数日後
一週間程の長期休暇に入ったサルビアとカトレアの二人は、アローラ地方のアーカラ島、そこにある空港に飛行機で移動していた。
「流石にイッシュからでもアローラに行くには移動も時間がかかるね...」
「ええ。コクランももう少しで到着するので待ちましょう」
アーカラ島にあるハノハノリゾート。その近くにあるカトレアの別荘への移動途中である二人は空港内のロビーでコクランが来ることを待つことにした。
「サルビアは前にアローラ地方へ来たことがおありで?」
「うん。何年も前の話だし、ほとんど観光が目的だったけどね」
アローラ地方はポケモンリーグやポケモンジムが存在せず、公式的な大会もあまりないくらいにはポケモンバトルが盛んではない。しまめぐりの試練という腕試しができるところや四人のトレーナーが一斉にポケモンバトルするロイヤルバトルを行う施設は存在するがそのくらいである。
「後は...これかな」
「それは?」
サルビアがバックから取り出したのはZパワーリングとエスパーZの力があるZクリスタル。Z技、と呼ばれる攻撃技であれば超高威力の技に変化させ、変化技であればそこに追加効果を付与する力を与える道具であった。
「Z技、と呼ばれるものを出すために使う道具かな。昔来た時に貰ったものでね」
「へぇ。このクリスタル、なかなか綺麗ね」
サルビアにぴったりとくっつきZクリスタルを見てカトレアは言う。くっついてきたことにサルビアは驚いていたもののそれを咎めるようなことは言わなかった。
暫く二人でお話ししていると、そこにコクランがやってきた。
「お久しぶりです。カトレア様。サルビア様」
「ええ、久しぶりね。コクラン」
「お久しぶりです。コクランさん」
「お待たせいたしました。では行きましょう」
コクランに連れられ車で移動すること数十分。二人はカトレアの別荘に到着した。
「荷物はこちらでお預かりします。お二人はゆっくり休んでてください。夕飯時になりましたらお呼びしますので」
「よろしくね、コクラン」
コクランが二人の荷物を彼のポケモンであるエンペルトとエルレイドに持たせて部屋に入っていった。サルビアとカトレアは庭に出てポケモン達を出し、遊ばせていた。
「それにしても色んなところで貴女の別荘見てきたけどここもでかいんだね...」
「ここはお父様の持ち物だけど、その中でも大きい方ですからね」
庭の端にある椅子に座り、サルビアの若干呆れを含んだ声にカトレアも苦笑交じりで話す。
ポケモン達の方はというとそれぞれ思い思いに遊んだり、鍛錬したりとしていた。中にはコクランのポケモン達も入っており、彼らも交じっての交流となっていた。
二人がポケモン達を眺めながらお喋りをしていると庭の端の一角にある花の集まりに違和感があることにサルビアが気づいた。
「カトレア、あそこに何かいる」
「え?」
サルビアの指差したほうをカトレアも見ると彼女もその違和感を認識した。二人と一緒にそれに気づいたドラパルトとフーディンも一緒にそれに近づいた。
「このこは?」
「キュワワーだね」
花の中に埋もれて眠っているキュワワーをサルビアは拾い上げる。花の香りに包まれていたこと、日差しが良い天気というのもあるのだろうか、とても気持ちよさそうに眠っていた。
「それにしてもどうしてこんなところに?」
「野生の子なのかな?近くの花畑から迷い込んだのかな?」
話しているとキュワワーの目が覚め、サルビアと目が合った。
「起きちゃった?」
サルビアの手からキュワワーが浮遊するとサルビアの顔をじっと見つめていた。
「えっと...おはよう?」
キュワワーは急に人を襲うようなポケモンではないことはサルビアは知っていた。とはいえ、ずっと見つめられて流石に戸惑いを見せていた。
するとすぐにキュワワーは嬉しそうな声をあげてサルビアの顔の周りをクルクルと回っていた。何周かするとサルビアの頭の上に乗り、そのまま丸くなっていた。
「あら、今度はサルビアの頭の上が気に入ったのかしら」
「僕の頭は花畑とかじゃないんだけど...」
サルビアが困ったようにつぶやくがキュワワーはそんなことをお構いなしにサルビアの頭の上でくつろいでいた。
「それにしても、ふふっ」
「何、カトレア」
「いえ、キュワワーが花冠みたいで可愛らしいな、と思いまして」
「な、可愛らしいってそんな...」
カトレアはニコニコと笑顔を浮かべ、周りにいるポケモン達もそれを見て笑っていた。サルビアは相変わらず困惑の表情であった。
「それに、ポケモンには相変わらず好かれやすいのですね」
「それは...うん、そうだね」
サルビアはどういうわけか昔からポケモンには好かれやすい方であった。それこそ、凶暴だったり、人のことをあまり好まないポケモンも彼の前では比較的おとなしい行動をする、あるいは好意的な行動をすることが多いのだった。
「キュワワーの場合はあまり攻撃的でないだけな気がするけど」
「人に慣れている野生ポケモンでもある程度警戒心があるものでしょう。そんなポケモン達が安心して体を預けているのが何よりの証拠では?」
カトレアにそう言われサルビアは逡巡する。旅に出たばかりのころはともかく、特にここ数年は野生ポケモンに遭遇してもバトルとなることは少なくなっていることは明らかであった。
「そういうものなのかなあ?」
「そういうものなのですよ。アタクシにはわかります」
サルビア本人はあまりわかっていなそうではあるが、カトレアもそして周りにいるポケモン達も皆揃って頷くのであった。
結局、その日一日はキュワワーがサルビアの傍から離れることはなかったのだった。
今回はなんか難しかった...。部隊は暫くアローラ地方になる予定。
以下、簡易登場人物紹介。
・カトレア
実家が色んな所に別荘がある。その中のいくつかは彼女の持ち物だが、今回は実家の方の別荘に来た。
・サルビア
ポケモンに滅茶苦茶好かれやすい人。だが、本人はそれに気づいていない。昔、アローラ地方を旅したことがある。野生のキュワワーに好かれた。
・コクラン
シンオウ地方のバトルフロンティアのフロンティアブレーンの一人でカトレアの実家の執事も務める。男性。実力的には四天王クラス。今回はカトレア達が旅行、ということでお世話係としてきた。