別荘に戻ってきたサルビアはかいふくのくすりと包帯を駆使して手早くジャラコを治療していた。傷を治したジャラコの意識が回復するのに気づくとポケモンフーズときのみを食べさせていた。
(よかった。取り敢えずは元気になったし食欲もある。人に対して怯えもないから取り敢えずは一安心だ)
野生ポケモンの中には人に慣れていない、警戒心が強すぎるといった理由で怯えて動けなくなったり、逆に暴れてしまうポケモンもいる。今回のジャラコはそのどちらでもなかったのでサルビアはほっとしていた。
「おはようございます、サルビア様」
「コクランさん、おはようございます」
「そちらは、野生のジャラコですか?」
「ええ、ランニングしてるときにたまたま弱っているところを見つけちゃって」
目を覚ましたコクランに声をかけられサルビアは振り返る。他のポケモン達も目を覚ましたのか部屋や庭から続々と顔を出していた。ジャラコは一瞬驚いた様子を見せたもののすぐに打ち解けてお喋りしていた。その中には昨日拾ったキュワワーもいた。
少し賑やかになってきたところでカトレアも目を覚まし、欠伸をしながら部屋から出てきていた。
「ふわ...。おはよう、サルビア、コクラン」
「おはよう、カトレア」
「おはようございます。カトレア様」
寝ぼけまなこを擦りながらポケモン達が賑やかに話しているところを見やり、少し呆れた表情でサルビアを見て言った。
「サルビア、貴方また拾ってきたの?」
「またって...。そんな何度もポケモンを拾ってきてるみたいな言い方...」
サルビアは反論しそうになるが昨日はキュワワー拾ったな、と思い直し、連日して似たようなことが起こっていると思うと途中で言い淀んでしまった。
「朝食を取りましたらポケモンセンターに行ってジャラコの様子を診てもらいましょう。準備いたします」
「じゃあその間にシャワー浴びてきます」
「アタクシは着替えてきます」
ジャラコをポケモン達に任せ、三人はそれぞれ準備をすることにした。
********************
朝食を終えた三人はジャラコを連れてポケモンセンターに来ていた。
「お待ちどうさまです。ジャラコの健康状態は問題ありませんでしたよ。元気いっぱいです。応急処置が上手かったのですね」
「ありがとうございます。よかったね、ジャラコ」
ポケモンセンターでジャラコの様子を診てもらい、特に異常はなかったと聞いてサルビアは安心していた。ジャラコも元気に返事する。
「それにしても、野生のジャラコがアーカラ島にいるなんて変ですね」
「やっぱりそうですよね」
ポケモンセンターの受付の人とサルビアの会話にカトレアとコクランはその内容がわかっていなかった。
「サルビア様、今のはどういうことで?」
「ああ、えっと...」
サルビアが少し悩むとスマートフォンを取り出しアローラ地方の地図を二人に見せていた。
「僕達がいるアーカラ島はここ。そしてジャラコが本来生息しているのはこっちのポニ島なんだよ」
アローラ地方はメレメレ島、アーカラ島、ウラウラ島、ポニ島の四つの大きな島がメインとして存在している。その中でもアーカラ島とポニ島はお互いに離れた位置に存在していた。
「何故そんな野生のジャラコがアーカラ島に?」
「さあ。迷い込んで船に乗り込んじゃったか、或いは...」
サルビアの中で考えたくないこと。それは今は野生となったが元々は別のトレーナーが逃がした可能性である。トレーナーとポケモンの馬が合わなくなった、或いはポケモンがトレーナーを見限って自ら逃げた場合であれば心配はないだろうが、拾ったときに弱っていたところを見るとそのような可能性は低そうである。
また、ポニ島のジャラコ達の群れに返すにしてもこの子をはぐれた仲間の元へきちんと返せるのかが心配であった。
「心配ならそのジャラコもサルビアが連れて行けばよいのでは?キュワワーも連れて行くのですし増える仲間が一匹更に増えても貴方なら問題ないでしょう?」
カトレアに言われ、サルビアも考える。ジャラコは腕の中でおとなしくしており、あって数時間ほどではあるもののサルビアに懐いていた。
「一緒に来るかい?」
ジャラコの目を見てサルビアは問いかける。するとすぐにジャラコは嬉しそうに頷き、サルビアに頭をぐりぐりと押し付けていた。
「よしよし。これからよろしくね」
サルビアは優しい声色でジャラコの頭を撫でながら言う。カトレアとコクランはその様子を微笑ましく見ていた。
「そのジャラコを連れて行くのであればちょっと待ってください」
「え?」
受付の人がサルビアを呼び止めると奥へと入っていった。
「どういうこと?」
「さあ?」
それから然程時間もしないうちに奥の方から受付の人が戻ってきて、サルビアにあるものを手渡した。
「こちらも持って行ってください。ここにあっても使わないものなので」
「Zクリスタルですか?」
エスパーZとはまた異なるZクリスタル。色もそうだが、形状も若干異なっていた。
「ありがとうございます」
「いえ、そちらも大切に扱ってくださいね」
戸惑いを見せたものの、サルビアはZクリスタルを受け取り、カトレアとコクランと一緒に別荘に戻るのであった。
このお話の設定としては、伝説や幻と称されるポケモン達は希少種(かつ人前には滅多には現れない)が複数体存在します。前回、エンテイが平然といましたがエンテイ自体は彼(彼女?)一体だけ、というわけではないです。
以下、簡易的な登場人物紹介。
・カトレア
連日して野生ポケモンを拾ったサルビアに対し、またかと思っていた。それと同時にお人(ポケモン?)好しとも思っていた。
・サルビア
アローラ地方にきて2匹も新しくポケモンを捕まえることになった。
・キュワワー
サルビアの新しいポケモンの一匹。性別は♀。特性はヒーリングシフト。他のポケモン達ともすぐに打ち解けた。
・ジャラコ
サルビアの新しいポケモンの一匹。性別は♀。特性はぼうおん。弱っているところを助けてくれたサルビアに懐いた。