで広がった秘密基地。我がグループの一部しか知らない特別施設、このトリニティを始めとしてキヴォトス中にご飯を提供する『ホーリーナイトメアグループ』の大型店舗には必ず設置された極秘地下建造ドックだ。
地面からゆっくりと地表に向かっていく、3体の大きな影。
さぁさぁご覧いただきましょう!
「御愛好頂き光栄の至りっ! 我がホーリーナイトメアグループから本日お届けするのは新たな“お客様サービス”! カスタマーじゃなくてごめんね! ほいリオちゃ!」
『……え、続き私が言うの? んんっ! 体長が5mを越えるお客様にも応対するためご用意いたしました、その名はその名は“アバンギャルド君セールスマンバージョン”ッ!』
「けれどお客様以外はお帰り頂きましょうッ! 全機“暴徒鎮圧モード”!」
『起動ッ!!!』
途中からノリノリになってくれたリオちゃがスイッチを入れた瞬間。地下深くから現れた3体の巨神兵が、跳躍する。
そう! 原作において調月リオが生み出した顔以外傑作陸上兵器!
アバンギャルド君だ!
実は陸上戦力の増強としてぽよ様が使っていた『インベードアーマー』を大量に生み出して聖ワドルディ学園の子たち全員に乗せるってことを考えてたんだけど……。流石に難し過ぎて出来そうにないってことだったので、その代役として起用したのが彼! リオちゃによってコストカットと『分解して現地で組み立てられる』というメリットが付与されたまさに傑作機! 各地に配備し、このキヴォトスのどこに危機が現れようとも私達の本隊が到着するまで持ちこたえるのが役目の! 量産型アバンギャルド君だッ!
我がホーリーナイトメアグループの店舗に順次配備中! ある程度落ち着いたら一般公開もするよ!!!
あ、一応『なんかクソデカい人が来た時ちゃんと対応できるように……』って名目で導入したから“セールスマン”って名前が付いてるけど、ガチガチの戦略兵器です。しかもちゃんと我がグループとトリニティの校章を付けた偽装済みの機体だから戦争に出しても多分大丈夫な奴! 詳しい人が見たらすぐにミレニアム製のロボットってバレるだろうけど! ミレニアム関係ないよ! ほんとだよ!
『そうね、関係ないわ。だって今の私は『秘密のお茶会』として通信しているもの。正直他校の私が手を出すのは憚られたのだけどね……。“クラッコ”を出してきた時点でもう遠慮は無くなったわ。アバンギャルド君、お客様がお帰りよ、ご対応して差し上げて?』
「「「オトトイキヤガレマセー!!!」」」
「な、なんじゃこりゃーッ!?!?」
「かおださ。」
「バケモンがバケモン使役して来たぁ!? お助けぇ!!!」
「もう駄目だぁ! おしまいだぁ!!!」
瞬時に私の目の前に現着した彼らが、一斉に武装を取り出し、ゲヘナ生徒たちに発砲し始める。
4本の腕で多種多様な武装を扱い、同時にその重量と履帯で前へと進み無理矢理道を作って行く。量産型とはいえ、その機能は完璧で合理的なリオちゃが設計開発した傑作機、原作で出ていたのをハイエンド機とするならばそのスペックは約3割ほど。結構下がったが、各学園のトップ層が時間を掛けて討伐しなければならない存在であることは変わらない! そんなものを3体も持ってきたのだ! 勝てるわけが無かろう! あーはっは!
『悪役の笑い方ね。とりあえず周囲に敵影なしよ。万魔殿周辺に待機して敵増援を足止めさせるわ。こちらで後続も用意しているけれど……、貴女で決めて頂戴、マルコ。』
「もっちろんよ!」
いつの間にか機械兵たちは万魔殿前の中庭に到着し、入口を囲う様に守りを固め始めている。彼らのおかげで周囲の敵は大体逃げ出したか気絶したみたいだし、このままさっさと突入してしまうべきだろう。リオちゃに元気よく返事し、私も気合を入れる。
「よーし! このまま雷帝の首取りにいく……、まだ復帰してないな。とりま担いでいくか!」
そう言いながら彼女たちの方へと近づこうとした瞬間、いまだ復活していないサクラコ様を守る様に、また聖堂騎士の子達が間に滑り込んでくる。サクラコ様は真っ赤なセーバーだが、彼女たちはどうやら黄色で統一しているようだ。完全にビビっているというか、腰が引けているし歯もガチガチ鳴らしちゃってる。……一応味方だし、同士討ちみたいなのは本当にしたくないんだけどなぁ。
「さ、サクラコ様に近寄るなぁ!!!」
「来るなぁ!!!」
「引いてよぉ! 引いてよぉ!!!」
「味方なんだけど……、しゃあね。ごめんね~。」
そのままズカズカ歩いて行き、とりあえずサクラコ様の近くにいるハーちゃんとツーちゃんを回収しようとする。けれど勘違いした彼女たちが全員で切りかかって来るが……、全て胴体で受け止める。
おそらく全員が非殺傷モードを切っているっぽいが、彼女たちのモデルはいわば“安価”型の奴だ。普通の生徒なら最悪切断されるが、私は痛くも痒くもない。サクラコ様のサーベルであるハイエンドタイプだったら流石に酷いやけどレベルのダメージは受けただろうが、この子たちのは店売り品だしねぇ。
「ひぃ!!!」
「はいはい、じゃあサクラコ様は置いて行くから守ってあげてね。バンダナちゃんたちもこの近くで帰りの足を見つけといて。ハーちゃんツーちゃん、雷帝ぶっ殺しに行きますわよ~!」
「……マルコ、ほんとに何なんですか貴女は。」
「私は私だよ?」
「そう、でしたね……。ッぃし! 復帰します! 降ろしてください!」
「だな……、キシャァァァア!!! 行くぞマルコ!」
あはー! 二人に色が戻った! さっすがハーちゃんにツーちゃん!!!
◇◆◇◆◇
量産型アバンギャルド君のおかげで開いた道をそのまま進み、復帰した2人と共に『トリニティの三本柱』でゲヘナ首魁のお城に突入。先行するハーちゃんについて行きながら、万魔殿の中を進んでいく。
「クリア。」
一部屋一部屋確実に確認していく彼女。私達も手伝いはするけど、効率が段違いだ。
単純な戦闘能力で言えば私やツーちゃんの方が上なのは確かなんだけど、こういう細かな技量はハーちゃんの方が各段に上。一応敵が出てきた時の為に私もツーちゃんもいつでも飛び出せるようにはしているが、正直ついて行くので精いっぱい。スイスイ流れる様な速度で進んでいきながらも見落としが一切ないハーちゃん、もう特殊部隊じゃんね。
そんなことを考えながらだが……、まだ私たちは万魔殿に入ってから一度もトリガーを引いていない。
それがちょっと、懸念点かな?
「……いないな。」
「もう退避済みなんかね? 雷帝も逃げた?」
確かに外で大暴れしたから先に人が避難しているのも解る。けれどリオちゃが指示して万魔殿の出入り口は全てアバンギャルド君が抑えてしまった。全員が綺麗に逃げ延びる可能性は酷く低いだろう。……それに、感知できるのは私だけだが、何かがいることは“感覚”で解る。
「とりあえず玉座の間という所まで行ってみましょう。雷帝の私室もあるようですし、そちらも確認していなければ、一旦トリニティに帰った方がいいかと。」
さっきどこかから調達して来たらしい地図を広げながら、そう言うハーちゃん。
壁を背中にしながらの確認、未だ銃弾ひとつどころか人の気配すら感じない。けれど身を包み込むような強大な神秘、電気のようなびりびりとしたものがこの建物全体にまき散らされている。こんな大きな神秘の反応があるのだ、何かしらの存在がいることは確かだと思うんだけど……、それが雷帝かどうかはまだ確証を得られない。
ハスミの提案に頷き、背後からの強襲を受けぬよう細かに確認しながら、最上階へ。
荘厳な扉が、私達を出迎えてくれる。
(ここか。)
万魔殿に入ってから感じていた強い神秘が、扉の向こうにある。
目線だけでハーちゃんとツーちゃんに言葉を送り、装備の最終確認を終わらせた後。
私先頭で扉を蹴破りながら、ローリング。中へと転がり込む。
ハンドガンを構えながら体勢を整え、眼の前に向かって構え。
瞬間目に入ってくるのは、玉座に腰かける人型。特徴的な大きな黒い角と羽。
その右手に雷を携えた、見るからに“雷帝”という存在が、そこにいた。
「よく来たな、我が……。なんと呼ぶべきだろうな、“カービィ”?」
「……人違いじゃない?」
咄嗟にそう誤魔化すが……、その浮かべられた笑みから、確実に“確信”していることが察せられる。
それはつまり、“ポップスター”の存在を理解しているということ。
クラッコを出してきた時点で半ば確信していたようなものだが、最悪だ。
「ん? あぁ私の背後を気にしているのか。いやいや、その心配はないとも。確かにこのキヴォトスはつい最近まで楽しみの無い退屈で仕方ない箱庭だったが……。生まれ故郷を外道に手渡す様な真似はしないさ。それに我が自覚できぬほどに彼らが狡猾だった場合もないだろう。もしそうならば既にキヴォトスは滅んでいるだろうからな。」
「……へぇ。」
私の懸念を顔色だけで理解したのだろう。淡々と言葉を紡いでいく雷帝。
整った顔に髪、それだけ見れば角と悪魔の羽からただのゲヘナ生徒に見えるが……。これまで見て来た中で一番眼がヤバい。真っ黒に染まっているはずなのに、奥行きが見えてしまう。まるで覗けば一生閉じ込められてしまいそうな深淵が、そこにある感じ。
同時に感じる、“暴力性”と“知性”。設定でしか知らなかったけど、マジで完璧超人みたいな奴みたいだね……。
「あぁすまない。そう言えば貴様には『桃玉マルコ』という名があったな。後ろの『剣先ツルギ』も、『羽川ハスミ』も良くこの万魔殿に来てくれた。どうだね、ゲヘナは? トリニティとは違い混沌として良い所だろう?」
「あいにく、ちゃんと観光は出来てないんでね。」
「かはッ! 確かに確かに! あのなんだ、ほおばり、だったか? あのようなものを見れば笑うか狂うかのどちらかだろう、生徒会長として普段のゲヘナを見せられぬことを謝罪させてもらおう。」
そう言いながら、横に置いてあったワイングラスを手に取り、ゆっくりと香りを楽しむ彼女。私に続き突入したハスミもツルギも彼女に向かって銃を向けているのだが、一切動じていない。
雷帝が向ける視線は、私にのみ注がれている。この身か、それともその大本か。そのどちらかは解らないが、ハスミやツルギにはそれほど興味はなさそうだ。……私メインで注意を引きながら戦うべきか。
「ん? もう始めるのか? 少しぐらいは会話を楽しみたいところだったが……。良いだろう、まずは一つ、手合わせと行こうか。」
グラスを横に置き、懐から取り出すのは何の変哲もないアサルトライフル。けれど直後に彼女の神秘が注がれ、雷が纏わりつき始める。
「では、始めよう。」
雷帝がその身に秘していた神秘が、爆発した。
◇◆◇◆◇
「ふっ。」
「だりゃぁ!!!」
ハスミに向かって弾丸を撃ち込みながら私へと向かって来る雷帝。
即座にツルギがその射線上に移動し、私は接近し雷帝へと殴りかかる。
既にぽよ様の神秘は完全充填済み。全力をもって、殴りぬく。けれど……。
「身体能力は、互角か?」
「まじ、ッ!」
雷を纏った左手で、受け止められてしまう。
マジ殴りを受け止められたのは初めてのこと、それに少し動揺してしまうが、即座に方針を変更。その顔面に向かって全力で頭を振りかぶりながら、太腿のホルダーに収めていたBrowning2丁を抜き、神秘を込めていく。十分に蓄積され、真っ黒の塗装が御大の桃色に変わった瞬間。雷帝と私の頭蓋が衝突する。
「流石は星の戦士と言ったところ、かァ!」
「ちッ!」
銃への換装が遅れたせいで、次手は雷帝が先。空いた片手を使い、私の腹部に向かって雷の弾丸を叩き込んでくる。即座に腹部に神秘を送り、防御態勢。同時に後方へと下がりながら、被弾数を少しでも減らすために回避行動へと移って行く。
自然と生まれる雷帝と私の空間。そこに滑り込むように入るのは、ツルギ。
「ワタシも、マゼロォォォオオオオオ!!!」
「ほう?」
両手に持たれたショットガンが雷帝の全身に向けられる。
即座に私に向けていた銃口をツルギへと向けようとする雷帝だったが、響き渡る銃声。後方でタイミングを推し量っていたハスミの弾丸が雷帝のトリガーへと掛けていた指に命中し、動きが鈍る。
「ぶっ壊れろォォォ!!!!!」
「マルコッ!」
「ほいさ!!!」
ツルギが引き金を引いた瞬間、ハスミがいる地点まで下がり切る私。その勢いを殺さずハスミの呼びかけで意図を察した私は、彼女の片手を手に取り大回転、その勢いのままに、彼女を雷帝の方へと放り投げる。
その黒羽でバランスを取りながらも、ハスミは上空からライフルで雷帝を狙撃。同時にスカートの中からリロード用の弾丸と、近接用のサブマシンガンを取り出し、それを放ちながら敵へと迫って行く。ツルギがショットガンを取り換えるまでの、時間稼ぎだ。
「ふむ……、確かに我以外であれば即座に終幕となる連携だな。だが……。」
ハスミがほぼ0距離まで近づき、ツルギの取り換えも完了。1秒にも満たぬ合間に、雷帝に向かって超近接で放たれる二人の弾丸。けれどそれを全く動じず肉体で受けきった雷帝は、全身から雷撃を放つ。
「キッ!」
「ぐッ!」
全方位への高圧電流。二人でも、喰らえば不味いものが、直撃。
けれど即座にツルギは回復し、攻撃を再開。ハスミは後方へと下がりながら大量の爆薬を雷帝に投射し、リロードを開始する。私もこれ以上の追撃を防ぐために、神秘を込め切った両手のハンドガンを雷帝に向かって斉射。星型の弾丸が飛ぶのと同速で、距離を詰め切り、銃を握った拳を奴の顔目掛けて振り抜く。
「ガンカタ、か? だが慣れておらんな。」
「そりゃ滅多に銃使わなくなっちゃったからねッ!」
首を傾けることで避けられるが、同時に銃弾を横から撃ち込むことでダメージを稼ごうとする。けれどこれまでの敵の様に沈むことなく、相手は健在。全くのノーダメージというわけではなさそうだが。有り余るHPをミリ単位で削っているかのような錯覚に陥る。
想像以上に、強い。けれど。
「マルコォォォ!!!」
「合わせちゃうよッ!」
ツルギの声に合わせ、近接戦を開始する。
入り乱れる弾丸と拳。ツルギの弾丸を押し込むように私の拳が突き刺さり、私の弾丸の勢いを乗せたツルギの蹴りが雷帝に襲い掛かる。同時にリロードし終わったハスミが雷帝の関節部や眼玉を狙い弾丸を投射。確実に相手の行動を阻害し、こちらの攻撃を喰らわせ続ける。
確かに相手からの攻撃はもらうが、こっちは気合で耐えて、ツルギは気絶に持ち込まれなければ即回復。一発もらうだけでかなりギリギリまで追い込まれてしまうようだったが、私の無駄にデカい体が盾になり、回復までの一瞬を稼いでいく。
永遠に続くかと思われた攻勢。けれど……。
「素晴らしい。称賛に値する。だが……。我が好敵手と成りうる彼女との逢瀬。これ以上邪魔してくれるな?」
そう言った瞬間。雷帝の神秘がこれまで以上に膨れ上がる。
無理矢理ツルギの首根っこを掴み私の後ろへ。ハスミがいる射線上に滑り込みながら、全身に神秘を張る。
直後、襲い掛かるのは神雷の放射。
視界全てが白く染まり、部屋全体に向かって極大の雷が放たれる。
「あぐッ!」
「「マルコッ!」」
ツルギを抱きかかえながら、後ろへと吹き飛ばされる。何とか私が盾になったおかげで二人は問題なさそうだが……。ちょっとヤバいかも。初めて半分くらい削られた。
「むぅ。庇うか。美しき友情を称えても良いが、貴様が倒れては面白味がないだろう? ……あぁそうだ、これをやろう。」
そう言いながら懐から雷帝が取り出すのは、“見たことのある”茶色い小さな瓶。この世界には存在しないハズの『元気ドリンク』の存在に思考が割かれてしまった瞬間、彼女がそれをこちらに投げつけてくる。この身の神秘のせいかつい即座に口に含んでしまい、ツーちゃんとハーちゃんに『くちうつし』してしまったが……。
「え」
「きゃ」
「お、おぉ……。知ってはいたが本当にするんだな、マルコ。」
「…………あ。」
え、私今キスしちゃった?
「神秘が回復した……、いやマルコ? もうちょっと時と場所を考えて……。あ、ファーストキス。」
「き、キシャァァァア!!!!!」
「あー。我席外した方がいいやつ? いいよ、我万全の桃玉マルコと一対一で戦いたかっただけだし……。」
◇◆◇◆◇
「落ち着いた?」
「「「はい……。」」」
おそらく真っ青になっている私と、真っ赤になっているハーちゃんとツーちゃん。
えー、二人のファーストキスを奪ってしまいました……。も、もうこうなったら嫁入りor婿入りするしかねぇ! 責任はとりまぁす! あ、嫌だったら普通に遺産相続人とかになっとく? 多分どれだけ分割されても一人数億は堅いだろうし……。
「い、良いですから! ほらマルコ! あちら凄い顔してますよ!」
「『我もっかい別室で時間潰してきていい?』って顔してるな。」
「ほ、ほんとにごめんね……。雷帝もごめんちゃ。」
「い、いや我大丈夫よ、うん。万全で対等にバトって欲しかったから回復投げただけだし、ほんとはドリンクじゃなくてトマトあげたかったけど再現できずに失敗したって落ち度もあるし……。」
「「「「……とりあえず全部流して最初からってことでOK? OK!」」」」」
最初入って来た場所に戻る私たちに、もう一度玉座に座り直す雷帝。ちょっと気まずかったが、全員の同意で”何もなかった、いいね?”条約が結ばれ、締結された。よっしゃもっかいぶんなぐりに行くぞ!
……ただちょっと、相手が想像以上に強かったのは事実だ。こっちもこっちで消耗覚悟でやる必要があるかもしれない。ぽよ様にはまた負担をかけてしまうけれど、おそらく私と同等、それ以上の雷帝を打ち倒すには『疑似コピー能力』が必須だ。
「さて……、流石我が好敵手に、その友よ。だがこの身を打ち倒すには少々力不足といったところか?」
「……まぁその点は認めるしかないかもね。」
「ふふ、意見は一致か。となれば貴様の奥の手を使うのであろうが……。我も“無知”ではない。貴様の大本である『星の戦士』の業績は強く理解している。“友がいるだけ強く成れる”。なら、こちらも僕を用意しても文句はないな?」
彼女がそう言いながら指を鳴らした瞬間。彼女の玉座の両翼に雷鳴がとどろき、光と共に二つの影が出現する。……ッ! その二人は!
「ひゃッ! ひ、ひぃ~ん! お茶零しちゃったよぉ!」
「あぁもうユメ先輩……。あれ、もうですか?」
「時間まで寛いでいていいと言ったのは我だが……。もう完全に真面目な雰囲気壊れちゃったな。うむ。っと、紹介しようマルコ。貴様も知っているかもしれぬが……『アビドス高等学校生徒会』、『梔子ユメ』と『小鳥遊ホシノ』だ。」
さっきまで飲んでいたのであろう紅茶と共に転移したせいか思いっきりスカートに零してしまっている緑髪の彼女と、それを白い目で見ながら武装を整え始めている“おじさん”ッ! は!? 雷帝、おま! は??? というか『貴様も』知っているって!?
「む、言っていなかったか。簡単に述べるならば、貴様らの所の狐と同じよ。未来視のようなものだ。そのせいで色々と見えてしまってな……。10億程度でこの二人が雇えるのだぞ? 安いものだろう?」
「ご、ごめんねトリニティの人たち! ちょっと私達、色々お金なくて……。」
「一回の戦闘で10億、前金でポンってくれたんです。まぁ思うことがないとは言わないけど……。ユメ先輩! 仕事しますよ!」
おま! おま! おまぁぁぁぁ!!!
色々、色々言いたいことはあるけど! そっちがその気ならこっちも容赦しないぞ! マルコちゃんの財力を見せてやる!
「アビドス生徒会のお二人! というかユメ先輩!」
「え! あ、私?」
「そう! 今から11億、いや20億と私が持ってるアビドスの土地全部でこっちに雇われない!?」
「なッ!?」
驚いた顔をする雷帝に、明らかに悪い顔をし始めたホシノおじさん。……あ、まだ今はおじさんじゃなかったか。とにかく今の彼女の頭の中に、確実に私の存在を植え付けた! ユメ先輩は想像通りぽわぽわさんだけど、ホシノちゃんをこっちに付けられたら確実に行けるッ!
「な、ズルいぞ我が好敵手!!!」
「ズルくないもんねー! わたしってばあの『ホーリーナイトメアグループ』のトップで、トリニティで一番のお金持ちだもんね! ほら二人も知ってるでしょ、まだアビドスで元気に運営されてるウチのスーパー! 毎日使ってくれてるよね!!! 戦わなくていいから! というかお金だけもって帰ってもいいから! どうどう!?」
「あ、あのお店の!? 特売日多くて凄く嬉しい上に美味しい所……!」
「……どうしますユメ先輩?」
「ぬ、ぬぅ! な、ならば30億! 我は30億出そう! これでどうだ!?」
「あ! なら私は50億!」
「なら80!」
「100!」
「200!」
「500!」
「1000!」
「ひ、ひぇぇ。なんかすごいことなってる……。」
「これほんとに払ってくれるんですかね?」
「きひ。ゲヘナは知らんがマルコは普通に出せると思うぞ。あいつの資金力ヤバいし。個人で戦闘機とか学園とか保有してるしな。」
「……これ長引きそうですし、アビドスの方々もお茶にしませんか? 補給用に茶菓子もありますし。」
「5000億!」
「何をォ! なら1兆!」
「ぐぅ! ならこちらは戦時国債だ! 1兆1000億ゥ!」
「ぎぃぃ! だったらもう株も売ってやる! 1兆2000億!!!」
〇量産型アバンギャルド君<セールスマン>
巨大な肉体をお持ちなお客様に対応するという名目で各店の極秘地下ドックにて配備、組み立てられた調月リオの傑作機。本来のアバンギャルド君、通称<ハイエンド>タイプに比べ9割のコストカットを成し得ながらハイエンドの3割程度の実力を発揮できる。参考として各校の最強格を一体で何とか足止め出来るレベル。現在120機がロールアウト済み。D.U.を始めとしたキヴォトス各地に配備されている。
多種多様な装備と特殊ナノチタン合金の盾を装備し、格下の殲滅から敵特記戦力の撃破までなんでもこなすことが可能。勿論デカグラマトン対策にわにゃプログラミング言語が使用されているため、キヴォトス外の存在でも最低でもハッキングに数日を要する。
その高い戦闘力から『秘密のお茶会』の全会一致で“キヴォトスの危機となる存在以外には使用しない”ことが決定されたが、雷帝がクラッコを持ち出してきた時点で彼女を危機と推定。現在リオがマルコの後詰めとして各地から<ハイエンド>タイプも含めゲヘナへの輸送を開始している。
〇くちうつし
ポップスターで横行しているキス……、ではなく回復アイテムの共有システム。手に入れたアイテムと同様の効果を他プレイヤーやキャラクターに与えることが出来る。近づくだけで勝手に口移しで共有してくれるので便利。自機になったすべてのキャラクターやCP操作キャラが率先して共有しに来るため、おそらくポップスターでは当たり前の行為。ぽよ様は『なんではわわわ言ってるんだろう?』って思っているだろうし、マルコもほぼ無意識にやってしまった。
〇お金バトル
雷帝(ゲヘナトップ)と資金力で張り合うマルコ(超巨大企業の長)
こんな戦い、あってよいのだろうか……
あ、ちゃんと最終決戦はします