ソウリュウジムのトレーニング用のバトルフィールドで行われたサルビアとアイリスのポケモンバトル。その結果はサルビアの勝ちで終わった。
「負けちゃったあ...。でも、すっごく楽しいバトルだった!」
アイリスは明るく言う。実際、彼女自身はポケモン達の生き生きとした感情を感じていたのもあり、負けたとはいえ清々しい表情であった。
「そっか。それはよかった。僕も楽しかったし、ポケモン達も久々に全力で戦えて嬉しかったみたい」
コノヨザルにお疲れ様、と声をかけて頭を撫でる。コノヨザルは特に反応を示さないが拒否もしていなかった。
「君も相変わらずだね」
苦笑いを浮かべてサルビアはコノヨザルをボールに戻す。
「二人共、バトルお疲れ様。特にサルビア君、アイリスに勝てるとは見事だ」
シャガが拍手をしながら二人に近づく。その後ろにジムトレーナー達も続いていた。
「ありがとうございます。でも、アイリスちゃんもすごく強いですよ」
サルビアも正直な感想を言う。勝てたとはいえ、バトルの反省点は色々見えていたのだ。
「アイリスはあのチャンピオンのアデクさんにも勝ったことあるんですよ!」
「それに勝てるサルビアさんも凄いです!」
「もしかして、昔何処かのポケモンリーグのチャンピオンだったとか?」
ジムトレーナー達の中から質問が上がる。それにサルビアはどう答えたものか、と悩んでいた。
「うーん...」
「言いにくかったら答えなくてもいいが」
「ああ、いえ。その、確かに昔チャンピオンクラスに勝ったことも、ポケモンリーグで優勝したこともあるんですよ」
そのサルビアの発言にアイリス含めたジムトレーナー達が驚く。それを聞いて驚いていなかったのはシャガだけであった。
「え、そうなんですか!?」
「じゃあ、なんでポケモンジムの事務員なんてやってるんですか?」
「それこそ、何処かの地方チャンピオンになるとか、企業のスポンサーとかがいっぱいついてるとかじゃないんですか?」
ジムトレーナー達の疑問はもっともだろう。一つの地方のチャンピオンに勝つこともポケモンリーグで優勝することも簡単な話ではない。全ポケモントレーナーの中でもほんの一握りしかいない超が付くほどのハイレベルのポケモントレーナーだ。当然、その地方だけでなく、他の地方でも有名にもなり、ポケモンやトレーナー向けに販売しているアイテムや食料品などの企業もスポンサーにつくことも珍しくない。
「あまり詳しくは言えないけど、体の調子を崩してしまいまして。ポケモンバトルをしないように、って言われてたんです」
「え、そうなんですか?」
「とてもそうは見えないですけど...」
「もしかして、精神的な何かとか?」
「いや、そっちのことじゃないですよ。今はだいぶ回復してきてるので今日のバトルは応じましたけど」
現在は元気そうに見えるサルビアだが、その体は昔はかなり危険な状態であった。回復傾向にある現在でももしかしたらまたバトルが禁止されるかもしれない、そんなリスクは抱えたままである。
「シャガさんは知っていたですか?あまり驚かれていないですけど」
「うむ。何せサルビア君から直接聞いていたからな。こうやって実力を目の当たりにするのは初めてではあるが」
「僕が黙っててほしいとお願いしたんです」
「え、なんで?」
ジムトレーナーの疑問にサルビアは困った表情をしながら答えた。
「僕、これでも一応アデクさんと同じくチャンピオンクラスのトレーナーなんですよ。そんな人が目の前にいてポケモンバトルできません、と言われて貴方達は我慢できますか?」
その言葉にジムトレーナーは皆納得してしまった。特に、ポケモンジムに所属するジムトレーナーは向上心が高い人が多い。勝てるかどうかわからなくても取り敢えず強いトレーナーとポケモンバトルしてみたい。そのように考える人が多いのだ。更に、特定のジムにチャンピオンクラスがいると噂にもなればそれ目当てでやってくるトレーナーも多くなるだろう。それを避けるためにもサルビアはシャガに黙っていてもらうように頼み込んでいた。
「そっか、事務員のお兄さんもチャンピオンクラスだったんだ」
「そうだよ。どうしたの、アイリスちゃん?」
アイリスがオノノクスを撫でながらサルビアを見つめて言う。
「事務員のお兄さん。ううん、サルビアさん!今日はバトルありがとうございました!」
「こちらこそありがとう。僕のポケモン達にもいい刺激になったよ」
「あたし、もっともっと強くなります!もっと上を目指せるってわかったから。またバトルしてください!」
「ふふっ。いつでもいいよ、相手してあげる」
「はい!頑張ろうね、オノノクス!」
アイリスの言葉にオノノクスも頷く。彼らのその眼には強くなる意思が秘められていた。
「ところでサルビア君」
「なんでしょう?」
アイリスが家に帰り、ジムトレーナー達もトレーニングに戻る頃。サルビアとシャガの二人は話していた。
「君はまだ事務員としてソウリュウジムに残るのかね?」
「今のところはそうですね。特に何やりたいかは決めていないので。何せ今までは体を治すことで精一杯でしたので」
「そうか。どうするか決まったらまた教えてくれ。正直、君ほどの実力者を事務員として残すのももったいないと思ってしまってな。体も回復してきている以上、ポケモンリーグ協会からも何か連絡が行くかもしれないからな」
「そうですね...」
イッシュ地方では現在、色々と変わるための動きがあることはサルビアもカトレアから聞いているため把握していた。ポケモンリーグのチャンピオンの交代、ジムリーダーの交代。ジムリーダーの交代はもしかしたらポケモンジムを別の町に建てることになるかもしれない。等々、色々なことが起ころうとしていた。
「今すぐに決めることではない。決まったら教えてくれ。どんな道であれ、君のことは応援する」
「わかりました、ありがとうございます」
シャガが書斎に向かうその背中をみてサルビアは今後何をしようか、頭を悩ませ、答えは出なかった。
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夜。
ソウリュウジムのポケモンの回復装置でバトルしたポケモン達を回復したサルビアは足早に家に向かっていた。
(ちょっと遅くなっちゃったな。カトレア、待たせちゃってるかな)
サルビアが家に到着すると玄関の鍵を開ける。
「ただいまー」
玄関を開けるとランクルスがそこで待っていたのか彼を出迎え、声を上げた。
「ただいま、ランクルス。カトレアは?」
ランクルスはキッチンの方を指差す。そこからエプロンを着たカトレアが現れた。
「おかえりなさい、サルビア」
「うん、ただいま、カトレア。もしかして晩御飯作ってくれたの?」
「ええ。温かいうちに食べましょ?」
「はーい」
手洗いうがいを済ませ、ポケモン達用の食事の準備を済ませると二人も食卓に座り、晩御飯を食べ始めた。
「今日さ、アイリスとバトルしたよ」
「あら、そうなのですか?それで、どうでしたか?」
「強かったよ。アデクさんに勝った、ということはあるね。勢いが凄かった。今日は勝てたけど、負けてもおかしくなかったよ」
「ふふ。あの子はやはり凄いですね」
カトレアもアイリスとはバトルしたことがあり、彼女の実力はその身でわかっていた。その時は負けてしまったものの、それはそれで納得できるものがあるのもわかっていた。
「それで、貴方自身は?」
「うーん。体の方は問題ないかも、と思った。まだリスクはあるかもだけどね」
「うん」
「バトルの方は...ブランクを感じたかな。前よりも指示がうまくできなかった感じがする」
「そうですか。でもそれは仕方ないでしょう。またバトルをしていって慣れていくしかないでしょう」
「そうだね」
雑談をしながら晩御飯を二人は食べ進めていく。サルビアは料理の感想、と言ってもどれも美味しいとばかり言っていたが、それを伝えていた。
晩御飯を食べ終わった頃、カトレアがサルビアに訊ねた。
「そうだ、来週はお休みもらえたんですよね?」
「うん、休暇の申請は出したよ」
「それならよかったです」
語尾に音符マークが付きそうなほど楽し気な感情をカトレアは出し、食器をシンクに運び洗っていた。
「結局、どこに行くかは教えてくれないんだよね...」
「ええ、当日までのお楽しみです」
楽しそうに言うカトレアを見てサルビアは若干呆れた表情で膝元にきていたエーフィを撫でていた。
ポケモントレーナーの実力を分けるとだいたいこんな感じになる(設定)でいます。殆ど目安です。
一般トレーナー<一つの地方のジムバッチを8つ集めたトレーナー<<<ジムリーダー(ゲームでいう本気ver)やポケモンリーグ優勝者(アニポケのトーナメントイメージ)≦四天王≦チャンピオン
詳しい設定は後日出すかも
以下、簡易的な登場人物紹介。
・カトレア
ポケモントレーナーの実力は四天王クラス。他のところの設定はわからないけどこの小説では家事は一通りできる。実家を出る前に母親や、メイド達に色々教わっている。
・サルビア
ポケモントレーナーの実力はチャンピオンクラス。家事はある程度できる。トレーナーとしての覇気は無意識のうちに出している。普段は出していない。なんなら本人の自覚もない。
・シャガ
ポケモントレーナーの実力はジムリーダーから四天王クラス。サルビアのことを結構気にかけている。
・アイリス
ポケモントレーナーの実力はチャンピオンクラス。この後、ソウリュウジム内でサルビアとバトルする姿がたまに見られる。
・アデク
ポケモントレーナーの実力はチャンピオンクラス。なお、近頃引退予定。