ピンク玉の神秘   作:サイリウム(夕宙リウム)

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28:むすめ???

 

「あー、はいはい。ここね。よっと!」

 

 

リオちゃを抱きかかえながら降りるのは、地下に生み出された一つの空間。まだ原作開始まで2年ちょっとあるし、連邦生徒会の方というか超人の活動もそこまで出来ていないのだろう。原作で存在していた「ロック」とかは存在しなかったので物理で彼女たちが眠る場所にまで到達する。

 

ん~、とりあえず危険はないっぽいかな? リオちゃ、降ろすね。大丈夫だった?

 

 

「えぇ、ありがとう。」

 

「……にしても、どうやって二人? を止めるの? 一応起動するプロセスとかそう言うのはセイア様から聞いているんだよね?」

 

「無論よ。プロトコルATRAHASIS、起こさない前提で動くけれど『起きた』としても対処は可能。……貴女には少し働いてもらうことになるけれど。」

 

 

別にいいって~。というかマルコちゃんそういう暴力しか出来ないからさ。むしろ頼ってもらえないと困っちゃうってもんですよ。んでんで? どうするのさ!

 

 

「まず第一段階として……、彼女たちを起動する前にこれをインストールするわ。見て頂戴。」

 

 

そう彼女が言いながら私に見せてくるのは……、タブレットの画面。

 

真っ黒だったそれが起動し、顔をのぞかせるのは、キヴォトスでもう見慣れてしまったワドルディたちの姿。デバイスの中で遊び回っていたのか走り去っていく姿が映し出されるが、画面を起動したことでこちらに気が付いたのだろう。一斉に彼らがこちらに手を振ってくれる。

 

……なんかプログラムで動かしているというより確固とした個々人の意志というか、画面の向こう側の存在に対してワドルディと同等の神秘を感じるんですけど。

 

 

「えぇ、本来は別のものを生み出そうとしていたのだけれど……。私たちは彼らを『デジタルワドルディ』と呼んでいるわ。幾つかテストを行ったけれど、この画面に見える一個体ごとに人格があるみたい。」

 

「でじたるわにゃ」

 

「正直なんで生まれたのか理解できてないのだけれど……、学園にいるワドルディたちと同等の存在のようで色々と手伝ってもらっているの。今回の『名もなき神々の王女』対策だけど、彼らの中から選抜された子たちを“お付き”として送り込むつもりよ。」

 

 

リオちゃがそういうと、おそらく“アリス”と“ケイ”に送り込まれるグループなのだろう。3体ずつのワドルディたちが画面の中で手を上げ『がんばるー!』みたいなことを言っている。いやデバイスから音声は出てないんだけど、直接脳に響いているというか、神秘を作用して意志を伝えられているというか。

 

……やばいわよ! り、理解が追い付かないぞ!? というかリオちゃ! YOU合理性の塊みたいな子だったよね!? なんで『生まれた経緯が解らない』ものを使おうとしてるの!? というかその表情からして彼らの全貌はまだ解き明かせてないんだよね!?

 

 

「マルコ、解ってたら苦労しないわ本当に。……合理性はね、同じレベルでしか成立しないのよ。」

 

「あ、はい。」

 

「まだ貴女と雷帝しか観測できていない『神秘』というエネルギー物質。これが本当に厄介なの、私達が積み上げていたはずの理論を軽く飛び越えてしまう。わかる? 単に『通して?』って呟いただけの彼らが私たちが年単位で構築していたプロテクトを突破していくのよ。正気を保つ方が難しいわ。」

 

 

神秘、いわゆる私たち生徒が扱う不思議ちゃんパワー。今のところ他者の神秘すら把握し思うままに操れるのは私と雷帝だけ。一応リオちゃも科学面からの観測を行っているんだけど……。まだ“そこにあると仮定”している段階に過ぎないらしい。完全に発見といえるほどまで研究は進んでいないというわけだ。

 

そんな神秘は何でもリオちゃ達が主戦場とする電脳世界に於いても無法状態のようで、猛威を振るっているそうだ。それこそキヴォトス由来の存在同士であればいわゆるパソコンカチカチして勝負! ってのが成立するらしいんだけどあまりにも神秘の差が大きすぎると、どれだけ手を尽くしても意味が無くなってしまうみたい。

 

キヴォトスの蟻ちゃん神秘が、ポップスターの超ド級戦艦神秘に勝てない様な状況が、ネット世界でも起きている。まぁポップスターってそういうのばっかだしね……。

 

 

「何が原因になっているのかは解るのよ。ワドルディたちが扱う言語をプログラミング言語として使用し始めていた時から、何かしら“人格形成”の余地は生まれていた。けれどPROTO DRAGOONたちにはまだ許容範囲内だったから経過観察してたのに……。朝起きてPCの電源を入れれば大量の“彼ら”が挨拶して来るのよ。画面を埋め尽くしてパンクしそうになってるのが一面に!」

 

「……可愛いけど怖いねぇ。」

 

「しかも彼らの“容量”。可変なのよ!? それでいて性能は一緒! もう科学とかクソだわッ!!!」

 

「り、りおちゃ~。キャラ崩壊してるよ?」

 

「……んんッ、失礼。話を戻しましょう。」

 

 

頭を抱えてひぃん!状態になりかけていた彼女を何とか宥める。

 

まぁポップスターを純粋な科学で分析しようとしたら頭おかしくなっちゃうだろうしねぇ……。実際最前線でずっと研究し続けてたリオちゃでもこうなってるのならもう多分誰も解らないというか、私如きじゃ触れない方がいいというか……。今度アリウス自治区にでも顔出したら? あそこ雷帝だけじゃなくゲマトリアも最近たむろしてるし、良い気付きがあるかもよ。

 

……でもま、そこの不明点を一度置いておいたとしてもウチの戦闘機や戦艦。そのほか多くのモノを彼女はこのキヴォトスに生み出し続けている。その辺り、ほんと凄いよねぇ。

 

そんなことを考えながら、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「今回彼女たちに送り込む『デジタルワドルディ』には幾つかの指令を与えているのだけれど、主な目的は2つ。一つ目は『プロトコル実行前の認証』としての働き、二つ目は『懐柔』よ。」

 

 

リオちゃがいうには、今回アリスとケイ。いわゆる名もなき神々たちの王女本体と、プロトコル実行時のトリガーAIに3体ずつ性格の違うデジタルわにゃを送り込むそうだ。彼らはリオから与えられた指令のもと、彼女たちに埋め込まれたプログラムを修正しその場に住み込むことになるという。

 

もし実際に『プロトコルATRAHASIS』、このキヴォトスを破滅によって塗り替えてしまおうとしても……。既にその工程は書き換えられている。本来はトリガーAIであるケイが『やっちゃえ王女!』すればアリスが『光よ!』でキヴォトスをぶっ壊すのだが、二人はその前にデジタルワドルディ。“でじわにゃ”すべての認証を受けなければならなくなる。

 

そして更に、でじわにゃ3体が認証したとしても……。彼らの上位にあたる違うでじわにゃ。リオの元にいる彼らと、学園にいる彼ら、あと最近セイア様の書類仕事を助けるために派遣されたらしいでじわにゃたちの賛成多数でなければ実行できないという、なんか複雑な機構になるらしい。まぁ絶対できないって感じだね。うん。

 

 

「セイアや貴女の話を聞く限り、アリスは問題ないでしょう。でもケイは反抗しトリガーAIとしての機能を果たそうとするでしょう。私だけであれば排除も考えただろうけれど、貴女が知る未来では和解できる余地がある。ならばこそデジタルワドルディたちの出番。いくら神でもキヴォトスの神、ワドルディ3体には勝てないわ。」

 

「そもそもの神秘の質も量も桁違いだから、どうしようもない。しかもワドルディだから絆される可能性大。ってことか。」

 

「そういうこと。……さぁ、この先のはずよ。向かいましょうか。」

 

 

だね、と返しながら歩き始めた彼女を抜かし、前を歩く。

 

廃墟でありながらまだ比較的清潔さを保つこの場所。原作では先生を認証して入ることが出来たと言うことからアロナこと連邦生徒会会長が何か手を打っていたのだろうが、私達の世界ではこっちの方がやはり早かったらしい。現在キヴォトスで使われている技術体系に基づかないデザインが見受けられる。

 

その道の人からすれば宝の山だろうけど、まぁ知識にない私からすればただの廃墟だ。ドローンなどの起動音や神秘の反応に気を配りながら歩いていると……。ついに“寝台”が見えてきた。

 

 

「AL-1S、ううん。天童アリス、ちょっと早いけどお目覚めの時間だよ?」

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「というわけで婆や! 娘二人増えたからヨロシク!」

 

「?????」

 

 

そう言いながら婆や、私を育ててくれた彼女に二人の“娘”を見せる。いや実は戸籍上の娘はとんでもなく沢山いるんだけどね? この二人はまぁ幼児みたいなものだからさ。私の元で育てた方がいいというか、このまん丸ピンクを育て上げた人の助けを借りる方が絶対良さそうというか……。

 

 

「あ、あの。とりあえずはお二人のお名前をお聞かせ願えますか? お嬢様は後で折檻するとして。」

 

「はい! 天童アリスです! マルコママの……、娘? です!」

 

「……天童ケイです。」

 

 

“廃墟”で行った探索から数日後。彼女の肉体とデータを回収した私たちはすぐに『学園』へと帰還。即座にデジタルワドルディの送り込みと、アリスのボディの複製を行った。勿論、ケイちゃんの肉体を作成するためだ。折角人格に近いものがあるんだったら体がある方がいいでしょう?

 

ま、当初はリオが予備として用意していたブラウン管テレビに手とタイヤがくっついたボディがあったんだけど……。ちょっとかわいそうだったので私から却下。我が学園の科学力とワドルディたちによってアリスボディのコピーを生み出すことにしたのだ。途中わにゃたちがそのへんの木を切り落としてケイの体の中に埋め込んだり、雷帝がふざけて新型プラズマコアをぶち込んだりと色々あったのは確かだが……。ここに二人瓜二つの姉妹がいるように、ちゃーんと完成した。中身? 怖くて聞いてない。

 

あ! ちなみに簡単な教育は彼女たちの中にいるでじわにゃたちが完了させてるよ! これで眼に入ったものを口に入れちゃう赤ちゃん状態からは脱却!

 

 

「はい、良いお返事ですね。……お嬢様? 説明してくださりますよね?」

 

「そ、そんなガン飛ばさなくても答えるって……。ちょっと訳アリの子達でね。ミレニアムで引き取るって話だったけど貰ってきちゃった! あ、戸籍はもう娘として申請してあるから大丈夫!」

 

「人を犬猫の様に言ってはなりませんよお嬢様。また最初から情操教育を受けたいので……。え、戸籍?」

 

「そうそう。見る? あぁアリスも見ておいて、お姉ちゃんたちの名前書いてあるから。」

 

「はい! 解りました!」

 

 

そう言いながらばさーっと書類を広げる。いわば私の家系図、桃玉家のものだ。

 

初代当主のマンマル様から始まって、最近だと御婆様のヨヨ様に、御野心MAXクーデター画策お母様なフウム様でしょ? んで私ことマルコちゃんの下に……。大体600人くらい。義理の娘たちがずらーッといっぱいいて、最後にアリスちゃんとケイちゃんね。あ、アリスがお姉さんだからちゃんとケイのこと守ってあげるんだよ?

 

 

「はい!」

 

「……お、お嬢様???」

 

「あれ? 婆やに言ってなかったけ? 名前無い子とか保護して学園に入れる時、面倒だから私の苗字上げてるって。最初マミィの養子にしようかと思ってたんだけどなんか悪い気がしてさぁ。面倒だから全員私の娘扱いした! こだくさん!」

 

「?????????」

 

 

あ、婆やが倒れ……。おぉ! 耐えきった! すごい!

 

さっき言った通り、学園の子達の中には名前さえ持たずに生きていた子たちがいた。戦闘機に乗ってくれているドラグーン1がその一例。自分で考えた名前を名乗っている子もいたんだけど、それすらない子もいてね? 戸籍上名無しで登録するわけにもいかんし、ずっと何もないままは可哀想だってことで全員に名前をあげたの。……あ、一応養子扱いだけど相続関連のことはちゃんとしてるからね? 私が抱えてる額が額だからさ。死後に骨肉の争いになる要素は排除しとかないとダメでしょう?

 

 

「そ、そういうことではないのですよお嬢様ッ! 確かにそのお心は正しいのでしょうがッ! 600、600ってッ!? いくら何でもッ!」

 

「まぁちょっと増やし過ぎたよねぇ。うんうん。あ、でもキリ悪いし1000まで増やしていい?」

 

「駄目に決まっているでしょう!? なんかもう、こう! あるでしょうッ!? というかそう言うことは最初から相談してくださいましッ! これでも私、“婆や”ですからね!?」

 

 

ま、確かにママ死んだ後ずっと育ててくれた親みたいなものだからねぇ、婆やって。確かに勝手に娘増やしちゃったのはごめんね? あ、今度のお正月に全員屋敷に呼んでいい? 婆やに挨拶したいって言ってた子もいたから。あ、それは別に大丈夫? なら良かった。

 

 

「でもまぁちゃんとした親やれてるかって言うと微妙なんだよなぁ。ウチのマミィは愛してくれたけどアレだったし、私が名前あげた子って大体平伏して来るか敬礼してきてなんかこう、敬われているというか心酔されちゃってるというか……。大丈夫なんかね?」

 

「……へいふく?」

 

「王女……、いえアリスは知らなくてよいことかと。」

 

 

ま、まぁまぁ婆や! 私のことはとりあえず置いておいて……。この子たちの面倒見てくれる?

 

 

「えぇまぁそれは構いませんが……。後ほど“しっかりと!”お話を聞かせて頂くのでご容赦のほどを。」

 

「う、ぅぐぅ。りょーかい。さ、アリス。婆やにお屋敷案内してもらって? 探検好きでしょう? あ、ケイはちょっと話したいことがあるから残ってね?」

 

「はい!」

 

「……解りました。」

 

 

私の様子にため息をつきながら、婆やに手を引かれて屋敷の中へと入って行くアリスを眺める。……アリスの後にケイ、KEYを起動したから妹にしたのだけれど。目を覚ましてからはずっとぶきっちょちゃんだ、気が付いたらじぃーっと私のこと睨んでるし、度々プロトコルを起動しようとしている。

 

彼女の精神世界にいるでじわにゃからの報告にもある様に、今でさえことを起こすための試行錯誤を続けているみたいだ。

 

 

「…………なぜ、こんなことを?」

 

「んー? 私がそうしたかったから?」

 

 

彼女に視線を合わすため軽くしゃがみながら、そう口にする。

 

実際、それ以外に理由はない。もっと確実な安全を求めるならば、確かに破壊した方が早いだろう。彼女とあの子、ケイとアリスは確かに最終章にてその力を発揮する場面がある。けれど私がいる以上彼女たちが戦う必要はないし、もっと言えば既に『箱舟』への対策は進めている。

 

完全に予想外だったけど、雷帝がこちらにいる以上既に私たちが“キヴォトス”の存在に滅ぼされる可能性は0に等しくなったと言えるだろう。だからこそリオも、より外へと警戒の対象を移していた。つまり、既にこの子たちは脅威でもなんでもない。可愛らしいただの後輩だ。

 

 

「ま、何しでかそうとしても全部私が止めてあげるからさ。好き勝手遊び回ればいいよ。世界を滅ぼそうとしても良し、満喫しても良し。与えられた“役割”があるのかもだけど、生み出された時点でそこから先は君たちの人生でしょう? だったらちょっとぐらい遊んだって罰は当たらないじゃない?」

 

「…………。」

 

「さ! ケイもお屋敷に入ろう! 実は英才教育って名目でゲーム大量に買い込んじゃってね? ちょっと桁が桁だから婆やに見つかる前に隠さないと……。」

 

「お嬢様?」

 

「あ! これアリス知ってます! 研究室でハイドラ1さんたちがしてました!」

 

 

ア、スゥゥゥ。け、ケイちゃん? ヘルプ……。あ、鼻で笑われた。

 

 






〇デジタルワドルディ

通称でじわにゃ。プログラミング言語『わにゃ語』を使い続けた結果なんか出現し始めたワドルディ。電脳生命体に近いのだが、普通に各種デバイスから抜け出して現実世界でも活動できる。だがその場合は全身がちょっと青い線でかたどられた感じになる模様。

自身の容量を好きに圧縮できるのでどこにでも潜入可能。更にその保有神秘量は変わらないため、相手存在が一定以上の神秘を持っていない場合どこでもマスターキーを持った無法存在になってしまう。現在キヴォトスで彼らに対処できるのはドラグーンやハイドラ、それと雷帝の持ち物ぐらい。現代社会における化け物。


〇派遣組でじわにゃ

アリスとケイに派遣されたチーム。普段は二人が持たされたスマホ型デバイスに居ついており、暇なときは一緒に遊んだりすることができる。二人の情操教育及び懐柔として選抜された子たちなため特段人がよく、ケイによく『あっちいけ!』されるが気にせずわにゃわにゃと話しかけている。

本来使用言語が異なるため意思疎通ができないハズだったのだが、でじわにゃが神秘で相手に直接意思を伝えているので問題はない。よくアリスたちと遊んでいる姿が見られる。


〇王女と鍵

原作同様ミレニアムへ進学予定だが、現在はマルコの屋敷に滞在中。婆やから色々な教育を受けながら、毎日楽しく過ごしている。最初はケイが少し居心地悪そうにしていたが、でじわにゃに引っ張られ毎日を過ごすうちに完全に絆されてしまっている。素直で元気な姉と、ちょっと口の悪いが姉想いの妹、としてメイドたちは認識している。

ちなみにマルコがアリスに対し「マルコママだよ~?」と言ったせいで、アリスからすれば『秘密のお茶会』メンバー全員を“ママ”として認識している。そのためリオと顔合わせると『リオママですっ!』と飛び掛かることもしばしば。たまたま近くにいた全知さんに盛大に勘違いされたりしなかったり……。

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