「「「おはようございます、お嬢様。」」」
「はい、おはようございます。役員の皆様お変わりないようで何よりです。ささ、どうぞ座ってくださいまし?」
そう言うと、まるで一つの生き物かと錯覚するほど統制の取れた動きで着席するロボットさんたち。そう、今日は私が株を保有する企業……、というか家が運営するグループの様子を見に顔を出したって感じですね。株主総会ですわ~!(参加株主総勢一名)
私の名は“桃玉マルコ”。神秘の大本を知った今では『まんまじゃん!』と自分で突っ込みたくなるような名前ではあるが、トリニティではかなり名の知れた良家である。何せ食糧を牛耳るお家だ。上流階級のお嬢様でもし名前を知らなければモグリ扱いされるレベルだからねぇ。
(んで、その力の大本である“グループ”の様子を見に来たわけですけど……。ほんとウチの一族やってますわ。)
『ぽよ?』
あ、すみません御大。解りやすい様にご説明しますね。
さっきも言った通り我が家。『ホーリーナイトメアグループ』……、長いですので『HNグループ』は食料品、ご飯に関することを牛耳っているのですが、正確に述べるならば“生産”と“輸送”のシェアを確保しているグループになります。一応“調理”だったり、“販売”も小規模で行ってはいるのですがそちらは他の家のとの兼ね合いから大手を広げて出来ていないって感じですね。
そんな我がグループの発端は私の御婆様に当たる方、その方が当時のティーパーティのホストを務めていらっしゃったときにはじまります。彼女の在任期間中、なんとトリニティで大飢饉が起こったそうで……、飯を取り合い殴り合いの日々が続いたそうです。そんな状況に心を痛めた御婆様は当時のお家芸“輸送”の力を大いに使い、ミレニアムやまだ砂漠化が軽度であったアビドスから食料を購入し、ほぼ無償で分け与えたそうな。これが我がグループの始まりみたいですね。
ですがそこで終わらないのがトリニティクオリティ。『慈愛の君』のイメージを確立させた彼女は暗躍を開始、大飢饉に陥ったことで“食”の重要さを理解していたのでしょう。当時の食料生産施設の大半を獲得することに成功します。飢饉が起きていたわけですから、農業関係者はもうボロボロです。そこに金持った奴が『言い値で買いますわ~! もちろん皆様の今後のお給料もはずみますわ~! 慈愛の君ですわ~!』となればもう、ね?
『ぽ、ぽよ……?』
(あ、御大からすれば複雑な名前ですよね。ウチのグループ名、アニメでの敵組織の名前ですし……。)
まぁそんな感じでトリニティでの“食”を司る者として立場を確立させた我が家。御婆様が卒業為された後は畜産・酪農に手を出し、お母様の代で漁業とミレニアムから輸入した最新の生産施設などの投資。とまぁそんな感じでウチの家は力を高めて来た、って感じですね。
もしお母様やお父様が生きていれば、まだ切り落とせていない“販売”の利権や、他自治区への投資とかもどしどしやっていたのでしょうが……。ま、死んじゃいましたからねぇ。
私のことを気にかけてくれていたのか、グループの株は全部私に集中させて一人株主にしてもらってますし、離反などが起きないように定款などでガチガチに固めてもらっています。
今の生活が出来るのは親やこれまでの一族のおかげですし、一応娘です。両親が道半ばで倒れたのならばそれを引き継ぎ邁進すべきなんでしょうが……。私あんまりこういうの興味ないんですよねぇ。トリニティのお嬢様って貴族みたいなもんですから後続へと続けるために計画の受け継ぎとかはしますけど。私あんまりマネーゲームとか権力を求めたりとか好きじゃないんですよ。
(元から『何事もパワーで解決だよなぁ!』って感じですからねぇ。)
『zzz……。』
(あ、ちょっとややこし過ぎましたか。ゆっくりお休みになってくださいな、ぽよ様。)
さ、んじゃ愚痴もここまでにして、私も株主。“お嬢様”として仕事しますか!
「では、先月出席できなかった分も含め。直近二カ月の報告をお願い致します。」
「は! では農業部門から……。」
資料片手に、役員様方の説明に耳を傾けていきます。
記憶が戻る前はちんぷんかんぷんと言いますか、子供故に理解できないことが多かったのですが……。これでも前世は成人して、専門とは言えないまでもある程度の知識を蓄えていました。付け焼刃より危険なものはありませんが、何も理解できないよりはいいでしょう。今日を迎えるにあたって、急いでキヴォトスの法に目を通してきましたからね……。
「……成程、やはりミレニアムの技術は無視できませんね。工場での大量生産技術、いくらこちらがブランド化できるとは言えど、難しいものがありますか。」
「その通りかと、あちらで何かしらのブレイクスルーが起きたとしても瞬く間に駆逐される可能性は低いと思われます。しかし注視し続けるべき相手です。最悪完全にこちらに取り込むのも手かと。」
「そうでしょうね……。解りました、もし買収の必要があるのならばすぐに連絡をお願いします。あちらの生徒会長、総領主様との兼ね合いもあるでしょうし、ティーパーティへの“ご相談”も必要になります。」
「はっ! 役員会で早急に判断し、お伝えします。」
食料、人が生きるために必須なものを扱う我がグループはどうしてもティーパーティ、トリニティの生徒会の顔を伺わねばいけません。私がホストに収まれば好き勝手出来なくもないですが、そうでない以上“利権を維持するために”いい子ちゃんでなくてはなりません。ある程度自由に出来るよう、お母様がティーパーティにいたころ色々やらかしたそうですが……。他自治区が関わるのであれば、お伺いを立てなければなりません。外交的な問題も出てきますしね。
ま、ではそんな感じでよしなに。
えー、では。次は輸送部門ですか?
先に頂いた資料では、特に問題はなさそうでしたが……。やはり防衛コストが嵩みますね。
「はい、どうしても輸送時の襲撃を回避することは難しく……。正義実現委員会やヴァルキューレと連携し大規模な摘発なども行っているのですが、被害を完全に抑えるのは難しいと考えております。しかし警備や護送車を増やそうにも警備部門のリソースは限られています。かといって外部に委託しようにも……。」
「真面に動いてくれそうなのが“カイザー”だけですものねぇ。」
輸送を司るロボット役員様の言葉に、そう相槌を打つ。
我が『ホーリーナイトメアグループ』にとって、『カイザーグループ』は思いっきり敵対企業だ。何せトリニティでの独占を崩そうと結構な頻度でちょっかいを掛けてきている、株主総会を行うに当たって先に頂いた資料にも書かれているが、我がグループの生産施設への襲撃にカイザーPMCが関わっているのではないか? という内容が記載されていた。
ゲームに於いても、明確な“敵”として描写されるカイザーグループ。確かに彼らは裏であくどいことをしているし、トリニティに負けないレベルで策略を巡らしてくる。けれど……。金さえ払えば“適正な”仕事をしてくれるのは確かなのだ。
「他のPMCや警備会社は『騙して悪いが……』の危険性がありますし、カイザーはカイザーで『マッチポンプ』の可能性がある。」
「我々としても、そう考えています。」
「かといって我が家がこれ以上の武力を持つのはティーパーティとの盟約に反する可能性もありますし……。大変申し訳ないのですが、この件は持ち帰らせて頂いても?」
そう言いながら歴戦の役員様方に了承を頂く。
我が家は確かに食料を司りますが、流石にこれは一つの家が持つには大きすぎる力です。故に保有できる戦力はティーパーティから制限され、いつ何時でもあちらからの監査を受け入れなければならないという制約があります。どうやら生前のお母様は私をティーパーティにぶち込んでこの制約をいい感じに消し飛ばそうとしていたようですが……。
ま、この件は破棄でしょうね。まだ何年も先ですがトリニティだけでなく、キヴォトス全体の危機が迫っているのです。内ゲバで要らぬ労力を強いるのはお馬鹿さんのすることですし、『トリニティの裏切者』で疑心暗鬼に陥っていたナギサ様をゲームで知る自身からすれば、これ以上の負担はちょっと、ね?
(といっても、“力”がなければ守るものも守れません。)
細かい所はトリニティ入学後の私に任せるとして、眼の前の問題に対処致しましょう。
一応、新しい“武力”を手に入れるための動きは進めています。輸送時に起きてしまう襲撃への対処もそうですが、『今後起きるであろうイベント』への対処の為に、ちょっと手を回していることが一つ、二つ、三つ……。まぁまだ草案状態のものも多いのです、こちらは追々ご説明しますね。
さて、このほかに話しておくことは……。あ、そうだ。
「そういえば。お父様やお母様が推し進めていた他自治区への進出ですが……、どのように?」
「では私が。現在はミレニアムへの出資・事業拡大をメインに行っております。以前から続く技術交流などのおかげかトリニティの文化のウケが良く、特にスイーツ面での人気が高くなっております。我がグループではあまり経験のない『生産から調理、販売まで』の形式で行っているため全く問題がないわけではありませんが、順調です。今後より事業を拡大しても問題ないかと思われます。」
うんうん、素晴らしいですね。……一応お母様の計画ではゲヘナへも拡大しようとしていたようですが、そちらはやはり?
「は、やはり両校の間にある確執はいかんともしがたく……。風紀委員会からの防衛支援はあるのですが、何かしらの物資を持ち込んだ時点で襲撃を受けてしまうという惨状です。対応として『ホーリーナイトメアグループ』とはまた別名義での活動に切り替えましたが、治安の悪さ故か赤字が続いています。」
「まぁゲヘナですもんねぇ……。あちらの企業様はどうやって生き抜いてるんでしょう。単純に疑問ですわ。」
トリニティと比べ、ゲヘナの治安はかなり凄い。悪い意味で。まだ美食研究会や便利屋68など、ゲームにおけるメインお尋ね者はいないようだが、そもそもの気質がヤバいらしく、こっちの事業はあまりうまく行っていないようだ。ただ渡された資料を見る限り、一定程度の固定客はいるようだし、長期投資って考えれば多少の赤字も許容すべきなのかな? まぁ細かい所は私が判断してもミスる未来しかないのでお任せしますー!
「かしこまりました。」
「よろしくお願いしますね。……あ、それと。これはワガママになるのですが。少しだけアビドスへ進出して頂けますか?」
「アビドス……、ですか?」
「えぇ。先の決定で、砂漠化の影響から候補より外しておられたようですが……。ちょっと確認したところ、かなり広範囲にわたってカイザーが土地を買い占めているようでして。」
そう言いながら、こちらで用意していた資料を役員様方に手渡していく。
あの地は色んな意味で無視できない。グループとしての旨味が無いことは理解しているが、“未来”を知る私からすればあの地での橋頭堡の確保は必須。原作との乖離を防ぐためにも、カイザーを刺激しすぎないように動かなければならないが……。
(ま、やるしかないね。)
◇◆◇◆◇
「いやぁ、悪いねぇ。こんなこと付き合わせちゃって。というわけでストレス発散デストローイ! カイザー死に晒せぇ!!!」
「ギャハハハ! ぶっ壊れろォ!!!」
「別に戦闘は良いのですが……。色々と大丈夫です、これ?」
そう言いながらも前へと進むツルギとマルコの合間を縫い、照準を合わせ引き金を引く。
ショットガンを扱うツルギと、0距離でのフルバーストを好むマルコ。病床に伏す前のマルコとの戦い方とは真逆の前へ前へと進むその戦いに驚きこそすれ、よくよく観察してみれば本質はツルギのスタンスと同じ。故に後方からライフルで援護するのに問題はないのですが……。これ、私止めた方がいいんでしょうか? というかまだ中学生の私たちが勝手に治安維持していいのでしょうか?
「あ、大丈夫だよハーちゃん! ここ私の私有地! 昨日あらかじめ買収しといた! オールウェポンズフリー!」
「そ、そうなのですね……。」
私、羽川ハスミには二人の幼馴染がいる。剣先ツルギと、桃玉マルコだ。小学生の頃にはしゃぎまわっていたマルコさんに引き合わされ、気が付けば幼馴染と呼べるような関係性になっていた。どこ行くにも一緒、というわけではないが過去の記憶を思い起こせば、絶対に二人の姿がそこにある。掛け替えのない友というのは、彼女たちのことを言うのだろう。
(それにしても、何かしてると思えば……。)
最初に違和感を持ったのは、ツルギだった。
私とツルギの家は近いのだが、マルコの家は少し離れた場所にある。故に登校時は途中で合流、下校時は途中で別れることになるのだが、ツルギが言うには去り際のマルコさんの姿に少し異変を感じたのだという。
先日大病を患い、一月ほど学校を休んでいた彼女のことだ。もしまだ体調がすぐれず途中で倒れてしまったら一大事。放課後に全く用事がないというわけではないが、親友の安全には換えられない。どうやらツルギも同じことを思ったようで、私たちは急いでマルコさんの後を追うことにした。
『……マルコの家、こっちじゃなかったよな。』
『はい、どうやら寄り道しているようですが……。』
違う道を歩く彼女の後を追う私達。
そんな時、聞こえた銃声。
すぐに顔を見合わせた私たちは、懐から武器を取り出し急いで現場に向かったのだが……。
『ひ、ひぃぃぃぃぃ!?!?!?』
『う~ん、もしかしたらと思ってたけど、手榴弾も食べれるとはなぁ。うまうま。おいちい! ……あ! ハーちゃんツーちゃんじゃん! どしたの?』
彼女に足蹴にされているためどれだけ悲鳴を上げても逃げられないスケバンと、何でもないような顔でボリボリと銃器を貪る幼馴染の姿が、そこにあった。
「いやぁ、あの時はビビったよね。親友二人が全部吐き出さそうとして来るんだもの。ツルギとか手首まで喉にぶち込んできたし。」
「あ、いや、ごめ……。いや銃食ってる奴いたらそうするだろ。」
「というか本当にどうなってるんです?」
この辺りを根城にしていたらしいヘルメット団の脳天に弾丸を叩き込みながら、そう愚痴る。すると返って来たのは『なんか全部綺麗に消化してるんだよねぇ。というかトイレ行く必要無くなったというか、文字通り塵も残さず消化できるようになったというか……。私の体こわーい!』という言葉。
一応大きな病院で精密検査を受けたようなのだが、結果は『論文にしたいほどの健康体』というもの。つまり彼女はいつの間にか、銃器すらも消化しきる肉体を手に入れたようである。
「……あの熱の後からか? 戦い方が変わったのも。」
「そだねツーちゃん。たぶん病魔に耐えるために体を作り替えた結果、肉体強度があがったのよ。昔はクソザコ装甲だったからトラップとかアンブッシュマシマシだったけど……。今じゃタンクもいけるじゃんね! ほらほらクソザコヘルメット団さんよ! いくら装備が良くてもカラテが弱けりゃ意味ねえぞ! イヤーッ!」
「あ、アタシらはドキドキヘルメット団って、アバーッ!!!」
未だスタイルの確立が出来ていないのだろう、動きに迷いが見えるマルコをライフルで支援し、敵の増援に備えリロードを挟む。彼女の言う通り、確かに相手の装備は無駄に整っている。まるで誰かから支援を受けているかのような……。
けれど、幾ら良い装備を揃え、防御を固めたとしてもその隙間を縫い少しだけ見えた地肌へと銃弾を叩き込めば何も問題はない。ただでさえ安心して前を任せられる前衛が2人もいるのだ。ここで外せば女が廃る、というものだろう。
(ヒット。……前とは本当に別人の戦い方ですね。ま、こちらの方が生き生きとしていますが。)
マルコの言う通り、あの子はあまり強くはなかった。確かに細やかな技術、彼女の“婆や”に教わったのか罠を張り巡らせ背後から強襲を掛けることが出来るのは知っていたし、小学生の頃に巻き込まれたスケバンたちの抗争の時にステルスしながら私とツルギを連れてわざわざスケバンたちのリーダーの背後を強襲しに行ったりと、“持つ技術の高さ”は理解していた。
けれど彼女の性根に、そのスタイルは全くあっていなかったのだろう。今の楽しそうにハンドガンを乱射するマルコを眺めてみれば、ツルギの様に前線で輝くのがあの子だ。けれど昔の彼女はそこまで体が強いわけではなく、身体能力も高くなかった。口を膨らませずっと愚痴を言っていたのは、強く記憶に残っている。
(本人の気質に合っていない上に、幾ら強襲を掛けてもヘイローを持つ相手ならばハンドガンの攻撃程度耐えてしまう。反撃を受ければそのまま気絶してしまっていたのだから……。)
親友の変化に、多少の戸惑いは確かにある。
けれど私、そしてツルギからすればそんなもの些細なことだ。
……いや確かに銃をバリボリ噛み千切っているのとか、手榴弾を丸呑みしているのとか、スナック感覚で銃弾を摘まんでいる姿には驚愕しかないが、何があろうと親友である事には変わりない。
少し前までは彼女の防御力不足のせいで供に戦うことができなかった。
けれど今であれば、皆で、一緒に。
「二人ともっ!」
「ギャハァッ!」
「りょ! 君で最後ってねぇ!!!」
声に合わせ、弾かれたように動き出す二人。それを支援するように、引き金を引く。
ヘルメット団の最後の生き残りに命中したソレは彼女の姿勢を崩し、動きを止める。そこにローリングをもって接近したマルコが、足払いをすることでその身を宙に。そして足払いから流れるように両足裏を敵の腹部に当て、全力で蹴り上げる。
「ほい、パス!」
「ふっふっふっふっふ……、死ねぇぇぇ!!!!!」
空中に浮かび、身動きの取れなくなったヘルメット団。それを上空から叩き落すのは……、ツルギ。
外壁を足場としいつの間にか大空へと舞い上がっていた彼女。そんな血の天使は、大地へと叩きつけるように引き金を引く。
「グボゥハァ!?」
肺の中が全て無理矢理吐き出されるような音、地面に叩きつけられるとともに、ヘルメット団の頭上に浮かんでいたヘイローが、消える。……制圧、完了だ。
「増援は……、なさそうですね。お疲れ様です二人とも。」
「マルコ、何発か喰らってたが大丈夫か?」
「だいじょぶー! カチカチになりましたから! (これも全部御大のおかげだけど……)無事、大勝利ってやつだね! んじゃご一緒に~!」
デデデーデ デデデ!
デデデーデ デーデ!
デデデーデ、デデドンドン! デデーデデデ!
「『ぽよ!!!』」
「……何ですかそのダンス?」
「……変な声聞こえなかったか?」
せ、戦勝の舞。ですか? なんか嬉しいことがあった時もやってる?
い、いや個人の趣味に特に言うことはないですし、普通に素敵な踊りだとは思うのですが……。え、一緒にやらないかって? ちょ、ちょっと動きが激しいので遠慮させてもらえると……。最近ライフルでの戦闘スタイルを見越して制服に大きなスリットを入れてしまったものですから、ちょっと動きが激しいブレイクダンスとかは、その、色々と見えちゃうので……。
「むぅ、残念!」
「あ、そうだマルコ。お前時間は大丈夫なのか? 思ったより戦闘が長引いたせいで帰るのが遅く……。」
そんな風にツルギが疑問を口にした瞬間……。
私達の全身に、途轍もない“圧力”が降りかかります。
こ、これは……、殺気! じゃなくて怒気!
「お帰りが遅く、心配して周囲を探ってみれば……。これはいったいどういうことでしょうか、お嬢様?」
「ば、婆やッ!?」
まるで重力すらも操っているかのように、ゆっくりと空から降りてくる獣人の御婆さんが一人。マルコさんのお家におじゃました時に何度も顔を合わせたことのある、メイドさんの一人。彼女の親代わりでもある、“婆や”さんだ。普段通り、にこやかな笑みを浮かべているというのに……、心臓を鷲掴みにされるかのような“怒り”が、私達を包み込んでいく。
「あ、いや、これはその……。しゃ、社会貢献! 社会貢献だから!」
「社会貢献だろうが何だろうが、これほどまでに装備が整い人数も多いヘルメット団相手に3人で戦うのは紛れもない危険行為では? そんな危ないことを御友人を巻き込んで行うのはいささか“桃玉家”の人間として危機感、そして責任感がないと婆やは愚考いたしますが?」
「で、でもそこにヘルメット団がいたわけですし……。」
「お嬢様が我々下々にお伝えくださった通学路。そこからこの地は大きく離れています。まるで“最初からこの場に彼女たちが不法占拠していることを知っていた”かのように。……下見なさいましたね?」
言葉を淡々と潰していく婆やさん。マルコが言い訳をするほどに彼女が纏う怒気がどんどんと高まって行き、直接その怒りを向けられない私達でも、体の震えを抑えることが出来ない。めっちゃこわい。
ま、マルコさん!? 悪知恵が無駄に働くあなたならばなんかいい感じにこの場を切り抜けられる方法を思いつく……。あ、顔真っ青で冷や汗が滝になってる。
「お、お仕置きをご勘弁していただけるとかは……?」
「そこまで婆やが“優しい”とお考えで? 執行ッ!!!」
その瞬間、婆やさんの姿が掻き消え、マルコの眼の前に。一瞬だけ眼球が捉えることが出来たのは、真っ赤に光る彼女の拳骨。
直後マルコの悲鳴が響き、瞬きの後に広がっていたのは途轍もなく大きなたんこぶを拵えていた彼女の姿だった。
「それとハスミ様にツルギ様。お嬢様にそそのかされていたとしても、危険な行いをしたことは事実です。私から口添えと謝罪の品を後ほど送らせて頂きますが……。正義実現委員会とご両親への報告はさせて頂きますのであしからず。」
「「あ、はい。」」
「ほらお嬢様、お二人のご両親に頭下げに行きますわよ。さっさと自分で歩いてくださいまし。」
「ひ、ひぃぃん!」
〇ホーリーナイトメアグループ(HNグループ)
アニメカービィにおけるホーリーナイトメア社とは別物。彼女に繋がっているぽよ様もゲーム世界の彼であるため面識はない筈だが、ちょっと『うにゅ?』って感じがするらしい。
トリニティにおける農業・漁業・畜産・酪農などの食料生産事業を9割ほど抑えており、それにかかわる輸送業を完全に抑えている。(“輸送業”という枠組みでは全体の7割ほど)。勿論その食料の販売や、その調理なども行っているがこちらは控えめ。このグループが崩れるとトリニティが本当に傾くのでティーパーティとはずぶずぶ。
比較的善寄りの企業ではあるが、健全に利益追求をする企業でもあるので切り捨てるものは切り捨てるし、必要ならばあくどいこともする。まぁティーパーティとずぶずぶなので、そちらからの要請を受け大規模な社会貢献活動もしているのだが……。
設立のきっかけになったのが過去トリニティで起きた大飢饉であるため、基本的に『安価で美味しく栄養価の高いものを』届けてくれる。最近は大量生産を得意とするミレニアムの生産工場に対抗し、ブランド化にも余念がない。現在マルコが強く推し進めているのは1箱数十万の法外トマト。もしかしたらそのトマトはMの字が刻まれているかも……? しれなくもないかもしれない。
〇カイザーグループ
ブルーアーカイブにおける敵対組織の一つ。ロボット系の大人で構成されている組織で、様々な方面に進出している。代表はカイザープレジデント。現在トリニティへの進出を画策しているらしく、HNグループへの攻撃を行っている。マルコとはまだ完全な敵対関係にはなっていないようだが……。
〇アビドス
砂漠化が進行しており、自治区の大半が砂浜へと変わってしまった地域。マルコの時間軸では原作開始時に比べそこまで砂漠化が進んでいるわけではないが、企業上層部は『旨味ないよね……』と判断するレベルには過疎化してしまっている。