これまでのあらすじ!
カービィの神秘を持つ桃玉マルコ! 現在高校一年生で原作開始まであと二年ちょっと! つまりホシノとかヒナとかと同級生! キヴォトスに転生したけど、沢山危機があるのにただ黙っておくだなんて耐えられない! ぽよ様だって目の前に悪いのがいたらぶっ飛ばすでしょう? だったらマルコも同じことするの!
というわけで原作破壊を開始! セイア様とかサクラコ様とかリオちゃとか、なんか殴った結果仲間になった雷帝と一緒に悪いの大体倒したの! これがその結果ね!
〇現在のキヴォトスの状況
・アビドス
砂漠化の元凶らしきビナー討伐済み、また一部にはなるがアビドスの土地をマルコが買い戻してそのまま寄付。借金もマルコによって完済されたため、ユメ先輩が宝探しに行くこともホシノがテラー化する可能性も皆無! もちろん列車砲も雷帝本人が撤去済み! vol.1完!
・ミレニアム
ま、マルコがアリスちゃんとケイちゃん保護しちゃった……! しかもケイちゃんに体与えてデジタルワドルディとかいうお守りを沢山付けたよ! どう足掻いても名もなき神々の王女には成れないね! というかそもそもワドルディたちを前にして絆されないとでも思っていたのか……? vol.2完!
・トリニティ
ナギサ様がマルコのことを超危険視してるからとっても不穏だよ! あとなんかマルコのせいでナギちゃん様が政治力覚醒しちゃってるし、ミカ様はスーパー暴力お姫様4だし、セイア様はセクシー過労死フォックスだし……。あ、でもベアトリーチェは討伐したし、アリウスは遊園地になったよ! 原作よりもっとややこしくなる可能性もあるけど……、vol.3! 崩壊!
・連邦生徒会
超人アロナが邁進しているけど、長年マルコが連邦生徒会を札束ビンタし続けたから完全に“親マルコ”になってるよ! まぁ昔に比べたら中立になって来てるみたいだけど、超人が本気で止めに掛からない限りマルコの希望はほぼ通るよ! SRT壊せないし、カイザーが漬け込む隙間なんかないね! vol.4! 始まりません!
・百鬼夜行
マルコ達が本格的に手を加えていない地域だよ! でも普通にマルコが理事長してる『聖ワドルディ学園』の生徒たちが密偵として配置されてるし、地下巨大建造ドックでアバンギャルド君が大量製造されてるよ! 百鬼夜行に何かの伝手があれば、現地勢力と協力して即座に鎮圧できそうだね! ちなみにミカ様がトリニティから脱走して遊びに行ったとき、何か交友を結んだみたいだよ! vol.5! ことが起きる前に潰せ!
・デカグラマトン
もう最後のマルクト以外、真面に残ってないよ! 1~9は全部マルコが食べた! そしたらね! マルコ強くなってね! ついにカービィと出会えたの! うれしいうれしい!!! デカグラマトン編! 消滅!
どうだった!? すごいでしょー! あとはあとは! もちろん最終章! 今からクロコちゃんとプレ先生助けにいくよ! こうなったらまるーっと全部綺麗にお掃除だー!
……え、どしたのセイア様。一番の問題になりそうだったナギサ様の対応をついでにやっちゃう? 砲艦外交? おけー! よく解んないけどとりあえずなんか解った! 最終章討伐前の決起会! こと観艦式にお呼び出しメール送っておくねー!!!
「……少し、一息つきましょうか。」
桐藤ナギサ、フィリウス分派のトップに位置する彼女の邸宅。その主は一人ため息をつきながら一つのカードに目を落していた。
トリニティとゲヘナの間で行われた戦争、その後に発生する多くの業務を連邦生徒会や現ティーパーティーのお姉様方に投げつけた彼女ではあったが、仕事に追われていないというわけではなかった。むしろ普段より業務に追われているが故にの行動だった。誰もシナシナモップや過労死フォックスになりたいわけじゃないからね……!
(この招待状のせいでより頭を悩ませることになったのは確かですがね。)
原作開始時期ではトリニティの最高学年になる彼女も、今は高校一年生。ティーパーティーに所属しているとしても、回される仕事はそれほど過酷なものではないのだが……。『桐藤ナギサ』はフィリウス分派の頂点に立つ家の出身である。このトリニティが各家の力がより強く政治に反映される貴族社会のような状態、派閥トップの彼女の仕事量は当然多くなってしまっていた。
そしてそれに追い打ちをかけたのが、ゲヘナ戦後の処理である。無論基本的な物事はティーパーティーの面々に投げつけたのだが、彼女が個々人で締結した他自治区との盟約や、自国内における民意の統制など、すべきことは大量にあるのだ。いくらマルコのせいで政治力が爆裂アップした彼女でも、羽の手入れをする時間が惜しいほどには追い込まれていた。
(……ですがまだ、“この程度”は想定範囲内でした。優秀で信頼できる私的な書記官も抑えていますし、『お友達』も多くいらっしゃいます。えぇ、単にゲヘナが攻めてきて、それに打ち勝っただけならここまで忙しくなる必要はなかったでしょう。)
完全に冷えてしまった紅茶を口元に運びながら考えるのは一人の名前。
そう、桃玉マルコです。
セイア様を過労死に追い込む邪知暴虐のまんまる顔として著名な彼女ですが、ナギちゃん様にも的確にダメージを与えていました。何せ彼女、『敵の首領である“雷帝”を単騎で討ち取っている』のですから。
トリニティでの名声は、うなぎ登りです。
(元は同じフィリウス分派でしたが、今ではトリニティを二分する“お相手”。政敵として不足なしなのはミカさんでも理解できることですが……。あまりにも功績を立てすぎた。過去の統治者たちが英雄の扱いに困っていたというのは知識として知っていましたが、身をもって知ることになるとは……。)
現在のトリニティは、比較的それまでの体制を維持しフィリウス分派とパテル分派を主にした『ナギサ派』と、武力によってトリニティに新たな体制を打ち立てよう(と思われている)サンクトゥス分派とマルコに従うものたちによって構成された『マルコ派』によって二分されています。
無論マルコ達に政治的野心はないのですが、持っている戦力が戦力です。簡単にトリニティどころかキヴォトス全土に覇を唱えられる者を警戒しないわけにはいきませんし、マルコもナギサも末端の手綱を握り切れているとはいえません。もし何か失敗すればトリニティを二分し、最悪キヴォトス全てを巻き込んだ全面戦争に成り兼ねない。
そんな恐怖が、ナギサの胸中を支配していました。
(これを回避するためには、常にマルコさんたちが『ことを起こしたとしても失敗する』、そして『ことを起こしたとしても不利益しか被らない』ように手配せねばなりません。武力で劣っているのであれば政治で、勢力図もトリニティを二分、もしくは少しこちらが優位なように保たねばなりません。けれど……)
マルコが“英雄”になっちゃったことで、話が変わってしまったのです。
戦争というものは各所に強い影響を及ぼすもの。勝利したとしてもトリニティの国境線を少し後退させてしまったということから、トリカスお嬢様たちのゲヘナへの悪感情はかなり高まってしまいました。そんな時。敵の首魁、それこそWWⅡの時のちょびひげに当たる人物を、トリニティ側の“トップ”に近しい人間が一騎打ちで倒しちゃったのです。そりゃもう盛り上がるし、祭り上げるでしょう?
例え本人にそんな気がなかったとしても英雄の求心力は高まり続けますし、貴族体制が強く根付いているとはいえ政治が民意を無視することはできません。自然と“政治を担うものたち”も、“政治に興味がない一般の者たち”も、『マルコがトップに立てばいいんじゃね?』という気持ちになってきます。
そして一度火が付けば、民意というものは誰も止められません。セイア様がこれに気が付きマルコをトリニティから離してデカグラマトン狩りに行かせ、その間に新たな話題を大量にぶち込むことで鎮静を図りましたが……、依然として『マルコ派』の数は増え続けています。
(おそらく、あちらとしてもことを起こす時期ではなかったのでしょう。セイアさんがなりふり構わず動き回っていましたし、私としても全く好ましくありません。全力で手をお貸ししましたし、『借り』としてあちらに認識して頂けるように手配しました。けれど結果は芳しくなく、声は大きくなるばかり。時間経過で幾分かマシにはなるでしょうが……。)
ナギサの派閥内でも、マルコを推した方がいいのでは? という声が出始めています。
それを上手く押さえつけ、同時にマルコに付くよりもナギサに付く方が得だという事実を再度提示したり、噂という形でじゃんね☆の武力をアピールしてみたりと色々してはいるのですが……。どうしても離れる人を無くすことはできませんでした。無論逆にマルコを恐れてナギサの元にやって来る存在もいないわけではないのですが、これまで築いていた平穏が、二分が、徐々に崩れてきてしまっているのです。
ここでマルコ、もしくは彼女のブレインであるセイアが『クーデターいけるんじゃね? クーしよクー!』となればすべてが終わり。ナギサ様が頭を抱え、胃を押さえ、主治医を呼びながらも書類と格闘し、求心力を維持するためにお茶会のスケジュールを調整するという地獄のような日々を送っていた時に届いたのが……。
この、招待状でした。
(『聖ワドルディ学園』で行われる、“学園祭”。前夜祭、本祭、後夜祭。かなり長期間で行われ、同時に“一般開放”も行う。建前上は犯罪者の更生施設を主な業務とする学園ですが……、マルコさんの事実上の私兵。そこに私を呼び出すと言うことは……、示威行為のつもりですか?)
チケットと共に、セイアの直筆で書かれたちょっとしたメッセージ。そして同封されたパンフレットを開く彼女。少し手のものを使いしらべさせたナギサでしたが、ミカを含めトリニティの有力者のみならずほぼキヴォトス全域の社会的地位の高い者に配られたソレ。
SNS上にもかなりの広告が出されていますし、連邦生徒会のみならずミレニアムからも非常に好意的な意見、それこそ『この学園祭に行くことを推奨されている』ということが見て取れます。
(マルコさんの持つ企業、ホーリーナイトメアグループはトリニティのみならずキヴォトスの全域に手を伸ばす巨大食料品メーカー、彼女が主催しわざわざ招待状を送ったとなれば何かしらの理由がない限り足を延ばすのが施政者でしょう。つまり私も含め、このカードが送られたものは“出向く”ことが求められている。)
「何が出てくるのか……。」
無論、自身の代わりに他の者。それこそ配下を送る手もありました。ナギサ様は多忙ですし、一応まだ桃玉マルコはフィリウス分派に籍を置いています。事実上離反していると言えど、席次で言えばナギサの方が上。施政者として配下の声に応える必要がありますし、敵対者としても相手の申し出を受けることで自派閥に器の大きさを見せつける意義があります。
そして何より、会場では示威行為が推定されるのです。相手の手の内をわざわざ晒してくれるのであれば、トップが自身の目でじっくりと観察し、相手への対策を思案する。現状かなり押されている手前、少しでも取れる手を増やしておきたいという気もあります。
参加以外の選択肢は、ありませんでした。
「ボディガード、と言えば聞こえは悪いですがミカさんと共に行くべきでしょう。後はお抱えの技術者数人と、書記官も。……いっそのことツルギさんやハスミさんも連れて行くべきかもしれませんね。私が誠実に“護衛”として頼めば断れないでしょうし。」
少し嫌がらせのような行為にはなるが、と考えながらもメンバーを選出していくナギサ。反乱分子の制圧や、マルコと共に遊びに行ったり暴れ回ったり、たまにお外に探検しに行ってしまうミカ様さえいれば護衛は必要ないのは確かなのですが、一応そのミカ様も貴人です。実力は伴わないとしてもある程度の護衛を連れて行く必要がありました。
「あぁそうだ。いっそのこと彼女。マルコさん本人に案内してもらいましょうか。少々“話したい”こともありますし、彼女の“意志”も確認したいところ。何かと顔を合わせる機会も減りましたからね……。戦勝の英雄、その顔を拝ませて頂きましょうか。」
ほんの少しだけ口角を上げ、そう零すナギサ様。
ですが……。
◇◆◇◆◇
「わにゃわにゃ!」
「わにゃ!」
「な、なんでこの子たち透けてる? え、機械の中に入った!? え!? いつの間にスマホの中に!? あ、出て来たッ!?!? で、デジタルワドルディ???」
「というわけで聖ワドルディ学園ミレニアム出向組はこのような戦闘ロボを製造中よ。一体で大体ミレニアムの保安部全員を無力化することができるわ。値段はこれくらいね。」
「……ミレニアム保安部の維持コストより安いんですけど。」
「メンテナンスや保証契約を付けてその値段よ、お得でしょう?」
「わ、わぁ。色々壊れる音ォ! ……でもなんでこの顔なの?(ぶっちゃけダサい)」
「とっても芸術的でしょう?」
「はーい! わくわくアリウスアイランドのパレードが始まりますよー! 白線の後ろに下がってくださいねぇ! ほらいっちに! いっちに!」
「あ、アリウス……。アリウスッ!?!?」
「お、そっちのレディ、私達のこと知ってるんですかい? 見るからに……、あぁナギサ様の所の高官様ですか! えぇえぇ! 実はマルコ理事長に色々手を尽くして頂きまして! 楽しくやらせてもらってます!」
「こっちではワドルディVS聖ワド軍の演習してまーす! 超迫力! やばいよ!」
「演習終了後はワドルディとのバトルも出来ますよー!」
「わにゃわにゃー!」
「ちなみにわにゃちゃん一体でヴァルキューレの全部隊に匹敵するパワーなので、勝てたら金一封デース! 10億ぐらいの小切手デース!」
「じゅ、10億!? ホシノちゃんホシノちゃん! アレ! アレ!」
「いや先輩、もう私達には必要ないですって。……まぁそれはそれとして気になるのは確かですが!」
「でしょでしょ! やっちゃえホシノちゃん! ぶっとばしてしまえー!」
「か、カービィ様ァ! お願いだからアルバイトしに来てくださいぃ! なんか、なんかむっちゃ人来るんですよぉ! わたしじゃ無理なんですぅ!」
「ぽよ!」
「い、良いんですか!!!!」
「はぁ~い!」
「あっ! ランチタイムとつにゅうッ! え、もうお客さん帰っちゃったッ!?」
【かんたんアルバイト しっぱい…】
「ようこそいらっしゃいました、こちらの映画館では我が学園で撮影された映画及び、我らが理事長が放映権を買い上げた幾つかの作品が常に公開されています。無論、全て無料ですよ?」
「すいませーん、ポップコーンくださーい!」
「えぇすぐに。あぁそちらのお客様? ポップコーンにも30種ほどフレーバーをご用意しているのでこちらのメニューを。あぁ、もちろん全て無料ですので何度も来ていただければ。」
「うわめっちゃいっぱいある。どれにしよ……、映画も沢山あるし……。あれ? 『星のデデデ』? なんかおっきいペンギンみたいな人が主人公なんだ。どんなのだろ?」
(ま、間に合わん! ぶっつけ本番で声を入れるぞい!)
(そんな、むちゃよ!)
(みんな、自分の役を演技するぞい!)
(失敗は許されないでゲスよ!)
(オープニングが完成したよぉ~!)
『上空から失礼、これより学園航空部から曲芸飛行を行わせて頂く。周囲に気を付けてぜひ空を眺めてほしい。リクエストがあればその場で実施するので、学園祭公式アプリから要望を送ってくれ。』
『ひゃっはー! ついにうちら本邦大公開っす! もうダチに帰宅部って誤魔化さなくっていいっす! 教諭に“君成績悪いんだからせめて部活動で何か……”って言われる日も終わりっス!』
『ハイドラ2、思いっきり声漏れてるが大丈夫か?』
『しらねっす! りじちょー! 頑張るんであっしの成績あげてくださいっすー! 赤点全部消して―!』
「だめー!!!」
『そんなー! こ、こうなったらリジチョの秘蔵ブロマイドを空からばら撒いて無理矢理頷いてもらうしか……!』
『……ドラグーン1から各機へ、早速予定を変更しハイドラ2対全機の模擬演習を開始する。』
『あ、ちょ! まッ! 緊急回避―ッ!!!』
「おかわり!」
「わにゃ。」
「……なぁ、ハスミ?」
「おかわり!!」
「わにゃ!」
「その、この車のピンクのケーキ。美味いのは解るが……」
「おかわり!!!」
「ぽよ!」
「もう十皿以上食べてるし、サイズは私らの顔くらいあるし……」
「おかわり!!!!!」
「はいはーい、マルコちゃんが運ぶよー!」
「…………明日体重計の上で泣き叫んでも知らないからな?」
「……ねぇ、マコト。」
「なんだヒナ。」
「私の目の前に、明らかに雷帝っぽい人がいるのだけれど。」
「私にも見えるな。……お前の所の横乳が気絶してるし、事実か?」
「事実……、なの?」
「おぉ! 誰かと思えば愛い愛い後輩たちではないか! んでどうしたアコ? 胸の排気口に何か詰まったか? そこのわにゃ! 運んでやれ!」
「わにゃわにゃ!」
「…………夢ね、全部。悪い夢よ。」
「初めて意見があったな、ヒナ。そうだな全部夢だ。」
「はっはっは! 夢ならば目一杯遊ぶといい! この私が許そう! というわけでちょっとしたミニゲームを用意したのだがやって行くよな? 成功すればこの星が真っ二つに割れるのだが……」
「「やりたくないです……」」
「そうか? なら国を亡ぼす隕石でバッティングといこうか! アレコツを掴むと面白いぞ? ちょっとマルコに敗けて悔しかったから本場で練習してきてな……。お前たちにも教えてやろう!」
「とまぁこんな感じっすかね! ざーっとみてきましたけど、どうでしたナギサ様?」
「??????????????」
「あ、壊れちゃったじゃんね。マルコちゃん、紅茶かロールケーキない? 口に突っ込んで再起動しなきゃ。出来たらいつものメーカーの奴が良いんだけど。……というか今ナチュラルに雷帝いなかった?」
「気のせいじゃないっすか? というかミカちゃん様! 私トリニティの食を牛耳る存在ですよ! お口に入るもので用意できないものはありませんて! もちろんありますとも!」
そう言いながら手を叩き、メイド服に身を包んだウチの学園の生徒たちを呼ぶと、すぐさま必要なものを持って来てくれる。
元々単なる不良だったんだけど、この前学園に足を運んでくれた婆やが『私の後継者に成りうる人材を幾人か発見しましたのでまとめて“メイド部”として教育したく……』と言ってたから、わざわざ部活作ってそこに放り込んだんだよね。一応各学園からお偉いさんとかも呼びつけてるし、彼女たちにはその相手をお願いしている。
……え? 次期連邦生徒会長と名高いアロナちゃん様があまりの無法振りにひっくり返って泡吹いてる? ナギちゃん様もだけど、さっさと復旧よろしゅう。
にしてもまぁ、婆やが後継者とはねぇ。アリスとケイを娘として連れてきてからなんかより“婆や”感が増してきたけど、後継者を作り始めたってことは引退を視野に入れて来たってことだから……。嫌だなぁ、ほんと。私としてはそういうの止めてほしいというか、考えたくもない。でも彼女も年だし、本人の意向であるならばかなえてあげないといけない。そういう“後に繋ぐ”こともメイドさんのお役目なのも解るんだけど、婆やって私の育ての親みたいな人だからなぁ。そういう人が自分がいなくなった後を考え始めてるのって普通に嫌。……神秘ぶち込んで若返らせてやろうかな?
(ま、私のワガママだよねぇ……、っと。ナギサ様たちの案内の途中だった。)
にしてもナギサ様どうしたんだろ? まだまだ学園祭は始まったばっかりだし、見せられたのも外でやってる出し物がメインだ。まだまだ学園校舎で面白いものがいっぱいあるし、技術部の部室ではミレニアムの生徒たちが新技術に発狂しすぎてぶっ倒れ、救急車が長蛇の列を作っているっていう報告も受けている。まだまだ紹介しきれていない。
それに、一番大きな出し物がまだ残っている。スケジュールだともう少し後の予定だったんだけど……。ナギサ様の体調が悪いのなら予定ふっ飛ばしてもうやっちゃおうかな? セイア様から『ナギサと連邦生徒会会長には確実にアレを見せること』って念押しされてるし。
というわけで思い至れば即行動!
「こちらマルコちゃん、艦長ちゃんたち~。聞こえてる? 悪いんだけどちょっと予定早めてくれない? いけそう? ……あ、うんうん。上空に浮かせるだけでいいから。そうそう、全部ね。」
無線機の先から小気味良い返事。
どうやら点検も人員物資の輸送も完了済、出撃前の自由時間を満喫していたようだ。彼女達には悪いけど、作戦終了後の報酬上乗せで許してもらうとしよう。
そんなことを考えながら後ろを振り返っていると、ナギちゃん様のお口にミカ様がロールケーキ1本をそのままシュート。無理矢理飲み込ませた後にお紅茶を滝のように流し込んで無理矢理再起動させている。手慣れているようで全く躊躇せずやっているが……、すぐに再起動しているあたり、実績はあるのだろう。
(ん? 後ろのアレ、アロナちゃんか。あっちはイチゴミルクバケツで流し込まれてるな。……そう言えば実際に顔合わせるのってこれが初めてだっけ? 初対面だけどガチャの恨みで一発殴っても許されるかな? 『ぽよっ!?』あ、駄目っすよね。じょ、冗談ですよー!)
お野蛮な思考が神秘の繋がりによってぽよ様に流れてしまったのだろう、すぐに『だめだよ!』という意思が飛んでくる。即座に返事を返せば納得してくださったようだが……、でもやっぱりアロナは一発くらい平手打ちされても、ねぇ? 特に石を吸い込まれた先生は特にさ。
あ、天井は当たり前とか言い始めたら脳天貫くからね♡
「殺気ッ!」
「だ、大丈夫ですかアロナさん!」
「え、えぇ。ありがとうございますリンちゃん……。」
よし、これで全員復帰しましたね。
「ではでは始めさせて頂きましょう! この聖ワドルディ学園! その大一番を!」
私が両手を大きく開いた瞬間、世界が揺れる。
それまで何もなかったはずの区画、部外者が入り込まぬよう立ち入り禁止のテープが張られた区域が、全て割れる。そこに生み出されるのは、大きな4つの穴。一つ一つが500mを越えており、明らかにこのキヴォトスには不釣り合いなものが、浮かんでくる。
「この学園祭は“観艦式”も兼ねてましてね……。実際に出撃した姿も見てもらう予定だったんですよ。それではご覧いただきましょうッ! 我が聖ワドルディ学園が誇る“最終兵器”! 超ド級宇宙戦艦ッ! ハルバード級の威容をッ!」
私達、というか私がリオに発注して、無理に建造していた正真正銘の最終秘密兵器。ポップスターにおける仮面騎士の所有する戦艦。それをモチーフとし、海空宙の3方面において万全な能力を発揮できる最強の戦艦。全長371.1mの空飛ぶ鉄の塊が、“4”つ。
あ、ちなみに船首像? 顔? まぁメタ様の顔になってるところは全てワドルディのお顔になっている。ぽよ様を通じてこの前メタ様に聞いたんだけど、ややこしいから全く同じものにはしないでくれ、って言われたからね。
……あ! もちろん“顔”は変わるからね!
「どうですナギサ様、凄いでしょう?」
「………………ぁ。」
そう笑いかければ、返って来たのは小さな漏れ出る声。
彼女は最後まで立ち続けたが……、その後ろで泡を吐きながら後ろにもう一度倒れるアロナちゃんの姿が、酷く印象的だった。
〇ナギちゃん様の心境
何、アレは。戦艦? 宇宙戦艦? それも4つ? 空に浮かんでいる? ……あの主砲は何。明らかに、私達が知る“戦艦”とは本当に別物。もっと、もっと上。キヴォトスの常識をより大きく塗り替えるもの、雷帝など可愛らしい化け物。ダメ、ダメ、“対抗策”が解らない。列車砲であれば線路という解りやすい道があった、でも空。でも宇宙、そんなもの対策できない。確かに戦闘機の手勢はありますが、マルコさんの戦闘機隊を抑えるだけでも難しい。そしてもちろん、地上にいる存在がアレを落すことは不可能。ミカさんならなんとかなるかもしれないが、それでも1機が限界。残りの3つは、好き勝手動かれる。
戦えば、トリニティどころかキヴォトスが終わる。
……勝てない。いやそもそも戦ってはいけない。私が想像していたよりも、何倍も“悪い”。それを今、マルコさんが『民意によって安易に政権を取れてしまう時期』に私達に見せる? あぁ、あぁ。私は……。